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異世界生活編
58.いろんな「恥ずかしい」
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「あら、イクミくん、魔導具つけてるの?」
ルイと家に入るとサディさんに声をかけられた。俺はルイと顔を見合わせてから少しドキドキしながら答える。
「えっと、サディさんにもちゃんと通じてる?」
1回サディさんのも外してもらって話しかけてみる。
「ちゃんとできてるわよ、すごいじゃない! これからはイクミくんがつけていれば大丈夫なのね」
なんかちょっと恥ずかしいな。俺に魔力があるだなんて。こんなこと家族――特に妹――に言ったら白い目で見られそうだ。ちょっとだけ中二病っぽい気恥ずかしさがある。ま、すぐ慣れるだろう。こっちじゃ当たり前のことなんだからな。
それよりも、もっと魔力が溜まったら……俺がルイを見ていいなって思っていた水魔法とか使えるようになるってことなのかな。え、ちょっとワクワクしちゃうかもしれない。
あー、いや、でもそういった魔法使うよりも身体強化のほうがいいのか? 旅に出たときに魔物と戦うかもしれないってことを考えたら優先順位は身体強化な気がする。このへんはヴァンのいうことを聞くしかないか。
「魔導具を起動させる、ってレベルだけなんだよね。ルイにも俺の魔力はわからなかったって言ってたよ」
「気づいたのはヴァンでしょう? あの子はそういうの鋭いものね」
サディさんも俺から魔力を感じたりはしてないらしい。そんな魔力の話とか短剣の組み手の話をサディさんとしながら夕飯の支度をする。俺の魔力が極微量だとしても動き出しちゃえば魔力を吸い取られることもないから会話は問題なく続けられている。俺が自分の力で魔導具を使えるようになったってこと以外は全然変化ない。
村長も帰ってきて俺の額に目をやると、少し驚いてそれからにこやかに話しかけてきてくれて久しぶりに沢山話したんだよね。夕飯を食べながら村長と話したのは初めてだったし、なんか不思議な気分だ。
「イクミ君、槍……棒術をやるときには少し私からもアドバイスさせてもらうよ」
「あ、はい! よろしくお願いします」
「硬いなぁ。サディやルイと話すときみたいにしてくれていいんだよ?」
「な、慣れたら……あはは……」
さすがに村長にいきなりタメ語はないだろ。その辺、俺って意外と真面目なんだよ。気にしちゃう……。
そして、お願いしますとは言ったものの、ルイ以上にスパルタなんじゃないかなってちょっと不安がある。でもベテランだからこその視点ってのも興味あるんだけどね。だって、ルイに戦い方を教えた人だろ?
今日は食後もお開きにするまで4人で沢山話した。いつもニコニコ俺らの会話を見ていた村長は意外と話好きな人だったんだなって認識を改めたよ。通訳挟まないのって本当に楽だな。
俺は部屋に戻っていつものプランクをして、寝るために魔導具を外した。だけど、前の魔力噴出の記憶もあって、ビビって枕元にLEDライトと一緒に置くことにした。いざというとき手元になくて誰とも意思疎通ができないのは怖いもんね。
魔導具ランプも俺だけで点けられるようになったのはわかってても感動したよ。魔力をある程度注ぎ込まないと使えないっていうような魔導具じゃなきゃ、もう俺にも使えるんだもん……すごいよね。
◇◇◇
翌日の昼には俺が通訳の魔導具を使えるようになって誰とでも話せるようになったと、例のごとく村中に知れ渡って、いろんな人が話しかけてくるようになった。
大学で無口キャラだったのはどうしてだろうってくらい話しかけられるし、なんていうか、俺もちょっと嬉しくて答えちゃう。
みんな本当は異世界のこと聞いてみたかったんだなって改めて思うよ。でもトレーニングの合間とか畑仕事の合間だからあまり時間は取れなかったんだけどさ。
何よりも子どもたちがね……可愛いんだよ、マジで。目をキラキラさせて「おはなし、できるの?」って俺のズボンをつまんで見上げてくるんだ……。まあ、年下だけどでかい子たちはそこまで寄ってこないけどね。ただ、興味はあるっぽくて遠目に俺を見てるときあるんだよな。恥ずかしいのか? 思春期か?
もうちょっと俺が強くなったらあの子たちとも話しながら一緒に鍛錬してみたいなって思えるようになった……今まで経験のない運動部的なノリが俺にもわかりそうで。
「人気者だな、イクミは」
「別に人気な訳じゃないでしょ。今まで直接話せなかったのが通じるようになったのが珍しいだけだって」
「いや、イクミはなんていうか、感じが良い? から話しかけたくなるんだろ?」
「そんなことあっちで言われたことないけどなぁ」
だって、俺って陰キャの部類だったし……。高校のときは遊びに行く友達も普通にいたしあくまでも陰・陽に分けたら、だけどさ。大学だって一応サークルの先輩とは話してたけど、ちょっといじられ気味だったかな。
ここでは前情報のないそのまんまの俺を見てくれるし、最初が倒れてばっかだったからかみんなが気遣ってくれるから不思議と馴染んでる。
「でも子どもたちもイクミに懐いてる。子どもってのは正直だからな。……それに俺はイクミといると落ち着くけどな」
「えっ!」
ちょっとびっくりした。俺が強くて守ってくれて引っ張ってくれるルイに安心感を覚えるのは当たり前として、ルイが? 俺に?
「あー、いや、なんでもない……」
あ、また急に照れてる。ルイの恥ずかしがるツボはいまだによくわからないよ。
「お、俺も、俺もさ! ルイといると安心するんだ。初めて会ったのがルイで良かったって思ってる。村まで連れてきてくれたし、衣食住も面倒見てくれて、鍛錬とか、他にもさ。本当に、いつもありがとう」
「ん。もう、わかった……から……」
ありゃ、俺も日頃の感謝を伝えようと思ったのに、余計照れさせちゃったか……。俺そこまで恥ずかしいこと言ってないのに、見てると釣られて照れそうになっちゃうじゃん。
うう、ルイのこういうところ見るといつもなんか胸の中がちょっとムズムズするんだよな。強い男の見せる可愛いところっていうギャップのせいなのか?
「あ、えっと、……余計なこと言ってたらごめんね?」
「それはない!!」
顔を伏せちゃってたのに俺が謝ったら急に大きい声をあげてこっち見てくるから驚いちゃった。
「あまり、その……表現とか、苦手っつーか慣れてなくて」
「そっか。嫌な気分にさせてないなら良かった」
大丈夫、照れてるだけってわかってるから。でもそれ言ったらまた照れさせちゃうだろうから言わないでおこ。
多分なんだけど、ルイは自分を独り立ちした強い男でありたいと思っていて、自分の思うソレから外れたことはやたら恥ずかしいのかもしれない。俺にもそんなところあるけど、ルイの場合、それが極端なんだよな。人間味があっていいと思うけど。
落ち着くって言ってもらえたってことは、サディさんが前に言ったように俺もルイにとって少しは近い人になれてるのかな。だったら嬉しい……。
ルイと家に入るとサディさんに声をかけられた。俺はルイと顔を見合わせてから少しドキドキしながら答える。
「えっと、サディさんにもちゃんと通じてる?」
1回サディさんのも外してもらって話しかけてみる。
「ちゃんとできてるわよ、すごいじゃない! これからはイクミくんがつけていれば大丈夫なのね」
なんかちょっと恥ずかしいな。俺に魔力があるだなんて。こんなこと家族――特に妹――に言ったら白い目で見られそうだ。ちょっとだけ中二病っぽい気恥ずかしさがある。ま、すぐ慣れるだろう。こっちじゃ当たり前のことなんだからな。
それよりも、もっと魔力が溜まったら……俺がルイを見ていいなって思っていた水魔法とか使えるようになるってことなのかな。え、ちょっとワクワクしちゃうかもしれない。
あー、いや、でもそういった魔法使うよりも身体強化のほうがいいのか? 旅に出たときに魔物と戦うかもしれないってことを考えたら優先順位は身体強化な気がする。このへんはヴァンのいうことを聞くしかないか。
「魔導具を起動させる、ってレベルだけなんだよね。ルイにも俺の魔力はわからなかったって言ってたよ」
「気づいたのはヴァンでしょう? あの子はそういうの鋭いものね」
サディさんも俺から魔力を感じたりはしてないらしい。そんな魔力の話とか短剣の組み手の話をサディさんとしながら夕飯の支度をする。俺の魔力が極微量だとしても動き出しちゃえば魔力を吸い取られることもないから会話は問題なく続けられている。俺が自分の力で魔導具を使えるようになったってこと以外は全然変化ない。
村長も帰ってきて俺の額に目をやると、少し驚いてそれからにこやかに話しかけてきてくれて久しぶりに沢山話したんだよね。夕飯を食べながら村長と話したのは初めてだったし、なんか不思議な気分だ。
「イクミ君、槍……棒術をやるときには少し私からもアドバイスさせてもらうよ」
「あ、はい! よろしくお願いします」
「硬いなぁ。サディやルイと話すときみたいにしてくれていいんだよ?」
「な、慣れたら……あはは……」
さすがに村長にいきなりタメ語はないだろ。その辺、俺って意外と真面目なんだよ。気にしちゃう……。
そして、お願いしますとは言ったものの、ルイ以上にスパルタなんじゃないかなってちょっと不安がある。でもベテランだからこその視点ってのも興味あるんだけどね。だって、ルイに戦い方を教えた人だろ?
今日は食後もお開きにするまで4人で沢山話した。いつもニコニコ俺らの会話を見ていた村長は意外と話好きな人だったんだなって認識を改めたよ。通訳挟まないのって本当に楽だな。
俺は部屋に戻っていつものプランクをして、寝るために魔導具を外した。だけど、前の魔力噴出の記憶もあって、ビビって枕元にLEDライトと一緒に置くことにした。いざというとき手元になくて誰とも意思疎通ができないのは怖いもんね。
魔導具ランプも俺だけで点けられるようになったのはわかってても感動したよ。魔力をある程度注ぎ込まないと使えないっていうような魔導具じゃなきゃ、もう俺にも使えるんだもん……すごいよね。
◇◇◇
翌日の昼には俺が通訳の魔導具を使えるようになって誰とでも話せるようになったと、例のごとく村中に知れ渡って、いろんな人が話しかけてくるようになった。
大学で無口キャラだったのはどうしてだろうってくらい話しかけられるし、なんていうか、俺もちょっと嬉しくて答えちゃう。
みんな本当は異世界のこと聞いてみたかったんだなって改めて思うよ。でもトレーニングの合間とか畑仕事の合間だからあまり時間は取れなかったんだけどさ。
何よりも子どもたちがね……可愛いんだよ、マジで。目をキラキラさせて「おはなし、できるの?」って俺のズボンをつまんで見上げてくるんだ……。まあ、年下だけどでかい子たちはそこまで寄ってこないけどね。ただ、興味はあるっぽくて遠目に俺を見てるときあるんだよな。恥ずかしいのか? 思春期か?
もうちょっと俺が強くなったらあの子たちとも話しながら一緒に鍛錬してみたいなって思えるようになった……今まで経験のない運動部的なノリが俺にもわかりそうで。
「人気者だな、イクミは」
「別に人気な訳じゃないでしょ。今まで直接話せなかったのが通じるようになったのが珍しいだけだって」
「いや、イクミはなんていうか、感じが良い? から話しかけたくなるんだろ?」
「そんなことあっちで言われたことないけどなぁ」
だって、俺って陰キャの部類だったし……。高校のときは遊びに行く友達も普通にいたしあくまでも陰・陽に分けたら、だけどさ。大学だって一応サークルの先輩とは話してたけど、ちょっといじられ気味だったかな。
ここでは前情報のないそのまんまの俺を見てくれるし、最初が倒れてばっかだったからかみんなが気遣ってくれるから不思議と馴染んでる。
「でも子どもたちもイクミに懐いてる。子どもってのは正直だからな。……それに俺はイクミといると落ち着くけどな」
「えっ!」
ちょっとびっくりした。俺が強くて守ってくれて引っ張ってくれるルイに安心感を覚えるのは当たり前として、ルイが? 俺に?
「あー、いや、なんでもない……」
あ、また急に照れてる。ルイの恥ずかしがるツボはいまだによくわからないよ。
「お、俺も、俺もさ! ルイといると安心するんだ。初めて会ったのがルイで良かったって思ってる。村まで連れてきてくれたし、衣食住も面倒見てくれて、鍛錬とか、他にもさ。本当に、いつもありがとう」
「ん。もう、わかった……から……」
ありゃ、俺も日頃の感謝を伝えようと思ったのに、余計照れさせちゃったか……。俺そこまで恥ずかしいこと言ってないのに、見てると釣られて照れそうになっちゃうじゃん。
うう、ルイのこういうところ見るといつもなんか胸の中がちょっとムズムズするんだよな。強い男の見せる可愛いところっていうギャップのせいなのか?
「あ、えっと、……余計なこと言ってたらごめんね?」
「それはない!!」
顔を伏せちゃってたのに俺が謝ったら急に大きい声をあげてこっち見てくるから驚いちゃった。
「あまり、その……表現とか、苦手っつーか慣れてなくて」
「そっか。嫌な気分にさせてないなら良かった」
大丈夫、照れてるだけってわかってるから。でもそれ言ったらまた照れさせちゃうだろうから言わないでおこ。
多分なんだけど、ルイは自分を独り立ちした強い男でありたいと思っていて、自分の思うソレから外れたことはやたら恥ずかしいのかもしれない。俺にもそんなところあるけど、ルイの場合、それが極端なんだよな。人間味があっていいと思うけど。
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