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第4章(最高の仲間と迎える終焉編)

詩の願い

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 こんな道端のど真ん中で、雨合羽を着た子供と仲間をかけた命懸けの試練みたいなのに挑むなんて思わかなったよ。

「で、俺は仲間との絆を証明する為に何をすればいいんだ?」

「簡単だよ!  この世界の何処かに囚われている仲間の元に行けば、そこに答えがあるはずさ。但し、その世界は自分にとって都合のいい世界に書き換わってるけどね」

「自分にとっての都合のいい世界?  それって、どんな世界なんだ?  うーん……考えても良くわかなんないしまっ、いいか。ところでさぁー、俺お前と確かに前に会ったようなき……」

「準備はいいかな?  そんじゃあ、君を友達のいる世界に飛ばしちゃうぞ!」

「うわぁ?!
 って、人の話は最後まで聞けよなっ!」


 全く……彼奴、本当に勢いよく俺をど突きやがったよ。子供っていうのはほんと、手加減っていうものをしらないよな。

 ん?!  全ての物が逆さまに見えるぞ。なんでだろう?  あぁ……なるほど、俺がきっと逆さまになってるからなんだな。

「よっこらしょ」

 で、ここは一体何処なんだろう?
 回りは高層ビルだらけだし、俺以外人っ子一人いないし、全くなんちゅー場所に飛ばしてくれるんだよ。大体、あの雨合羽着た子供は説明が不十分なんだよ。もっと、こうしっかりと説明してくれなくちゃ、わかんないだろうが!

「ねぇー、そこの君うちのチームに入らない?」

「えっ!?  その声もしかして詩なのか?  そうなのか?」

「ん?」

「やっぱり詩だ!  無事でいてくれてほんと良かった」

 いや、しかしこんなに早く詩に会えるとは思ってもみなかった。あの子供が命懸けみたいな感じで言うから、てっきり激ムズな試練とか思っちゃったじゃんか!  けど、意外と簡単な試練なのかもしれないな。

 よし!  詩を見つけた事だし、一刻も早くこの場所から一緒に出れば……。

「えーっと、私あなたと前に何処かで出会った事あるかな?  うーんっとね、やっぱり思い出せない」

「なんですと?!」

 まさか、詩が俺の事を覚えていないなんて、そんな事あるのかよ!?  いや、この変わった世界ならありえるのか……。俺も一瞬忘れかけた事があったから人の事はいえないよな。でも、詩が俺の事覚えていないのは、ちょっとショックだったな。この試練って奴は、ただ仲間を見つけて連れ帰るだけじゃダメなのか……。

 それなら、どうすればいいんだよ?

「随分手こずってるようだね」

「ん?!  俺に仲間の絆を証明しろって言った子供が何のようだよ?」

「ヒントを上げようと思って来たんだ! 彼女が君の事を覚えていないのは当然なんだよ 。ここは彼女自身が創り出した世界だからね。ちなみに、僕は部外者なので彼女から姿は見えていません」

「ここが詩の創り出した世界……。ならなんで、詩は俺の事忘れてるのに俺は詩の事を覚えていたんだ?」

「君が彼女や仲間の事を覚えていられるのは……えーっとね、あったあった。この砂時計のお陰なんだ。この砂時計に君の仲間の記憶が入ってるんだ」

「いつの間にそんな事を」

「僕は天才だからね!  この砂が落ちている間は、君は大切な仲間の記憶を忘れる事はない。但し、全ての砂が落ち切った時、記憶は忘却の彼方に還るんだ。覚えておくように、じゃあ頑張って!」

「えっ?!  ちょっと待って、ヒントってそんだけかよ」

 あぁ、行っちゃたよ。
 とりあえず俺は、砂時計が全て落ち切る前に仲間全員を助けださなきゃいけないんだよな。

 よし、やってやろうじゃないか!

「私、記憶力はいい方なんだけど……まっ、いいや!  それより、チームの皆に紹介したいから早く秘密基地に行こうよ」

「うん」

 でも、やっぱり詩は詩だ!
 俺の事を忘れていても、詩の優しさはこの世界でも変わらない。

「着いたよ」

「あっ、うん。ここは……」

「じゃじゃーん!  ここが私達チームの秘密基地だよ」

 詩が案内してくれた秘密基地は、俺が初めて仲間に入れてもらったあの時の場所だった。忘れられるはずがない……だって、ほら懐かしい人達が俺の目の前にいる。

「響にたっくんに直人さんに楽、皆がいる……」

 急に涙が込み上げてきて止まらないよ。いない筈の皆がここにはいる。例え詩の創った世界でも、やっぱり皆に会えると嬉しくて涙が止まらない。

「うわぁ!?  コイツ涙と鼻水垂らしながら喜んでるよ。気持ち悪い奴だな……。そんで、この変な奴誰なんだよ詩?」

「あのね、響!  それが、とっても不思議なんだけどね、私の勘がこの人は戦力になるって言ってるの」

「ボクはちっともそうは思わないけど。詩お姉ちゃん、今からでも遅く無いから追い返したら?」

「ちょっと、皆!
 詩は確かにドジでおっちょこちょいだけど、誰よりも人を見る目は優れていると僕は思うよ」

「たっくん、ありがとう!
 けど、褒めらてるのか貶されてるのかちょっとわかりにくかったけど」

「ごめんごめん詩。君は優し子だよ」

「ハハハハッ……」

 皆の声や笑い声を聞くと何だか安心するし、いつまででもココにいたいと思ってしまう。

「新入り大丈夫か?  立てるか?  えーっと……」

「ありがとう直人さん」

 だけど、ごめんな詩……。
 ここに詩が居たと願っても、この温かな場所はもうないんだよ。俺も絶対に失いたくなくなかったのに失ってしまった。どんなに願っても、ここはもう俺達の帰るべき場所じゃないんだ。

 だから……。

「詩、俺達のいるべき場所に一緒に帰ろう」

「ちょっと、おかしな事言わないでよ……。私の大切な人達が皆、ここにはちゃんといる。いつまでも変わらない世界。ここが私のいるべき場所なんだよ」

「うん、俺もいつまでも居られならここに居たいと思うよ」

「なら、なんでそんな風に言うの?」

「俺も詩も沢山見てきただろ?
皆が命を懸けて仲間を守り、共に戦い紡がれた心の繋がりは消えないし、この世界にはないんだ。それに、皆は俺達に夢と希望を託してくれたんだ。俺は、それに答えたい」

「私にはもう出来ない、無理だよ……」

「俺も何度も心が折れそうになったよ。だけど、その度に詩が言ってくれた仲間との心の繋がりを信じる事が出来たから、今の俺がここにいるんだと思う」

「でも……」

「辛いことが多くて信じられなくなる時もあるけど、俺はやっぱり皆の託してくれた思いと共に前に進みたい。それに、彼奴らがここで立ち止まるなんて有り得ない奴らだしな」

「うん、そうだね。  響なんて絶対に止まりそうにないし、皆を引き連れて引っ張っちゃうよね。その後ろに私とたっくんに直人さんにがっくんと君がく着いて続いていく……」

「うん!  未来に俺達がいるべき場所にこの思いを連れて行こう、詩」

「今、私はっきりと思い出したよ。私の大切な人達はここにはいなくて、私の中にずっとあり続けている。だけど、大切な事を思い出す度にどうして心がこんなも切ないのかな……」

「大丈夫だよ詩、俺が着いてるから一緒にこの世界を乗り越えよう」

「うん、律君ありがとう」


「おめでとう!  パチパチパチ」

「うわぁ?!  びっくりした。
 いきなり出てくる奴があるかよ」

「ごめんごめん。
 君は見事に世界に囚われた仲間を解放し、仲間との絆を証明出来たようだね」

「そっか俺、詩を救い出せたんだな。
 って、あれ?  詩はどこいった?  さっきまで俺の隣にいたのに」

「この子の魂は、一旦僕が預かっておくよ」

「お前に預けても大丈夫なのかよ?」

「全く君は疑い深いなぁー。
 そんなに言うなら返してあげてもいいけど、今放てばまた世界に囚われてしまうよ。それでもいいなら返そうか?」

「それなら、お前に一旦預けておくよ。言っとくけど、一旦だけだからな」

「はいはい」

 なんとか詩を助け出せたけど、俺一人じゃあ無理だったよ。皆との心の繋がりがあったからこそ、詩をこの世界から助け出せたんだと思う。

 響、たっくん、直人さん、楽……ありがとう!

「悪いけど感傷に浸ってる暇はないよ。次行くよ、次」

「わかってるよ」

 俺が最初に出会えたのが、響にたっくんに直人さんに楽で本当に良かったよ。皆と出会えた事ずっとずっと忘れない。
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