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本拠地突入編・1
少年、もぎ取る
しおりを挟む118-①
護衛対象であるエネムの胸に、盛大にシ◯イニングフィンガーをぶちかましている弟分を目の当たりにして、武光は慌てた。
「フリード!? お前何、羨まし……じゃなかった、けしからん真似しとんねん!?」
「貴様……!!」
右手でエネムの胸を鷲掴みにしているフリードに対し、アルジェは剣盾を構えた。
「ちょ、ちょっと待てって!?」
「問答無用!! 私はロイ将軍から、『エネムさんに危害を加えようとする者は、例え相手が何者であっても容赦なく屠れ』と命令を受けている……まずはその腕、切り落としてくれる!!」
「違うんだって!! 右手が勝手に──」
「問答無用だと言った!! くっ……離せ!!」
剣盾の剣部分を左右に展開したアルジェを武光が慌てて背後から羽交い締めにした。
「ふ……フリード!! 今すぐ手ぇ離してエネムさんに謝れって!!」
「ダメなんだよ、右手が言う事を聞かないんだ!!」
「ハァ!?」
フリードは懸命に右手を引き剥がそうとしているように見えるのだが……
「皆、フリードをエネムさんから引き離せ!!」
「は、はいっ!!」
フリードの突然の奇行に呆気に取られて固まっていたナジミ達は、我に返ってフリードの体を引っ張った。
「フリード君、離れなさい!!」
「フー君……そんな事しちゃダメだよ!!」
「離れろフリード……っ!!」
「て、手を離して下さいフリードさん……!!」
「うわっ!?」
ナジミ達が四人ががりで引っ張って、ようやくフリードはエネムから離れたのだが……
「おっ……お◯ぱいがもげたぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」
なんと、フリードの右手には、エネムの胸の肉が握られたままだった。
「わあああああっ!? お……俺は何て事をーーーっ!?」
「ま、待てフリード!! アレを見ろ!!」
「へ……?」
頭を抱えて震えていたフリードだったが、武光に言われて恐る恐るエネムの方を見ると、肉体の一部を引きちぎられたというのに、エネムは涼しい顔をしており、そして、抉り取られた胸の傷口は……ペンキで塗り潰されたかのように真っ黒だった。
「お姉様に聞いてなかったわね……こういう時に、人間はどういう反応をするものなのかしら? 恥ずかしがる……それとも痛がるのかしら?」
フリードが握りしめていた肉塊が右手に吸収されるのと同時に、エネムの抉り取られた胸部が服ごと再生し、セミロングの髪も栗色から銀色へと変色してゆく。
「エネムさん……貴方は……!!」
「バレてしまっては仕方ありませんね? 私は暗黒教団の聖女、シルエッタ=シャード様の記憶と人格の一部を受け継いで生み出された影魔獣……《シスターズ02》!! 名前は絶賛募集中ですよ?」
そう言って、エネム……いや、シスターズ02《ゼロニ》は小首を傾げてニコリと微笑んだ。
「それで俺の右手の黒王が……!!」
エネムの正体を知ったフリードはぐぬぬ……と唸った。
「因みに《シスターズ》というのはですね……ああ、そう言えばそちらには京三さんと同じ世界から来た方がいらっしゃるんでしたっけ? でしたら説明は割愛せて頂きますので、あの世で教えてもらって下さいね?」
そう言ってシスターズ02は黄色い水晶で出来た人形を取り出し、頭上に高々と掲げた。
……高々と掲げられたそれは、頭部に水牛のような鋭い角を持つ、6本足の獅子の怪物だった。黄色い水晶の獅子が太陽の光を透過させ、02の足元に琥珀色の影を作り出す。
「さぁ、目覚めの時間ですよ?」
シスターズ02が投げた操影刀が怪物の影に突き立ち、獅子の怪物が現れた。
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