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異世界生活編

21.ムル村での生活について

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 それからも村長夫妻やルイと今後どうしていくかの話し合いが続いた。

「俺は、イクミは身体作りと武器の使い方をメインに鍛えながら生活するのを第一にすべきと思う」
「でも、他のことやエハヴィルドのことを知ることも大事じゃないかしら。そんな短期間で戦闘できるようにはならないわよ?」
「イクミは元の世界に帰ることが第一目標なんだから、そっちは必要なとこだけわかれば問題ないだろ? 生活してれば嫌でも覚えることも多いし」

 俺が口を挟む暇もないくらいにルイとサディさんがあーだこーだと喋っている。村長も加わってるけど村長の言葉はわからないからな。
 こんな急に現れた得体のしれない異世界人のために真剣に話し合ってくれるこの人たちには感謝しかないよ。まあ、今、俺のことそっちのけだけど……。

「私もイクミくんに色々聞きたいのよ。こんなこと滅多にないもの」
「そっちがサディさんの本音だろ。イクミは……」
「お、俺は! ここでできることがあるならなんでもやるよ!」

 二人がバッとこっちを見る。なかなか口を挟めなかったのにいきなり大声出しちゃったからな……恥ずかし……。

「あ、あの、テントもあるし、どこかで設営させてくれたらそこで寝泊まりするんで、その、手伝いとか頑張るから……食べ物とか、色々、助けてもらえたら……その……」

 俺、めっちゃしどろもどろ。声もどんどん小さくなっていく。図々しいこと言ってるのわかるからなぁ。

「バッカ! イクミ、なんでそうなるんだ」
「私たちが追い出すと思ってたの? あなたは年齢こそ子どもではなかったかもしれないけど、私たちからしたら何も知らない子どもみたいなものなの。だから保護して生活できるようにしてあげるのは当たり前なのよ?」
「??」

 俺の理解力のせいなのか? 話が見えない。けど、俺の生活を助けてくれるってことなのかな。なんでかわからないけど。

「子どもは世界の宝物。まだ力のない子どもを育てられない人がいたら周りのみんなが協力する。それが常識でしょう? イクミくんは年齢から自分はそんな対象じゃないって思っているのかもしれないけど、この世界で生きていく力がまだないという意味では私たちは同じと思うわ? だから遠慮なんてしなくていいの」

 わからんって顔してたらサディさんがなんか補足してくれた。なるほど、こっちの常識じゃそういうことなのね。子どもは無条件で保護される、と。
 上でルイが助けてくれて、怪しさ満点ぽいのに俺をここに連れてきてくれたのもそういう常識があったからなのか……俺を子どもと思ってたから。

「あ、ありがとう……ございます?」
「寝ていた部屋、使ってね。ルイの部屋の隣よ」

 いつの間にか部屋まで与えられてた。遠慮するなと言われても、さすがに気が引けそうだ。さっき言ったとおり、俺にできることはしよう。
 そんな俺らのやりとりをただただ優しく見てる村長も特に異論はないってことか。というか、もう昨日のうちに決まってたんだろうな。

「私はね、イクミくんと料理もしたいわ。とっても美味しい食事を作ってくれたって、ルイが褒めちぎっていたもの」
「え……」
「バラすなよ」

 あれは調味料のおかげであって俺の腕じゃないんだけどな。でも褒められたのは素直に嬉しい、かも。

「役に立てるかはわからないけど俺で良ければ。でも、こっちの食材でできるかはわからないですけど」
「いいのいいの。娘が嫁いだあとは一緒に料理する子がずっといなかったんだもの。ルイはもうほとんど村にいないし。でもイクミくんがいるから今回ばかりはルイもしばらくここにいるっていうから私も楽しみなの」

 そうなの!? って思ってルイを見るとそっぽ向いてた。ルイも変なところで恥ずかしがり屋よな……ツボがわからんけど。
 なんかそんな感じでわーわーと騒がしく話して、俺は村でまず身体作りをすることと、サディさんの料理や薬草畑の手伝いとか、とにかく出来ることをすることが一応決まった。

 それから、俺はルイに連れられて、とりあえず村長の家から近い範囲だけ村の中を案内された。出会った人には紹介されて、物珍しげな目で見られたけど、でもみんないい人たちで笑顔で対応してくれたし、中にはハグしてくる人もいた。

 一緒に鍛錬することもあるだろうからって、まだ村から出られない子どもたちとかにも引き合わされたんだけど……見て納得。全員じゃないけど、ひとり14歳って紹介された少年が俺より歳上に見える。ガタイもいいし、顔つきもね。そりゃ、俺を子どもと思うわけだわ。いいもん、俺もっと小さい子たちと頑張るもん……。

 村全体でもルイとサディさんしか通訳の魔導具は持ってないらしく、話は全て通訳してもらわなければならないのが面倒だ。でも、あっという間に俺のことは村中に伝わったらしく、わざわざ見に来る人もいた。はずっ!

「一応……イクミの面倒は俺がみることになったから。でも俺がいないときなんかはサディさんになんでも言うんだぞ?」
「俺が言葉わからないせいでルイの予定が狂っちゃうね。本当はあまり村にいないってサディさん言ってたもんね……」
「やることがあまりないから外に行ってるだけで予定があるわけじゃない」
「そっか」

 申し訳ない気持ちもあるけど、本当は、気を許してるルイがいてくれてすごく嬉しい。
 それにルイだけじゃなくてもう一人言葉が通じるっていうのも安心っていうか。昨日まで不安に押しつぶされそうだったのが、ちょっとだけ解消されたかな。もちろん日本に帰れるのかなっていう思いはまだまだ燻ってるんだけどさ。

 それから昨日見た村の門のところに行くと、昨日気を失う寸前に見た人がいた。少し茶色がかった金髪の短髪と髭が渋くてめちゃめちゃカッコイイ。ハリウッド俳優とかにいそうだ。なんつーか、見た目がすでに強そう。
 その人も俺に気がつくと笑顔で話しかけてきた。

「彼はガルフ。自警団の副団長してる。もう身体は大丈夫なのかって」
「あ、俺は、イクミです。心配かけてすいません。もう大丈夫です」

 俺は通じないのにペコペコ頭を下げて謝った。そしたらガルフさんにも頭をワシャワシャされたんだが。
 ルイがガルフさんに俺の言葉を伝えたあとに、俺の年齢を伝えてた。そしてまたしても驚愕の目を向けられて謝られた……このパターン、しばらく続きそうだ。
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