斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

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両雄激闘編

斬られ役(影)、聖女に襲いかかる

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 207-①

「でやあああああっ!!」

 武光は左右の刀を、10m四方はあろうかという、だだっ広い階段の踊り場に立つ教皇目掛けて振り下ろしたのだが……

「フン……笑止な」

 教皇は左腕を上げて、前腕で武光の一撃を軽々と受け止めた。

〔バカな!?〕
〔ウソ……!?〕

 武光が手加減しており、峰打ち状態とは言え、それでも自分達の攻撃を生身で軽々と受け止めるとは……と、イットー・リョーダンと魔穿鉄剣は驚愕した。

〔武光!!〕
「お、おう!! おらあっ!!」

 教皇の肉体の頑強さにビビった武光は、教皇の左腕を魔穿鉄剣で押さえたまま、ガラ空きになっている教皇の左脇腹目掛けて、今度は7の力でイットー・リョーダンによる峰打ちを叩き込んだが……

「フフフ、何かしたか下郎?」
「う……嘘やろ!?」

 教皇は微動だにしない。武光は一旦間合いを取ると、下で影魔獣の群れと戦っているミトに聞いた。

「ミト!? このジイさん何かめちゃくちゃ頑丈なんやけど!? まさかこのジイさん……怪しげな謎カンフーの使い手とかとちゃうやろな!?」
「一体何なのですか『かんふぅ?』とは!? 大叔父上様はご高齢ですし……どちらかと言えばお身体があまり丈夫なかたではなかったはずです!!」

 困惑する武光に対し、教皇は口の端を吊り上げ挑発的な笑みを浮かべ、あまつさえ『もっと打ち込んで来い』と言わんばかりに手招きしている。

「クソ……もうどうなっても知らんからな!!」

 武光はとうとう10の力で教皇の左右の鎖骨辺りに、イットー・リョーダンと魔穿鉄剣の峰を叩きつけた。

 207-②

 一方、影光も階段の踊り場でシルエッタと対峙していた。

「意外ですね、暗黒教団の大将首がすぐそこにあるというのに、みすみす唐観武光に譲るとは」

 シルエッタの言葉に影光はニヤリと笑った。

「そうでもないさ、大将首は…………ちゃんと俺の目の前にある」

 ネキリ・ナ・デギリを突きつけられたシルエッタは、微笑みを浮かべた。

「フフ……何をわけの分からない事を──」
「白々しいぞ、あのジジイ……もう人間じゃないだろ? 俺と同じ……影魔獣の気配がする」
「……」
「暗黒教団で影魔獣を生み出し、操り続けていたのは誰なのか……それに、もし俺の予想が外れていたとしても、お前が本体に斬られでもしたら俺の身が危ないんでな? 本体がエサに飛びついている間に……俺は暗黒教団のかしらの首根っこを押さえさせてもらう!!」
「フフフ……出来損ないの貴方にそれが出来るとでも?」

 シルエッタの問いかけを鼻で笑い、影光は自信満々に言い放った。

「へのつっぱりは……いらんですよ!!」
「…………言葉の意味はよく分かりませんがとにかく凄い自信ですね? ところで……」

 シルエッタはある一点を指差した。シルエッタが指差した先には床に倒れ伏すロイ=デストの姿があった。

「一体誰があの白銀の死神を倒したのでしょうね?」
「何だと……ま、まさか!!」
「おわーーーーーっ!?」
「ほ、本体!?」

 影光の足元に、教皇に吹っ飛ばされた武光がゴロゴロと転がってきた。武光が転がってきた先では、教皇が凶悪な笑みを浮かべている。

「ククク……見たか、あの白銀の死神ロイ=デストをも退けた私の力を!!」

 シルエッタは目の前の実験体14号の顔が恐怖と驚愕に引きつる様を想像してニヤリと笑ったが、影光はシルエッタの思惑に反して余裕の笑みを浮かべると、教皇に言い放った。

「ロイを倒したくらいで何イキがってんだ?」
「何だと……?」
「言っておくがな、俺……の本体は、白銀の死神も!! 光の勇者も!! それどころか復活した魔王シンもブチのめしてんだ!! あんまり俺……の本体をナメるなよ?」

 影光の言葉に、教皇とシルエッタは唖然とした。そしてそれ以上に武光が唖然とした。

「お前ーーー!? 余計な事言うなアホンダラーーー!! 戦うの俺やねんぞーーー!?」
「覚悟しやがれ!! 何しろこの俺……の本体を敵に回してるんだからな!!」
「お前……後でシバキ倒したるからなーーー!!」
「フフン、さてと……覚悟しやがれシルエッタ!!」

 再び教皇に立ち向かって行った武光を背に、影光はシルエッタに襲いかかった。


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