上 下
174 / 180
決戦編

斬られ役、ケリをつける

しおりを挟む

 174-①

〔「ほう……あの二人を一撃で倒すとはな……貴様、一体何者だ?」〕
「唐観武光……天下御免の斬られ役や!!」
〔「斬られ役……? フッ、ならば存分に斬り刻んでやろう!!」〕
「ケッ!! 俺に斬られてほしかったらなぁ……ギャラとして百億万円用意しろっちゅうんじゃーーー!!」

 武光とリヴァルは互いに剣を構えた。武光は八双、リヴァルは右の脇構えである。

 ナジミは心配そうに胸の前で手を組み、武光を見つめていた。それに気付いた武光が、リヴァルから視線を外さずにナジミに話しかけた。

「心配すんな!! 俺のカッコイイとこ……見とけよ?」
「は、ハイッ!!」
「よっしゃ……行くでイットー!!」
〔応ッ!!〕
「き……消えた!?」

 “バチッ!!”

 ナジミの視界から突然武光とリヴァルが消え、次の瞬間、さっきまで武光が立っていた場所からかなり離れた場所で金属同士がぶつかる甲高かんだかい音と共に、火花が散った。

 それを皮切りに、あちらこちらで金属音が響き、火花が散る。

「ま、まさか……」

 そのまさかだった。『見とけ』など到底無理だった。二人の神速の闘いはもはや到底肉眼で追える速さではなかった。
 互いにアホみたいな速度の斬撃を繰り出し、紙一重でかわし、瞬時に斬り返す。
 ほんの一瞬……いや刹那ですら気を抜いたら即座に斬られる闘いの中で、武光はニヤリと笑っていた。

〔「何が可笑しい……?」〕

 凄まじい速さの刺突をさばきながら、武光が答える。

「いや、流石やなと思ってな……」
〔「当然だ、我は勇者の聖剣──」〕
「お前やない、ヴァっさんや。お前に操られてなかったら、多分俺、もうとっくに斬られて死んどるわ」
〔「貴様……!!」〕

 二人の闘いは更に激しさと速さを増してゆく。

 もはや次元のちがう戦いを前に、ミトとリョエンは動けずにいた。

「何て闘いなの……動きが全く見えない……!!」
「これでは援護もままならない……!!」
「くっ、私達に出来る事は何も無いというの……!?」

 自分達には何も出来る事が無いのかと歯噛はがみする二人に対し、ナジミは首を横に振った。

「いいえ、私達にも出来る事があります……!!」
「何なの、それは!?」

 ナジミはミト達の顔を見回すと力強く答えた。

「武光様を……皆で応援しまくるんですっっっ!!」

「お、応援!? そんなのが武光の援護になるというの……!?」
「なりますっっっ、絶対になります!! だって、武光様が言ってました……観客からの声援は、俺にとって何よりの力になるって!!」

 そう言うと、ナジミは武光に向かって目一杯叫んだ!!

「武光様……頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 ナジミの渾身の声援を聞き、ミト達も後に続く。

「武光……負けたら処刑よーーーーー!! 頑張りなさーーーーーい!!」
〔武光さーん、姫様を悲しませたら承知しませんからねーーーーー!! イットー様も頑張ってーーーーーー!!〕
〔ご主人様ーーーーー!! 負けるなーーーーー!!〕
「武光君、頑張れーーーーー!!」
〔カットバセーーーーー!! タケミツーーーーー!!〕

 仲間達の声援を背に受け、武光はフッと笑った。

「……勝ったな、イットー」
〔ああ、この戦い……僕達が勝つ〕
〔「何だと……!?」〕
「今の俺には、最高の相棒と!! 仲間達の声援と!! 俺の為に祈りを捧げてくれる可愛いヒロインがおる!! あと……オマケで神々の力も宿っとるしな!! 皆無ッ……負ける要素が皆無ッッッ!!」
〔ああ……コレで負けるとかありえないね!!〕
〔「ほざくなッッッ!! イットー・リョーダン……『出来損ないのナマクラ』ごときがぁぁぁぁぁっ!!」〕
〔フッ……違うね〕
〔「何だと……!?」〕
〔僕の名前に込められた意味は『出来損ないのナマクラ』なんかじゃない!! 僕の名前に込められた意味は……『一撃で真っ二つ!!』だぁぁぁぁぁっ!!〕

 イットー・リョーダンとショウシン・ショウメイが、激しくぶつかり合い、火花を散らす。

「うおおおおおっ!!」
〔うおおおおおっ!!〕

〔「チッ!?」〕

 ショウシン・ショウメイはリヴァルを後方に跳び退かせ、武光の真っ向斬りを回避した。
 距離を取った両者が再び剣を構え直す……両者の距離、およそ15m。

〔「もうよい、決着を付けてやる……偽聖剣共々、貴様を真っ二つにして、その断末魔を我が復讐の号砲としてやろう!!」〕
「そうは行くか!! お前を倒して……ヴァっさんを救う!!」
〔次が……最後の一撃だ!!〕


「……………………………………………うおおおおっ!!」
〔「…………………………………………オオオオオッ!!」〕

 
 長い間の後、二人は同時に駆け出した。両者の距離がぐんぐん縮まる。


「火術、火炎障壁!!」
〔「ぬうっ!?」〕

 武光がリヴァルの足元に火炎弾を打ち込んだ。噴き上がった炎が壁となって武光の姿を隠す。 

〔「ッ……小賢しいわぁぁぁぁぁっ!!」〕

 ……真っ向斬りか!! ショウシン・ショウメイは炎を斬り裂きながら自身に迫りくる刃を逆袈裟で迎撃した!!


 “……キンッ!!”


 ショウシン・ショウメイの渾身の一撃は、迫り来る剣の刀身を中程から斬り飛ばした。

 遂に……遂にあの憎っくき偽聖剣をへし折った!!

 ショウシン・ショウメイは高らかに笑った。

〔「フハハハ!! やはり最後には正義が勝──」〕

 勝利を確信していたショウシン・ショウメイだったが……

〔ボディがぁぁぁ……〕
「ガラ空きだぁぁぁぁぁっ!!」

〔「なっ!?」〕

 “ドゴォォォォォッッッ!!”

〔「グハァァァッ!?」〕


 武光の 横薙ぎ!
 会心の 一撃!
 リヴァルは 吹っ飛んだ!


 逆袈裟斬りを繰り出し、ガラ空きになったリヴァルの右脇腹に、武光はイットー・リョーダンによる左逆手の一撃を叩き込んだ。
 衝撃でリヴァルはその手からショウシン・ショウメイを取り落とし、直後に床に勢いよく叩きつけられた。魔王の兜も脱げてピクリとも動かない。

 リヴァルの手から落ちたショウシン・ショウメイは再び床に突き立った。

「……終わりや」
〔ここまでだ、真聖剣ショウシン・ショウメイ!!〕

 武光の左手に握られているイットー・リョーダンを見て、ショウシン・ショウメイは声を荒げた。

〔ば、馬鹿な……!? 何故だ……我は確かに偽聖剣を叩き折ったはず……!!〕
「お前が斬り飛ばしたのはイットーとちゃう」
〔なっ……あれは!?〕

 ショウシン・ショウメイは先程自分が斬り飛ばした剣の先が落ちているのに気付いた。だが……刀身の切断面がおかしい。

〔……木だと!?〕
「ああ、お前が斬り落としたのは、俺の竹光たけみつ……《雷光丸らいこうまるMk-13》や」

 ……実は、武光は魔王城潜入にあたり、超聖剣イットー・リョーダン、魔穿鉄剣の他に、もう一振りの刀を持ち込んでいた。

 その三本目……いや、『一本目の』と言った方が正確か……その一振りこそが、武光がこの世界に連れて来られた時に所持していた一本目の刀……芝居用の竹光たけみつ、雷光丸Mk-13である!!

 ……戦いに使うつもりで持って来たわけではない。腰に差していたイットー・リョーダンや魔穿鉄剣と同様、ソフィアに隠形おんぎょうの秘術を施してもらい、お守り代わりとして、背中に背負っていたのだ。

〔おのれ……だが、貴様は親友をその手にかけたのだ!! 一生消えぬ後悔にさいなまれ続けるが良い!!〕

 悔し紛れのショウシン・ショウメイの言葉だったが、それを聞いた武光は、ニヤリと笑った。

 ……一度、言ってみたかった台詞がある。

 武光はショウシン・ショウメイに言い放った。


「安心せい……峰打みねうちじゃーーー!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

聖女マストダイ

深山セーラ
ファンタジー
あたし、レイディーン・マリアライト。エスパダス王国の城で仕える侍女。性格は、人よりちょーっと喧嘩っ早くて、お調子者ってとこかな。 あるとき城の倉庫で見つかった聖剣と契約して聖女になっちゃった。 しかしその聖剣がエスパダス王族を消したいらしくて、このままだと操られたあたしが王女様たちを惨殺してしまう恐れがあり、ちょー危険。 国家転覆の危機を避けるため渋々城を出たあたしは、聖剣一振りと森で出会ったやたら訛ってる獣人クンと旅をすることになるのだった。 『女、私から逃げられると思うな』 「ご主人! おれ一生ご主人について行くけぇのぉ!」 「……いつになったら城に帰れるのかなあ」 お調子者聖女と方言訛り獣人と喋る聖剣います!

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

異世界の力で奇跡の復活!日本一のシャッター街、”柳ケ瀬風雅商店街”が、異世界産の恵みと住民たちの力で、かつての活気溢れる商店街へと返り咲く!

たけ
ファンタジー
 突然亡くなった親父が残した錆びれた精肉店。このまんま継いでも余計、借金が増えるだけ。ならいっそ建物をつぶして、その土地を売ろうとえ考える。  だが地下室の壊れた保冷庫から聞こえる謎の音。ひかれるように壊れた保冷庫の扉を開けると、そこは異世界につながっていた。  これは異世界から魅力あふれる品物や食品を持ち込み、異世界で知り合った仲間と共に、自分のお店や商店街全体を立て直していく物語。  物語の序盤は、違法奴隷や欠損奴隷、無理やり娼館で働かせられているエルフや人族、AV出演を迫られている女性などを助けていく話がメインです。中盤(100話以降)ぐらいからやっと、商店街を立て直していきます。長い目でお付き合いして頂けるとありがたいです。  また、この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、企業、地名などとは一切関係ありません。また、物語の中で描かれる行為や状況は、著者の想像によるもので、実際の法律、倫理、社会常識とは異なる場合があります。読者の皆様には、これらをご理解の上、物語としてお楽しみいただけますと幸いです。

転生特典:錬金術師スキルを習得しました!

雪月 夜狐
ファンタジー
ブラック企業で働く平凡なサラリーマン・佐藤優馬は、ある日突然異世界に転生する。 目を覚ますと、そこは見知らぬ森の中。彼に与えられたのは、「錬金術師」としてのスキルと、手持ちのレシピブック。 素材を組み合わせてアイテムを作る能力を持った優馬は、錬金術を駆使して日々の生活を切り開いていく。 そんな彼のもとに集まったのは、精霊の力を持つエルフの少女・リリア、白くフワフワの毛並みを持つ精霊獣・コハク。彼らは王都を拠点にしながら、異世界に潜む脅威と向き合い、冒険と日常を繰り返す。 精霊の力を狙う謎の勢力、そして自然に異変をもたらす黒い霧の存在――。異世界の危機に立ち向かう中で、仲間との絆と友情を深めていく優馬たちは、過酷な試練を乗り越え、少しずつ成長していく。 彼らの日々は、精霊と対話し、魔物と戦う激しい冒険ばかりではない。旅の合間には、仲間と共に料理を楽しんだり、王都の市場を散策して珍しい食材を見つけたりと、ほのぼのとした時間も大切にしている。美味しいご飯を囲むひととき、精霊たちと心を通わせる瞬間――その一つ一つが、彼らの力の源になる。 錬金術と精霊魔法が織りなす異世界冒険ファンタジー。戦いと日常が交錯する物語の中で、優馬たちはどんな未来を掴むのか。 他作品の詳細はこちら: 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】 『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/270920526】

プレアデスの伝説 姫たちの建国物語

のらしろ
ファンタジー
 主人公の守は海上警備庁に奉職すぐに組織ぐるみの不正に巻き込まれて、表敬航海中にアメリカで降ろされる。  守の友人である米国海兵隊員の紹介で民間軍事会社にとりあえず就職するが、これまた航海中に大波に攫われて異世界に転生させられる。  転生直前に、カミサマと思しき人から転生先の世界に平和をと頼まれ、自身が乗っていた船と一緒に異世界に送り込まれる。  カミサマからの説明はとにかく長く要領を得ずに分からなかったが転生直後にこれまた別の神様が夢に現れて説明してくれた。  とにかく、チート能力は渡せないが、現代社会から船を送るからそれを使って戦乱続く異世界に平和を求められる。  訳も分からずたった一人大海原に送り込まれて途方に暮れたが、ひょんなことから女性を助け、その女性からいろいろと聞かされる。  なんでもこの世界の神話ではプレアデスの姫と呼ばれる6人もの女性が神より遣わされる男性の下に嫁ぎ国を興すすとき神より大いなる祝福を受けるとあり、初めに助けた女性を皮切りに巡視艇を使って襲われている人たちを助けて、助けていく人たちの中にいるプレアデスの姫と呼ばれる女性たちと一緒に国を興す物語になっております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

処理中です...