博士の愛しき発明品たち!

夏夜やもり

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3 博士はネコ耳天使に興味があります(製作的な意味で)

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「えっと……博士」
「なんじゃ?」
「妹を真の姿に戻すのは良いのですが、気になる事があります!」

 妹がじとりとにらんでくるのをふるふると首を振ってスルーし、私は博士に向き直る。

「人体への影響は大きいでしょ!」
「見た目以外はただちに影響はないぞ!」
「ふむ……」

 私は少し首を傾げて考える。うーむ……生えてきたツノが抜けるってなら、オシャレ革命の一助になるかもなだよなぁ?
 妹専用だし。

 あと、ナノマシン?
 現存するのか良く解んないけど、『骨を伸ばす』って部分だけを聞いてるとヤバイくらい需要があるかもしれない。妹専用だということを考慮すると……。

 思考の途中で、妹が割って入る。

「ふむじゃないでしょ!? あたしが被害受けたら、飛び火する人がだれかわかってんでしょうね!」
「ぬぇっ!? いや、その、突っ込みどころをなんとか模索しようと……」

 私の内心を読み取ったかのように、妹がつっこんできた。

「ただのぉ、半年で抜けるようにするつもりじゃが、儂の意見としては無駄だし、意味がわからん!」
『うん、アポトーシスはちょっとプログラムが難しいね! でも、これはチャレンジするだけの価値があるのさ!』

 アポトーシスって?
 あれー、最近、聞いたことがあるんだけど、何だったっけ?
 たしか、細胞が自動的にお役目を終えるとかそんな感じじゃなかったっけ?

「儂は、生え切り維持が楽で良いと言っとるじゃろ?」
『博士、ロマンだよ! 『儚く抜け落ちる』ってのは、魂にぐっとくる! そして、ロマンの追及こそが、僕を更なる高みへと導くのさ!』
「……ロマンなら、仕方がないのぉ」

 うん……ご友人はもう少しひどい目に合えば良いと思う。
 しかし、その『ツノが生えるけど抜けちゃう機能』って、博士が言いよどむってほど難しい感じだろうか?

「じつはのぉ、儂はこの分野に関しては昔の研究があるのじゃ。だから昔のモノを引っ張り出してきたが……」
「妹が使うに際して、問題があるんですか?」
「だから、使わないって言ってんでしょ!!」

 うん、憤りはわかるからさ、それでも話を進ませましょ? そんな目で妹を見る。

『たった半年で抜け落ちるようになるんだぜ! そりゃ、クリアするべき項目が結構あるのさ!』
「あ! もしかして、抜けてもまた生えてくるんですか!?」
『しっかりと主張したんだがね、博士がNGだしたのさ』

 ああ、よかった……最悪の中の最悪な事態がおきても、妹を半年辱めるだけで済む……ん?
 よかった!?
 あれ? てか、よく考えたら……半年って地味に長くない?

『あとさ、僕は『生え代わり』も好きだ! その要求をつっぱねたのも良く解らないんだぜ!』

 ……駄目だこのヒト。
 てか、そうだ! どどめさん(仮)のダイヤが生え変わるようにしたのって、たしかご友人だっけ!?
 本当に駄目だこのご友人!!

「儂も他の研究があるからの、『生え変わり』とやらには情熱がもてぬよ……」
「どっちにしてもムリよ!! 生え代わりとか悪夢だし! 半年とかも、意味わかんない!! ツノ自体が嫌だってば!!」
「何故じゃ!」
『何故だい!?』
「目立つでしょ!!」
「ツノは目立たんかったら意味がないぞ?」
『そうさ! 大胆なアピールこそが出来る大人の第一歩だぜ!』
「そういう問題じゃないでしょう!!」

 おおー。さすが妹、ちゃんとぶれない。
 私なら、二人がまじめに何故?
 とか言ってきたら、ちょっとだけ迷ってるぞ。しかし、私も助け舟出したいんだが、どう言うべきか悩む。

 妹があるべき姿に戻るってのはちょっとみてみた……いやいやいや!
 罠にははまらないぞ!
 そう、えっとだ。実生活面から攻めてみてはどうだろう?
 たしか妹はバイトの面接とか行きたがってたな!

 思いつくのと同時に、私は口を開いた。

「博士、ツノ生やしてバイトの面接とか行ったら、性格をどれだけ誤魔化ごまかせても落ちます!」

 『どれだけ誤魔化す』って辺りを力を込めて発したためか、妹が表情を引きつらせたように見えたが、まあ気にしない。

「なんと!? 最近はそんなんもダメになるのか?」

 いや、博士が面接担当じゃなきゃねぇ……。
 例えばだけど、接客業の人がツノ生やした人を雇うかな?
 雇う側としたらさ、どれだけその人の印象が良くてもさ、それを雇うって相当な賭けになるでしょ!?

 そういった博打を打ってくれるオーナーってどれ位いるんでしょうね?
 てか、そういったオーナーのいる場所に、妹を勤めさせたくないです。私。
 内心の思考を奥へやり、私は断定した。

「当然です。妹、並びに私たちの生活をダメにするつもりですか?」
「む、むむ……!? そ、それは、ツノを受け入れてくれる、バイト先を探すのはどうじゃ?」
「何処にそんなのあるのよ!? そもそも、そういう問題じゃないでしょ!!」
『だから言っただろう! 博士、僕が押してた、ちっちゃかわいい感じのデザインにしようぜ!』

 そういう問題でもないぞ?
 ご友人、あなた口を開くたびに好感度下がってるの、解ってますか!?

「お主は本当ぶれないの? しかし、悪魔のつのは羊の巻きツノが似合うと思わんか?」

 言いながら、資料からツノの写真を見せる。これは羊の……ビックホーンとかいうコメントがついているものだった。
 写真からだと寸法などがピンとこないけど、私は昔、斉藤さんがもらってきてた現物を見た事がある。あれは、ちょっと引くくらいぐるぐるの、で~っかいツノだった!

 しあれって、たしか人の頭くらいの大きさで、見た目のインパクトもすごかったんだよ!?
 あと、結構重かった気がするなぁ……。
 うーむ……妹が間違って付けられたら頭ぐわんぐわんなりそう。
 ……いや、それよりだ!
 博士ってばこれでもかって程、目立たせる方向だったの!?

 もうほんと、自分でつければいいのに!?
 不便な生活を実体験してから、人に薦めてよ!!
 こんなの付けて狭い通路で振り返ったら、ぶつかって頭揺れちゃうぞ!?

『僕としては鬼っ子の髪からちょっと飛び出てる、カワイイが大好物なのさ! 小指くらいの三角ツノが良いぜ!』

 あの、ご友人……そういったフェチズムを満たしたいなら、カチューシャとかで十分でしょ?

「お主の趣味は知らん! 良いか? この発明は、骨組織をどれだけ自在に操るかが楽しいのじゃ! ちっちゃいのは、簡単じゃろうが!」

 あれあれ? この発明ってフェチズムから発してたんじゃなかったのかな?
 博士の場合は技術家特有の作ることに陶酔しちゃったってやつ?

「それに、趣味で言えばあの巻き具合こそがぐっと来る! お子様を小悪魔に変える、蠱惑的なカーブが解らんのか!?」

 ……やはりフェチズムだった!?
 しかし、どうしよう?
 私、もうそろそろお腹いっぱいなんですが……。

 とおもったら、二人で何か言い合いしている。

『博士、僕の提案も聞き入れてくれよ!』
「カルシウム消費を抑えるという意味で、小指くらいのものでもええ。ただし、デザインはゆずれん!」
『いやいや、あのデザインで小型のツノは……ちょっとみっともないよ!』
「あのカーブを形作る汎用性を持たせる為に、どれだけ苦心したと思うのじゃ!」
『そ、それはまあ、僕も携わってるからわかるよ? けどカルシウム消費の軽減も考えなきゃだし、小指程度の三角が、体にとっても……?』
「駄目じゃ!」

 んー? カルシウム消費とか言ってますね……何処から消費するんだろ?
 もし、リソースが妹の体とかだったら、ツノ生やしたらほかの骨とかスッカスカになるんじゃ!?

 うん。だとしたら、これは世に出してはいけないだろうな。悪魔の妹はちょっとだけ見てみたい気はするけど、これは率先して破棄するべきだろう……。

 私はその気持ちを新たに抱き、ハンマーを確かめる。何か白カラスさんが気持ち震えたようだ。

「とりあえず、写真を送るから立体モデリングを頼むぞ!」
『……わかったぜ! ちょっと遊び心も入れていいかい?』
「それはちゃんと儂に見せるのじゃぞ!?」
『もちろんだぜ!』
「もし作っている最中に、変わったことに気付いたら、預かっている植物は枯らすからの!」
『ちょ、ダメだぞ!博士!! あれは僕の研究の集大成じゃないか!!』
「しらん。というか、儂はお主の遊びごころで7回ほど痛い目みとる! もうそろそろ、儂もだまされんぞ!」

 博士……えっと……えええっと……。

「あれ、ブーメランだよね」

 妹がぼんやりつぶやくので、私も息を吐いた。

「うん。似た者同士だからね、仕方ないよ……」
「てかさ、もう壊したい」
「だから、ひとつひとつは面倒だしさ、全部見てからだよ?」
「うーむ」

 妹は何やら難しいそうな顔をしている。

「どした? 頭にツノ生やしたくなったの?」
「いらない!」
「さよけ……じゃあどうしたのさ?」
「いや、次は天使かぁ……とおもってさ」
「うん? まあたぶん、そうなんだろうけど、ね?」
「本当、しみじみと思うけどさ……似合わないなぁ」

 私の顔を見てから、本当にしみじみとつぶやいたその言葉を、私はぐぬぐぬしながら聞かなかったことにする。ただし、心の中のいずれ仕返しノートに刻み込むことだけは忘れない。

「ソダネー。さっさと確認しようか」
「……うん」
「あの、博士! ちょっといいですか?」

 私が声を掛けると、二人は止まる。

「どうしたんじゃ、ひみっちゃん」
「発明はまだあるんですよね?」
「うむ! あと一つのこっとるぞ!」
『天使の輪だね! 僕も、こんな開発は初めてでさ! 本当に驚かされてるぜ!』
「それで全部かしら?」
「うむ! ひみっちゃん、いもっちゃんドレスアップ計画は、それで全部じゃ!」
「それでは、それも見せてください」
「わかったぞ! ちょっとまっとてくれな!」

 私の促しに、博士はだかだかと駆けていく。
 さあ、あと一つだ! もう少し頑張らなきゃならないようだなっ!!
 私は小さく息を吐き、気合を入れ直した。
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