21 / 226
異世界生活編
21.ムル村での生活について
しおりを挟む
それからも村長夫妻やルイと今後どうしていくかの話し合いが続いた。
「俺は、イクミは身体作りと武器の使い方をメインに鍛えながら生活するのを第一にすべきと思う」
「でも、他のことやエハヴィルドのことを知ることも大事じゃないかしら。そんな短期間で戦闘できるようにはならないわよ?」
「イクミは元の世界に帰ることが第一目標なんだから、そっちは必要なとこだけわかれば問題ないだろ? 生活してれば嫌でも覚えることも多いし」
俺が口を挟む暇もないくらいにルイとサディさんがあーだこーだと喋っている。村長も加わってるけど村長の言葉はわからないからな。
こんな急に現れた得体のしれない異世界人のために真剣に話し合ってくれるこの人たちには感謝しかないよ。まあ、今、俺のことそっちのけだけど……。
「私もイクミくんに色々聞きたいのよ。こんなこと滅多にないもの」
「そっちがサディさんの本音だろ。イクミは……」
「お、俺は! ここでできることがあるならなんでもやるよ!」
二人がバッとこっちを見る。なかなか口を挟めなかったのにいきなり大声出しちゃったからな……恥ずかし……。
「あ、あの、テントもあるし、どこかで設営させてくれたらそこで寝泊まりするんで、その、手伝いとか頑張るから……食べ物とか、色々、助けてもらえたら……その……」
俺、めっちゃしどろもどろ。声もどんどん小さくなっていく。図々しいこと言ってるのわかるからなぁ。
「バッカ! イクミ、なんでそうなるんだ」
「私たちが追い出すと思ってたの? あなたは年齢こそ子どもではなかったかもしれないけど、私たちからしたら何も知らない子どもみたいなものなの。だから保護して生活できるようにしてあげるのは当たり前なのよ?」
「??」
俺の理解力のせいなのか? 話が見えない。けど、俺の生活を助けてくれるってことなのかな。なんでかわからないけど。
「子どもは世界の宝物。まだ力のない子どもを育てられない人がいたら周りのみんなが協力する。それが常識でしょう? イクミくんは年齢から自分はそんな対象じゃないって思っているのかもしれないけど、この世界で生きていく力がまだないという意味では私たちは同じと思うわ? だから遠慮なんてしなくていいの」
わからんって顔してたらサディさんがなんか補足してくれた。なるほど、こっちの常識じゃそういうことなのね。子どもは無条件で保護される、と。
上でルイが助けてくれて、怪しさ満点ぽいのに俺をここに連れてきてくれたのもそういう常識があったからなのか……俺を子どもと思ってたから。
「あ、ありがとう……ございます?」
「寝ていた部屋、使ってね。ルイの部屋の隣よ」
いつの間にか部屋まで与えられてた。遠慮するなと言われても、さすがに気が引けそうだ。さっき言ったとおり、俺にできることはしよう。
そんな俺らのやりとりをただただ優しく見てる村長も特に異論はないってことか。というか、もう昨日のうちに決まってたんだろうな。
「私はね、イクミくんと料理もしたいわ。とっても美味しい食事を作ってくれたって、このルイが褒めちぎっていたもの」
「え……」
「バラすなよ」
あれは調味料のおかげであって俺の腕じゃないんだけどな。でも褒められたのは素直に嬉しい、かも。
「役に立てるかはわからないけど俺で良ければ。でも、こっちの食材でできるかはわからないですけど」
「いいのいいの。娘が嫁いだあとは一緒に料理する子がずっといなかったんだもの。ルイはもうほとんど村にいないし。でもイクミくんがいるから今回ばかりはルイもしばらくここにいるっていうから私も楽しみなの」
そうなの!? って思ってルイを見るとそっぽ向いてた。ルイも変なところで恥ずかしがり屋よな……ツボがわからんけど。
なんかそんな感じでわーわーと騒がしく話して、俺は村でまず身体作りをすることと、サディさんの料理や薬草畑の手伝いとか、とにかく出来ることをすることが一応決まった。
それから、俺はルイに連れられて、とりあえず村長の家から近い範囲だけ村の中を案内された。出会った人には紹介されて、物珍しげな目で見られたけど、でもみんないい人たちで笑顔で対応してくれたし、中にはハグしてくる人もいた。
一緒に鍛錬することもあるだろうからって、まだ村から出られない子どもたちとかにも引き合わされたんだけど……見て納得。全員じゃないけど、ひとり14歳って紹介された少年が俺より歳上に見える。ガタイもいいし、顔つきもね。そりゃ、俺を子どもと思うわけだわ。いいもん、俺もっと小さい子たちと頑張るもん……。
村全体でもルイとサディさんしか通訳の魔導具は持ってないらしく、話は全て通訳してもらわなければならないのが面倒だ。でも、あっという間に俺のことは村中に伝わったらしく、わざわざ見に来る人もいた。はずっ!
「一応……イクミの面倒は俺がみることになったから。でも俺がいないときなんかはサディさんになんでも言うんだぞ?」
「俺が言葉わからないせいでルイの予定が狂っちゃうね。本当はあまり村にいないってサディさん言ってたもんね……」
「やることがあまりないから外に行ってるだけで予定があるわけじゃない」
「そっか」
申し訳ない気持ちもあるけど、本当は、気を許してるルイがいてくれてすごく嬉しい。
それにルイだけじゃなくてもう一人言葉が通じるっていうのも安心っていうか。昨日まで不安に押しつぶされそうだったのが、ちょっとだけ解消されたかな。もちろん日本に帰れるのかなっていう思いはまだまだ燻ってるんだけどさ。
それから昨日見た村の門のところに行くと、昨日気を失う寸前に見た人がいた。少し茶色がかった金髪の短髪と髭が渋くてめちゃめちゃカッコイイ。ハリウッド俳優とかにいそうだ。なんつーか、見た目がすでに強そう。
その人も俺に気がつくと笑顔で話しかけてきた。
「彼はガルフ。自警団の副団長してる。もう身体は大丈夫なのかって」
「あ、俺は、イクミです。心配かけてすいません。もう大丈夫です」
俺は通じないのにペコペコ頭を下げて謝った。そしたらガルフさんにも頭をワシャワシャされたんだが。
ルイがガルフさんに俺の言葉を伝えたあとに、俺の年齢を伝えてた。そしてまたしても驚愕の目を向けられて謝られた……このパターン、しばらく続きそうだ。
「俺は、イクミは身体作りと武器の使い方をメインに鍛えながら生活するのを第一にすべきと思う」
「でも、他のことやエハヴィルドのことを知ることも大事じゃないかしら。そんな短期間で戦闘できるようにはならないわよ?」
「イクミは元の世界に帰ることが第一目標なんだから、そっちは必要なとこだけわかれば問題ないだろ? 生活してれば嫌でも覚えることも多いし」
俺が口を挟む暇もないくらいにルイとサディさんがあーだこーだと喋っている。村長も加わってるけど村長の言葉はわからないからな。
こんな急に現れた得体のしれない異世界人のために真剣に話し合ってくれるこの人たちには感謝しかないよ。まあ、今、俺のことそっちのけだけど……。
「私もイクミくんに色々聞きたいのよ。こんなこと滅多にないもの」
「そっちがサディさんの本音だろ。イクミは……」
「お、俺は! ここでできることがあるならなんでもやるよ!」
二人がバッとこっちを見る。なかなか口を挟めなかったのにいきなり大声出しちゃったからな……恥ずかし……。
「あ、あの、テントもあるし、どこかで設営させてくれたらそこで寝泊まりするんで、その、手伝いとか頑張るから……食べ物とか、色々、助けてもらえたら……その……」
俺、めっちゃしどろもどろ。声もどんどん小さくなっていく。図々しいこと言ってるのわかるからなぁ。
「バッカ! イクミ、なんでそうなるんだ」
「私たちが追い出すと思ってたの? あなたは年齢こそ子どもではなかったかもしれないけど、私たちからしたら何も知らない子どもみたいなものなの。だから保護して生活できるようにしてあげるのは当たり前なのよ?」
「??」
俺の理解力のせいなのか? 話が見えない。けど、俺の生活を助けてくれるってことなのかな。なんでかわからないけど。
「子どもは世界の宝物。まだ力のない子どもを育てられない人がいたら周りのみんなが協力する。それが常識でしょう? イクミくんは年齢から自分はそんな対象じゃないって思っているのかもしれないけど、この世界で生きていく力がまだないという意味では私たちは同じと思うわ? だから遠慮なんてしなくていいの」
わからんって顔してたらサディさんがなんか補足してくれた。なるほど、こっちの常識じゃそういうことなのね。子どもは無条件で保護される、と。
上でルイが助けてくれて、怪しさ満点ぽいのに俺をここに連れてきてくれたのもそういう常識があったからなのか……俺を子どもと思ってたから。
「あ、ありがとう……ございます?」
「寝ていた部屋、使ってね。ルイの部屋の隣よ」
いつの間にか部屋まで与えられてた。遠慮するなと言われても、さすがに気が引けそうだ。さっき言ったとおり、俺にできることはしよう。
そんな俺らのやりとりをただただ優しく見てる村長も特に異論はないってことか。というか、もう昨日のうちに決まってたんだろうな。
「私はね、イクミくんと料理もしたいわ。とっても美味しい食事を作ってくれたって、このルイが褒めちぎっていたもの」
「え……」
「バラすなよ」
あれは調味料のおかげであって俺の腕じゃないんだけどな。でも褒められたのは素直に嬉しい、かも。
「役に立てるかはわからないけど俺で良ければ。でも、こっちの食材でできるかはわからないですけど」
「いいのいいの。娘が嫁いだあとは一緒に料理する子がずっといなかったんだもの。ルイはもうほとんど村にいないし。でもイクミくんがいるから今回ばかりはルイもしばらくここにいるっていうから私も楽しみなの」
そうなの!? って思ってルイを見るとそっぽ向いてた。ルイも変なところで恥ずかしがり屋よな……ツボがわからんけど。
なんかそんな感じでわーわーと騒がしく話して、俺は村でまず身体作りをすることと、サディさんの料理や薬草畑の手伝いとか、とにかく出来ることをすることが一応決まった。
それから、俺はルイに連れられて、とりあえず村長の家から近い範囲だけ村の中を案内された。出会った人には紹介されて、物珍しげな目で見られたけど、でもみんないい人たちで笑顔で対応してくれたし、中にはハグしてくる人もいた。
一緒に鍛錬することもあるだろうからって、まだ村から出られない子どもたちとかにも引き合わされたんだけど……見て納得。全員じゃないけど、ひとり14歳って紹介された少年が俺より歳上に見える。ガタイもいいし、顔つきもね。そりゃ、俺を子どもと思うわけだわ。いいもん、俺もっと小さい子たちと頑張るもん……。
村全体でもルイとサディさんしか通訳の魔導具は持ってないらしく、話は全て通訳してもらわなければならないのが面倒だ。でも、あっという間に俺のことは村中に伝わったらしく、わざわざ見に来る人もいた。はずっ!
「一応……イクミの面倒は俺がみることになったから。でも俺がいないときなんかはサディさんになんでも言うんだぞ?」
「俺が言葉わからないせいでルイの予定が狂っちゃうね。本当はあまり村にいないってサディさん言ってたもんね……」
「やることがあまりないから外に行ってるだけで予定があるわけじゃない」
「そっか」
申し訳ない気持ちもあるけど、本当は、気を許してるルイがいてくれてすごく嬉しい。
それにルイだけじゃなくてもう一人言葉が通じるっていうのも安心っていうか。昨日まで不安に押しつぶされそうだったのが、ちょっとだけ解消されたかな。もちろん日本に帰れるのかなっていう思いはまだまだ燻ってるんだけどさ。
それから昨日見た村の門のところに行くと、昨日気を失う寸前に見た人がいた。少し茶色がかった金髪の短髪と髭が渋くてめちゃめちゃカッコイイ。ハリウッド俳優とかにいそうだ。なんつーか、見た目がすでに強そう。
その人も俺に気がつくと笑顔で話しかけてきた。
「彼はガルフ。自警団の副団長してる。もう身体は大丈夫なのかって」
「あ、俺は、イクミです。心配かけてすいません。もう大丈夫です」
俺は通じないのにペコペコ頭を下げて謝った。そしたらガルフさんにも頭をワシャワシャされたんだが。
ルイがガルフさんに俺の言葉を伝えたあとに、俺の年齢を伝えてた。そしてまたしても驚愕の目を向けられて謝られた……このパターン、しばらく続きそうだ。
10
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々
月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。
俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~
黒飴細工
BL
京 凛太郎は突然異世界に飛ばされたと思ったら、そこで出会った超絶イケメンに「この世界は本来、君が生まれるべき世界だ」と言われ……?どうやら生まれる世界を間違えたらしい。幼い頃よりあまりいい人生を歩んでこれなかった凛太郎は心機一転。人生やり直し、自分探しの旅に出てみることに。しかし、次から次に出会う人々は一癖も二癖もある人物ばかり、それが見た目が良いほど変わった人物が多いのだから困りもの。「でたよ!ファンタジー!」が口癖になってしまう凛太郎がこれまでと違った濃ゆい人生を送っていくことに。
※こちらの作品第10回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけましたら幸いです。
※こちらの作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しております。

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる