妹と、ちょっとお話しましょうか?

夏夜やもり

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朝焼けメダリオン

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「あ、もう......こんな時間」

 ふとスマホを眺めた妹がぽつりとこぼす。まだまだ話したいことはあるのだが、意外と時間が経っていたらしい。目の前のコーヒーもケーキもきれいになっている。

「ねね、メダリオンがなんでここにあるのかって話してないんじゃない?」
「そうだったね......やっぱ、言わなきゃダメかな?」
「ダメ」

 静かに言った様だが、実際は怒気を隠しきれていない。『言わずが花』を押し通しても面白そうだが、やはりそうもいかないだろう。

「そっか......」
「てか、ちょっとさ気になるわね」
「え、何?」
「お隣さんってさ、一人なの? 二人なの?」
「......言ってなかった?」
「うん」

 ......私は目を見開いた。そう、一番最初に言った気になっていたのだ。『あいつ』と、『あやつ』二卵性双生児である。
 
 活発で身体能力が高く、健康的な日焼けが特徴的な、私が冗談を言うとなんかツボに入って笑る、もてあそぶとおもしろい、いつも前向きなあいつ。

 少し怖がりで、抜ける様な肌がうらやましかい、どこか儚さがあるのだが、私をおちょくったり、手のひらで転がしたりする、芯の強さを感じたあやつ。

 どちらもが、とても良いご両親に育てられて、私みたいな良く解んないひとを、とても大切にしてくれたのだ。

「ふぅん......やっぱり」
「えーっと、で、メダリオンだけどね?」
「うん」
「まあ、簡単な話だよ。これはね、先に退院するからって、記念にもらったんだよ」
「へえ?」
「たしか、朝焼けが見える時間だったかな?」
「え? 早起きだったのね?」
「起こされたんだよ......えっと......」

 どうしよう、うーん、はっきり言って先ほどの肩を擦りむいたの理由が、じつはこれに絡んでくる......。私が言葉を探しているようすに、妹が少しまじめな視線を送って来る。

「あやつちゃん、何かあったの?」
「......うん」
「聞かせてほしいな」
「............そうだね」

 私は息を吐いた。


**―――――
 それは肩を擦りむいた前日である。早朝に私の肩を揺らす人がいる。

「なな、ちょっとええかな?」

 小さく声を掛けられて、目を覚ました。

「おはよう......いまなんじ?」
「ちょっと、早いなぁ」
「なあに?」
「ちょっと、つきあってくれへん?」

 大分、早い時間。ラジオ体操が始まるくらいの時間じゃないかな? お日様も出かかっているくらいの時間である。どうやら早くに起こされたらしい。

「んー、むうー? 良いけど、どうしたの?」
「ちょっと、な? ちょっと......や」
「んー、わかったよ。うん、行く」

 そんな感じであやつは私を引っ張っていく。寝起きでふらふらの私は、ガラケーとストラップをもって、あやつについていく。朝焼けの見える時間らしく風が吹いていた。今日の朝日は、やはり世界を紅く染めている。

「朝焼けきれいだね」
「ほんまやな」
「夕焼けもきれいだけどねー」
「せや! ここなんやけど、屋上のはしごのとこから見えるビルでな、夕陽みてみ! ちょっとおどろビくで」
「へえ? じゃあ、こんどみてみるかなぁ」
「......」

 あやつは少し下を向く。

「......えっと......」
「なあに?」
「......」

 あやつは黙りこくってしまった。寝ぼけまなこの私は、しばらく待つ。

「......」
「……」

 中々切り出さない。だから、先を促した。

「どうしたの?」

 私が聞くとあやつは顔を上げて行った。

「あんな、もう退院やねん」

 開口一番の言葉だった。

「あれ? あと2・3日先じゃないの?」
「うちだけ、早いねん」

 何かをこらえるように、あやつは言った。私も少し不自然だなと思いつつも、退院できるのは良いことだと祝福を言葉にする。

「あら? そうなの? まあ、おめでと」

 しかし、あやつは首を振った。

「ちゃう......ちゃうねん......」
「??」
「あんな、もう、あえへんねん」
「んー?」

 あやつは何を言っているんだろう? 当時の私はいまいち意味が解らない。

「それで、なんよ。あんな、貰ってほしい......ものがあるんよ」

 言いたい事がまとめれないのか、あやつは、お守りのメダリオンを私に差し出す。

「へ......?」
「カタミってやつや」

 私は言っている意味が解らなかった。しかし、ふわふわした頭の私でもあやつが真剣なのだと解る。どうも肩の辺りを震わせていた。何だろう? あやつになにがあったのだ!?

「形見......?」

 形見というと私はポケットに入れてきたストラップを思い浮かべる。これはひいお爺さんの形見である。だから私は言った。

「形見って、だれの?」

 眉を上げて聞いたのだが、あやつは答えない。ただ押し黙るだけ。私は、ちょっと、ずるいよなぁと思いながら見ている。......すると、あやつはさらに言葉を続けた。

「あんな、これからおかんの実家に行くんよ」

 銅製のメダリオンを押し付けてくる。その真ん中にはお月様のモチーフが描かれていた。

「もうな、あえへんやろ。だから、だからな」

 なぜか必死になって私に押し付けようとしてくる。

「うーん、でもさ、これびやだるさんの手作りでしょう?」
「うん」

 相変わらず野太い手が思い出されてしまう。あの野太い指で良く作れるなぁと思いながら、私は胸に押し付けてきたメダリオンを押し返す。

「これさ、大切なおまもりでしょ? 持ってたら守ってくれるはずだよ」

 あやつは少しびっくりしたような表情をする。返されると思っていなかったのかもしれない。

「いや、あんな、あんたに必要やとおもうねん。あんなにいっぱい、身体わるくしてからさあ」

 心の底から心配している顔を見て、私は少し鼻をかく。今も少し息苦しさがあるのだ。

「え、うん、まあ辛い時は、まあ辛いけどね、でも、でもね」
「ええねん。うん、ええんや。入院しとったら元気になるんやろ? だからな、これはあんたに貰ってほしいの。お願いや」

 これを本気で渡したいと思っているようには見える。だから、私は受け取らざるをえなかった。受け取りながら、あやつが出している雰囲気が気に入らなかった。

「うーん、じゃあ、借りておく」

 受け取ってから、少し考える。

「そっか、形見か」

 私はポケットに入れていた携帯を取り出し、ストラップを外して渡す。思い入れの深い品だったのだが、仕方ない。

「じゃ、お返しにさあ、これを貸したげる。必ず取り戻すから、返しに来て! 約束だよ」
「これ、え、これって、ええ!?」

 目を丸くして、ストラップを見ている。その大きさの割に結構重くて、細工もっているものだ。

「たしか、銀と金の細工らしいからね。もってってよ。超おまもりだよ! 色々治って大変だからね!!」

 たしか、このストラップの由来は伝えていたと思う。あやつは目を丸くして、おずおずと受け取った。しげしげとそれを見つめている。それから顔を上げていった。

「駄目や! こんな大事なん! もらえんよ!」
「ちーがーう! こっちのもっと大切なのを貸してくれたんだから、お礼に貸すんだよ! あいこでしょう? 次会った時に交換するから、大事にしててね!」

 私は胸を張る。空威張りという奴だ。

 じつはこれを貰った時に、結構本気で無くさないよう注意を受けている。それも何度も念入りに、だ。もし無くした場合どうなってしまうのか?

 いま、渡そうとしつつも、どきどきしていた。寝起きからある微熱が、判断能力を低下させ、さらにその場の勢いと、何より、あやつをこのままにしてはいけないという使命感が、『やっぱりやめた』と口から出るのをとどめているのだ。

 私は、さらに自分をだまそうと言葉を重ねる。

「銅よりも銀。銀よりも金。お返しの時はさ、金より素敵な物も付けてもらうからね!!」
「は? いや、だから、こんな大事な......」

 突き返そうとする手を私は上から握った。

「プラチナがいいなぁ、うん、今から楽しみにしとく。だからさ、また持ってきてね。私は金の何かを用意するから!!」

 少し上目遣いで言う。あやつはそれで笑ってしまった。

「も、もうもう、そんじゃ、うん。もらっとくわ」
「あげないって! 借りたから貸すんだからね! 何年か後にこれ、返すから、ちゃんと返してよ! 次に会った時に! 10年くらい先に、だよ!」
「もう、もうもう......」

 そして、あやつは笑った。

「辛い話できへんやない......」
「いいのさ、じゃあ辛くなくなればいいじゃん」

 私はへの字口である。
 ただし心の片隅に『おそらく、もう会えないんだろうな』という、予感的なものがじわじわと匂い漂っている。それがとても不快で、何とか振り払おうと、私はムリからに笑った。

「だから、約束だからね! 返してよ!!」

 あやつは一度下を向く。

「せやな......辛くなくなるようにすれば、ええんやな!」

 そして顔を上げた時はちょっと見ないくらいカッコいい笑顔だった。

「あんたのそういうところ、好きやねん」

 何だか解らないが、私は照れてしまった。

「あ、ありがとう」
「自分はどうなん?」

 茶化してもいいのだとは思う。しかし、私はそれが出来なかった。

「好き、だよ」
「ふふっ、おもろいなぁ! あんた、おもろいわ!!」

 私は少し憮然としている。そして、言った。

「絶対、10年くらい後に、また会おうね!」
「せやな!」


**―――――
「ふぅん......」

 妹が、メダリオンを眺めている。

「と、言う訳なんだよ」
「......その後、音沙汰って」
「無いなぁ」
「そっか......」
「金のメダリオン、用意してたっけなぁ?」
「あー、金メダル、今から取る?」
「どうやってだよ?」
「むぅ......」

 妹が言葉を探しているように思う。

「けどさ、悪い病気だったの?」
「おかんの家と言ってたからさ、多分もっと、もっと、治せる所へ行ったと思う」
「......ふむ」
「あやつの前ではさ、私も治るものだと思ってたんだよ」
「うん」
「でもね、次の日にはベッドが空になっててね」
「うん......」
「............」

 あいつだけが消えて、空のベッドが残っていた。それが、私には衝撃的だった。その日おかしかったのは、心が受けた衝撃を、上手く消化できなかったからである。

 暫くのあいだ、あやつがいきなり居なくなったベッドを、私はぼんやりと見つめていたんだ。昨日まで仲良くしていた人が消えてしまって、とても怖かった。空っぽのベッドと......もう少ししたらあいつもまた消えてしまう。
 その時、私はあの場所での生活を、恐ろしいと感じてしまったのだ。

 それに、身内である筈のあいつは平然としていたのが、私は気に入らなかった。あやつが思い悩むくらいのことを、知らないのだろうか? ご家族なのに!? これは私の勝手な思いである。だから、言葉にできず、態度に出した。あいつが止めるのを意地を張ってしまった。
 夕暮れの屋上に行きたくなったのも、あやつの言葉を覚えていたからである。無理からに上って、落ちて、あいつや多くのひとに迷惑となる行動をとってしまった。
 あの、胸に迫るあやつの態度と、言葉が私を責めたてる。

「私もね......怖かったのさ............」
「そう、ねぇ......でも、あいつちゃんは、どうだったのかしら?」
「え?」
「平気でいた理由とか、なかったの?」

 その言葉で、私は少し首をひねる。

「......あいつは、あっけらかんと治るものだって信じてたみたいだね」
「へえ?」
「私も、治ると思ってた。......けど現実に消えてしまったベッドをみてさ、衝撃を受けたってこと、だよ」
「そっか」

 私は小さく笑った。そう、あいつだって、何も感じてないわけがなかったのに、ね?

「......でね、あいつの退院の日が来たのさ」

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