ずっと、君を探してた。

さひこ

文字の大きさ
上 下
28 / 33
1.5章:邪神を倒す旅に出るまで

それぞれの休暇(優月とアダンの場合)※

しおりを挟む
ぬぷっ♡ぬぷっ♡
「ああっ♡アダンのおちんぽ気持ちイイのぉ♡」
「ああ、ユヅキ。ユヅキの蜜壺もこんなに吸い付いて、俺を離さぬっ。どこまで俺を誘惑する気だ?」
ユヅキの蜜壺は本当にたちが悪い。俺の魔羅を包み込み、優しく開放へと誘う。いや、質が好すぎるのだ。
とろとろと流れる愛液は極上の蜜で、何度でも舐めたくなるし、一度挿入れば俺の魔羅を最高級の羽毛布団の中に包まった時のように癒す。
「こんなにも…、こんなにも俺を中に誘って、…くそっ!この魔性め!!」
「ああん♡魔性でごめんなさい♡アダンのおちんぽが欲しい淫らな淫魔でごめんなさい♡」
ああ、だめだ。ユヅキを傷つけてきた言葉を自ら言わせるなどあってはならぬことなのに…!
「淫魔だと?そんなものに俺が誘惑されると思うか?俺はユヅキ、お前と言う魔性に誑かされているのだ!…いや、お前を愛しているから、お前がこんなにも欲しいのだ!!」
ユヅキ…愛しい愛しい俺の唯一の人。お前のためなら、神だろうが叩き伏せてみせる!!
「アダン…俺も愛してる…♡…あっ♡あっ♡」
ユヅキの言葉に俺の魔羅はさらに膨らみ、腰の動きは早くなる。ああ、いつまでもこうしていたい。
「…んあ♡あん♡俺、イっちゃう♡イっちゃうのぉ♡」
大きくなった俺の魔羅が、ユヅキの良い所にかすめたらしい。ユヅキの中はうねり、俺を開放へと誘う。
「良いぞ。イけ。好きなだけ。俺は何度でもお前を愛すがな。」
特注で大きく頑丈に作ったこのベッドも、2人の愛の行為には耐えられないらしい。ギシギシとベッドが揺れ、それだけ俺の腰の動きが早くなったことを示していた。
「一人でイクの、やだぁ♡アダン、アダンも一緒に♡♡♡」
どうやら、俺の子種が欲しいらしい。俺はニヤリと笑い、共に果てれるように、腰の動きをさらに早めた。
「あっ♡あっ♡あっ♡あん♡あっ♡あっ♡あっ♡あうっ♡あっ♡あっ♡」
ユヅキの喘ぎ声すら俺の魔羅に響く。睾丸から大量の精子が陰茎に集まるのを感じる。
「あん♡イクッ!イっちゃう♡イっちゃうのぉ♡アダン♡♡♡」
「…さあ、イけッ!俺も、す!!。」

ぶりゅうっ!!ぶりゅぶりゅぶりゅっ!ビュー!ビューっ!

「あっ♡あああああああああ!♡♡♡」

俺が出すのと、優月がイクのは、本当に同時だった。
ぬぽおっと魔羅をユヅキの膣から引き抜けば、ドロリとした大量の俺の子種が出てくる。
「はぁっ…♡はあっ…♡アダン♡一緒にイってくれてありがとう♡」
ユヅキはゆっくりと起き上がり、俺の唇にチュッとキスをくれた。
そしてぺろりと自分の唇を舐める。
紅く色づいたユヅキの唇は、薄い象牙色の肌は、そこに散らした鬱血の跡は、薄紅色に染まった胸の飾りは、ユヅキのみずみずしい果実のような陰茎は、そしてさっきまで愛し合った後が色濃く残るまろい尻は、全てが俺をまた淫靡な世界へと誘ってゆく。
…だが。

「今日はアダンお休みの日だよね。一緒にデートしよ♡」
俺は1日中お前と肌を重ね合わせて居たいと言う前に、先手を取られてしまった。
ユヅキはシュリ殿が来た辺りから、自分の希望をはっきりと言う様になった。それは喜ばしい事なのだが、俺の欲はまだ…。
「ねえ、駄目?」
俺の手を取り、頬に摺り寄せ、上目遣いで見てくる。くそっ!可愛すぎるだろう!…仕方ない…!
断腸の思いで、ユヅキの願いを叶えることにした。




白のブラウスにふんわりとしたフリルがついていて、首元には金色を差し色にした黒のリボンが結ばれている。
下は黒のタイトなズボンだが、ブーツは琥珀色に黒のフリルと靴紐がついた、ユヅキの可愛らしさを体現したかのようなコーディネートとなっていた。
「あ…アダン、変じゃないかな。メリッサさんに今日デートするって言ったら、いろんな服を勧められたんだけど、俺が選んだんだ。…金と琥珀色はアダンの色だから…。」
そう、俺の髪は金色で、目は琥珀色をしている。そこに敢えて自分の色を混ぜてきたユヅキに独占欲のようなものを感じて、ユヅキの可愛らしさを含め、満足した。
「いいや、とてもセンスがいい。流石はユヅキだ。金も琥珀も黒によく映える。」
ユヅキの黒い髪にキスを送る。すると優月は気づかれたのがよほど恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にさせて擦り寄ってきた。
「違うもん。金と琥珀に合うのは黒だもん。」
―――何と言う破壊的可愛さだ!耐えきれずに、互いの間に糸が生まれるまで、唇を貪った。
「はぁ…♡はぁ…♡アダンも格好いい♡黒のコーデ、似合ってるよ♡」
「当たり前だろう?金と琥珀に合うのは「黒」だからな?」
何の当たり障りもないシャツとズボンと革の手袋と靴であったが、ユヅキが褒めるなら、どんな礼服にもかなわぬ最高級品へと変わる。
「さあ、馬車に乗ろう。レストランを手配してある。」
ユヅキの細い腰を抱き、馬車へとエスコートする。
まずは自分が入り、危ないものはないか確認したところで、ユヅキを座席へと迎えた。
俺は基本的には誰も信じていない。ゴーティエやニコラのような信頼の置ける部下は別だが、基本的に自分の身は自分で守るようにしている。たとえユヅキの方が強いと知っていても、ユヅキは俺が絶対に守ってみせる。
「では、エミリアン。お前も確認をしてから乗れ。その後は出発してくれ。」
「かしこまりました。陛下。」
エミリアンは俺の幼少期からの年の近い友であり、今は執事として働いてもらっている、数少ない信頼のおける者だ。妻(男)がおり、その者も城で働きながら生活を共にしている。
「そう言えば、イレールは良かったのか?お前たちなら、共に食事をしてもよかったのだぞ?」
イレールとはエミリアンの妻だ。執事見習いで、ゆくゆくはユヅキの付き人になってもらおうと思っている。
「…昨夜は無茶をさせ過ぎましたので、寝かせております。」
なんと!惚気られてしまったぞ!
「ははは、そうか。そういえば新婚であったな。不躾なことを聞いた。」
「いえ、私もあてられてばかりでは本日、砂糖を溢してしまいます。これくらいはお許しを。」
クスリと笑いながらエミリアンは点検を終えたようだ。
「御者席にも、馬にも、どこにも異常はございませんでした。では、参りましょう。」

揺れの少ない馬車で30分ほど走ると、海が見えてきた。ユヅキは友人たちと城下町には遊びに行ったことがあると言っていたが、海方面へは行っていないと言っていた。ユヅキの反応を見てみると、
「わぁ!海だ!久しぶり~!!」
と、喜んでいたのでこの選択で今回は良かったようだ。
さらにもう5分ほど進むと、目的のレストランへとたどり着いた。
馬車を店に着け、ユヅキをエスコートして馬車を降りると、店主が慌てて出てきて
「本日は恐れ多くも我がレストランへようこそおいでくださいやした…です!ここは新鮮な獲れたてのうめぇ…美味しい魚介類が揃っておりやす。どうぞ、ご堪能ください!」
とガチガチになって挨拶をしていた。店選びはエミリアンに任せたが…大丈夫なのか?この店。
不安になった俺とは逆に、ユヅキはどうやら安心したようで、
「無理な敬語は使わなくていいです。俺、庶民ですし。それにしてもかわいい外観ですね。料理の匂いも美味しそうで楽しみです!」
と輝かしく1枚の絵画のような美しい笑顔を見せていた。
「ですが、お妃様…。」
「え!?ち・違いますよ。俺まだお妃様じゃないです。」
ユヅキは真っ赤になって俺をうかがう。
撤回しよう。この店の店主はいい店主だ。
「店主よ。慣れない言葉遣いはの言う通り、無理にしなくてよい。はここを気に入ったようだ。腕の振るえる限りの最高の品を出してくれればそれでよい。」
俺はユヅキの抱き心地の好い腰を抱き、店の中に入った。



「このアクアパッツァのパスタ美味しい♡はい、アダン。あ~ん♡」
「…ん。本当に美味いな。この魚のローストもなかなかだ。口を開けろ。」
「あ~ん♡うん、本当だ!美味しい♡」
可愛い。可愛すぎる…!ユヅキが俺の口に料理を運び、俺の手から食べている…!なんて可愛いんだッ!!
それに『あ~ん♡』とは何だ!?可愛いの押し売りか!?こんなに可愛いのなら、いくらでも言い値で買ってやろうではないか!!
「早くもイレールに会いたくなってきました。」
エミリアンは本当に砂糖を吐きそうな勢いだが、知るか。今はこの可愛いユヅキを堪能したい。
「…あのね。夕食は一緒に食べれるけど、基本的に朝や昼は別々で食べてるでしょ?だから今日は朝から一緒ですっごく嬉しい。」
女神のように、ユヅキが微笑む。
だが、そうか。ユヅキはずっと寂しい思いを健気にも隠してくれていたのだな。
「はいはい。お客さんたちのようにあま~いリンゴのパイが焼けたよ。熱いうちに食べな!」
この配膳をしている者は店主の妻らしい。うむ。店主より度胸があり、なかなかのものだ。
すると、ユヅキがおずおずと女給に聞いてきた。
「あの、バニラのアイスクリームってありますか?」
「え?あるけど…どうするんだい?」
「アップルパイの付け合わせにしたくって。俺、いっつもそうやって食べてるんです。」
せっかく熱々なのにねえ…女給は不思議そうにしながらも、アイスを持ってきた。
ユヅキはアップルパイを切り分け、アイスクリームを次々と皿の上に置いた。まずは俺に、そしてエミリアンに、女給に、最後に自分へ。
そして、「いただきます。」と言ってから、一口口に含んだ。
「んん~♡やっぱりこの熱々と冷たいアイスクリームが蕩けていく感じ、最高♡ね、アダンも食べてみてよ。あ~ん♡」
俺は思わず口を開け、パイに添えられたアイスごとそれを食べた。
「…う…うまい…。」
アツアツのリンゴに冷たいアイスが絡まり、何とも表現しがたい調和がそこにはあった。
エミリアンと女給もそれを見たのか食べてみている。
「本当だ。美味しいです!」
「まさか、こんな食べ方があるなんてねえ。」
アイスクリームは高級品だ。試したことがなかったのだろう。
「うーん…。割高になっちまうけど、うちのメニューに加えてもいいかい?題して『リンゴのパイのアイスクリーム添え…まろやかな甘みとリンゴの爽やかな酸味があなたの舌を驚きの世界へと誘うでしょう。』!」
ユヅキはニコニコと微笑みながら
「はい、もちろん。俺のいた国では当たり前の食べ方でしたし。」
と、承諾した。


朝食を終えた俺たちは、店を見て回ることにした。レストランに入った時は朝早かったため、まだ開いてなかった店も、すでに開店をしている。馬車を停留所に停め、歩いて巡ることにした。
手を繋ぐように差し出すと、ユヅキは指を絡めてきた。
「ふふっ…これね、俺たちの世界では『恋人繋ぎ』って言うんだよ。」
ああ、ユヅキは何度俺を誑かせば気がすむのだろう。そんな小悪魔を見れば、ユヅキは俺の腕によりかかり、より距離が近く、密着するような形となった。
デートとはこんなに幸せなものなのだな。多少の人間を抱いたことのある俺だが、デートと言うのは初めて行う。当たり前だ。恋をしたのはユヅキが初めてなのだから。そして一生、俺はユヅキしか愛すことはできないだろう。

『ふーん、分かってんじゃん。』

突如声が聞こえた。慌ててユヅキの方を振り返ると、ユヅキは
「ルフ君。どうしたの?」
と、目の前を見て驚いていた。その目線の先には精霊がいる。
『いやぁね。そこの皇帝さんが遅い初恋に浮足立っているのが面白くってな。ちょっとアドバイスしに来たんだよ。』
「アドバイス?」
精霊からのアドバイスなど、そう簡単に受けれるものではない。俺は身を構えて耳を傾ける。
『俺たち精霊には、「魂の半身」が分かる。一度で逢ったらぴたりとくっついて離れられないのさ。そして皇帝さんとユヅキはその半身同士なんだよ。分かるだろう?身を焦がすほどの想いを。』
ああ、分かる。俺にはユヅキだけだ。ユヅキ以外など要らない。
『そっ!だから、逆を言えば片方を亡くすとその魂は壊れちまう。お前ら、邪神の元へ向かうんだろう?それなりの覚悟をしなきゃならないぜ。』
それなりの覚悟?
『お互いから離れない覚悟だ。特に皇帝アダン、お前は戦闘力ではユヅキの足元にも及ばない。だが、ユヅキをかばって死ぬ覚悟を持っているだろう。だけど、お前が死んだら、残されたユヅキはどうなる?』
「あっ…。」
突如ユヅキが震えだす。俺はユヅキを抱きしめ、額に唇を落とした。
そうすると、ユヅキは俺の胸に擦り寄り、
「駄目…。アダンがいなくなるなんて、考えただけでも胸が張り裂けそう…!」
涙を流した。
くそっ…!俺はなんと無力だ。愛しい存在の涙を止めることすらできないなど!
「何か…方法はないのか…!」
『あるぜ。』
突然沸いた希望にすがる思いで顔を上げる。
『お前はこの国の…いや、世界の純然たる血を持った後継者の1人なんだよ。その高貴な血をもってして、高純度の聖水と聖者5名と共に、天使リュシアンと契約をしろ。そうすれば、お前は大聖者となれる。やり方はだな…。』
とても簡単なことに、我が国の大聖堂で召喚陣を敷き、その真ん中に立ち、聖者5名に祈りを捧げてもらうことだった。俺の血が、それを簡単にさせることができるらしい。
初めて、この国の皇族でよかったと思えた。
『大聖者となれば、お前は聖なる力を使うことができる。自身への回復もお手の物だし、その前に結界を張ってユヅキを守ることだってできる。…じゃあ、俺は忠告したからな。どうするかはお前らが決めろ。』
そう言って、精霊ルフは去っていこうとした。
「ありがとう。感謝する…!」
俺はその前に、精霊ルフに最大の感謝の意を表し、お辞儀した。
『ば…ばーか!お前ら人間があんまりにも無知だから知恵を授けてやっただけだ!勘違いすんなよ!』
精霊ルフはそう言って、風に乗って今度こそ完全に去った。
「ツンデレだね。」
ユヅキが言うので、
「ツン…デレ?」
俺は不思議な響きに聞き返した。



ユヅキが善は急げと言うので、デートは途中辞めとなってしまった。
だが、また来ればいい。いや、また必ず来よう。

城に戻るなり、俺は大聖堂へと足を運び、高純度の聖水と聖者5名の手配をした。
すると、何とも不思議なことにすべて揃っているという。今日はこの聖堂で聖者たちの集会があったと言うではないか。
ユヅキが言った、善は急げとはこのことかと思い、その中でも特に神官長からの信頼の篤い5名に協力を仰いだ。
そしてユヅキが精霊ルフに教えられたとおりの召喚陣を描いてゆく。
その陣の上に高純度の聖水を撒き、聖者5名に陣の外に均等に立ってもらい、俺はその中央に立つ。
俺は深呼吸をし、召喚の呪文を唱えた。

「光の使者リュシアンよ。その聖なる御姿を現し給え。我の祈りに応え給え。」
そして、神を称える祝詞を唱える。これを最低3回。多くて10回。それ以上は繋がっていないから、一度やめて仕切りなおしておいた方がいいとのことだった。
―――が、思ったよりもあっさりとその時は迎えられた。

『カジミールぅぅぅぅぅぅぅ!!!』
3回目の祝詞の後、腰まである髪の長い金髪の青年(?)が現れる。
驚くべきはその美貌と真っ白で大きな羽根だった。
「…貴方は…天使リュシアン…なのか?」
ボロボロと涙を流しながら、こちらを見る。…やはり異常なまでの美貌だ。それでいて、男らしい。
だが、その美貌も泣き腫らした目では台無しだった。
「…カジミール?カジミールってあの…?」
するとあっという間のスピードでユヅキに迫り寄る。俺はユヅキの元まで走り、ユヅキを自分の胸の中へ抱き込んだ。
「天使リュシアンよ。いかがされた。私の伴侶に何か用でも?」
すると、ユヅキはぽっと赤く顔を染め、俺をうっとりと見上げてきた。…怖かったのだろう。
『いかがも何も、私のカジミールを馴れ馴れしく呼んでいたからね。「どういうつもりだ?」と言いたいのはこちらの方だよ?アダン。』
自分の名が知られていることに少し動揺した。何故知っているのだろう。
『何故って…君がカジミールの眷属の風の精霊から私を呼び出そうとしたからだろう。カジミールに関することなら何でも知っているのさ。』
「え…それってストーカー…。」
ユヅキがぼそりと言う。俺には何のことか分からなかったが、天使リュシアンには効いたらしい。
『ぐふっ…!』と言って、動かなくなった。
「アダン、この天使様、怖い…。」
すりすりと俺の胸元に優月が擦り寄る。ああ、可愛い。俺はユヅキを落ち着かせるためにもたくさんのキスを送った。ユヅキはくすぐったそうに、でも嬉しそうにそれを享受する。
すると上から
『いいなああああああああ!!羨ましいぃ!!!』
と恨めしそうな声が聞こえる。…本当にこいつは天使か?



少しして落ち着いたらしいリュシアンは、泣き止み、顔も整えて聖堂の椅子に腰を掛けた。
俺とユヅキはその前に立ち、腰を90度に折り曲げ、力を貸してもらえないか頼むことにした。
「お願いです。天使リュシアンよ。貴方の御力をお貸しください!俺…いや、私に大聖者の力を。ユヅキを守る力をお分けください!!」
『いいよー。』
答えはあっさりと、そしてまさかの肯定だった。
『ユヅキって子、サミュエルさまのいとし子で、カジミールからも協力を仰がれたんだよね。貸すどころかプレゼントしちゃうよ。ほら!』
その瞬間、俺の身体の奥から包み込むような力が湧いて出てきた。
「俺は…これで大聖者になれたのか…?」
『信じて無いようなら、心臓でもなんでもつかみ出してあげようか?たちどころに回復できるよ。』
それはさすがに勘弁願いたかったので、持っている短剣で自分の腕を突き刺した。
「アダン!!」
ユヅキの悲鳴の声が聞こえる。
「大丈夫だ。心配するな。」
祈ると、腕にできた傷はあっという間に塞がった。
「なるほど、これは素晴らしい。」
『でしょ?…だからユヅキ君、きみ、私を敵視するの止めてもらえる?それと、カジミールのことも。』
すると、ユヅキは俺の腕を撫でながら、
「頭ではわかっているんです。でも、気持ちが…。」
ぽつりと返した。
『まあ、君の立場なら、そうかもしれないね。』
リュシアンは最初の印象こそ不安だったが、落ち着けばかなり話せる天使らしい。
「でも、この世界でアダンに逢えたこと。これは感謝してもしきれないです。カジミールさんにありがとうとお伝えください。」
リュシアンは息を吐く。
『…それが出来れば、苦労はないんだけどね。』
「そう言えば、どうされたのですか。天使カジミールの御名を呼びながら泣かれておられたのは。」
俺が聞くと、リュシアンは俺とユヅキを交互に見る。そして
『いいよね。君たちは愛し合っていて。』
と羨ましそうにこちらを見た。

『私も、カジミールと愛し合いたいんだ。』

………。

……。

…。


「「は?」」

『愛し合いたいんだよ。セックスしたいんだ。セックス!でもカジミールはかたくなに断ってきて…。』

―――まさかそんなことで…いや、俺もユヅキに断り続けられたら確実に泣くか。
『だろう!?アダン、君話分かるねえ!好きな子とはやっぱりセックスしたいよね!毎日でも!!』
その通りだと言おうとしたら、ユヅキが顔を真っ赤にして、
「あ…あんな小さい子と愛し合いたいんですか!?ショタコンですか?あなた!!」
と、リュシアンに向かって怒っていた。
が、リュシアンは意に介さない。
『カジミールは姿は幼いけど、歳は私と同い年だよ。私が先に生まれたけど、カジミールもすぐ後に生まれたんだ。その後すぐ、サミュエルの御許に配属された。あの頃から私はカジミールに夢中だったのさ。』
そしてカジミールの愛らしさについて語る。怒ると頬が赤くなって果実のようだとか、笑うと一面に花が咲くように可憐だとか、泣き顔を見るとこの世の地獄を見たような気持になるだとか、カジミールへの愛にあふれていた。

すると、ユヅキが質問した。
「貴方のカジミールさんへの愛は伝わりました。その…いつもどうやって告白を?」
アドバイスが来ると思っていなかったのか、リュシアンはぱっと顔を輝かせ、揚々と答える。
『カジミール、今日も可愛いね。あっちに綺麗な花畑があるんだ。そこでセックスしよう!』
「「あほか――――――!!!」」

ユヅキが顔を真っ赤にさせながら怒る。
「そんなの、1,000年の恋だって冷めちゃう最低な誘い方です!何言ってるんですか!!」
リュシアンはびっくりしている。
「え?だって、したいことははっきり言って誘うべきだろう?不意打ちでだなんて卑怯だよ?」
俺からもアドバイスをすることにした。
「そう言うことは雰囲気作りから始めるものです。誰も卑怯だとは思いませんよ。」
まだ納得していないようだったので、俺は実践してみることにした。



部屋に戻り、ユヅキと初めて会った時のことを再現しようと提案する。
リュシアンはすっかり乗り気で見る気満々になっていた。

ユヅキは初めて会った時、絶望的な顔をしていた。今ならその理由もわかるが、その時はただ、その顔を少しでも晴らしたいと思って、茶に誘ったのだ。

「紅茶だ。飲めるか?」
「…はい。」
ユヅキは紅茶を飲んだ。すると
「…あったかい…。」
そう言って、緊張を少し解く。
今は泣いていないが、当時は涙で頬を濡らしていた。なので俺は言ったのだ。
「…触れても?」
「どうしてですか?」
ユヅキは突然のことに困惑していた。
「お前の瞳から、雫が零れ落ちているから、拭いたいんだ。」
そして問答無用で涙を指で拭く。
「…ふふっ。くすぐったい。」
拭い終えると、ユヅキは少し笑ってくれた。俺はその顔に見惚れる。
「どうかしましたか?」
「…いや、可愛いなと、思ったんだ。」
ユヅキの顔は真っ赤に染まる。
「俺、顔だちも平凡で…可愛くなんかないです。」
「いや、可愛い。笑った顔はもっとだ。」
手を取り、爪の先に唇を落とす。
「どうしてだろう。初めて会った瞬間から、お前のことが愛おしくてたまらない。」
「え…?」
真っ赤だったユヅキの顔がさらに赤くなる。
「まるで果実のように赤いな。…食べてしまいたいくらいに美味そうだ。」
ユヅキはその意味を悟ったのか、席を立つ。
「あの、夜分遅くに失礼しました。俺、失礼します。」
俺は素早くユヅキの手を掴んだ。
「待て。今日は夜遅い。今夜はここに泊まっていくといい。…なにも、しないから。」
「…ほんとに?」
「ああ、本当だ。」

「そしてその後は本当にただ寝ました。…ユヅキの泣き声が聞こえるまでは。」
「俺はどうしても寝付けなくて、死んだ親友を思って、泣いてしまっていたんです。」
そう、あの時ユヅキはまたポロポロと涙を流して泣いていた。
「まずは、寝れないのか?と声を掛けました。」
すると優月はびっくりして「ごめんなさい。」と謝ってきた。
「俺、どうしても、今朝の光景が頭から離れなくて…!」
そう言って、またすすり泣く。
「俺は我慢できなかったんです。泣くユヅキを見るのも、他の男を思っていることも。だから、誘いました。」
俺はユヅキを抱きしめ、唇にキスをした。最初、驚いて暴れていたユヅキも、舌を絡めると次第に力が抜けて行った。
「忘れさせてやろうか?」
「え?」
「お前の涙の理由を、一時だけでも。私はお前が泣き止ませるために最低の行為を取る。だが、許してくれ。」
そして少し強引に事を進めた。
「お前にだけは、何故か嫌われたくない。」
そう言って、唇に、首筋に、胸の飾りに舌を這わす。
「その後は夢中で抱きました。あの時は悪かったと思っています。でも、そのおかげで手に入れることができた。」
「でも、最初はびっくりしたけど、俺もアダンに夢中になりました。…本当は一目惚れしてたから。」
俺たちは目を見て笑い合う。

するとリュシアンはなるほどと頷き、
『雰囲気作りと、引いてみることと、そして強引に行くことも大切なんだね。参考になったよ。』
メモに取って、帰って行った。

その場に残った俺とユヅキは、改めて笑い合う。
「まさか、天使の加護を受けることができることになるとは思わなかったぞ。」
「俺も。アダンは俺が守るって思ってたのにな。」
ユヅキが少しむくれる。
「そう言うな。俺はお前を守れるかもしれないと思えるのはとても嬉しいことだ。」
「アダン…。」
ユヅキが目をつむって唇を差し出してくる。
俺はそれに応えるために、唇を俺の唇で包み込んだ。
ある、休日のことだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

M嬢のM嬢によるM嬢のためのS執事の育て方

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:461pt お気に入り:429

【完結】追憶と未来の恋模様〜記憶が戻ったら番外編〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:885

捨てられΩはどう生きる?

BL / 連載中 24h.ポイント:1,059pt お気に入り:153

処理中です...