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最後の決着編
映像、製作される(後編)
しおりを挟む277-①
昼になり、ロイの焼いた最強パンで腹ごしらえを済ませた一同は、幾つかの班に分かれて作業に取り掛かった。
武光とナジミは、顔に続いて体型をシルエッタに似せようとしている影光に色々とアドバイスをしていた。
「影光さん、肩幅が広すぎます。もう少し狭く出来ます?」
「それと、あともうちょい背ぇ低くして、腰回りも気持ちシュッと出来るかー?」
「こんな感じか……?」
「うん、ええんとちゃうか。それとやな……お○ぱいはもっと柔らかく、かつ弾力を持たせるんや!!」
「こ、こうか……!?」
武光は影光の胸に手を触れた。
「……全然アカン!!」
「そんなにか!?」
「おう!! ナジミのはもっとこう──」
「ぎゃーっ!? なななな何を……言ってるんですかーーーっ!?」
「うげぇっ!?」
ナジミの ジャーマンスープレックス(に酷似した技)!!
痛恨の 一撃!!
武光は ぶっ倒れた……
「武光様のバカーーーっ!! もういいです、私がやります!! 大きさはこれくらい……いや、まだ本物の方が大きいですかね……うーん、もっと………………きぃぃぃぃーっ!!」
「いや、嫉妬すんなし!?」
シルエッタに似せるべく自らの手で盛り上げた影光の胸を、ナジミは逆水平チョップで凹ませてしまった。
そんな中、ナジミのおしおきを喰らって、まるでのしいかの様にびたーんとぶっ倒れている武光の所に勇者リヴァルがやってきた。
「……武光殿、少し時間を頂けますか? 出来れば二人きりで話がしたいのですが……」
「ん? ああ、別にかまへんけど」
「隊長!! 私のリヴァル様と一体何の話ですか!?」
「げげっ、クレナ!?」
恋する乙女Bが あらわれた!!
武光達は 逃げ出した!!
しかし まわりこまれてしまった!!
「隊長ズルいですよー!! 私だってリヴァル様とお話ししたいのにーーー!!」
「えーっと、その……ヴァっさんがクレナの事可愛らしいって……なっ、ヴァっさん!?」
「えっ!? ええ、まぁ……」
「~~~っ!? そそそそんな!! 可愛らしいだなんて……きゃーーーーーっ!!」
会心の一撃!!
クレナは 両手で顔を覆って しゃがみ込んでしまった!!
「よし、今のうちや……ちょっと連れションしてくるから!!」
武光とリヴァルは部屋を出ると、近くの小さな空き部屋に移動した。
「武光殿、先程の少女は大丈夫なのでしょうか?」
「はは……まぁ、クレナはヴァっさんの大ファンやからな。もし良かったら後でちょっと話したって。それより、話って何なん?」
リヴァルは、真剣な眼差しを武光に向けた。
「……武光殿は、本当にこれで良いのですか……!?」
「へ? 何が?」
「三年前の大戦では、武光殿は魔王を打ち倒し、此度の争乱でも暗黒樹の核を破壊しました……武光殿は、二度もこの国の危機を救ったのですよ!?」
今一つピンと来ていない武光に対し、リヴァルは更に続ける。
「それなのに……これでは武光殿の功績はまたしても誰にも知られぬままです……本当にそれで良いのですか!? 功績や苦難に対して、あまりにも報われていないのではありませんか!?」
「んー、つまり俺の武功を世の中にアピールして、国中の人達から英雄として称賛されてチヤホヤされるべきだと……?」
「武光殿には……その資格があります!!」
「そっか……うーん……でも、その言葉はそっくりそのままヴァっさんに返すわ!!」
武光の言葉に、リヴァルは呆気に取られた。
「ははは、ヴァっさんは、やっぱめっちゃええ奴やなぁ!!」
「武光殿……何故です!?」
「いや、だって俺は、前にこの世界に連れて来られた時は『元の世界に帰りたい!!』って、必死こいとっただけやしな?」
反論しようとするリヴァルを武光は「まぁまぁ」と宥めた。
「それに比べてヴァっさんは、心の底から純粋に『戦禍に苦しむ人達を救いたい!!』って戦って……数え切れへん程の人々を救ったホンマもんの勇者で……俺の憧れなんや」
「武光殿……」
「俺から言わしたら、ヴァっさんこそ皆に称賛されるべきや。それやのに……俺みたいな『たまたま魔王に最後の一発かましただけの奴』に変に気ぃ使って、隠遁生活までしてたんやろ? そんなもん逆に気ぃ使うわ!! 友達同士やろ、変に気ぃ使い合うのは無しにしよや」
リヴァルはようやくフッ切れたのか、曇りのない笑顔を見せた。
「ははは……そうですね。分かりました、武光殿!!」
「さっき言うてた報われるとか報われへんとかいう話も気にせんでええからな? 今回の件も、俺はもう充分に揉ませて……じゃなかった、報われてるしな?」
話を終えた二人は、軍議の間へと戻った。
それから三日間、武光達は本番で流す戦闘シーン集の編集や台詞合わせなど入念なリハーサルを繰り返し……
影光扮するニセシルエッタは、天映魔鏡によってこの国中の人々が見守る中、遂に公開処刑されたのであった。
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