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異世界生活編
65.棒術もなんとか順調?
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筋力トレーニングはここのところ安定して同じメニューをこなしている。
別にムッキムキに肥大させたいわけじゃないからどんどん負荷をあげるって感じでもなく、ちょっとキツイみたいなトレーニングの継続って感じ。これに関しても俺にはわからなくて、ルイのおまかせコースみたいになっちゃってるけどね。
ヴァンのマッサージも最初の頃と比べると短時間で終わるようになってる。俺の身体がそこまで悲鳴をあげてないからみたい。ちょっと嬉しい。
で、棒術なんだけど。この練習用の棒はただの真っ直ぐな棒。前の長剣のときにルイがバランス調整したような加工はされていない。剣みたいな鍔があるわけでもないし、ちゃんと棒術としての扱いをしないと手を怪我するからって言われた。剣の類みたいに受け止めようとするんじゃなくて払えってね。リーチの長さを活かして相手を間合いに入れないことをまずは考えろって。ま、これは初心者の俺だからっていう助言ね。
一人で棒の素振りしてたのと違ってヴァンの真似をするのはわかりやすい。でも、同じようには振れてないんだけどさ。
「うー、なんか違うんだよな……」
「いや、上手いじゃん。イクミは求めるレベルが高すぎるんだよ」
「だって、めちゃくちゃ上手い人をお手本にしてるんだからしょうがないだろ!」
「んふ。まあそれはそうか」
ヴァン……機嫌よくなってるんじゃねーよ。
でもヴァンはこういうところが良いとこなんだろうなとは思う。マイペースで自信家だけど嫌味がなくて、スルッと人の内側に入り込むような感じ。それに自信家って言ってもうぬぼれじゃなくてちゃんと実力もある人だしね。
「そうそう、突いたらすぐ戻す。ちゃんとすぐ次の攻撃ができる体勢を取ってね」
「剣よりなんかシビアだよ……」
「さっきも言ったが、上級者ならいざ知らず、イクミは間合いに入られたら相手への攻撃とか防御がきついと思う。棒で薙ぎ払ったり突いたりしつつ自分の近くに寄せない、みたいに考えたほうがいい」
ヴァンとすごく動きのゆっくりな組み手みたいなことをしているんだけど、ルイもヴァンもたくさん口を出してくるから混乱しそうになる。
「寄せない、寄せない……受け止めるんじゃなくて払う……」
俺はブツブツ呟きながらゆっくりヴァンの棒を払ったり、自分に寄ってきそうなヴァンに突きを出したり距離を取ったりとひたすら練習した。
このくらいなら短剣のときの組み手とは違ってなんとかついていけそう……と思っていたときが俺にもありました!
「いつも思うんだけど、ヴァンの、その急に本気出す、みたいの……やめて……」
「なーに言ってんの。できてるならステップアップするのは当たり前でしょ」
座り込みながら弱音を吐き、ちょっと涙目でルイを見上げれば困ったような心配そうな他にも感情が込められてそうな微妙な目をしていた。
うう……。別に鍛錬が嫌なわけじゃないんだよ。一言あってから練習レベルあげるんでもいいんじゃないかなっていうだけでさ。俺の心構え的に!
「わかってる……けどぉ」
「オレ、ちゃんと見極めてると思うけど?」
俺は最近「わかってるけど」が口癖になりつつある、かもしれない。だって、頭で理解できてるからって身体がついていくかは別問題じゃん。
ヴァンがちゃんと調節してくれてるのだってわかってる、けどぉ。
「うん。そうだね。そうだよ。ほんっと、いつもギリギリのところ仕掛けてくるもんっ」
きえぇーー! っとなりかけてる俺の頭をポンポンとルイが撫でるから、俺はふにゃっと力が抜けた。
「イクミはよくやってる。俺もすごいなと思って見てる」
「あ……ありがと」
「ヴァンをあまり恨まないでやってくれ。俺が頼んでるから」
「恨んでるんじゃないってば。組み手中に何も言わずに難易度上げてくるから愚痴っただけだよ。絶対怪我しないようにしてくれてるのもわかってるし……でもわかってても愚痴りたいのっ」
背後でブハッとヴァンが笑いを堪えられなくて吹き出したのが聞こえた。
「ほんと、イクミって可愛いね。くっくっく……」
「可愛いってなんだよ!」
「オレからしたら2人とも可愛いよ」
「えええ……」
なるほど……これだからルイもヴァンの扱いが雑になってきたんだな。3人のうちで一番年上のはずなのにヴァンが一番おちゃらけてるもんな。ルイのことを可愛いって言えちゃうヴァンには敵いそうにないなぁ。
「でも本当にちゃんとできてるよ。それはオレもルイも保証する。だからイクミは人と比べないで1個ずつやってこ?」
「そうだぞ。棒終えたら1回長剣に戻して振ってみてもいいかもしれないってくらい動きが良くなってるしな」
「そ、そうかなぁ。俺、長剣はちょっと自信なくしちゃってて」
なんていうか、苦手意識みたいなのが刷り込まれちゃったとでもいうか。結構長く素振りしたのにダメダメだったからな。
「イクミは素振りだけじゃなくて組み手スタイルのほうが向いてるみたいだから、あのときは俺のプランが良くなかったかもしれないな。すまない」
「ちょっと! なんでルイが謝るわけっ?」
それに多分組み手とか言われてもあのときの俺はめちゃくちゃ嫌がっただろうし。通訳の魔導具もルイにつけてもらっていたから2人の言葉を俺がちゃんと聞いて練習したわけでもなかったし。だからルイのせいな訳がない。
「ルイはね、早くイクミの力になってあげたいんだよ。イクミが帰りたいって思ってるなら少しでも早くそれを実現させてあげたいんだって。だから長剣への自信を失わせたと思って自分を責めてるんだよ」
「ヴァン!」
「なんだよ、別に言ったっていいじゃん。イクミだってわかってるよ。ねえ?」
「うん……ルイには感謝ばっかりだよ。だから自分が悪いとか思わないでほしい」
今までルイが自分のことより俺を優先させてくれてるの何度も感じてるもん。長剣を上手く扱えなかったのは俺の経験がなさすぎのせいだろうし、それをしょうがないって思わないで向いてないのかもって自信喪失したのも俺のメンタルの問題だろ?
「よし! ルイ! 俺、この棒術の期間が終わったら長剣もっかいやるよ。前より上手く振ってやる!」
ちょっと驚いた顔をしたルイはその後なんとも言えない優しい色を瞳に浮かべて、俺はそれを見てドキドキしてしまった。
別にムッキムキに肥大させたいわけじゃないからどんどん負荷をあげるって感じでもなく、ちょっとキツイみたいなトレーニングの継続って感じ。これに関しても俺にはわからなくて、ルイのおまかせコースみたいになっちゃってるけどね。
ヴァンのマッサージも最初の頃と比べると短時間で終わるようになってる。俺の身体がそこまで悲鳴をあげてないからみたい。ちょっと嬉しい。
で、棒術なんだけど。この練習用の棒はただの真っ直ぐな棒。前の長剣のときにルイがバランス調整したような加工はされていない。剣みたいな鍔があるわけでもないし、ちゃんと棒術としての扱いをしないと手を怪我するからって言われた。剣の類みたいに受け止めようとするんじゃなくて払えってね。リーチの長さを活かして相手を間合いに入れないことをまずは考えろって。ま、これは初心者の俺だからっていう助言ね。
一人で棒の素振りしてたのと違ってヴァンの真似をするのはわかりやすい。でも、同じようには振れてないんだけどさ。
「うー、なんか違うんだよな……」
「いや、上手いじゃん。イクミは求めるレベルが高すぎるんだよ」
「だって、めちゃくちゃ上手い人をお手本にしてるんだからしょうがないだろ!」
「んふ。まあそれはそうか」
ヴァン……機嫌よくなってるんじゃねーよ。
でもヴァンはこういうところが良いとこなんだろうなとは思う。マイペースで自信家だけど嫌味がなくて、スルッと人の内側に入り込むような感じ。それに自信家って言ってもうぬぼれじゃなくてちゃんと実力もある人だしね。
「そうそう、突いたらすぐ戻す。ちゃんとすぐ次の攻撃ができる体勢を取ってね」
「剣よりなんかシビアだよ……」
「さっきも言ったが、上級者ならいざ知らず、イクミは間合いに入られたら相手への攻撃とか防御がきついと思う。棒で薙ぎ払ったり突いたりしつつ自分の近くに寄せない、みたいに考えたほうがいい」
ヴァンとすごく動きのゆっくりな組み手みたいなことをしているんだけど、ルイもヴァンもたくさん口を出してくるから混乱しそうになる。
「寄せない、寄せない……受け止めるんじゃなくて払う……」
俺はブツブツ呟きながらゆっくりヴァンの棒を払ったり、自分に寄ってきそうなヴァンに突きを出したり距離を取ったりとひたすら練習した。
このくらいなら短剣のときの組み手とは違ってなんとかついていけそう……と思っていたときが俺にもありました!
「いつも思うんだけど、ヴァンの、その急に本気出す、みたいの……やめて……」
「なーに言ってんの。できてるならステップアップするのは当たり前でしょ」
座り込みながら弱音を吐き、ちょっと涙目でルイを見上げれば困ったような心配そうな他にも感情が込められてそうな微妙な目をしていた。
うう……。別に鍛錬が嫌なわけじゃないんだよ。一言あってから練習レベルあげるんでもいいんじゃないかなっていうだけでさ。俺の心構え的に!
「わかってる……けどぉ」
「オレ、ちゃんと見極めてると思うけど?」
俺は最近「わかってるけど」が口癖になりつつある、かもしれない。だって、頭で理解できてるからって身体がついていくかは別問題じゃん。
ヴァンがちゃんと調節してくれてるのだってわかってる、けどぉ。
「うん。そうだね。そうだよ。ほんっと、いつもギリギリのところ仕掛けてくるもんっ」
きえぇーー! っとなりかけてる俺の頭をポンポンとルイが撫でるから、俺はふにゃっと力が抜けた。
「イクミはよくやってる。俺もすごいなと思って見てる」
「あ……ありがと」
「ヴァンをあまり恨まないでやってくれ。俺が頼んでるから」
「恨んでるんじゃないってば。組み手中に何も言わずに難易度上げてくるから愚痴っただけだよ。絶対怪我しないようにしてくれてるのもわかってるし……でもわかってても愚痴りたいのっ」
背後でブハッとヴァンが笑いを堪えられなくて吹き出したのが聞こえた。
「ほんと、イクミって可愛いね。くっくっく……」
「可愛いってなんだよ!」
「オレからしたら2人とも可愛いよ」
「えええ……」
なるほど……これだからルイもヴァンの扱いが雑になってきたんだな。3人のうちで一番年上のはずなのにヴァンが一番おちゃらけてるもんな。ルイのことを可愛いって言えちゃうヴァンには敵いそうにないなぁ。
「でも本当にちゃんとできてるよ。それはオレもルイも保証する。だからイクミは人と比べないで1個ずつやってこ?」
「そうだぞ。棒終えたら1回長剣に戻して振ってみてもいいかもしれないってくらい動きが良くなってるしな」
「そ、そうかなぁ。俺、長剣はちょっと自信なくしちゃってて」
なんていうか、苦手意識みたいなのが刷り込まれちゃったとでもいうか。結構長く素振りしたのにダメダメだったからな。
「イクミは素振りだけじゃなくて組み手スタイルのほうが向いてるみたいだから、あのときは俺のプランが良くなかったかもしれないな。すまない」
「ちょっと! なんでルイが謝るわけっ?」
それに多分組み手とか言われてもあのときの俺はめちゃくちゃ嫌がっただろうし。通訳の魔導具もルイにつけてもらっていたから2人の言葉を俺がちゃんと聞いて練習したわけでもなかったし。だからルイのせいな訳がない。
「ルイはね、早くイクミの力になってあげたいんだよ。イクミが帰りたいって思ってるなら少しでも早くそれを実現させてあげたいんだって。だから長剣への自信を失わせたと思って自分を責めてるんだよ」
「ヴァン!」
「なんだよ、別に言ったっていいじゃん。イクミだってわかってるよ。ねえ?」
「うん……ルイには感謝ばっかりだよ。だから自分が悪いとか思わないでほしい」
今までルイが自分のことより俺を優先させてくれてるの何度も感じてるもん。長剣を上手く扱えなかったのは俺の経験がなさすぎのせいだろうし、それをしょうがないって思わないで向いてないのかもって自信喪失したのも俺のメンタルの問題だろ?
「よし! ルイ! 俺、この棒術の期間が終わったら長剣もっかいやるよ。前より上手く振ってやる!」
ちょっと驚いた顔をしたルイはその後なんとも言えない優しい色を瞳に浮かべて、俺はそれを見てドキドキしてしまった。
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