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異世界生活編

41.ルイも異世界のものに興味津々

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 今日も俺は食後にルイに魔導具ランプを点けてもらう。これ、消すのは俺にも出来るんだけど、作動させるには魔力がいるからね。これを消すと真っ暗闇になっちゃうから夜中に目が覚めたとき用に枕元には俺のLEDライトも置いてある。

 こっちの普通の人は基本的に寝るのが早い。というか、自然に合わせて生きてるって感じで、明るくなったら動き出して暗くなったら寝るって感じだ。
 昔の日本もそうだったよな。まあ、江戸時代とかは行灯あんどんの油を無駄遣いしないようにとかの理由があったと思うんだけど、こっちは魔導具とか魔力なんだから使いすぎとかは関係なさそうなのにって思った。そしたら、ルイが言うには今も魔導具ランプを使ってない家もあるからなんだって。なんだかんだ言っても、魔導具はそこそこ値の張るものらしい。普通は便利さが勝って買っちゃうんだけど、それでも勿体ないって思う人もいるんだって。
 ここの家はさすがに村長の家だからか、周りより遅くまで明かりが点いていると思う。

 昨日は俺がルイの部屋に入り込んでいたけど、今日はルイが俺の部屋にいる。ランプ点けてもらったあとに俺が呼び止めただけだけど。
 何か用があったとかじゃないんだよね。でも昨日の寝るまでのほのぼのした時間がとても良かったからさ。昨日は絵本を見せてもらって話を聞かせてもらったけど、俺が話せることって何かあるかな。

 ルイも俺の世界については興味を持ってるのは確かなんだけど……って、昨日俺がそうしたようにルイも俺の荷物が置いてある棚を見てるよ。

「ルイ? 何してるの?」
「イクミのバッグを見ていた」
「え、ザック? なんか珍しい?」

 デカいから気になるのかな。物としてはマジックバッグのほうが絶対いいよね。

「これもあのテントとかいうのと同じ生地だろ? 薄くて丈夫で水を弾く」
「ああ、うん。多分そう。でも、こういう背中に当たる部分とか、地面に置いたときに底になる部分は違う素材が組み合わせてあるんだ」
「バッグといえば皮革製品ばかりだったからこういうのは珍しい。魔導具としての回路を組み込むなら魔物の皮革は欠かせないが、イクミが言ったみたいに別の素材を組み合わせるっていうのをすれば重量を減らせるんじゃないかと思ってな」

 冒険者用のバッグとなると丈夫さが大事だけど、一般人にも使いやすいものって考えたらそういうのもありかもしれないなんて話すんだよ。少し価格も押さえられる可能性もあるかもって。
 確かに冒険者用じゃなくて、商人とかが多くいるようなところなら小さなバッグで沢山入るとかって制限じゃなくてもいいんだよな。
 日本でもそうだけど、機能はそのままに小型化するって大変で高価になるもんな。

「ザック、背負ってみる?」
「いいのか?」
「もちろんだよ。少し物を詰めようか。空のザック背負っても感覚わからないもんね」

 俺は取り出しちゃっていた寝袋とかテントなんかを詰めていく。いつもよりは荷物が少ないけど、これでなんとなくはわかるだろう。ザックの両肩紐部分を持ってルイに向けて広げてあげると、ルイがそこに腕を通してくる。

「んで、このウエストベルトとチェストバックルを身体に合わせて締めるんだ」

 俺がギュッとナイロンベルトを引くと、ルイが身体を左右に揺すったり軽く飛び跳ねたりしている。そういうの俺も新しいザックとか見に行くとやるよ。フィット感って大事だしね。

「なるほどな。大きい荷物の割に持ちやすいし動きやすい」
「でしょ。もう少し小さいザックも持ってるんだけど、俺の身体に合ってるのか実はこれが一番背負いやすいんだよね。ただ、あの崖沿い下るときにはちょっと邪魔に感じたよ」

 別にルイが鞄屋さんになるわけじゃないんだろうけど、やたら興味を持って見ているなってちょっと微笑ましい気分になりつつも、ルイが俺のザックを背負っている違和感にウケた。
 こっちにプラスチックとかないからワンタッチバックルなんかはどうにもならないけど、そこは普通のベルトみたいなので代用してもいいかもね? ザックが流行るかは知らないけど、背負子しょいことかの肩紐にウエストベルトとかチェストベルトをつけるのはありかなとは思う。運ぶのがかなり楽になるもん。

「カガク繊維っていうのは大地に還らないものなのか……」
「そうだね。だからあんまり環境には良くないのかもしれない。俺の世界じゃ欠かせなくなってるけどさ」
「永久的に使えるってわけでもないんだろう?」
「だから今は使えなくなった物を資源として回収するとか、もともと分解されやすい合成品を作るとかの方に世の中は進んでいってるんだ」

 ルイはなるほどといった表情で俺の大雑把な話を聞いていた。
 こっちの世界は魔力が自然に宿っているから自然と共存するのは当たり前って感じらしい。うんうん、それはここ数日でわかったよ。だって、魔導具とかで技術はすごいってのは実感してたからね。力を入れてる方向が違うだけっていうかさ。

 ザックからまたテントやら寝袋やらを出しながら棚に並べていく。入れっぱなしにしないのは一応風通しを良くしとこうかなってだけなんだけどね。この村って霧多いしさ。ルイが物を出すのを手伝ってくれたんだけど(というか、ポケットが多いのが面白かったみたい)、メッシュポケットに入れっぱなしだったサディさん作の薬とか俺のヘアワックスとか救急セットみたいのとかそんなものまでポイポイと出してくる。

「ちょ! ちょ! そんな全部出さなくていいってば」
「全部出すんじゃ?」
「ワックスとかこっちじゃ使わないし入れっぱなしでいいって。ていうか、そんな雑誌まで入ってたのか。しまってしまって」

 充電式シェーバーとかヘアワックスとか歯ブラシセットもそうなんだけど衛生用品系はじっくり見られるとなんだか恥ずかしい気持ちになるのはなんでなんだ。別にたいしたものでもないのにな……。

 雑誌はどうやらザックの背中側にある薄い書類入れみたいなポケットに入れっぱなしになっていたみたい。同期とかには見られたらちょっと恥ずかしくなるかも系なエンターテイメント雑誌ってやつだ。でも俺は面白いと思ってるんだけどね。

「本、俺も借りたい」
「ええ!? ……うーん。これ、俺の世界を知る手がかりじゃないと思うよ? 娯楽雑誌なんだから」
「いいんだ。こんな薄いのにページがいっぱいあって、極彩色の絵がいっぱいあるのが珍しくて見てみたいだけだから」

 まあ、俺もルイの絵本3冊借りてるからな。俺が絵本の挿絵を見て楽しんでいるのと同じと言われると断るのも悪い気もする。あと、紙が珍しいのか……。

「わかったよ。じゃあ、それはルイに貸してあげるね。俺、読もうか?」
「ページも多いし文字が細かそうだからそれはしなくてもいい。とりあえず中を見て興味を持ったところがあったらそのとき聞く」
「了解。いつでも聞いてね」

 無表情っぽさは最初に出会ったときとあまり変わらないけど雑誌を小脇に抱えたルイの雰囲気は嬉しそうだ。まだそんなに一緒にいるわけじゃないけどルイの空気感が近く感じるっていうか、なんとなーく伝わってくるんだよね。こういうところ、ちょっと可愛いなって思う……言わないけど……。

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