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最後の決着編
男達、決着を付ける
しおりを挟む269-①
武光に対する、『俺と戦え、拒否する場合は、ナジミを自ら死を望むほど陵辱する』という影光の言葉を聞いて、フリードやクレナ達も憤慨した。
「アニキ、俺達も加勢するぜ!!」
「副隊長に酷い事しようとする人なんて、皆で懲らしめちゃいましょう!!」
武光は首を左右に振った。
「あかん、お前らは手ぇ出すな」
「隊長!? 一体どうしてなんですか!?」
「これは男と男のケンカや。フリード……イットーと魔っつんを頼む」
「…………分かったよアニキ、俺達は手出ししない」
差し出されたイットー・リョーダンと魔穿鉄剣をフリードは受け取った。
「ちょっとフー君!? 何言ってるの!?」
「皆で隊長殿に加勢すべきだ!!」
「み、皆で戦った方が勝率は遥かに上がります!!」
「んだ、確実に敵を倒せる方法があるなら、迷わず使うのが戦の鉄則でねぇか!!」
「バカヤローーー!!」
大声一喝、フリードはクレナを始めとする天照武刃団の女子一同を黙らせた。
「男のケンカってのはなぁ……ただ勝てば良いってもんじゃねーんだよ!!」
「ふふ、よう分かってるやんけフリード」
「当然。俺にはち○ちんが付いてるからね」
「……万が一俺が負けて、アイツがナジミを襲おうとしたら……」
「その時は任せて、俺達で姐さんを守るよ」
それを聞いた武光は小さく頷くと、ネキリ・ナ・デギリと影醒刃を少し離れた場所に置いて戻ってきた影光と向かい合った。
「二人共!! やめて下さい!!」
「あっ、ダメだよ姐さん!!」
「待って!! 行かんといて!!」
ナジミは、フリードの制止を振り切り、対峙する武光と影光の間に割って入ろうとしたが、その前にオサナが両手を広げて立ち塞がった。
「お姉ちゃん!? どうして止めるんですか!!」
「……影光っちゃんの好きにさせたって!! 最後に心残りの無いように……お願いやから!!」
「最後の……心残りって……一体どういう──」
涙ながらに語る姉に、ナジミが理由を尋ねようとしたその時、
「「うおおおおおおおおおっ!!」」
獣のような咆哮を上げて、武光と影光の闘いが始まった。互いに繰り出した拳が互いの額にクリーンヒットし、両者は大きくのけ反ったが、足を踏ん張り、すぐさま闘いが再開される。
殴っては殴り返され、蹴られては蹴り返し、どちらも一歩も退かない激しい闘いが延々と続く。
「はぁ……はぁ……オラァッッ!!」
闘いが始まっておよそ5分、武光が右の拳を繰り出した。その拳は影光の顔面を捉えたかに見えたが……
「獲ったぜ本体……!!」
「くっ!?」
「……らあああああっ!!」
「ガハッ!?」
影光は、武光が繰り出した右の拳を左腕で止め、そのまま腕を取って、一本背負いで地面に叩きつけた。
武光は咄嗟に受け身を取ったものの、背中を叩きつけられたのは柔道場の畳ではない、そのダメージは凄まじかった。
「はぁ……はぁ……今のは……オサナを泣かせた分だ!!」
「オサナ……? 何で今その名前が出てくんねん……うぶっ!?」
立ち上がろうとする武光の脇腹に容赦の無い蹴りが飛ぶ。
地面を転がり這いつくばる武光の背中を踏みつけながら、影光が吼える。
「どうした……こんなもんかよ!! ナジミを陵辱するって言ってんだぞ俺は!? お前がそんなんじゃあ俺は……俺は未練を断ち切る事も出来ないままで……うおっ!!」
影光はバランスを崩した。踏み付けていた武光が立ち上がったのだ。
「はぁ……はぁ……黙って聞いてればぁッッッ!!」
「ぐっ!?」
よろめく影光の顔面に武光の拳がめり込んだ。足を踏ん張り、体勢を立て直そうとする影光の顔面に更に拳が叩き込まれる。
「勝手な事を……抜かすなぁッッッ!!」
「がっ!?」
「そんな事は……死んでもさせへんッッッ!!」
「うぶっ!?」
二発目、三発目と続けて拳が叩き込まれる。
「どんな事があろうとッッッ!!」
「ぐっ!?」
「俺は……アイツをッッッ!!」
「がっ!?」
四発目、五発目、踏ん張り切れず、影光がどんどん後退ってゆく。そして……
「ナジミを……守り抜くッッッ!!」
「ぐはぁぁぁっ!?」
六発目の拳で、武光は影光を大きく吹っ飛ばした。
「はぁ……はぁ……そういう台詞は……俺を倒してから言えってんだ……!!」
影光も再び立ち上がったが、両者共に、膝は笑い、肩は上下し、呼吸も荒い、もう立っているのがやっとの状態だ。
「くそっ……ええかげんにせぇやアホお前……おぅぇっ」
「うぶっ……それはこっちの台詞だ……そろそろ決着付けようぜ……最後の決着を……!!」
両者はよろめきながらも前進し、拳を振り上げた。
「「うおおおおおおおおおっ!!」」
互いに、気力も体力もそして死力をも振り絞って繰り出した拳は、クロスカウンター気味に互いの顔にめり込み、そして……
「…………改めて言わせてもらう、ナジミは俺が守り抜く!!」
「へっ……斬られ役には似合わないぜ、そういうクサい台詞……は……」
めちゃくちゃダサい、しかしながら最高に満足げな捨て台詞を吐いて、影光はドサリと崩れ落ちた。
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