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キャンプのはずだったのに……
11.幼虫は無理です(一応、虫注意)
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「ぅぐっ」
潰れたカエルみたいな声しか出なかったんだけど、ああいう時にデカい声出るのはもはや才能だろって思うよ。
ボコッとへこんでなくなった足場には見た目も気持ち悪いウネウネとした魔物(あれが動物のはずがない)がいる。俺の真下に! 死ぬのも怖いけど、あれに捕獲されるのは勘弁してほしい。
「ちょ! 無理ー!」
「イクミ!!」
ルイが俺に投げてきたロープは端に重りが付いていて、それが俺の腰にうまく絡みついてくれてルイの後方へギュンと引き寄せられた。まるでムチウチにでもなるんじゃないかってくらいの変な力がかかったけど、あのウネウネの上に落ちるとか食べられるとかより全然マシ。
「俺は……幼虫が嫌いなんだって……うぅ」
俺、めっちゃ涙目。痛いって意味でも違う意味でも。
昔からそうなんだ。カブトムシとか蝶とか昆虫はきらいじゃないのにその前段階の幼虫はホント駄目だったんだよな。サナギになると中で一回ドロドロになってあんな風に変わるっていうのはめっちゃすごいしカッコイイと思うんだけど、あのブヨブヨしたウネウネしたあの姿だけは許せないんだ。
幼虫魔物は地面の中をかなり自由に動けるのか、ルイがちょっと苦戦しているようにも見える。俺はルイにロープでぽいっとされたあとは木の枝の上にしがみついて泣きそうになっているという非常に情けない格好でいるわけだけど……。
なるほど、アイツ太い木の根があるところは避ける習性があるみたいだ。元々が虫だからなのか植物とある程度は共存する関係なのかもな、なんて上から見ていて思う。
涙目ながらもそんな感じでルイと幼虫魔物を見ていたんだけど、ルイは地面に剣を刺しては移動してという動作を繰り返していてやたら時間をかけているなと感じた。どうやら幼虫魔物の動ける範囲が狭まってきているようなのは、ルイのやってることのせいみたいだな。
ルイの戦闘を祈るような気持ちで見ている俺は、一方、鳥肌と戦っていた。
だって、時折ルイの剣が幼虫魔物を傷つけるんだけど、茶緑色の粘液が飛び散るんだよ! そんでビチビチ跳ねてるし気持ち悪いっ!
ルイが今までで一番高く跳躍する。何度か見ているけど、高い位置から剣を振り下ろして飛び降りてくるルイは一筋の炎の矢みたいなんだよな。真紅のような色合いの髪だから炎とはちょっと違うんだけど、後ろ髪をひとつに結んでてそれがなびくからなのかな。
ルイの剣がまっすぐに地面に突き刺さり、ギギギギギギというような動物の鳴き声とも違う耳をつんざく不快感を煽る音が聞こえて辺りが静かになった。
「待たせた」
「ルイ、助けて……」
下から声が聞こえて木にしがみついたまま動けない俺は助けを求める。高さがあるのもそうなんだけど、身体が痛すぎて動けないんだよ。俺と荷物をまとめて木に叩きつけられたみたいなもんだからね。ルイが俺のいる位置まで何跳びかで来てくれて「大丈夫か」って声をかけてくれるけど、「痛くて動けません」って思わず言っちゃったよね。
「それにしては思ったより元気そうだ」
「どこがっ! 痛っ」
「いや、本当に。とりあえず薬」
と、差し出された薬を受け取りたいのにちょっとそれも無理そうで、俺もしかして結構重症なんじゃないのって思う。涙目でルイに訴えていると、栓を開けたその薬を口元まで持ってきてくれて俺に飲ませてくれた。
「痛く…………ない。痛くなくなった」
「ちょっとやり方が乱暴だったな、すまない」
「ううん。……むしろ、あれでよく間に合ったって思うよ……」
「それにしても、最低でも何箇所か骨折してるかと思ったんだけどなぁ」
ルイが怖いこと言ってるんですけど。痛みがなくなった俺はルイの力も借りて木から降りる。
「骨折って……」
「いや、だって、お前。俺が言うのもなんだけど……遠心力かけてぶん投げたんだぞ?」
「…………」
そう……だね? そう言われればそうなんだけども。当たりどころが良かったのかな。
異世界に迷い込むなんてとんでもなく不運に見舞われたようだけど、何度も助けてもらって生き残ってる俺ってなんだかんだ運が良いようにも思えるし。
木から降りて、ボロボロになった地面をビビりながら踏む。なんかさ、ルイが倒したって言ってるんだからそうなんだろうけど、目の前に死体がないからまた急に地中からバクンッてされそうで怖い。
でも、あの幼虫魔物は掘り出したりしないって。見たくないから良かった。
魔物の中にもなかなか扱いに困るものがいるそうなんだけど、この幼虫魔物もそっちに含まれるそうだ。地中はボコボコにしちゃって地盤沈下が起こったりして危ない上に、食材にもならず、武器や防具に使えそうな皮や骨もなく……。つまり、『役立つ魔物さん』ではないやつってこと。
ルイが何度も周囲を刺していたのは、地中に剣を通して土魔法を通していたからで、それで魔物の周りに硬い岩盤の壁のようなものを作って閉じ込めたんだって聞いた。危険なだけで何の役にも立たない魔物を確実に仕留めるためにちょっと回り道したんだって。
素材を回収したい魔物の場合はいかに戦いやすい場に敵を引きずり出すかが大事らしいけど、処分したいだけの魔物はそのまま埋めて自然に返すのが一番なんだとか。せっかく地中にいてくれてるのだから、そのまま出てくんなみたいな作戦ってことかな? ちょっと違うっぽいけど。
素材といえば、ゲームなんかではモンスターを倒すと勝手にお金が手元に残るんだよな。あれはやっぱり素材を回収して換金するというところを省略した形ということなんだろう。そんなところまでゲームにしてたら大変だもんな。あ、でもすっごい昔にいとこのにーちゃんに見せてもらったパソコンゲームではモンスターの解体をしたり、それを調理して食べたりしないと空腹でどんどん体力減るとかいうのあったなぁ。とっても面倒くさい外国風な大人向けなゲームだったけど、やっぱりそれが現実だよな。
潰れたカエルみたいな声しか出なかったんだけど、ああいう時にデカい声出るのはもはや才能だろって思うよ。
ボコッとへこんでなくなった足場には見た目も気持ち悪いウネウネとした魔物(あれが動物のはずがない)がいる。俺の真下に! 死ぬのも怖いけど、あれに捕獲されるのは勘弁してほしい。
「ちょ! 無理ー!」
「イクミ!!」
ルイが俺に投げてきたロープは端に重りが付いていて、それが俺の腰にうまく絡みついてくれてルイの後方へギュンと引き寄せられた。まるでムチウチにでもなるんじゃないかってくらいの変な力がかかったけど、あのウネウネの上に落ちるとか食べられるとかより全然マシ。
「俺は……幼虫が嫌いなんだって……うぅ」
俺、めっちゃ涙目。痛いって意味でも違う意味でも。
昔からそうなんだ。カブトムシとか蝶とか昆虫はきらいじゃないのにその前段階の幼虫はホント駄目だったんだよな。サナギになると中で一回ドロドロになってあんな風に変わるっていうのはめっちゃすごいしカッコイイと思うんだけど、あのブヨブヨしたウネウネしたあの姿だけは許せないんだ。
幼虫魔物は地面の中をかなり自由に動けるのか、ルイがちょっと苦戦しているようにも見える。俺はルイにロープでぽいっとされたあとは木の枝の上にしがみついて泣きそうになっているという非常に情けない格好でいるわけだけど……。
なるほど、アイツ太い木の根があるところは避ける習性があるみたいだ。元々が虫だからなのか植物とある程度は共存する関係なのかもな、なんて上から見ていて思う。
涙目ながらもそんな感じでルイと幼虫魔物を見ていたんだけど、ルイは地面に剣を刺しては移動してという動作を繰り返していてやたら時間をかけているなと感じた。どうやら幼虫魔物の動ける範囲が狭まってきているようなのは、ルイのやってることのせいみたいだな。
ルイの戦闘を祈るような気持ちで見ている俺は、一方、鳥肌と戦っていた。
だって、時折ルイの剣が幼虫魔物を傷つけるんだけど、茶緑色の粘液が飛び散るんだよ! そんでビチビチ跳ねてるし気持ち悪いっ!
ルイが今までで一番高く跳躍する。何度か見ているけど、高い位置から剣を振り下ろして飛び降りてくるルイは一筋の炎の矢みたいなんだよな。真紅のような色合いの髪だから炎とはちょっと違うんだけど、後ろ髪をひとつに結んでてそれがなびくからなのかな。
ルイの剣がまっすぐに地面に突き刺さり、ギギギギギギというような動物の鳴き声とも違う耳をつんざく不快感を煽る音が聞こえて辺りが静かになった。
「待たせた」
「ルイ、助けて……」
下から声が聞こえて木にしがみついたまま動けない俺は助けを求める。高さがあるのもそうなんだけど、身体が痛すぎて動けないんだよ。俺と荷物をまとめて木に叩きつけられたみたいなもんだからね。ルイが俺のいる位置まで何跳びかで来てくれて「大丈夫か」って声をかけてくれるけど、「痛くて動けません」って思わず言っちゃったよね。
「それにしては思ったより元気そうだ」
「どこがっ! 痛っ」
「いや、本当に。とりあえず薬」
と、差し出された薬を受け取りたいのにちょっとそれも無理そうで、俺もしかして結構重症なんじゃないのって思う。涙目でルイに訴えていると、栓を開けたその薬を口元まで持ってきてくれて俺に飲ませてくれた。
「痛く…………ない。痛くなくなった」
「ちょっとやり方が乱暴だったな、すまない」
「ううん。……むしろ、あれでよく間に合ったって思うよ……」
「それにしても、最低でも何箇所か骨折してるかと思ったんだけどなぁ」
ルイが怖いこと言ってるんですけど。痛みがなくなった俺はルイの力も借りて木から降りる。
「骨折って……」
「いや、だって、お前。俺が言うのもなんだけど……遠心力かけてぶん投げたんだぞ?」
「…………」
そう……だね? そう言われればそうなんだけども。当たりどころが良かったのかな。
異世界に迷い込むなんてとんでもなく不運に見舞われたようだけど、何度も助けてもらって生き残ってる俺ってなんだかんだ運が良いようにも思えるし。
木から降りて、ボロボロになった地面をビビりながら踏む。なんかさ、ルイが倒したって言ってるんだからそうなんだろうけど、目の前に死体がないからまた急に地中からバクンッてされそうで怖い。
でも、あの幼虫魔物は掘り出したりしないって。見たくないから良かった。
魔物の中にもなかなか扱いに困るものがいるそうなんだけど、この幼虫魔物もそっちに含まれるそうだ。地中はボコボコにしちゃって地盤沈下が起こったりして危ない上に、食材にもならず、武器や防具に使えそうな皮や骨もなく……。つまり、『役立つ魔物さん』ではないやつってこと。
ルイが何度も周囲を刺していたのは、地中に剣を通して土魔法を通していたからで、それで魔物の周りに硬い岩盤の壁のようなものを作って閉じ込めたんだって聞いた。危険なだけで何の役にも立たない魔物を確実に仕留めるためにちょっと回り道したんだって。
素材を回収したい魔物の場合はいかに戦いやすい場に敵を引きずり出すかが大事らしいけど、処分したいだけの魔物はそのまま埋めて自然に返すのが一番なんだとか。せっかく地中にいてくれてるのだから、そのまま出てくんなみたいな作戦ってことかな? ちょっと違うっぽいけど。
素材といえば、ゲームなんかではモンスターを倒すと勝手にお金が手元に残るんだよな。あれはやっぱり素材を回収して換金するというところを省略した形ということなんだろう。そんなところまでゲームにしてたら大変だもんな。あ、でもすっごい昔にいとこのにーちゃんに見せてもらったパソコンゲームではモンスターの解体をしたり、それを調理して食べたりしないと空腹でどんどん体力減るとかいうのあったなぁ。とっても面倒くさい外国風な大人向けなゲームだったけど、やっぱりそれが現実だよな。
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