斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
上 下
269 / 282
最後の決着編

男達、決着を付ける

しおりを挟む

 269-①

 武光に対する、『俺と戦え、拒否する場合は、ナジミを自ら死を望むほど陵辱する』という影光の言葉を聞いて、フリードやクレナ達も憤慨した。

「アニキ、俺達も加勢するぜ!!」
「副隊長に酷い事しようとする人なんて、皆で懲らしめちゃいましょう!!」

 武光は首を左右に振った。

「あかん、お前らは手ぇ出すな」
「隊長!? 一体どうしてなんですか!?」
「これは男と男のケンカや。フリード……イットーと魔っつんを頼む」
「…………分かったよアニキ、俺達は手出ししない」

 差し出されたイットー・リョーダンと魔穿鉄剣をフリードは受け取った。

「ちょっとフー君!? 何言ってるの!?」
「皆で隊長殿に加勢すべきだ!!」
「み、皆で戦った方が勝率は遥かに上がります!!」
「んだ、確実に敵を倒せる方法があるなら、迷わず使うのがいくさの鉄則でねぇか!!」

「バカヤローーー!!」

 大声一喝、フリードはクレナを始めとする天照武刃団の女子一同を黙らせた。

「男のケンカってのはなぁ……ただ勝てば良いってもんじゃねーんだよ!!」
「ふふ、よう分かってるやんけフリード」
「当然。俺にはち○ちんが付いてるからね」
「……万が一俺が負けて、アイツがナジミを襲おうとしたら……」
「その時は任せて、俺達で姐さんを守るよ」

 それを聞いた武光は小さく頷くと、ネキリ・ナ・デギリと影醒刃シャドーセーバーを少し離れた場所に置いて戻ってきた影光と向かい合った。

「二人共!! やめて下さい!!」
「あっ、ダメだよ姐さん!!」
「待って!! 行かんといて!!」

 ナジミは、フリードの制止を振り切り、対峙する武光と影光の間に割って入ろうとしたが、その前にオサナが両手を広げて立ち塞がった。

「お姉ちゃん!? どうして止めるんですか!!」
「……影光っちゃんの好きにさせたって!! 最後に心残りの無いように……お願いやから!!」
「最後の……心残りって……一体どういう──」

 涙ながらに語る姉に、ナジミが理由を尋ねようとしたその時、

「「うおおおおおおおおおっ!!」」

 獣のような咆哮を上げて、武光と影光の闘いが始まった。互いに繰り出した拳が互いのひたいにクリーンヒットし、両者は大きくのけ反ったが、足を踏ん張り、すぐさま闘いが再開される。
 殴っては殴り返され、蹴られては蹴り返し、どちらも一歩も退かない激しい闘いが延々と続く。

「はぁ……はぁ……オラァッッ!!」

 闘いが始まっておよそ5分、武光が右の拳を繰り出した。その拳は影光の顔面をとらえたかに見えたが……

ったぜ本体……!!」
「くっ!?」
「……らあああああっ!!」
「ガハッ!?」

 影光は、武光が繰り出した右の拳を左腕で止め、そのまま腕を取って、一本背負いで地面に叩きつけた。
 武光は咄嗟に受け身を取ったものの、背中を叩きつけられたのは柔道場の畳ではない、そのダメージは凄まじかった。

「はぁ……はぁ……今のは……オサナを泣かせた分だ!!」
「オサナ……? 何で今その名前が出てくんねん……うぶっ!?」 

 立ち上がろうとする武光の脇腹に容赦の無い蹴りが飛ぶ。

 地面を転がりいつくばる武光の背中を踏みつけながら、影光が吼える。

「どうした……こんなもんかよ!! ナジミを陵辱するって言ってんだぞ俺は!? お前がそんなんじゃあ俺は……俺は未練を断ち切る事も出来ないままで……うおっ!!」

 影光はバランスを崩した。踏み付けていた武光が立ち上がったのだ。

「はぁ……はぁ……黙って聞いてればぁッッッ!!」
「ぐっ!?」

 よろめく影光の顔面に武光の拳がめり込んだ。足を踏ん張り、体勢を立て直そうとする影光の顔面に更に拳が叩き込まれる。

「勝手な事を……抜かすなぁッッッ!!」
「がっ!?」
「そんな事は……死んでもさせへんッッッ!!」
「うぶっ!?」

 二発目、三発目と続けて拳が叩き込まれる。

「どんな事があろうとッッッ!!」
「ぐっ!?」
「俺は……アイツをッッッ!!」
「がっ!?」

 四発目、五発目、踏ん張り切れず、影光がどんどん後退あとずさってゆく。そして……

「ナジミを……守り抜くッッッ!!」
「ぐはぁぁぁっ!?」

 六発目の拳で、武光は影光を大きく吹っ飛ばした。

「はぁ……はぁ……そういう台詞は……俺を倒してから言えってんだ……!!」

 影光も再び立ち上がったが、両者共に、膝は笑い、肩は上下し、呼吸も荒い、もう立っているのがやっとの状態だ。

「くそっ……ええかげんにせぇやアホお前……おぅぇっ」
「うぶっ……それはこっちの台詞だ……そろそろ決着付けようぜ……最後の決着を……!!」

 両者はよろめきながらも前進し、拳を振り上げた。

「「うおおおおおおおおおっ!!」」

 互いに、気力も体力もそして死力をも振り絞って繰り出した拳は、クロスカウンター気味に互いの顔にめり込み、そして……

「…………改めて言わせてもらう、ナジミは俺が守り抜く!!」
「へっ……斬られ役には似合わないぜ、そういうクサい台詞……は……」


 めちゃくちゃダサい、しかしながら最高に満足げな捨て台詞を吐いて、影光はドサリと崩れ落ちた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)
ファンタジー
 剣の腕を見込まれ、復活した古の魔王を討伐する為に勇者として異世界に召喚された男、唐観武光(からみたけみつ)……  しかし、武光は勇者でも何でもない、斬られてばかりの時代劇俳優だった!!  とんだ勘違いで異世界に召喚された男は、果たして元の世界に帰る事が出来るのか!?  愛と!! 友情と!! 笑いで綴る!! 7000万パワーすっとこファンタジー、今ここに開幕ッッッ!!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...