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隣には、いつも

二十一

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教室の隅、テーブルの列が並んだ上にらつきは横向きで眠っていた。その下には簡易な毛布が敷かれているが、身体が痛くなること間違いなしだ。
扉を閉め、そろりそろりと近付いていく。あまり綺麗とは言えない教室だが、差し込む太陽光に煌く埃は、彼女のおかげか美しく舞っている。
起こすそうと考えていたが、目の前まで行くと怖気付いた。寝ている者を起こす必要はないだろう。
私はあいつが宙の失踪に関与している可能性を考えている――。さとりは確かにそう言っていた。
けれどそれは信じられない。信じたくなかった。今回来たのはさとりから言われた反抗心もあるが、確認もしたかったのだ。背を向け、座りこもうとしたときだった。
「へんたーい」
柔い声が届けられ、振り向くとすぐそこで寝ぼけ眼のらつきが微笑んでいた。
「変態?」
「夜這いでしょ?」
「いたいけな少女がそんなことしません」
え、ととぼけた顔をされてしまうが笑九は無視して、鞄の中に入った弁当箱を目の前に置き、目を丸くさせながらも上体を起こさせることに成功した。
「これは?」
「お母さんに言ったらね、喜んでもう一つ作ってくれたの」
「へえ、そりゃ……」
一見意地悪な笑みだが、声音で嬉しそうなのが伝わる。「あ、今度は綺麗」と中身を絶賛しつつ食べ始めた。そのがっつき方は、本当に空腹らしいことが窺える。昨日の弁当くらいじゃ足りなかったのだ。
だから、さとりの言うことを無視出来なかった。
「家、帰ってないの?」
おずおずと聞いてしまい、箸が止められた。
沈黙が訪れる。
何を考えているのか、お弁当一点だけを見つめるらつきから、気まずくて視線を落とした。緊張感に空気が張り詰めていたが、ため息に崩された。
「そうかなって思ってたんだけどさ。あいつと、知り合い?」
あいつ、というのが誰を指しているのか分かっていた。小さく頷くと、もう一度ため息が吐かれ、お弁当を突き返されてしまった。
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