69 / 180
攻城編
斬られ役、傀儡と戦う(後編)
しおりを挟む69-①
すんでの所で、リョエンとナジミが追いついてきた。
「無事ですか!? 武光君、ひ……じゃなかった、ジャイナさん!!」
「せ、先生……ナジミ!! た、助かりまし……うおっ!?」
燃え盛る炎の中からムカクが姿を現した。あれだけ激しい炎に包まれたにもかかわらず、ムカクはまるで傷付いていなかった。
「ゲェーッ!? う、嘘やろ……先生の炎龍が効いてへん!?」
驚愕する武光達をセンノウが嘲笑う。
「見たか!! ムカクの鎧は儂が魔術を用いて《対術加工》を施した鉄壁の鎧、火術はもちろん、水術も、地術も、風術も……術による攻撃ではムカクにカスリ傷一つ負わせられぬわ!!」
「……ならば!!」
リョエンはすぐそばの地面に突き立ててあった機槍テンガイを抜き、穂先をムカクに向けて正眼に構えた。四術に対する備えは万全でも……編み出されたばかりの雷術に対する防御策は立てていないはずだ。
「武光君から教わった《アシガル流槍術》……今こそ披露しましょう!! 行きますよ、テンガイ!!」
〔ハイヨロコンデー!!〕
(右手は固く……左手は柔らかく握る!! ……腕だけではなく、膝と腰……全身を使って……!!)
武光に教わった事を頭の中で反芻しながら、リョエンはムカクに接近した。
「腰を落として……目標をしっかりと見据えて……突くッッッ!!」
〔シニサラセーーー!!〕
“ガァン!!”
「うわっ!?」
〔カタイッ!! マジウケル!!〕
雷導針を打ち込むべく繰り出されたリョエン渾身の刺突は、ムカクの分厚い鎧に弾き返されてしまった。
「くっ……ならばっ!!」
一旦跳び下がってムカクと距離を取ったリョエンは、左右の手をスライドさせるようにしてテンガイを持ち替え、石突き(=槍の穂と反対側の端)を空に向けて構えた。
「とおっ!!」
〔イシヅキ シャシュツ!!〕
釣り針を水中に投げ込む要領で、リョエンがテンガイを縦に振るうと、石突きの部分が外れた。
柄と鋼線で繋がった石突きが、ムカク目掛けて飛んで行く。
ムカクは咄嗟に両手で鎖をピンと張り、頭上から飛来する石突きを防御しようとした。鎖斧の鎖とテンガイの鋼線が絡まる。
「今だ!! 雷術……《走電閃》ッッッ!!」
テンガイから伸びた鋼線……《送雷鋼縄》を伝って、電撃がムカクに襲い掛かった。
電撃を浴びたムカクは武器を取り落とした後、ガクリと両膝を地面に着くと、天を仰ぐような格好のまま動かなくなってしまった。
「よし!! トドメだ……って、あ、アレッ!? か、絡まった鎖斧が重くて……う……動けない!?」
〔コノ ナンジャクモノッ!!〕
「リョエンさん、ここは私が!! 武光!! 貴方は絡まった鎖を何とかしなさい!!」
「お、おう!!」
ミトは、カヤ・ビラキを左脇に構えると、ムカク目掛けて突進した。いかに全身が分厚い鎧に覆われていようとも、関節部分までは完全には覆えない筈だ。
「でやぁぁぁっ!!」
ムカクの懐へ飛び込んだミトは、がら空きになった首を狙って、左脇構えからの逆袈裟斬りを繰り出した。
“ガッ!!”
間一髪、意識を取り戻したムカクは顎を引いて、咄嗟に鉄仮面で斬撃を防ごうとした。ミトの斬撃が、ムカクの仮面を弾き飛ばす。
「……そんな!? 貴方は……っ!!」
仮面の下から現れた顔を見て、ミトは一瞬言葉を失った。
「……ベン!! ベン=エルノマエ!!」
ムカクの正体は、ボゥ・インレでの戦闘で生死不明となっていたベン=エルノマエだった。
「ああ……ベン、良かった……貴方生きて──」
正体を知ったミトは剣を引き、その手をベンに触れようとした……が!!
〔姫様!! 下がって!!〕
カヤ・ビラキの声を聞いて、ミトは反射的に後方に跳び下がった。
直後、ミトの立っていた場所に岩の如き拳が振り下ろされた。その一撃は、先程までとは打って変わって殺意に満ちたものだった。
ゆらりと立ち上がったベンが、背負っていた長柄の大槌を手に取った。怪力に任せて大鎚を振り回し、ベンがミトに襲い掛かる。
「ベン!? どうしたの!? 私が分からないの!? ベン!!」
ミトは必死に呼びかけるが、ベンの攻撃は止まらない。
「お願いベン!! やめて!!」
〔姫様、きっと彼はあの死霊魔術師に操られているのです〕
「そ、そうね!! あいつさえ倒せば……って、うぇぇっ!?」
ミトの視線の先では、ナジミがセンノウをボコボコにしていた。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
二人の転生伯爵令嬢の比較
紅禰
ファンタジー
中世の考えや方向性が強く残る世界に転生した二人の少女。
同じ家に双子として生まれ、全く同じ教育を受ける二人の違いは容姿や考え方、努力するかしないか。
そして、ゲームの世界だと思い込むか、中世らしき不思議な世界と捉えるか。
片手で足りる違いだけ、後は全く同じ環境で育つ二人が成長と共に周りにどう思われるのか、その比較をご覧ください。
処女作になりますので、おかしなところや拙いところがあるかと思いますが、よろしければご覧になってみてください。
【味覚創造】は万能です~神様から貰ったチートスキルで異世界一の料理人を目指します~
秋ぶどう
ファンタジー
書籍版(全3巻)発売中!
食べ歩きだけが趣味の男、日之本巡(ひのもとめぐる)。
幻の料理屋を目指す道中で命を落としてしまった彼は、異世界に転生する。
転生時に授かったスキルは、どんな味覚でも作り出せる【味覚創造】。
巡は【味覚創造】を使い、レストランを開くことにした。
美食の都と呼ばれる王都は食に厳しく、レストランやシェフの格付けが激しい世界だけれど、スキルがあれば怖くない。
食べ歩きで得た膨大な味の記憶を生かし、次から次へと絶品料理を生み出す巡。
その味は舌の肥えた王都の人間も唸らせるほどで――!?
これは、食事を愛し食の神に気に入られた男が、異世界に“味覚革命”を起こす物語である。
異世界の力で奇跡の復活!日本一のシャッター街、”柳ケ瀬風雅商店街”が、異世界産の恵みと住民たちの力で、かつての活気溢れる商店街へと返り咲く!
たけ
ファンタジー
突然亡くなった親父が残した錆びれた精肉店。このまんま継いでも余計、借金が増えるだけ。ならいっそ建物をつぶして、その土地を売ろうとえ考える。
だが地下室の壊れた保冷庫から聞こえる謎の音。ひかれるように壊れた保冷庫の扉を開けると、そこは異世界につながっていた。
これは異世界から魅力あふれる品物や食品を持ち込み、異世界で知り合った仲間と共に、自分のお店や商店街全体を立て直していく物語。
物語の序盤は、違法奴隷や欠損奴隷、無理やり娼館で働かせられているエルフや人族、AV出演を迫られている女性などを助けていく話がメインです。中盤(100話以降)ぐらいからやっと、商店街を立て直していきます。長い目でお付き合いして頂けるとありがたいです。
また、この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、企業、地名などとは一切関係ありません。また、物語の中で描かれる行為や状況は、著者の想像によるもので、実際の法律、倫理、社会常識とは異なる場合があります。読者の皆様には、これらをご理解の上、物語としてお楽しみいただけますと幸いです。
召喚勇者の餌として転生させられました
猫野美羽
ファンタジー
学生時代最後のゴールデンウィークを楽しむため、伊達冬馬(21)は高校生の従弟たち三人とキャンプ場へ向かっていた。
途中の山道で唐突に眩い光に包まれ、運転していた車が制御を失い、そのまま崖の下に転落して、冬馬は死んでしまう。
だが、魂のみの存在となった冬馬は異世界に転生させられることに。
「俺が死んだのはアイツらを勇者召喚した結果の巻き添えだった?」
しかも、冬馬の死を知った従弟や従妹たちが立腹し、勇者として働くことを拒否しているらしい。
「勇者を働かせるための餌として、俺を異世界に転生させるだと? ふざけんな!」
異世界の事情を聞き出して、あまりの不穏さと不便な生活状況を知り、ごねる冬馬に異世界の創造神は様々なスキルや特典を与えてくれた。
日本と同程度は難しいが、努力すれば快適に暮らせるだけのスキルを貰う。
「召喚魔法? いや、これネット通販だろ」
発動条件の等価交換は、大森林の素材をポイントに換えて異世界から物を召喚するーーいや、だからコレはネット通販!
日本製の便利な品物を通販で購入するため、冬馬はせっせと採取や狩猟に励む。
便利な魔法やスキルを駆使して、大森林と呼ばれる魔境暮らしを送ることになった冬馬がゆるいサバイバルありのスローライフを楽しむ、異世界転生ファンタジー。
※カクヨムにも掲載中です
転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
虐げられた王の生まれ変わりと白銀の騎士
ありま氷炎
BL
十四年前、国王アルローはその死に際に、「私を探せ」と言い残す。
国一丸となり、王の生まれ変わりを探すが見つからず、月日は過ぎていく。
王アルローの子の治世は穏やかで、人々はアルローの生まれ変わりを探す事を諦めようとしていた。
そんな中、アルローの生まれ変わりが異世界にいることがわかる。多くの者たちが止める中、騎士団長のタリダスが異世界の扉を潜る。
そこで彼は、アルローの生まれ変わりの少年を見つける。両親に疎まれ、性的虐待すら受けている少年を助け、強引に連れ戻すタリダス。
彼は王の生まれ変わりである少年ユウタに忠誠を誓う。しかし王宮では「王」の帰還に好意的なものは少なかった。
心の傷を癒しながら、ユウタは自身の前世に向き合う。
アルローが残した「私を探せ」の意味はなんだったか。
王宮の陰謀、そして襲い掛かる別の危機。
少年は戸惑いながらも自分の道を見つけていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる