騎士団長の迂闊な一言。

隅枝 輝羽

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騎士団長の迂闊な一言。

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 私は第4騎士団の団長をしているランベルト・フォン・バーチュ。46歳だ。

 我が国では第1騎士団と第2騎士団は貴族のみの構成、それ以降は貴族と平民の混合である。
 貴族のみの騎士団は近衛や帝都周辺の担当というか、まあ我々とはかなり扱いが違う。

 私は貴族出身ではあったが、末端貴族の三男坊など貴族でないのも同じこと。
 魔法の才能でもあればバーチュ家の縁戚にでも養子にもらわれるとか婿に望まれるとかの道もあったかもしれないが、私には剣の才能しかなかったから若き日より騎士団に所属して公務に励んでいた。
 ここで活躍さえしていれば一応は貴族の一員としてバーチュ家の末席に名を連ねていてもそこまで恥でもなかったから。
 まあそれも20代後半までくらいのもので、それ以降になるとどんどん煙たがられてきているのがわかったので、バーチュ家の相続権からは外してもらい今は名前だけ貴族という立ち位置だ。

 結婚はしていない。
 話が持ち上がったことがなかったわけではないが、その頃、頻出する魔獣の討伐に出征することが多く、帝都に戻ることが出来ない期間が長引いたら話がなくなっていた。
 まあ、結婚には乗り気でもなかったし任務でいつ命を落とすかわからないのだから、そんな不安定な夫を欲しがる者もいないだろうと私も妻を得ようとしたことがなかった。

 騎士団の仕事は厳しいことも多いが楽しいとも思っていたので、多くの同期が体力の問題などで内勤に移ったり前線から退いたりしていく中私は何故か前線に残った。
 そして、気付いたら第4騎士団の団長に収まっていたという訳だ。

 団員にはまだまだ成人して入ったばかりの見習いや、血気盛んな平民の若い連中、私のような境遇で平民に差別意識のない貴族の若者などが在籍している。
 私が若い頃に在籍していた第2騎士団はマウントの取り合い──しかも家格などのくだらないもの──ばかりであったし、第1第2騎士団の上官も当時クズばかり(ゲフンゲフン)でどうしようもなかった。
 だが、我が第4騎士団は将来有望な者たちばかりで、私は自ら彼らを率いて出征することが楽しくてしょうがない。
 現在も魔獣討伐でノルトフラーダイン山脈の麓近くまで来ているが、団員たちに不満を漏らすものなどおらず、むしろ腕がなると騒ぐ始末。まったく可愛らしいやつらだ。

 今日の宿営地はノルトフラーダイン山脈の麓近くの街ラーダインの城壁の外。大所帯なもので、街の宿を使ったりはしないのだ。
 とはいえ、物資補給や英気を養うと言うことで、討伐作戦開始までは交代制で街への出入りはご自由にどうぞといった感じだ。
 しかし私は滅多に街には行かない。
 美味いものは好きだが、団員が作ってくれたもので十分満足できるし、任務を全て終えて帝都に帰ったときに行きつけの店に行くのがとてつもなく良いのだ。

 そんな訳で今日も私は夜間、他よりは豪華なテントで執務をこなす。
 実戦のほうが好きだが団長という立場上どうしても執務は外せないし、副団長は平民出身で書類仕事は苦手なのだからしょうがない。
 このテントは騎士団長共通の専用のもので内部は仕切りなどもあり奥には寝床もある。
 会議の時は各隊の隊長を集めて会議なども出来るようにかなり大きく、防音結界まで備わっている。さながら移動式の騎士団執務室だ。

 カリカリとペンを走らせる音だけが響いている。
 別に残らなくてもいい副団長ハンス・シュミットが私の書き終えた書類やサインした書類をまとめている。
 ハンスは私が副団長だったときから何故か懐いてきていた男だ。
 剣の扱いも上手く、今や私の後を引き継いで副団長となり、その人当たりの良さは団員をまとめるのに一役買っている。

「……団長は飲みに行ったりしなんですか?」

 唐突にハンスが尋ねてくる。

「しないな」
「団員はみんな非番には街の繁華街に繰り出してるのに?」
「お前も行けばいいだろう?」
「あいつらが飲みに行った後どうしてるか知らないんですかぁ?」
「なんだ?」

 やたらと絡んでくるハンスに、私は書類から顔をあげた。

「そりゃ娼館に行くに決まってるじゃないすか!」
「それに何か問題が?」
「娼館に行くあいつらを見送って一人帰ってくるのが切ないって話ですよ」
「それなら一緒に行けばいいじゃないか」

 そりゃあ男だから溜まるものもあるだろう。
 最前線の街もないところならいざ知らず、繁華街に行けるのであれば利用しない手はない。

「行けないんですよ」
「なんでだ?」
「出禁で」
「何をやらかした?」

 書類を書いていた手を止め、咎めるような目で見てしまう。

「やめてくださいよ。仮にも副団長なのに不祥事なんか起こしてないですよ」
「何もしてなくて出禁になるはずがないじゃないか。何を隠している?」

 ハンスは唇を尖らせてゴニョゴニョと何事かを呟いている。
 他の団員もいる前でそんな態度をしようものなら注意もするが、今は二人きりなので何も言わない。
 私はハンスをただジッと見つめた。
 こういうときは無理矢理に聞き出そうとするより無言で見つめるほうが効くときが多い。

「いや……だから……その。………………デカくて」
「は?」
「アレがでかくて娼婦たちに嫌がられました」

 私は目が点になる。
 出禁になるほどの大きさということか?
 でもプロの女性というのは大きいペニスを好むまでいかずとも大丈夫な者もいるのではないか?

「そこまで、か」
「俺だって行きたいし、何か所か回ったしデカいのオーケーな人は全員試したんです。けど……」
「その結果が出禁か」
「……はい」

 とてつもなくしょぼくれていて少しばかり可哀想にも思える。
 くだらない理由ではあるが、ハンスにとっては神経質になることなのかもしれない。
 それで飲みには行きたいが娼館に行くような仲間とは行きたくない、ということか?

「そんなに飲みたいならしょうがない。仕事が終わったら酒を持ってくるなら飲むの付き合ってやる。ここに酒はないんでね」
「マジすか!?」

 飲みに付き合ってやると言うとパッと顔を上げるハンス。
 どうやら本当に、飲みたいのに他の団員と行くのは悔しくてしょうがないらしい。
 ハンスは時折口調が崩れるが、平民ということがわかっているし私と二人のときは特に咎めてはいない。

「俺、終わったらいい酒持ってくるんで!」
「ああ、わかったから。まずは仕事を片付けよう」

 そうして私たちは仕事を終わらせ、グラスを傾けていた。

 ハンスが言った通り、とても良い蒸留酒で私たちは何杯目かで気持ちよくなっていた。
 私などは普段あまり酒を嗜まないので酔いが回るのも早かった。

「ペニスがデカいと羨ましがられますけどねっ、全然いいことなんてないですよ。ものにはなんでも限度ってものがあるんですよ。俺はこんなふうに誰にも相手にされずに一人寂しく歳をとって死んでいくんですよ……」

 私だけではなく、どうやらハンスも相当酔っている。
 誰もハンスのペニスの話をつまみに飲もうとは思っていないのだが……。
 さっきから私が返事をしていないのに一人で管を巻いて酒を呷っている。

「女がだめなら男とヤればいいじゃないか」

 あまりにもグチグチと言っているので私は酔っていたこともあってそんなことを口に出していた。

「は? ……男?」

 やや据わった目でハンスが私を見上げてくる。
 ハンスは平民だからあまりソッチは知らないのか? でも戦場の男の嗜みくらい知っていそうなものだが。

 私といえば、若かりし頃は見目の良さも相まって、第2騎士団内でもよく上官に呼び出されて夜の相手をさせられていた。
 帝都に滞在しているときなど別の騎士団長や副団長にまで呼ばれるくらいだった。
 貴族というのは高級娼館の娼婦か、もしくはそうやって貴族の若い男を相手にすることが多いのだ。
 そうやって末端貴族の私は断ることもできずにいろんな男に抱かれていた。
 そのうち上官が退任したり、私の年齢や地位が上がったり、もっと若い男が入ってきて私はお役御免となったのだが。

 第1第2騎士団は今でもそういう風潮だが、この第4騎士団は平民混在ということもあってかなり健全的だ。
 ハンスは固まったまま私を見ているが、私は酔いの回った頭で続けて言った。

「男なら奥が行き止まりでもないしデカくてもいけるんじゃないか?」
「え……は……」
「まさか戦場の男の嗜みを全く知らなかったのか?」
「いえ、知っては……いますけど……」
「どうしても、というなら団員の中から探してみればいいじゃないか。きっと中にはそういう者もいるとは思うが……。任務に支障がなく犯罪でなければ別に構わないぞ」

 私は何をペラペラと……少し飲みすぎたか。
 同性との行為なんて聞くのも嫌だという人間もいるのを忘れていた。

「すまない。気持ち悪かったな、忘れて――」
「それって、団長でもいいんですか?」

 急に身を乗り出した目の据わったハンスが言う。
 見目の良い若手を勧めたつもりだったのでハンスの言葉に私は固まる。

「何を言って――」
「団長が言ったんですよ。男はどうだって」

 ジリジリと私ににじり寄ってくる。
 駄目だ、完全にハンスは酔っている。

「待て。落ち着け、今お前は酔っている」
「俺、前から団長って妙に色気があるなって思ってたんですよ……」

 おいおい、何を言い出すんだハンスは。
 もう20年くらい私にそんなことを言ってくる者などいなかったのに。
 と、私もにじり寄ってくるハンスから距離を置こうと後退りするが、ガタリと椅子が傾き落ちそうになる。

「あっ?」

 そんな私の腕を引き、落ちる寸前に受け止められる。
 いかんと思って身を離そうとしたが一歩遅く、私はハンスに背後を取られてしっかり拘束されていた。

「こら! 離せ」

 腐っても副団長。全然抜け出せないともがいていると、私は上半身を机に押し付けられた。

「団長……」

 なんでうっとりした口調なんだ。おかしいだろう。
 そう思っていたら無理矢理スラックスを引きずり下ろされ、私の下半身がヒヤリとした外気にさらされる。
 駄目だ、ハンスはすっかり酒に飲まれている。
 なのに私の尻にハンスのスラックスの中のゴリゴリとした硬いものが押し付けられている。
 もう臨戦態勢とはどういうことなんだ。

「おい!」
「言ったことには責任持たないと……」

 腕を背中でねじり上げ私の上半身に体重を乗せ逃げられないようにしたまま、ハンスは自身の前を広げて昂ぶりを取り出したようで尻に熱いモノが当たる。
 ちょっと待て。デカすぎじゃないか?

「ちょっ……そんなの、入らないぞ」
「そ、ですね。キツそう……。逃げないで下さいよ」

 私にそう言うと片手で私を押さえるのはやめずにゴソゴソと何かを探し、キュッという音がしたかと思うと殿裂にとろりとした液体が垂らされる。

「何……を」
「潤滑油ですよ。女とそういうことになったって持ってないとできないからいつも小瓶を持ってるんで」

 ハンスのペニスがその潤滑油を伸ばすように殿裂を滑り、ゾワリと背筋が震えたところで一気にメリメリと私を割り開いてきた。

「かはっ……ぐっ! さ、裂け……るっ……うぅ……」
「キッツ……」
「痛っ」

 とんでもない衝撃に目の前に火花が散り、呼吸が止まりそうになって身体も硬直する。
 解しもせずにぶち込んでくるなんてクズ上官よりひどいじゃないか……。

「すいません……ヒール……」

 ハンスが呪文を口にするとポウッと温かくなり、ソコの痛みが消失する。
 なんだって? ハンスは回復魔法が使えるっていうのか。

「おま、え……回復まほ……使えた、のか」
「魔力少ないんで、小さな傷しか治せないです。戦場じゃ役に立ちませんし内緒です」

 そうなのか。
 それにしても乱暴なヤり方をする……。

「いくら……無理矢理、とは、いえ……も、少し……優しく、できないのか」
「団長に本気で拒否られたら負けますし。……そろそろ、全部挿れても、いいですかね?」

 は? まだ全部入ってないっていうのか?
 と思って振り返ろうとした途端、ぐぐぐっと私の腹の中に脈打つ太い杭が打ち込まれる。

「ひっ……ぎぃ……む、むり……」
「男は行き止まりが、ないんでしたよね?」

 奥が無理に拡げられて腹の中が引き攣れるように痛む。
 そりゃあ行き止まりはないが、長年使ってなかったソコにいきなりねじ込まれて痛くないわけがない。

「も、もっと……ゆっくり、して……くれ……」

 私がそう言うと、逃げないと思ったのか背中を押さえていたハンスの重みがふっと軽くなる。
 そしてハンスは私の腕を取り上半身を少し起こしてきた。

「重かったですね、すいません」

 グリグリと腰を押し付けられ奥を揺さぶられ、上半身を起こされたことで角度が変わり、ゴリュンと奥の狭くなっている部分に入り込まれた。深すぎる。串刺しじゃないか。

「うあぁ――……はっ……ぁ……あんっ」
「はぁっ……すげ、なんだこれ。団長、やばい……です」

 時間をかけてすっかり全部を私の中に収めたハンスが興奮したように言う。
 そして、苦しがってはいるものの机に肘をついて尻を震わせながら喘ぐ私を見て未経験でないことを察したようだった。

「あんなこと言うから知ってるのかと思ったら、やっぱりそうだったんですね。……その割にかなりキツいですけど……こっちの人だから結婚してなかったんですか?」
「違うっ! 私……はっ、若いとき、に……上官の、相手を……させられて、いただけだっ」
「団長の若いときか。さぞ美人だったんでしょうね……」

 ズルルルッと長く引きずり出され、またズプゥッと根本まで挿入される。
 その内蔵がひっくり返りそうなとんでもない感覚に脳天まで貫かれる。

「ひっ……あああ! うあっ……」
「あー、気持ちいい。根本まで入るって、こんな……いい、のか」
「あっあっあっ……ぅぐ……んっんっ…………だっ……ぅんっ……め──ッ」

 息が詰まる。苦しい、苦しい、苦しい……なのに……。
 私の身体はまだ過去に与えられ続けた快楽を覚えていたらしく、その感覚はハンスがペニスを出し入れする度に引きずり出されていく。
 いつの間にか勃ち上がった私のペニスは糸をひくように透明なしずくを滴らせている。
 そんなはずは……と思った瞬間、ガツンと突き上げられものすごい電気のような痺れが背筋を伝って脳まで達した。
 先程までとは違う、頭が真っ白になるような快感だった。

「ッ――――……♡!」
「ん? 団長?」

 急にガクガクと身体が痙攣しだし、ハンスのペニスを奥へと飲み込むようにアヌスの縁が収縮を繰り返す。
 ぶっとくて長くて硬いハンスのペニスが今までのどの上官でも届いていなかった腹の奥の奥までえぐってくる。
 ズンと腹の中心にまで響くソレは私の理性を完全に崩壊させた。

「あっ、う――~~……ッ♡! あぁぁ……うぅ――ッ♡」
「すごいっ……ああ、やべぇ……こんな……っ」

 ぐちゅぐちゅと音を立てながら中をかき回され、そして奥を突かれる。
 ハンスは私の制服のシャツの中に手を突っ込んできて乳首を捏ねたり引っ張ったりしてくる。
 そこも過去に散々いじられたところだ。
 中をガツガツと穿たれながらのその刺激は私をどんどん高みへと導いていく。

「っ、……はっ、すげ、良いっ」
「ん~~、ん~~…………きもひいいっ……あ、あん♡」

 生理的な涙が流れ、涎も抑えられず、口から勝手に気持ちいいという言葉が出てしまう。
 と同時にハンスのとてつもない質量のペニスがその全体を使って私の中をゴリゴリと擦りあげ、私のペニスからはその刺激の度に白濁がトプトプと溢れた。

「うっ……ぐうっ!……たまんねぇ!! アンタのケツん中っ…………良すぎるっ」
「だめだめだめだめ…………そんなっ奥っ……う――~~……ッ♡」

 根本まで挿入したペニスで私の奥の奥をかき回すように腰を回してきたと思えば、私の腰をガッチリと掴んで後ろから腰を打ちつけられる。
 最後に強い衝撃がきて中のハンスのペニスがビクビクしているのを感じたところで私の視界は暗闇に覆われた……。



 ……
 …………
 気がつくとベッドに寝かされていた。制服は脱がされていて、ちゃんとハンガーにかけられている。
 身体が重だるいがもそりと起き上がり、替えの制服を着用した。
 隣の執務室へ行くと、ハンスが机に伏せて眠っている。

「おい」
「……ッ! はい!」

 声をかけた途端その場から椅子を倒し、起立敬礼するハンス。

「何をやってるんだ……」
「あ、ビックリしました。……おはようございます?」

 何故疑問形なんだ。

「記憶は?」
「全てあります」
「そうか」

 ちゃんと制服がかけられていたし私の中からも掻き出していたようなので記憶がないことはないと思ったが、尋ねるとちゃんと正直に答えるハンス。
 気まずそうにしてはいるが、逃げ帰らずにここにいたということか。

「お前、もう酒飲むな。お前が出禁の理由、デカいからじゃなくて酒飲んで乱暴にするからだろう……あんな……」
「いや、女にあんなふうにしないですって!」
「は?」
「団長に逃げられないようにって思ったら力入っちゃって」

 それにしたって、あれはない。

「私に逃げられないようにって、お前は私のことを好きなわけじゃないだろう?」
「まあ、正直、恋愛的に見てたかと言われたら特別そうってわけではなかったんですけど……。でも時々もんのすげー色気出てるなって思ってたのは事実です……それがあったせいで、酒で止まらなくなりました」

 それだけ溜まっていたということか。
 まあ、男はどうかという話題を振ってしまったのは酔っていたとはいえ私だ。
 落ち度があったのは私の側とも言える。

「はぁ……何もこんなおっさんの私を相手にしなくてもお前なら選び放題だろう?」
「呆れました? つか、俺だってもういい歳なんですけど……。でも団長もかなり楽しんでたと思うんですよね」
「……」
「あー……申し訳ありませんでしたっ! ……懲罰、ですか……ね?」

 楽しんでいた……か。
 否定はできない。途中から理性は弾けとんでしまっていたから。
 無言になってしまった私を見て謝罪してくるハンスはギュッと目を瞑っているようでこっそり私の様子を伺っている。

「とにかく、酒はやめろ。……そしたら、まあ、お前がしたいなら身体の面倒は見てやってもいい」
「え? ――ええ!? 本当に……いいんですか?」

 すっかり罰を与えられると思っていただろうハンスが心底驚いたような顔をする。

「なんだ、やっぱり団長、良かったんじゃないですか……」
「調子に乗るな。言い換えれば、お前が私の忘れてた快楽を引きずり出したんだから責任取るのが筋だ、ということだ」

 私は偉そうに上からハンスに言う。
 あの巨根で引きずり出された快楽は「もう一度」と思ってもハンス以外では無理だろう。
 ハンスのサイズはそんじょそこらにはない。

「ぶふっ。そんな責任なら望むところですよ。俺だってあんなの忘れられないですからね。ついでに恋人になってくれたら……」
「調子に乗るな、と言っている」

 叱ればハンスはしょんぼりと頭を垂れる。
 相手もいないし恋人になるのは吝かではないが、今のままではハンスに主導権があるのが気に食わない。
 仮にも私は年長の騎士団長で、ハンスは年下の副団長なのだ。
 私が命令して「ヤッてやる」くらいがいいのでは?

 まあ、もう少しハンスが私の虜になったらそのときは恋人になってやってもいいかな、と思うそんな朝であった。


【END】
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