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異世界生活編
64.組み手って……
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サディさんが走って行っちゃったので残された俺とルイはその場で少し話してから、それぞれの仕事に向かった。
ルイがちょいちょいいないのはやっぱりというか、自警団のお手伝いをしていたからだった。あれだけ強いんだからその腕を使わないわけにはいかないよね。でも、俺の面倒を見るというのが優先順位でいうとかなり高いらしくて、長く外に滞在するような仕事は請け負ってない。とは言っても、この前の魔力噴出みたいな事件があれば行っちゃうけどね。
俺のことをかなり優先してくれてるのって悪いなって思いつつも、口元が緩んじゃうくらいには嬉しい。だって、俺あっちでそんな扱いされたことないもん。
薬草畑で作業していてもサディさんが現れる様子もなく、わからないところはラキさんに聞きながら作業をした。俺がここに来た初夏は雑草の伸びも早かったけど、このところは落ち着いていて、もう秋なのかーって感じ。徐々に何も植わってない畑も増えてきてるしね。
「ラキさん、ここって灰撒いて耕しておいたほうがいい感じ?」
「そっちは灰じゃなくてこっちの肥料がいいかな。次に使う時は違う薬草を植えるから」
「連作障害的なやつか……。量はどのくらい?」
ラキさんの指示のお陰で戸惑うことなく作業が進められる。畝だったところに肥料を少し撒いてクワでよく土と混ぜておく。次も良い質の薬草が育ちますようにと願いを込めながら。
一通りの作業を終えて、今度こそ走り込みだ。門のところでルイと合流していつも通り走り出す。今は距離というよりも傾斜のあるところがメインかな。あっちなら心臓破りの坂とか言われちゃうんじゃないだろうかっていう道とか走らされてる……だいぶ慣れてきたけどさ。
「イクミ、1回休憩挟んで筋力トレーニングと棒術にしよう。……大丈夫か?」
「だ、大丈夫。前に比べたら、うん、大丈夫。倒れて、ないし」
肩で息をしているのは許して……。ルイが平然としているから自分が少し情けなく思えるときもあるけど、ルイとかこっちの人がおかしいんだよな。なんて思いながら、少し落ち着いたらルイと並んで家に戻った。
その途中でヴァンとも合流したんだけど、レモンみたいな果実をかじってて見てるだけで口の中がキュってなったよ。前にホエイのベリードリンクを作ってあげてから作り方を聞かれて、ホエイのためにカッテージチーズの作り方から言わなきゃならなかったんだよね。
それで、どうやら柑橘系の果実をたくさん集めたらしいんだ。季節じゃないものは物々交換だったり魔法を対価に。なのに結局果実をそのままかじってるってどうなのさ。
「ヴァン、酸っぱくないの?」
「酸っぱいのが美味しい」
「あ、うん」
聞いた俺が馬鹿だった。ルイもちょっと眉根を寄せてて笑っちゃう。
この休憩の時間は俺のひそかな楽しみなんだよな。ルイとヴァンが面白すぎるんだもん。何と言ってもルイの俺に見せない一面が見られるのがいい。雑な扱いしたり遠慮ないツッコミしたりがね。
多分、2人は俺がそんなことを楽しんでるなんて知らない。というか、知られてはいけない。あくまでも自然体の2人が見たいからね。
「イクミは棒術結構いい感じだよね。組み手早くやってみる?」
「ええ? まだ持ち始めたばかりだよ?」
「でもなんか動きがどんどん良くなってるように見えるんだよね。ねえ? ルイ」
「ああ。長剣でイクミが悩んでたのはなんなんだろうなってくらいにはな」
この流れはやることになるんだろうな。鍛錬に関しては俺の意見はあまり反映されないからもう何も言うまい。やってみて無理そうなら調整されるしさ。
でも確かに2人が言うように、短剣やり始めたあとくらいからなんとなくわかり始めた感じはあるんだ。ほんの少しだとしても自分が思う感じに動けると楽しいよな。
「まあ、俺は従うよ。こういうの進める順番って俺よくわからないし……」
「よし! じゃあオレもう1本棒持ってくるから」
そう言うとヴァンはタタタッと走って家を出て行ってしまった。行動早いな。どうやら今回も組み手はヴァンみたいだ。ていうか背格好的にずっとヴァンと組むのかなぁ……。
「ん? どうした?」
俺がルイを見ながら考えていたからか、ルイは俺が何か言いたいのかと思ったみたい。
「ううん。特に何も?」
「そうか?」
「あー、んー、考えてたことは組み手はヴァンとだけしかしないのかなってことくらいかな。ルイとは練習しないのかなって思って見てただけ」
なんでもないって言葉にあまり納得いってなさそうなルイに、正直に言うことにした。別にどうしてもルイがいいってわけじゃないんだよ。ヴァンも教えるの上手いしさ。でも、俺が勝手にルイに懐いてるだけ、なんだろうな……多分。
「今は基礎練習だから。別に俺がやりたくないとかじゃないぞ?」
「そんなこと思ってないよ」
仮にやりたくないなんて思ってたら毎日こんなに俺優先で鍛錬に付き合ってくれるわけないんだから。
「じゃあ、ルイと組み手できるように頑張らなきゃだね」
いひひ、って感じでルイに笑いかけると、頭をクシャってされた。ここのところなかったから久しぶりにされた気分だ。おかしいな……なんでちょっと嬉しくなっちゃってるんだ? 前は子どもじゃないんだけどって思ったもんだったけど。
そんなことをしていたらドアが開いた。
「おまたせー!」
「え、はやっ」
「オレを誰だと思ってんの?」
いや、ヴァンだけども。
だって家そんな近くなかったじゃん……。俺の常識で考えたらダメなのか。魔法? それともヴァンが本気で走るとこの時間で往復できるってことなのか?
あ、違うか。ヴァンの家じゃなくて練習武器の倉庫に行ったのか。にしても早いけど。
「最初は真似もしてもらいたいから棒対棒でやってみるけど、慣れたらオレは剣とか違うのも使っていくからね。魔物は武器持って攻撃してくることなんてないと思ってていいけど爪で受け止めたりしてくるやつとかいるから、短剣なんかはそんなイメージに近いかな」
「なるほど……って、結構休憩しちゃったね。筋力トレーニングしなきゃ」
俺がワタワタと立ち上がるとルイも着いてくる。さあ、今日の鍛錬を開始だ。
ルイがちょいちょいいないのはやっぱりというか、自警団のお手伝いをしていたからだった。あれだけ強いんだからその腕を使わないわけにはいかないよね。でも、俺の面倒を見るというのが優先順位でいうとかなり高いらしくて、長く外に滞在するような仕事は請け負ってない。とは言っても、この前の魔力噴出みたいな事件があれば行っちゃうけどね。
俺のことをかなり優先してくれてるのって悪いなって思いつつも、口元が緩んじゃうくらいには嬉しい。だって、俺あっちでそんな扱いされたことないもん。
薬草畑で作業していてもサディさんが現れる様子もなく、わからないところはラキさんに聞きながら作業をした。俺がここに来た初夏は雑草の伸びも早かったけど、このところは落ち着いていて、もう秋なのかーって感じ。徐々に何も植わってない畑も増えてきてるしね。
「ラキさん、ここって灰撒いて耕しておいたほうがいい感じ?」
「そっちは灰じゃなくてこっちの肥料がいいかな。次に使う時は違う薬草を植えるから」
「連作障害的なやつか……。量はどのくらい?」
ラキさんの指示のお陰で戸惑うことなく作業が進められる。畝だったところに肥料を少し撒いてクワでよく土と混ぜておく。次も良い質の薬草が育ちますようにと願いを込めながら。
一通りの作業を終えて、今度こそ走り込みだ。門のところでルイと合流していつも通り走り出す。今は距離というよりも傾斜のあるところがメインかな。あっちなら心臓破りの坂とか言われちゃうんじゃないだろうかっていう道とか走らされてる……だいぶ慣れてきたけどさ。
「イクミ、1回休憩挟んで筋力トレーニングと棒術にしよう。……大丈夫か?」
「だ、大丈夫。前に比べたら、うん、大丈夫。倒れて、ないし」
肩で息をしているのは許して……。ルイが平然としているから自分が少し情けなく思えるときもあるけど、ルイとかこっちの人がおかしいんだよな。なんて思いながら、少し落ち着いたらルイと並んで家に戻った。
その途中でヴァンとも合流したんだけど、レモンみたいな果実をかじってて見てるだけで口の中がキュってなったよ。前にホエイのベリードリンクを作ってあげてから作り方を聞かれて、ホエイのためにカッテージチーズの作り方から言わなきゃならなかったんだよね。
それで、どうやら柑橘系の果実をたくさん集めたらしいんだ。季節じゃないものは物々交換だったり魔法を対価に。なのに結局果実をそのままかじってるってどうなのさ。
「ヴァン、酸っぱくないの?」
「酸っぱいのが美味しい」
「あ、うん」
聞いた俺が馬鹿だった。ルイもちょっと眉根を寄せてて笑っちゃう。
この休憩の時間は俺のひそかな楽しみなんだよな。ルイとヴァンが面白すぎるんだもん。何と言ってもルイの俺に見せない一面が見られるのがいい。雑な扱いしたり遠慮ないツッコミしたりがね。
多分、2人は俺がそんなことを楽しんでるなんて知らない。というか、知られてはいけない。あくまでも自然体の2人が見たいからね。
「イクミは棒術結構いい感じだよね。組み手早くやってみる?」
「ええ? まだ持ち始めたばかりだよ?」
「でもなんか動きがどんどん良くなってるように見えるんだよね。ねえ? ルイ」
「ああ。長剣でイクミが悩んでたのはなんなんだろうなってくらいにはな」
この流れはやることになるんだろうな。鍛錬に関しては俺の意見はあまり反映されないからもう何も言うまい。やってみて無理そうなら調整されるしさ。
でも確かに2人が言うように、短剣やり始めたあとくらいからなんとなくわかり始めた感じはあるんだ。ほんの少しだとしても自分が思う感じに動けると楽しいよな。
「まあ、俺は従うよ。こういうの進める順番って俺よくわからないし……」
「よし! じゃあオレもう1本棒持ってくるから」
そう言うとヴァンはタタタッと走って家を出て行ってしまった。行動早いな。どうやら今回も組み手はヴァンみたいだ。ていうか背格好的にずっとヴァンと組むのかなぁ……。
「ん? どうした?」
俺がルイを見ながら考えていたからか、ルイは俺が何か言いたいのかと思ったみたい。
「ううん。特に何も?」
「そうか?」
「あー、んー、考えてたことは組み手はヴァンとだけしかしないのかなってことくらいかな。ルイとは練習しないのかなって思って見てただけ」
なんでもないって言葉にあまり納得いってなさそうなルイに、正直に言うことにした。別にどうしてもルイがいいってわけじゃないんだよ。ヴァンも教えるの上手いしさ。でも、俺が勝手にルイに懐いてるだけ、なんだろうな……多分。
「今は基礎練習だから。別に俺がやりたくないとかじゃないぞ?」
「そんなこと思ってないよ」
仮にやりたくないなんて思ってたら毎日こんなに俺優先で鍛錬に付き合ってくれるわけないんだから。
「じゃあ、ルイと組み手できるように頑張らなきゃだね」
いひひ、って感じでルイに笑いかけると、頭をクシャってされた。ここのところなかったから久しぶりにされた気分だ。おかしいな……なんでちょっと嬉しくなっちゃってるんだ? 前は子どもじゃないんだけどって思ったもんだったけど。
そんなことをしていたらドアが開いた。
「おまたせー!」
「え、はやっ」
「オレを誰だと思ってんの?」
いや、ヴァンだけども。
だって家そんな近くなかったじゃん……。俺の常識で考えたらダメなのか。魔法? それともヴァンが本気で走るとこの時間で往復できるってことなのか?
あ、違うか。ヴァンの家じゃなくて練習武器の倉庫に行ったのか。にしても早いけど。
「最初は真似もしてもらいたいから棒対棒でやってみるけど、慣れたらオレは剣とか違うのも使っていくからね。魔物は武器持って攻撃してくることなんてないと思ってていいけど爪で受け止めたりしてくるやつとかいるから、短剣なんかはそんなイメージに近いかな」
「なるほど……って、結構休憩しちゃったね。筋力トレーニングしなきゃ」
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