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星降る丘で

『ヒロイン』登場

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アルヴィアとクライヴはアレクサンドラ学園に入学した。
アルヴィアは魔術師コース、クライヴは魔導騎士コース。2人とも魔力が高いため、頑張れば頑張るほど成績は上位に。特にクライヴは学年トップクラスの成績を収めていた。

アルヴィアのクライヴとの『互いの愛を深め合おう大作戦』は現在進行中である。
2人とも学園内でそれぞれの友人ができたが、普通教科のように一緒の授業を受けれるとき、アルヴィアはクライヴの隣で授業を受ける。互いの友人たちも付き合いがよく、一緒に授業を受けてくれているため、魔術師コースと魔導騎士コースの一部の人たちは、次第に仲が良くなっていった。

とりわけ、アルヴィアとクライヴは(アルヴィアが積極的に)いつもぴったりとくっついていたため、学園内では1年のバカップルとささやかれていた。―――本人たちはそれを知りはしていないが。

そう、この国は同性同士のお付き合いや結婚に対して抵抗がない。むしろ普通に受け入れられている。
だからアルヴィアの小さなころからの望みはクライヴのお嫁さんになることだった。
領は兄が継ぎ、姉は未来の王大使妃だ。跡取りや子孫は2人が何とかしてくれるだろう。
そう考えて今日もクライヴの隣に居られる幸せを噛みしめていた。


そんなある日のことだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



学園が休みの日。
レオンはアドリーヌをお茶に誘って、彼女な好きな城の中庭に、お茶会の用意をさせていた。
中庭は色とりどりの薔薇が咲き乱れ、目を楽しませるように出来ていた。
そして準備が整い、アドリーヌを招き、お茶を楽しみながら2人で愛を確かめ合っているところであった。

彼女の薔薇も霞むような美しい髪に口づけを落とすと、アドリーヌは真っ赤な薔薇に負けないくらいに頬を染める。
そして薔薇色の唇が目に入る。そこに口づけをしたくてたまらないレオンだったが、彼女が今時信じられないくらいに奥手で純粋だと知っている彼は、必死でそれを我慢した。
それにもし口づけをしてしまったら、そこで止まれる自信などなかったのだ。
こんなにも美しい女神の唇が己の唇と合わさってほうと息を吐く。それだけで理性が焼き切れると確信をしていた。
彼女が欲しくてたまらなかったが、それ以上に彼女を大切にしたいと思う己の決意。
誰よりも完璧だと学園内で噂されても、本当はこんなにも小さい…。女神の前では所詮自分はただの人なのだと思い知らされる。

ふと、顔を上げると美しいアクアマリンが自分を見つめていた。眩いほどの笑顔で。

そんな時だった。



最初はパチパチと音が聞こえた。

兵士たちはその異変にまだ気が付いていないようだった。
何だ?と警戒していると、音がさらに大きくなる。
流石にそのころには兵士たちも異変に気が付き始め、あたりを警戒していた。
その時だった。

ふわりとした風に守られ、自分たちの横に少女が現れた。まるで、舞い降りるかのように。

少女が閉じていた目を開けると、黒曜石のような瞳が揺れる。


「あれ…?ここは…?」


少女は戸惑っているようだった。

感じるのは巨大で、しかし清らかな魔力。


レオンは驚きに固まったが…


次の瞬間には彼女を兵士に捕らえさせた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「え、え?ちょっと待ってください!」
この状況に声を上げたのはなんとアドリーヌである。
「殿下、その方をどうなさるおつもりですの?」

その声に彼はにこりと柔らかく微笑み、アドリーヌの肩を抱いた。
「すまない、アドリーヌ。いきなりのことでびっくりさせてしまったね。もう怖くないよ。あの不審者はすぐにどうやって入ってきたのか尋問させるから。」
連れて行け。レオンは先ほどアドリーヌにかけた柔らかな声とは打って変わり、完全に冷え切った声で兵士たちに命令する。
彼女ヒロインと接近されてしまうのは嫌だったが、彼女がいないとこの国の平穏が…ひいてはレオン自身や大切な家族が危険な目に脅かされてしまうのでは?と危惧したアドリーヌは待ったをかけた。

「尋問なんてあの女性が可哀想ですわ。今、ここで、私が彼女とお話をさせていただいてもよろしいかしら。」
しかし…。
「あの不審者にそんな情けをかけるなんて、君はなんて心優しいんだ!だが、この城に張り巡らされた結界を飛び越えてきたんだ。用心に越したことはない。それに、君が万が一にでも傷つくことがあれば、私はあの女の首を刎ねるよ。…それでも話がしたいか?」
レオンは頑として首を縦に振らなかった。

引きとめながらも、どうしようと悩んでいたアドリーヌだが、そこでバタバタと駆け足の音が聞こえる。
しばらくするとこの国の神官たち…しかも高位神官が現れた。

「なんだ、お前たち。揃いも揃って、ここをどこだと思っている。」
レオンはアドリーヌを背にかばい、彼らに向かって威嚇した。
神官たちは一瞬ひるんだが、直ぐに立て直し進言する。

「恐れ多くも殿下。わたくし共はこちらに聖なる気を感じてこさせていただきました。その…彼女から。」
そう言って『ヒロイン』を見る。
「だがしかし、この者はいきなりこの場に現れたのだ。…お前たちが張った結界を破って。怪しいにもほどがある。一度徹底的に調べさせようとしていたところだ。」
レオンがそう答えると、神官たちは『ヒロイン』の顔を見つめ、彼女に対してひざを折った。
「やはり、貴女様は『聖女様』であらせられますね?わたくし共の張った結界は、『悪しき心を持つ者』は入ることはできませぬ。…それに…この清らかなる巨大な御力、間違いなく我々の求めていた『聖女様』です!」

その言葉を聞き、少し思考を巡らせたのち、レオンは神官たちに向かって言った。

「ならば、その『聖女』とやらをお前たちの神殿預かりにする。だが、その者を決して一人にはさせるなよ。必ず監視をおけ。」

神官たちは、聖女様に失礼な!と内心思いながらも従うことにした。
かくして、聖女ヒロインは神殿預かりとなったのである。
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