斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

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最後の決着編

異形の影、現る

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 263-①

 フリード達が総力を結集して繰り出したブラックキングナックル・超友情合体スペシャルは白の影魔獣を貫いた。

「ハアッ……ハアッ……」

 黒王の頭頂部から前方に向かって伸びる巨大な角に胸を深々と貫かれた白の影魔獣は、両腕をダラリと下げ、ガクリと項垂うなだれた。

「や……やったか!? うわっ!?」

 力尽きたかと思われた白の影魔獣がいきなり動き出し、自身を貫いている黒王の角を両手でがっしりと掴んだのだ。

「こ、コイツ……まだ生きて……うっ!?」

 フリードはゾッとした。わらっている……目も鼻も口も存在しない白の影魔獣が。理屈ではなく、直感的にそう確信した。
 フリードは反射的に角を引き抜こうとしたが、白の影魔獣は手を離さない。

「な、何だ……力が抜けていく……?」

 クレナ達も加わってフリードを敵から引き離そうとするが、引き離す事が出来ない。
 
(まずい、このままじゃ……!!)

 敵は黒王に宿った力を吸収している。フリードの焦りが頂点に達しようとしたその時!!

「……ウオオオオオオオオオッ!!」

 飛び込んできた影が、白の影魔獣を殴り飛ばした。衝撃で白の影魔獣は角を掴んでいた手を離してすっ飛び、フリードの黒王も角が抜けると同時に、クレナ達の武器を吐き出した。
 合体が解除されたことで、黒王は通常の状態へと戻り、クレナ達の武器も神々の力を授かる前の状態へと戻っていた。

 フリードは白の影魔獣を殴り飛ばした異形の存在に息を飲んだ。

 魔狼族のような鋭い爪の生えたたくましい両足、
 ゴーレム族のようないわおの如く大きく太い両腕、
 オーガ一族のようなひたいの二本角、
 そして、妖禽族のような背中の一対の翼、

 異形の存在が、尻餅をついているフリード達に声をかけた。

「やるじゃねえか、流石は本体の弟分達だ」
「その声……まさかあんた、アニキの影なのか!? その姿は一体……!?」
「フフン……まあ、合体は男のロマンだからな。お前達は後退して、そこの瓦礫がれきの裏で無防備に爆睡してる俺の仲間達を護衛してくれ」
「ば、爆睡っ!? 戦場のど真ん中で!?」
「……頼んだぞ!! 弟分!!」
「……分かった。行こう、皆」

 フリード達は各々の武器を回収すると、四天王の護衛に向かった。

「さてと……タイマンと行こうじゃねぇか!!」

 影光は殴り飛ばした白の影魔獣を睨みつけた。立ち上がった白の影魔獣は姿を変えていた。
 身体は一回り大きくなり、左右の肩から鋭い爪の生えた巨大な副腕が生えている。

「俺だけじゃなく、今度はアイツらから力を奪ったのか……!!」

 ムカつく表情をしている……気がする。目も鼻も口も無いが、人を見下し倒した表情をしている……気がする。よってコイツはブチのめす!!
 影光が決意を固めるのと同時に、白の影魔獣が突進してきた。

 白の影魔獣は副腕を振り上げて影光を引き裂こうとしたが……

「ケッ……遅ぇんだよ!!」

 影光は敵の攻撃を軽々と回避した。

「速きこと、ガロウの如くッッッ!!」

 次々と繰り出される攻撃を軽々と回避し、影光は鋭い爪の生えた足での連続蹴りで敵の体表をガリガリと削り取ってゆく。
 だが、敵もやられっぱなしではない。鋭く突き出した左の副腕が影光の腹部を貫いた。

「翻弄すること、キサイの如くッッッ!!」

 白の影魔獣に腹部を貫かれた影光が雲散霧消するのと同時に、白の影魔獣の後頭部に背後からの強烈な飛び蹴りが炸裂した。先程貫かれたのは影光が作り出した幻影だったのだ。

「飛翔すること、ヨミの如くッッッ!!」

 影光は、後頭部への飛び蹴りを喰らって地面に倒れ込もうとする敵を背後から羽交い締めにすると、背中の翼を羽ばたかせ瞬時に空高く舞い上がり、そして……

「怪力なること、レムのすけの如くッッッ!!」

 影光は、その怪力に任せて敵を担ぎ上げると、地表目掛けて思いっきりぶん投げた!!
 超高高度から凄まじい怪力によって繰り出されたボディスラム……影光が心の中で命名した《必殺・あ○のハルカス落とし!!》は、隕石のような勢いで白の影魔獣を地面に叩きつけた。
 完全にコアの気配が消えるまで追撃の手は緩めない……やはりいた。落下地点の中心、砂埃すなぼこりに包まれながら立ち上がる敵が。

〔トドメを刺すぞ、我が相棒よ!!〕
「……応ッ!!」

 ネキリ・ナ・デギリを右肩に担ぐように振りかぶった影光は、弾丸のような勢いで急降下した。

「これでトドメだ!! はいぱーむてきなること……」

 敵の姿が眼前に迫る。

「つばめとすずめの如しッッッ!!」

 影光は渾身の力で、ネキリ・ナ・デギリを袈裟懸けに振り下ろした!!

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