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短冊に書く願い事、アメリカ軍『クラリス』、アンジェリカ到着
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7月6日は笹取り出しの儀で青龍穴に納めて清めた笹14本を取り出す日だ。
無論、青龍穴の内側から入口までは一門衆が、入口からは男衆が龍門神社へと運んだ。
同時に龍門神社を掃除して清め、運ばれてきた笹に子供達が飾り付けをした。
七夕の笹飾りは前日に完成させるのが習わしなので短冊への願い事も6日に書く訳だか、青夜が毎年、短冊に書く願い事は決まっており(というか、東条院ではもはや有名で)、
「『月航海士』の異能力が発現しますように」
今年も同じ事を書いていた。
「またなの、兄貴?」
隣で『無病息災、家内安全、平穏無事、騒動退散』と大人びた事を書いていた青刃が尋ね、
「まあね。憧れるだろ、月航海士って変身ヒーローみたいで?」
「でも黄土色とか茶色とかだったら最悪だと思うけど?」
「この際、色は何でもいいさ。ホント欲しいよなぁ~」
「そう言えば聞いた、兄貴? 昨夜の青龍村の侵入者、『それ』だったらしいよ?」
「へぇ~。『月航海士』って『移し替え』の技法はまだ発見されていないんだよな?」
「何か悪い事考えてるでしょ、兄貴?」
と青刃は呆れたのだった。
◇
現在、日本国内に居る在日アメリカ軍の異能部隊『クラリス』は沖縄海域防衛以外のその殆どが関西圏に集結し、暗躍していた。
正確には暗躍ではなく調査であったが。
目的は6月下旬に関西で起こった一連の騒動『信長の亡霊』、その遺産の回収にあった。
つまりは吉備桃矢の『髑髏の薄濃』を探しているのだ。
日本の異能部隊が『薄濃』捜索を続けているのだから、まだ発見されていない事は分かってる。
そして、その捜索の真剣さから本当に実在する確率の高さも。
『薄濃』の所有権がまだ明確に定まっていないのであれば、在日アメリカ軍が横からかっさらっていっても何ら問題はない訳だ。
そんな訳で関西圏を調査した訳だが、当然、和歌山県にも出没していた。
『亡霊』に憑依された犬飼戌子が和歌山県で目撃されて青夜以下、皇居吽軍が京都府から和歌山県に慌ててヘリで飛んだからだ。
その動きだけで『亡霊』が和歌山県に出没した事は分かり、その情報を掴んだ在日アメリカ軍『クラリス』も和歌山県を捜索していた訳だが、もう7月上旬だ。
簡単に入れるところは調査し尽くしている。
後は簡単に入れない神社仏閣や名家の私有地しか残っていなかった。
それでチョロッと昨夜調査しようとしたら、大騒動だ。
東条院側から追っ手が放たれて、ジャパニーズ忍者が多数放たれて、もう最悪。
追い付いた8人の忍者を『クラリス』女隊員で銀色の『月航海士』の身長173センチ、胸がアメリカサイズでスタイル抜群で足の長い女が撃退して逃げていた。
お陰で青龍村側は厳戒体制となったが・・・・・・
青龍村の傍には世界遺産の熊野古道がある為、海外旅行者が馬鹿みたいに来る。
誰かまでは分からなかった――と思っているのなら、それは東条院を少し舐め過ぎだ。
『忍者』はれっきとした修練系の異能戦闘技法だが、先天性の異能力『影使い』が紛れ込んでいれば、影を放って追跡出来る。
そんな訳で、1人でバックパックを背負ってカメラを片手に旅行者に扮してるアメリカ系中国人で、22歳、長い黒髪のソバージュでアメリカ人らしく気が強そうな眉のヤン・アンイーが昨夜の銀色『月航海士』の女である事までは掴んでいた。
なので、青龍村側から昼間に接触だ。
相手が強いのは分かってるので、青龍村側の交渉係は63歳、165センチ、額の広い少し太めで、少し厳つめの顔の三船友明が接触した。
「昨夜はどうも。日本語、分かります?」
友明は見た目は定年退職したばかりの男っぽいが、青龍村での役職は交渉人。
「あら、新手のナンパかしら、お爺さん?」
と日本語で返事した事で日本語が分かる事を教えたアンイーに対して、
「宗家一行が帰る7月8日まで暴れないで下さいませんか?」
『それで警戒があそこまで厳重だったのね』と理解したアンイーが、
「『髑髏』を探してるのよね、私」
「和歌山県じゃないでしょ、それ? この辺りは聖域塗れなのに?」
「それでも捜索するのが末端の仕事なのよね」
「ともかく宗家一行が滞在してるのに暴れないで下さい。上はもっと過激ですから」
「ええ、善処してみるわ」
と答えて、話は纏まったが・・・・・・
そんなのリップサービスに決まっている。
在日アメリカ軍の異能部隊『クラリス』が日本に気を使った事などは殆どない。
本国の命令第一なのだから。
なので、アンイーも適当に答えて友明を追い払い、捜索を続行するつもりだったのだが、スマホが鳴って緊急通話だったので『何事か』と電話に出れば上司が、
『ヤン中尉、今、和歌山県だな?』
「はい、何やら邪魔が入ってますが・・・」
『今すぐ和歌山県から出ろ。大阪府側にだ』
「はい?」
『20分以内にだ。さもないと狩られるぞっ!』
「・・・誰が私を狩るというのです?」
『在日アメリカ軍を』と心の中で付け足して鼻で笑ったが、上司の言葉は更に斜めの、
『BB財団だ。日本支部の支配人が今そっちに向かってる。絶対にかち合うなよ。相手はブラッディームーン一族の中でもK一族のアンジェリカ・K・ブラッティームーン様なんだからな。護衛部隊に殺されるぞっ! 直ちに和歌山県から離れろっ!』
だったので、さっさとアンイーは和歌山県から逃げ出したのだった。
◇
田中家の三女アンジェリカの趣味はジャパン被れである。
田中ビルが健在していた当時、空手道場に亡き父親が笹を持ち込み、門下生の子供らが願い事を書いた短冊を笹に嬉しそうに飾っており、アンジェリカも一緒に混ざった事があり、神社でやってる人混みだらけの七夕祭りにも参加した事がある。
だが、青夜が七夕の節句も『和歌山県に行く』と言い、端午の節句にも出向いていたので、アンジェリカが興味を示して出発前日の夕食時に、
「ねえ、青夜、私も付いていっていい?」
「ダメダメ。こっちは一族総出で行くんだから。ってか、東条院の今の宗家様は4歳なんだよ? 宗家様に付きっきりでアンの相手なんて出来ないし」
と断ったのに・・・・・・
わがままアンジェリカはこの日、和歌山県まで足を運んでいた。
都内の羽田空港から和歌山県の南紀白浜空港に自家用ジェットで降り立って、そのままヘリコプターで青龍村まで。
青龍村はヘリの着陸用のヘリポートこそ存在しないが、平地は山村ながら山ほどある。
なので、堂々と着陸してアンジェリカとボディーガード3人を降ろした後、ヘリはさっさと帰っていった。
ヘリの着陸に村に居た全員が気付いており、下っ端なので確認に出向いた青夜の青龍大学の高等部の側近の榊弁真がアンジェリカを目視してスマホではなく、緊急の念話符を手に取った。
スマホじゃなくて念話符なのは青龍村界隈の電波事情は一切関係ない。
青夜の性格に関係した。
青夜は平気な顔で電話を無視するタイプだったのだ。
と言うか、スマホを部下に持たすタイプだった。
そんな訳で弁真が念話符を使った時、青夜は龍門神社で七夕飾りを作ってる真っ最中だった。
無論、4歳の宗家の緑子と一緒にだ。
輪飾りを作ってる最中で、
「セーヤお兄ちゃん、出来たよ」
「偉いよ、緑子ちゃん」
「えへへ、褒められちゃったぁ~」
とやっているところに弁真から念話が届いた。
『副宗家、ヘリから降りて来られたのは田中のお姉様の1人でした』
それだけでは誰か分からない。
「誰?」
『BB財団のお姉様です。ボディーガードも一緒です』
「あっそ、女に案内をやらせるように。男はダメだからな」
と青夜は念話で指示を出してると、
「お兄ちゃん、どう、このお星さま」
「綺麗だね、緑子ちゃん、偉い偉い」
「えへへへ」
青夜に頭を撫でられて緑子は御機嫌で得意がったのだった。
◇
青夜がアンジェリカと会ったのは笹飾りを終えた(ヘリの着陸から)40分後だった。
龍門神社の隅っこで普段着のように原色のセレプドレスを着こなすアンジェリカが、
「あの子が東条院の今のトップなの?」
「そうだよ。ジイが東京に残ったから大変でさ」
「本当に私のエスコートは出来ないの?」
「今日なら数時間は出来るけど、明日は無理だね・・・・・・ってか、見るトコなんてないよ、ここ?」
「温泉街なのよね? 温泉に入りたいんだけど」
「ええっと」
青夜がアンジェリカのボディーガード3人を見た。
女2人に男が1人。全員、青夜の見知った顔だ。
アンジェリカの側近ボディーガードだけあり3人ともかなり強い。
「何?」
「この青龍村は温泉旅館が4軒しかなくてこの時期はその全部を東条院の一党が貸し切ってて・・・」
「青夜はどこに泊まってるの?」
「村を見下ろせる分家の屋敷」
青夜が仁王の屋敷を指差すと、
「私もそこに泊めーー」
「アンジェリカはOKだけど、ボディーガードの3人は強過ぎてダメだね」
青夜が喰い気味に答えた。
「どういう意味よ?」
「宗家の緑子が殺られた日には目も当てられないからね」
「そんな事する訳が・・・」
と鼻で一蹴しようとしたアンジェリカだったブラッディームーン一族が怖い事は血族のアンジェリカの方が良ぉく承知しており、
「アナタ達、帰っていいわよ」
ボディーガード達を追い払おうとしたが、そんな命令をボディーガード達が聞ける訳もなく、慌てた様子で、
「勘弁して下さい。我々が殺されてしまいます」
「ヘリで近くのホテルに向かい、明日にまた出向くというのは?」
との提案に、
「今夜0時に青夜と一緒に居たいのよ、私は」
アンジェリカの言葉を聞いて、青夜が、
「織姫と彦星伝説? それは7日の夜だよ、アン?」
「そっちじゃなくて、ジャジャ~ン、『これ』なぁ~んだ?」
ボディーガードの1人から渡されたブランドバックから出した封印術式が施された宝石箱をパカッと開いたアンジェリカが青夜に見せたのはただの石だった。
ただの石だが魔力が宿ってる。
それも独特の波長も放っていた。
青夜は東条院のお坊ちゃんなので意外に博識だ。
国宝や名品を数多く見れる立場でもあり、本物を見た事があったので、
「この波長・・・月の石? 本物?」
「あら、さすがは青夜、分かるのね。そういうところも好きよ。これを7月7日や20日の0時に持って月の光を浴びると『いい事』があるって知ってる?」
「? まさか、『月航海士』を覚醒するの? 聞いた事ないけど?」
「アメリカが独占してるからね、『月の石』は」
「・・・分からないな? アンの実家なら『月の石』なんて何個も所有してるはずだろ? どうしてアンはそれを今まで使わなかったの? もしかして例のお抱えの占術師に何か含まれてたの?」
「いえ、ただ私的には美的センスがね。だってアメリカンコミックのヒーローみたいで恥ずかしいじゃないの、あのスーツ?」
「そう? オレはカッコイイと思うけど」
などと話して、アンジェリカの青龍村の滞在が特別に決まったのだった。
無論、青龍穴の内側から入口までは一門衆が、入口からは男衆が龍門神社へと運んだ。
同時に龍門神社を掃除して清め、運ばれてきた笹に子供達が飾り付けをした。
七夕の笹飾りは前日に完成させるのが習わしなので短冊への願い事も6日に書く訳だか、青夜が毎年、短冊に書く願い事は決まっており(というか、東条院ではもはや有名で)、
「『月航海士』の異能力が発現しますように」
今年も同じ事を書いていた。
「またなの、兄貴?」
隣で『無病息災、家内安全、平穏無事、騒動退散』と大人びた事を書いていた青刃が尋ね、
「まあね。憧れるだろ、月航海士って変身ヒーローみたいで?」
「でも黄土色とか茶色とかだったら最悪だと思うけど?」
「この際、色は何でもいいさ。ホント欲しいよなぁ~」
「そう言えば聞いた、兄貴? 昨夜の青龍村の侵入者、『それ』だったらしいよ?」
「へぇ~。『月航海士』って『移し替え』の技法はまだ発見されていないんだよな?」
「何か悪い事考えてるでしょ、兄貴?」
と青刃は呆れたのだった。
◇
現在、日本国内に居る在日アメリカ軍の異能部隊『クラリス』は沖縄海域防衛以外のその殆どが関西圏に集結し、暗躍していた。
正確には暗躍ではなく調査であったが。
目的は6月下旬に関西で起こった一連の騒動『信長の亡霊』、その遺産の回収にあった。
つまりは吉備桃矢の『髑髏の薄濃』を探しているのだ。
日本の異能部隊が『薄濃』捜索を続けているのだから、まだ発見されていない事は分かってる。
そして、その捜索の真剣さから本当に実在する確率の高さも。
『薄濃』の所有権がまだ明確に定まっていないのであれば、在日アメリカ軍が横からかっさらっていっても何ら問題はない訳だ。
そんな訳で関西圏を調査した訳だが、当然、和歌山県にも出没していた。
『亡霊』に憑依された犬飼戌子が和歌山県で目撃されて青夜以下、皇居吽軍が京都府から和歌山県に慌ててヘリで飛んだからだ。
その動きだけで『亡霊』が和歌山県に出没した事は分かり、その情報を掴んだ在日アメリカ軍『クラリス』も和歌山県を捜索していた訳だが、もう7月上旬だ。
簡単に入れるところは調査し尽くしている。
後は簡単に入れない神社仏閣や名家の私有地しか残っていなかった。
それでチョロッと昨夜調査しようとしたら、大騒動だ。
東条院側から追っ手が放たれて、ジャパニーズ忍者が多数放たれて、もう最悪。
追い付いた8人の忍者を『クラリス』女隊員で銀色の『月航海士』の身長173センチ、胸がアメリカサイズでスタイル抜群で足の長い女が撃退して逃げていた。
お陰で青龍村側は厳戒体制となったが・・・・・・
青龍村の傍には世界遺産の熊野古道がある為、海外旅行者が馬鹿みたいに来る。
誰かまでは分からなかった――と思っているのなら、それは東条院を少し舐め過ぎだ。
『忍者』はれっきとした修練系の異能戦闘技法だが、先天性の異能力『影使い』が紛れ込んでいれば、影を放って追跡出来る。
そんな訳で、1人でバックパックを背負ってカメラを片手に旅行者に扮してるアメリカ系中国人で、22歳、長い黒髪のソバージュでアメリカ人らしく気が強そうな眉のヤン・アンイーが昨夜の銀色『月航海士』の女である事までは掴んでいた。
なので、青龍村側から昼間に接触だ。
相手が強いのは分かってるので、青龍村側の交渉係は63歳、165センチ、額の広い少し太めで、少し厳つめの顔の三船友明が接触した。
「昨夜はどうも。日本語、分かります?」
友明は見た目は定年退職したばかりの男っぽいが、青龍村での役職は交渉人。
「あら、新手のナンパかしら、お爺さん?」
と日本語で返事した事で日本語が分かる事を教えたアンイーに対して、
「宗家一行が帰る7月8日まで暴れないで下さいませんか?」
『それで警戒があそこまで厳重だったのね』と理解したアンイーが、
「『髑髏』を探してるのよね、私」
「和歌山県じゃないでしょ、それ? この辺りは聖域塗れなのに?」
「それでも捜索するのが末端の仕事なのよね」
「ともかく宗家一行が滞在してるのに暴れないで下さい。上はもっと過激ですから」
「ええ、善処してみるわ」
と答えて、話は纏まったが・・・・・・
そんなのリップサービスに決まっている。
在日アメリカ軍の異能部隊『クラリス』が日本に気を使った事などは殆どない。
本国の命令第一なのだから。
なので、アンイーも適当に答えて友明を追い払い、捜索を続行するつもりだったのだが、スマホが鳴って緊急通話だったので『何事か』と電話に出れば上司が、
『ヤン中尉、今、和歌山県だな?』
「はい、何やら邪魔が入ってますが・・・」
『今すぐ和歌山県から出ろ。大阪府側にだ』
「はい?」
『20分以内にだ。さもないと狩られるぞっ!』
「・・・誰が私を狩るというのです?」
『在日アメリカ軍を』と心の中で付け足して鼻で笑ったが、上司の言葉は更に斜めの、
『BB財団だ。日本支部の支配人が今そっちに向かってる。絶対にかち合うなよ。相手はブラッディームーン一族の中でもK一族のアンジェリカ・K・ブラッティームーン様なんだからな。護衛部隊に殺されるぞっ! 直ちに和歌山県から離れろっ!』
だったので、さっさとアンイーは和歌山県から逃げ出したのだった。
◇
田中家の三女アンジェリカの趣味はジャパン被れである。
田中ビルが健在していた当時、空手道場に亡き父親が笹を持ち込み、門下生の子供らが願い事を書いた短冊を笹に嬉しそうに飾っており、アンジェリカも一緒に混ざった事があり、神社でやってる人混みだらけの七夕祭りにも参加した事がある。
だが、青夜が七夕の節句も『和歌山県に行く』と言い、端午の節句にも出向いていたので、アンジェリカが興味を示して出発前日の夕食時に、
「ねえ、青夜、私も付いていっていい?」
「ダメダメ。こっちは一族総出で行くんだから。ってか、東条院の今の宗家様は4歳なんだよ? 宗家様に付きっきりでアンの相手なんて出来ないし」
と断ったのに・・・・・・
わがままアンジェリカはこの日、和歌山県まで足を運んでいた。
都内の羽田空港から和歌山県の南紀白浜空港に自家用ジェットで降り立って、そのままヘリコプターで青龍村まで。
青龍村はヘリの着陸用のヘリポートこそ存在しないが、平地は山村ながら山ほどある。
なので、堂々と着陸してアンジェリカとボディーガード3人を降ろした後、ヘリはさっさと帰っていった。
ヘリの着陸に村に居た全員が気付いており、下っ端なので確認に出向いた青夜の青龍大学の高等部の側近の榊弁真がアンジェリカを目視してスマホではなく、緊急の念話符を手に取った。
スマホじゃなくて念話符なのは青龍村界隈の電波事情は一切関係ない。
青夜の性格に関係した。
青夜は平気な顔で電話を無視するタイプだったのだ。
と言うか、スマホを部下に持たすタイプだった。
そんな訳で弁真が念話符を使った時、青夜は龍門神社で七夕飾りを作ってる真っ最中だった。
無論、4歳の宗家の緑子と一緒にだ。
輪飾りを作ってる最中で、
「セーヤお兄ちゃん、出来たよ」
「偉いよ、緑子ちゃん」
「えへへ、褒められちゃったぁ~」
とやっているところに弁真から念話が届いた。
『副宗家、ヘリから降りて来られたのは田中のお姉様の1人でした』
それだけでは誰か分からない。
「誰?」
『BB財団のお姉様です。ボディーガードも一緒です』
「あっそ、女に案内をやらせるように。男はダメだからな」
と青夜は念話で指示を出してると、
「お兄ちゃん、どう、このお星さま」
「綺麗だね、緑子ちゃん、偉い偉い」
「えへへへ」
青夜に頭を撫でられて緑子は御機嫌で得意がったのだった。
◇
青夜がアンジェリカと会ったのは笹飾りを終えた(ヘリの着陸から)40分後だった。
龍門神社の隅っこで普段着のように原色のセレプドレスを着こなすアンジェリカが、
「あの子が東条院の今のトップなの?」
「そうだよ。ジイが東京に残ったから大変でさ」
「本当に私のエスコートは出来ないの?」
「今日なら数時間は出来るけど、明日は無理だね・・・・・・ってか、見るトコなんてないよ、ここ?」
「温泉街なのよね? 温泉に入りたいんだけど」
「ええっと」
青夜がアンジェリカのボディーガード3人を見た。
女2人に男が1人。全員、青夜の見知った顔だ。
アンジェリカの側近ボディーガードだけあり3人ともかなり強い。
「何?」
「この青龍村は温泉旅館が4軒しかなくてこの時期はその全部を東条院の一党が貸し切ってて・・・」
「青夜はどこに泊まってるの?」
「村を見下ろせる分家の屋敷」
青夜が仁王の屋敷を指差すと、
「私もそこに泊めーー」
「アンジェリカはOKだけど、ボディーガードの3人は強過ぎてダメだね」
青夜が喰い気味に答えた。
「どういう意味よ?」
「宗家の緑子が殺られた日には目も当てられないからね」
「そんな事する訳が・・・」
と鼻で一蹴しようとしたアンジェリカだったブラッディームーン一族が怖い事は血族のアンジェリカの方が良ぉく承知しており、
「アナタ達、帰っていいわよ」
ボディーガード達を追い払おうとしたが、そんな命令をボディーガード達が聞ける訳もなく、慌てた様子で、
「勘弁して下さい。我々が殺されてしまいます」
「ヘリで近くのホテルに向かい、明日にまた出向くというのは?」
との提案に、
「今夜0時に青夜と一緒に居たいのよ、私は」
アンジェリカの言葉を聞いて、青夜が、
「織姫と彦星伝説? それは7日の夜だよ、アン?」
「そっちじゃなくて、ジャジャ~ン、『これ』なぁ~んだ?」
ボディーガードの1人から渡されたブランドバックから出した封印術式が施された宝石箱をパカッと開いたアンジェリカが青夜に見せたのはただの石だった。
ただの石だが魔力が宿ってる。
それも独特の波長も放っていた。
青夜は東条院のお坊ちゃんなので意外に博識だ。
国宝や名品を数多く見れる立場でもあり、本物を見た事があったので、
「この波長・・・月の石? 本物?」
「あら、さすがは青夜、分かるのね。そういうところも好きよ。これを7月7日や20日の0時に持って月の光を浴びると『いい事』があるって知ってる?」
「? まさか、『月航海士』を覚醒するの? 聞いた事ないけど?」
「アメリカが独占してるからね、『月の石』は」
「・・・分からないな? アンの実家なら『月の石』なんて何個も所有してるはずだろ? どうしてアンはそれを今まで使わなかったの? もしかして例のお抱えの占術師に何か含まれてたの?」
「いえ、ただ私的には美的センスがね。だってアメリカンコミックのヒーローみたいで恥ずかしいじゃないの、あのスーツ?」
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彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
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この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
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