11 / 41
星降る丘で
お友達になりました
しおりを挟む
「グウェン~!!」
魔導騎士コースの訓練場に亜莉透の声が響き渡った。
「アリス!!」
グウェナエルは駆け寄ってくる彼女を笑顔で迎え、両手を握った。
「きゃっ!グウェン!!」
「すみません。アリスがあまりに可愛くて。」
ぼふっと音が鳴るかのように亜莉透の顔が赤く染まる。
―――ああ、食べてしまいたい。
そう言う思いを抱えながら、グウェナエルは必死に我慢した。まだ自分は13歳だ。彼女も同い年。そう言うことはまだ早い…。そう、心の中に狼を住まわせながら。
「あの、差し入れの回復薬です。試飲したから大丈夫です。お疲れでしょう?飲んでください!」
すると、亜莉透はピンク色の液体が入った瓶を空間圧縮袋から取り出し、グウェナエルに差し出した。
受け取った薬を手にしたままじっと見つめる。
「あの、苦くないです。試飲したので。甘いものが苦手でなければ…。」
彼はまずい、心配させてしまった。と、彼女に笑顔を見せ、答えた。
「いえ、甘いものは大好きですよ。ただ、もったいないなと思っただけなので。…いただきます。」
コクリと飲む。…美味しい。しかも、回復量が並じゃない。これは上級薬だ。そう思いながら最後の一滴まで飲み干した。
「ふう、疲れが身体から吹き飛びました。ありがとう。…美味しかった。」
そう言って、グウェナエルは唇をぺろりと舐めた。
亜莉透の顔がまた赤く染まる。…これは、やはり食べてもいいのではないか?
いや、しかしやっぱり早いと己を律する。
なんだ。これではクライヴのことをとやかく言えないじゃないか。
本当に愛する人には自分の我慢くらい何てことはない。相手に笑っていてほしい。自分の近くで安心していてほしい。…自分の欲望で汚したくはない。
愛を知って、グウェナエルは一つ心の成長ができた気がした。
一方そのころアルヴィアとクライヴはというと、こちらもアルヴィアが回復薬を渡し、クライヴにお疲れさまと言っていた。
「あのね。アリス嬢のレシピを横で見ていたから、僕もフルーティな味の薬を作ってみたんだ。飲んでみてくれる?」
今日も今日とて上目遣いで見上げてくる己の友人に、内心悟りを開きながらもありがたく受け取った。
飲んでみると確かにいつもと違う。甘くて、まるでジュースの様である。
「確かにこれは美味しいですね。」
一瞬ぱあっと喜びの顔を見せたアルヴィアだったが、直ぐにしゅんと顔を曇らせる。
きっと、悔しかったのだろう。自分が出来れば発見したかったとありありと顔に描いてある。だから、正直に言った。
「ですが、俺はいつもアルヴィア様がくれる薬の味の方が好きですよ。爽やかでスッとした、甘すぎないあの味が。」
心からの感想だ。
瞬間、アルヴィアの顔がぱあっと華やぐ。
「じゃあ、これからはいつもの味のものを持ってくるね!もちろん、効能はもっと上を目指して!!」
―――ああ、可愛い。
彼はこんなにも自分を想ってくれている。
その気持ちに応えることはできないけれど、どうかずっと幸せであってほしい。その姿を誰より近くで見届けさせてほしい。
クライヴは、この天使のような人の笑顔を誰にも壊させたくはないと願っていた。
それが矛盾していることだと、心のどこかでは感じているものの。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうこうしているうちに、他の生徒たちが帰り支度を始めていた。
自分も帰ろうと、アルヴィアはクライヴの帰り支度を待つ。そんな中、亜莉透はアルヴィアに話しかけてきた。
「ねえ、アルヴィア君。…あなたのお姉さんのことなんだけど…。お姉さんって本当に優しい人?」
どういうことだろう。しかし、午前の時とは違ってなんだかしょんぼりしている。
「優しい人ですよ。誰にでも分け隔てなく接していて、自慢の姉です。」
そう言うと今度は肩を落とした。
「…そうよね。私が勝手に決めつけちゃっただけで、彼女とお話しもしていないのに、私ったら…。」
何だか深刻そうである。アルヴィアが困っていると、亜莉透は深々と頭を下げてきた。
「お願い、アルヴィア君。お姉さんに私を会わせてくれないかな。」
「えっ…。」
「私どうもレオン殿下に嫌われてるみたいなの。だから3年生クラスに上がりにくくって…。それに、アドリーヌさんにコンタクトってどうとったらいいか分かんないし…!」
レオン殿下の姉への溺愛っぷりは目を覆いたくなるほどだった。甘い。とにかく甘い。砂糖の上に蜂蜜を掛けたかのように甘すぎる。
そんな彼を怒らせる方法とすれば、姉との逢瀬を邪魔されることか、姉自身を傷つけることだ。
でも、今日1日関わって、亜莉透が姉を傷つけるような人間ではないと思ったアルヴィアは、そういえば『聖女』が現れた日は姉は殿下とお茶会を楽しむ、土曜日だったと思った。きっとそれだ。我が義兄になるであろう人ながらに、心の狭い人(姉に対してに限り)だと思う。
仕方ないと思い、アドリーヌの住む王都邸へ彼女を招くことにした。
「いいですよ。姉さまの住んでいる我が家へご案内いたします。」
アルヴィアがそう言うと、亜莉透は嬉しそうに手を握って来た。
「ありがとう、アルヴィア君!ねえ、よかったらお友達になってくれない?」
アルヴィアはいきなりのことにびっくりしたが、了承した。
「もちろん。よろしくお願いしますね。アリス嬢。」
「やだ、『アリス』でいいわよ!もちろん敬語もなし、ね?」
そして、そんな和やかなムードであった2人に声がかかる。
2人は自分の愛おしい人の元へと駆け出していった。
魔導騎士コースの訓練場に亜莉透の声が響き渡った。
「アリス!!」
グウェナエルは駆け寄ってくる彼女を笑顔で迎え、両手を握った。
「きゃっ!グウェン!!」
「すみません。アリスがあまりに可愛くて。」
ぼふっと音が鳴るかのように亜莉透の顔が赤く染まる。
―――ああ、食べてしまいたい。
そう言う思いを抱えながら、グウェナエルは必死に我慢した。まだ自分は13歳だ。彼女も同い年。そう言うことはまだ早い…。そう、心の中に狼を住まわせながら。
「あの、差し入れの回復薬です。試飲したから大丈夫です。お疲れでしょう?飲んでください!」
すると、亜莉透はピンク色の液体が入った瓶を空間圧縮袋から取り出し、グウェナエルに差し出した。
受け取った薬を手にしたままじっと見つめる。
「あの、苦くないです。試飲したので。甘いものが苦手でなければ…。」
彼はまずい、心配させてしまった。と、彼女に笑顔を見せ、答えた。
「いえ、甘いものは大好きですよ。ただ、もったいないなと思っただけなので。…いただきます。」
コクリと飲む。…美味しい。しかも、回復量が並じゃない。これは上級薬だ。そう思いながら最後の一滴まで飲み干した。
「ふう、疲れが身体から吹き飛びました。ありがとう。…美味しかった。」
そう言って、グウェナエルは唇をぺろりと舐めた。
亜莉透の顔がまた赤く染まる。…これは、やはり食べてもいいのではないか?
いや、しかしやっぱり早いと己を律する。
なんだ。これではクライヴのことをとやかく言えないじゃないか。
本当に愛する人には自分の我慢くらい何てことはない。相手に笑っていてほしい。自分の近くで安心していてほしい。…自分の欲望で汚したくはない。
愛を知って、グウェナエルは一つ心の成長ができた気がした。
一方そのころアルヴィアとクライヴはというと、こちらもアルヴィアが回復薬を渡し、クライヴにお疲れさまと言っていた。
「あのね。アリス嬢のレシピを横で見ていたから、僕もフルーティな味の薬を作ってみたんだ。飲んでみてくれる?」
今日も今日とて上目遣いで見上げてくる己の友人に、内心悟りを開きながらもありがたく受け取った。
飲んでみると確かにいつもと違う。甘くて、まるでジュースの様である。
「確かにこれは美味しいですね。」
一瞬ぱあっと喜びの顔を見せたアルヴィアだったが、直ぐにしゅんと顔を曇らせる。
きっと、悔しかったのだろう。自分が出来れば発見したかったとありありと顔に描いてある。だから、正直に言った。
「ですが、俺はいつもアルヴィア様がくれる薬の味の方が好きですよ。爽やかでスッとした、甘すぎないあの味が。」
心からの感想だ。
瞬間、アルヴィアの顔がぱあっと華やぐ。
「じゃあ、これからはいつもの味のものを持ってくるね!もちろん、効能はもっと上を目指して!!」
―――ああ、可愛い。
彼はこんなにも自分を想ってくれている。
その気持ちに応えることはできないけれど、どうかずっと幸せであってほしい。その姿を誰より近くで見届けさせてほしい。
クライヴは、この天使のような人の笑顔を誰にも壊させたくはないと願っていた。
それが矛盾していることだと、心のどこかでは感じているものの。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうこうしているうちに、他の生徒たちが帰り支度を始めていた。
自分も帰ろうと、アルヴィアはクライヴの帰り支度を待つ。そんな中、亜莉透はアルヴィアに話しかけてきた。
「ねえ、アルヴィア君。…あなたのお姉さんのことなんだけど…。お姉さんって本当に優しい人?」
どういうことだろう。しかし、午前の時とは違ってなんだかしょんぼりしている。
「優しい人ですよ。誰にでも分け隔てなく接していて、自慢の姉です。」
そう言うと今度は肩を落とした。
「…そうよね。私が勝手に決めつけちゃっただけで、彼女とお話しもしていないのに、私ったら…。」
何だか深刻そうである。アルヴィアが困っていると、亜莉透は深々と頭を下げてきた。
「お願い、アルヴィア君。お姉さんに私を会わせてくれないかな。」
「えっ…。」
「私どうもレオン殿下に嫌われてるみたいなの。だから3年生クラスに上がりにくくって…。それに、アドリーヌさんにコンタクトってどうとったらいいか分かんないし…!」
レオン殿下の姉への溺愛っぷりは目を覆いたくなるほどだった。甘い。とにかく甘い。砂糖の上に蜂蜜を掛けたかのように甘すぎる。
そんな彼を怒らせる方法とすれば、姉との逢瀬を邪魔されることか、姉自身を傷つけることだ。
でも、今日1日関わって、亜莉透が姉を傷つけるような人間ではないと思ったアルヴィアは、そういえば『聖女』が現れた日は姉は殿下とお茶会を楽しむ、土曜日だったと思った。きっとそれだ。我が義兄になるであろう人ながらに、心の狭い人(姉に対してに限り)だと思う。
仕方ないと思い、アドリーヌの住む王都邸へ彼女を招くことにした。
「いいですよ。姉さまの住んでいる我が家へご案内いたします。」
アルヴィアがそう言うと、亜莉透は嬉しそうに手を握って来た。
「ありがとう、アルヴィア君!ねえ、よかったらお友達になってくれない?」
アルヴィアはいきなりのことにびっくりしたが、了承した。
「もちろん。よろしくお願いしますね。アリス嬢。」
「やだ、『アリス』でいいわよ!もちろん敬語もなし、ね?」
そして、そんな和やかなムードであった2人に声がかかる。
2人は自分の愛おしい人の元へと駆け出していった。
10
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる