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キャンプのはずだったのに……
18.雑魚とは……?
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ルイと坑道を進むのを再開すると、案の定、スライムが時々落ちててさ……ぱっと見は水たまりに見えるんだけど、触手のような透き通った針状のものを伸ばして攻撃してくることもあった。
主に、俺を。
ちゃんと地面に落ちていて、ルイが前にいるから最初みたいに攻撃を受けることはなかったし、触手部じゃなくて本体をルイが短剣で攻撃すれば簡単に倒せることがわかった。でも触手部は強度が増すのか短剣を弾くんだから怖いよね。
ただ、敵の特性を見極めたルイは強い。というか、急所を狙うのがルイのやり方なのかもしれない。いつもソロで行動してるからかな。
「なんで、ルイが前にいるのに、俺にばっかり……」
「うーん……理由はわからないが、俺に反応してないな。だから今まで気づかなかったのか? でも他のやつらからも聞いたことがないから本当にイクミしか狙ってないのかもな」
「ぐ……」
「でも地面に落としとけばイクミを狙って動くから仕留めるのは容易い」
俺は囮か……嫌な作戦だなぁ。もうルイのことは信用しかしてないから任せるけどさ。
そう言いながら、ある程度進んだら風魔法を放ってを繰り返してスライム対策をしていくルイに着いていく。風のお陰で虫も蛇も蝙蝠みたいなのも全然見なくなったし、歩くってことだけに関しては快適になったね。怪我の功名ってやつじゃん。
ただ、奥に行くにしたがってルイが風魔法を放った時の風の勢いに俺が引きずり込まれそうになって怖い。もうルイの脚にしがみつく勢いだよ。風穴仕事しろ!
「崖の時の魔物が出なかったのが懐かしい気分だよ」
「でも強くはないだろ?」
「ルイにはね」
強くはないって言ったって、俺ひとりならあの触手に刺されて毒で死ぬに決まってる。ラノベとかではスライムって子どもでも倒せる雑魚だったのに……。ワンチャン、あれはスライムではない、とも言えるんだけど。
でも、なんだかんだ言ってるけど、しゃべる余裕はあるからまだいいんだよな。昨日からそうだけど、こんな不安しかないところで黙り続けてるの結構しんどいから。魔物が出ないのは良かったけど、喋れないって面では崖は……ね。俺のメンタルが安定してたら少しは違うんだろうけどさ。
それにしても、この坑道は緩やかながらもかなり蛇行しているように感じるな。でも、崖沿いの道が終わった時点でまだ下までの高さがあったからしょうがないのか……。落差がありすぎるってことなんだろう。そのくらいはなんとなくわかる。
「ところでさ。魔法でふっ飛ばされた虫とかってどんどん奥に溜まっていってたりする? んと、出口に山積み……みたいな」
「それは、実際なってたら面白いな」
その光景を想像したのかルイがちょっと笑ってる。
「ちょっと見たくないかも、俺」
「害はないだろ。それに出口まで飛ばされたら逃げていってるやつのほうが多いだろうしな。所詮、虫や蛇だし」
「まあ、そうなんだけど」
だってさ、道が長いんだもん。この道にいたやつらが全部溜まってたらやだなって思っただけなんだよ。俺だってただの虫とか蛇に害がないのはわかってるんだよ。ルイがあのスライムのほうをより警戒してるのもね。
俺、一回毒食らって座り込んじゃったし……あれで心配させちゃったかな。
「それにしても他の魔物も見ないよね」
「元々そこまでこの道は多くは出ないからな。入る前に言ったけど、いても小さめのが紛れてるだけだ。でも魔物は魔物だから油断はできない」
「あの……幼虫みたいな魔物が壁を突き破ってきたり、なんかは……」
「それは、ない。この坑道の道も魔力で固められていて、ヤツ程度じゃ破壊できない」
「よかったぁ……」
ひとつ安心材料が増えたな。ていうか、今、『ヤツ程度』って言ったよな。アイツ、雑魚だったのかよ……嘘だろ?
それにしても、流石にちょっと寒さが堪えてきた。俺はルイに断ってザックを下ろすと、中から巾着にまとめられた薄くて軽いダウンジャケットを取り出してパーカーの上に着込む。これでなんとかなりそう。
地下ってさ、夏涼しく冬暖かいなんて聞くけど、洞窟とかってそんなことなくない!? 俺は鍾乳洞でも富士山の近くの風穴氷穴でも寒いって思うんだけど。氷室とかもあるんだし「地下は暖かい」は言い過ぎじゃないかと思うんだよ。地表からの距離なんかでも温度は変わるって聞くけどさ。
でも、こっちの世界の地下も似たようなもんなんだな。ルイは寒くないのかなぁ。平気そうな人にそんなこと聞くのはちょっとバカみたいだからしないけど。
そうそう、あのスライムの他に普通の魔物――普通ってなんだよ――も出た。とは言っても、スライムじゃないやつってさ、俺が目視で認識する前にルイが先に倒しちゃうんだよ。だから、俺は死体しか見てないの。
なんていうか、デカいネズミみたいな感じ? ほら、ヌードマウスとかいるじゃん、あんな感じのちょっと気持ち悪いやつで、大型犬くらいの大きさ――ルイの言う小さめしか出ないってのを信じた俺がバカだった――でさ。なんでネズミって言ったかっていうと歯とかしっぽがそんな感じだったからなだけなんだけど。
ていうかさ……。なんかルイがやたらサクサク倒していくからスライムにしろ、このネズミにしろ俺は雑魚に思えちゃってたんだけど、よく考えたらルイがこの辺の魔物は強い的なこと言ってたよな。
ルイはここ出身だから慣れてる、とか、自警団してるような人はこの辺でもソロでいけるから心配ない、とか、ポロポロ小出しに情報聞かされてるからどうもピンときてなかったけどそういうことじゃないのか? あくまでも『ルイにとっては雑魚』なだけで、アイツら本来は雑魚じゃないって思っておかないとだよな。
で、先に進むにあたって、ルイは坑道内に死体を放置しておけないからってネズミ魔物のしっぽをまとめて持って引きずって運んでるんだけど、さすがにルイもアレをバッグに入れる気はしないんだな。
魔力で固められた坑道じゃ埋められないから外まで持っていかなきゃならないなんて、しょうがなくてもやだなぁ……。戦闘の役に立たないから俺が持つよって言ってあげたいんだけど、言えなかったのは内緒だ。ごめん、ルイ。
主に、俺を。
ちゃんと地面に落ちていて、ルイが前にいるから最初みたいに攻撃を受けることはなかったし、触手部じゃなくて本体をルイが短剣で攻撃すれば簡単に倒せることがわかった。でも触手部は強度が増すのか短剣を弾くんだから怖いよね。
ただ、敵の特性を見極めたルイは強い。というか、急所を狙うのがルイのやり方なのかもしれない。いつもソロで行動してるからかな。
「なんで、ルイが前にいるのに、俺にばっかり……」
「うーん……理由はわからないが、俺に反応してないな。だから今まで気づかなかったのか? でも他のやつらからも聞いたことがないから本当にイクミしか狙ってないのかもな」
「ぐ……」
「でも地面に落としとけばイクミを狙って動くから仕留めるのは容易い」
俺は囮か……嫌な作戦だなぁ。もうルイのことは信用しかしてないから任せるけどさ。
そう言いながら、ある程度進んだら風魔法を放ってを繰り返してスライム対策をしていくルイに着いていく。風のお陰で虫も蛇も蝙蝠みたいなのも全然見なくなったし、歩くってことだけに関しては快適になったね。怪我の功名ってやつじゃん。
ただ、奥に行くにしたがってルイが風魔法を放った時の風の勢いに俺が引きずり込まれそうになって怖い。もうルイの脚にしがみつく勢いだよ。風穴仕事しろ!
「崖の時の魔物が出なかったのが懐かしい気分だよ」
「でも強くはないだろ?」
「ルイにはね」
強くはないって言ったって、俺ひとりならあの触手に刺されて毒で死ぬに決まってる。ラノベとかではスライムって子どもでも倒せる雑魚だったのに……。ワンチャン、あれはスライムではない、とも言えるんだけど。
でも、なんだかんだ言ってるけど、しゃべる余裕はあるからまだいいんだよな。昨日からそうだけど、こんな不安しかないところで黙り続けてるの結構しんどいから。魔物が出ないのは良かったけど、喋れないって面では崖は……ね。俺のメンタルが安定してたら少しは違うんだろうけどさ。
それにしても、この坑道は緩やかながらもかなり蛇行しているように感じるな。でも、崖沿いの道が終わった時点でまだ下までの高さがあったからしょうがないのか……。落差がありすぎるってことなんだろう。そのくらいはなんとなくわかる。
「ところでさ。魔法でふっ飛ばされた虫とかってどんどん奥に溜まっていってたりする? んと、出口に山積み……みたいな」
「それは、実際なってたら面白いな」
その光景を想像したのかルイがちょっと笑ってる。
「ちょっと見たくないかも、俺」
「害はないだろ。それに出口まで飛ばされたら逃げていってるやつのほうが多いだろうしな。所詮、虫や蛇だし」
「まあ、そうなんだけど」
だってさ、道が長いんだもん。この道にいたやつらが全部溜まってたらやだなって思っただけなんだよ。俺だってただの虫とか蛇に害がないのはわかってるんだよ。ルイがあのスライムのほうをより警戒してるのもね。
俺、一回毒食らって座り込んじゃったし……あれで心配させちゃったかな。
「それにしても他の魔物も見ないよね」
「元々そこまでこの道は多くは出ないからな。入る前に言ったけど、いても小さめのが紛れてるだけだ。でも魔物は魔物だから油断はできない」
「あの……幼虫みたいな魔物が壁を突き破ってきたり、なんかは……」
「それは、ない。この坑道の道も魔力で固められていて、ヤツ程度じゃ破壊できない」
「よかったぁ……」
ひとつ安心材料が増えたな。ていうか、今、『ヤツ程度』って言ったよな。アイツ、雑魚だったのかよ……嘘だろ?
それにしても、流石にちょっと寒さが堪えてきた。俺はルイに断ってザックを下ろすと、中から巾着にまとめられた薄くて軽いダウンジャケットを取り出してパーカーの上に着込む。これでなんとかなりそう。
地下ってさ、夏涼しく冬暖かいなんて聞くけど、洞窟とかってそんなことなくない!? 俺は鍾乳洞でも富士山の近くの風穴氷穴でも寒いって思うんだけど。氷室とかもあるんだし「地下は暖かい」は言い過ぎじゃないかと思うんだよ。地表からの距離なんかでも温度は変わるって聞くけどさ。
でも、こっちの世界の地下も似たようなもんなんだな。ルイは寒くないのかなぁ。平気そうな人にそんなこと聞くのはちょっとバカみたいだからしないけど。
そうそう、あのスライムの他に普通の魔物――普通ってなんだよ――も出た。とは言っても、スライムじゃないやつってさ、俺が目視で認識する前にルイが先に倒しちゃうんだよ。だから、俺は死体しか見てないの。
なんていうか、デカいネズミみたいな感じ? ほら、ヌードマウスとかいるじゃん、あんな感じのちょっと気持ち悪いやつで、大型犬くらいの大きさ――ルイの言う小さめしか出ないってのを信じた俺がバカだった――でさ。なんでネズミって言ったかっていうと歯とかしっぽがそんな感じだったからなだけなんだけど。
ていうかさ……。なんかルイがやたらサクサク倒していくからスライムにしろ、このネズミにしろ俺は雑魚に思えちゃってたんだけど、よく考えたらルイがこの辺の魔物は強い的なこと言ってたよな。
ルイはここ出身だから慣れてる、とか、自警団してるような人はこの辺でもソロでいけるから心配ない、とか、ポロポロ小出しに情報聞かされてるからどうもピンときてなかったけどそういうことじゃないのか? あくまでも『ルイにとっては雑魚』なだけで、アイツら本来は雑魚じゃないって思っておかないとだよな。
で、先に進むにあたって、ルイは坑道内に死体を放置しておけないからってネズミ魔物のしっぽをまとめて持って引きずって運んでるんだけど、さすがにルイもアレをバッグに入れる気はしないんだな。
魔力で固められた坑道じゃ埋められないから外まで持っていかなきゃならないなんて、しょうがなくてもやだなぁ……。戦闘の役に立たないから俺が持つよって言ってあげたいんだけど、言えなかったのは内緒だ。ごめん、ルイ。
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