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伯爵令息は平民を虐めたい?~不思議な彼に振り回されています!~

本性

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そこには夢でも見ているかのような美しい人がいた。

青銀色の髪と瞳、息を飲むような美貌…。

俺なんかじゃ手の届かない遠く、遠くにいる人。

だって、その人の目には違う人が映っていたから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺は何をやっているんだ。
あの人に…あの天使に俺は何をした!?
唇の柔らかさと、舌の甘さ。胸の果実はむしゃぶりつきたいほどに美味しそうで…。

クライヴはシャワー室の中で冷水を浴びていた。
自分を律するために。

最初は本当に汚してはいけないと思っていた。

この天使は、決してとして見てはいけない人だと。

けれども先ほどのあれはなんだ。
完全に我を失い襲ってしまった。

13になり、この学園へ入った時に、ベッドの上で僧になると決めた時から、これからもずっとそうして行く予定だったのだ。
だが、時が経つにつれ、彼の甘い吐息。パジャマがはだけた時に見える胸の果実、そして何よりも、彼自身が自分を誘って来るのだ。
1人は寂しいからくっついて寝てほしい。
おやすみとおはようの挨拶に額にキスがほしい。
そして今日のだ。
クライヴは辛抱たまらなかった。
まんまと美味しくいただいてしまったのだ。

欲はどんどん大きくなっていく。
彼の柔らかな唇をもっと楽しみたい。甘い舌をもっと味わいたい。胸の果実を思う存分食んでみたい。そして…。
クライヴは己のモノに手を伸ばした。
しばらくの後、ポタポタと欲が流れ出る。
シャワーの水がそれを洗い流しても、クライヴの身体は熱いままだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


9月の剣術大会の後、ドナの左薬指にアメジストの指輪が輝くようになった。
送り主はわかる。きっとドナの想い人だ。
でも気になって聞いてみると、やはり予想は合っていた。
「本当はチェーンももらったんだけどね、僕がここにつけたかったんだ。」
別に生徒のアクセサリーの装飾には何の規則違反もないので、問題はないだろう。
だから幸せそうに笑う同室の友人を、そのまま祝福した。



「へえ。指輪なんて贈ったんだね。やるなあ。」
何でこの人、いちいち人の頬を突いてくるんだろう。
そう思いながらもリュカは
「そうですね。幸せそうです。」
とマティアスに告げた。
するとマティアスは「ふうん。」と興味なさげに返し、ドナの指に光るアメジストを見た。
隣にいるから分かる。その目が笑っていないことに。
(嫌なんだったら、見なきゃいいのに。)
そう心で思うだけにとどめ、リュカは昼食を食べ終えたので、席を立った。



「待ってよ。もうちょっと話そうよ。」
食堂を出たリュカをマティアスが追いかけてくる。
何でだ。自分の友人のとこにもどりゃいいのに。

マティアスとリュカはこれといって接点がない。
あるとするなら、リュカの同室のドナとマティアスの親友ジュールが付き合ってるから顔見知りなだけだ。
まあ、なぜか1年ほど前から絡まれてはいるが。
(俺に絡んでる暇があったんなら、にモーションかければよかったのに。)
そのせいもあって、あの2人は今やくっついてしまった。もう、離れはしないだろう。
それを考えて、胸にツキンと痛みが走る。
ドナとジュールがうまくいったのは喜ばしい。
けど。


けど、その裏で泣いている人がいるのだ。
目の前の、この人が。


リュカはマティアスを見上げ、言葉を滑らせた。

「よかったんですか。これで。付け入る隙なんて無くなっちゃいましたよ。」

すると青銀色の瞳が、見下ろしてくる。とても冷たい瞳で。

「ははっ。何を勘違いしてるんだか。俺はね。」
「嘘つかなくてもいいですよ。最近ずっと見てるでしょう?」

ドナをーーー。

そこまでは、言わなかった。
言えなかった。
だってあんまりにも、辛かったから。


リュカが下を向いていると、
「…あー…。君の前では猫被ってもしょうがないかなあ。」
急に体感温度が冷える。
「もうちょっと、イイコでいようかなって思ってたんだけど。」
目の前の人は美しく嗤う。

「ねえ、リュカ。左手、出して御覧。」

それは要望ではなく命令だった。

差し出すのを戸惑っていた手が、強引に引かれ、握られる。

すると、薬指を口に含まれた。

ペロペロと舐めるようにしゃぶられ、最後にガブリと齧られた。

そこにできたのは輪っか状の噛み跡。

「あは。我ながらうまく付いた。」
痛い?ねえ、痛い?と言いながら、噛み痕をペロペロと舐めてくる。
「あー…すっきりした。でも、こんなのすぐに治っちゃうから。」

―――何度でも、噛んであげる。

頭がクラクラした。だって、こんなのまるで指輪みたいじゃないか。
本当に贈りたい人は別にいるのに、何で自分にこんな真似をするんだろう。

「ねえ、隷属の指輪って知ってる?」
知らない。だから首を横に振ると、
「そう言う呪われたアイテムがあるんだって。俺は持ってないけど、持ってたらリュカに着けちゃうかも。だって、俺たちらしくない?」
機嫌よさそうに、マティアスは言う。
「逃がさないからね。変なこと言って、俺を怒らせた罰だよ。」
リュカは後悔した。ほんのちょっとでも、彼を煽るようなことを言ってはいけなかったのだ。

「じゃあ、リュカ。これからもよろしくね。」
そう言って、薬指に口を近づけてきた。そこがピリッと痛む。
指輪のような噛み痕の上には、宝石のように赤い跡がついていた。
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