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白鳳院本邸襲撃事件
しおりを挟む中間テストが終わり、東条院の宗家屋敷の浄化作業が終了し、賊13人を含む三族の処刑が決まった同日のその日の夕方、とんでもない出来事が起こった。
そう、日本異能界の歴史に残る『御池藤、菊今出、両家断絶騒動』の幕開け、『勅命』の偽造と皇宮警察の異能部門『羅城天』の私的運用による『白鳳院本邸襲撃事件』が起こったのである。
◇
皇宮警察の異能部門『羅城天』による白鳳院本邸襲撃事件は様々な要因が重なって起こった事件だった。
1つは当然『従三位、吽近衛大将』の田中青夜が狙われ、捕縛された賊と三族連座の親族に対して『賽河原卿』白鳳院晴彦が慣例を無視した(島流しなしの)厳罰を下した事。
1つは4月下旬に行った心臓手術を終えた白鳳院令が未だに家族以外と面会していない事。
1つは5月中旬に白鳳院令の孫2人が処分された事。
1つは賊の厳罰が決まり、三族の処刑日も3日後に決まって、タイムリミットが存在した事。
1つは皇居警察の異能部門『羅城天』長官に『正五位上、羅城天近衛少将』御池藤花鳥、皇居首席秘書である『従四位上、篁頭』に菊今出辰斗が現職で就任しており、2人が結託すれば『勅命』を(30分程度なら)偽装出来た事。
これらの要素が重なった結果、
◇
御池藤花鳥は55歳。173センチ。焦茶髪の総髪で顔は秀麗、公家系武人で、右眼側だけがサングラスという特注の眼鏡を掛けた40代で通る若さの男だった訳だが、孫を猫可愛いがりする一面も持ち合わせており、13人の罪人の1人、小木文禄の直系の孫の小木永禄が馬鹿な事をした時は怒り狂ったものだった。
何故ならば、御池藤家に嫁いできた息子の嫁が、その永禄の姉の年齢でも通る若い叔母だった事から、結果、3等親でその嫁が、4等親で息子と嫁が産んだ孫3人が『三族連座』で捕縛されており、御池藤家の被害は嫁を含めて最多の5人となったからだ。
一番下の孫など、まだ4歳の可愛い盛りで、その孫を『島流し』から助ける方法はないものかと日夜、御池藤花鳥が頭を悩ましていたところに、賽河原の裁定が飛び込んできた。
『島流し』を飛び越えた最悪の『極刑』が。
4歳の孫にだ。
あり得ない。
賽河原に確認を取ったが今回は例外なく厳罰に処すとの事だ。
つまり4歳の孫も処刑。
それも刑の執行は3日後だった。
(ふざけるな)
と憤ったが、それ以上に、
(何か変じゃないか、これ?)
と思った。
慣例を無視し過ぎだ。
公家は島流しなのに。
そもそも白鳳院の御前はこの決定を知ってるのか?
白鳳院本邸に問い合わすも使用人の幹部達は電話も取り次がないし、訪問のアポも絶対安静で取れない。
ここで問題となったのが心臓手術があった4月末以降、白鳳院の一族以外で『白鳳院令』を見た者が居ないという点だ。
先日の白鳳院天彦、白鳳院君子の処刑後から『とある噂』も実は流れてる。
白鳳院の御前の名前で刑は執行されたが『本当にあれは御前の命令だったのか』だ。
何せ、10歳の白鳳院天彦を東条院の『先代落とし』の関与で処刑してるのだ。
10歳がそんな陰謀に噛める訳がない。
そんな事は御前も分かってるはずだ。
なのに、孫2人は処刑された。
『御前も耄碌された』とは誰も思わなかった。
手術前の慧眼の御前とは違和感があり過ぎる。
そう、まるで別人の采配のようだったのだから。
それからだ。
『心臓手術の後、御前に会えたのは親族と上級陪臣以外、誰も居ないらしい』
『白泉家がまたアポを断られた』
『東京月御門が白鳳院本邸を探り始めたという噂だ』
『吉備のトップ、桃矢がリモート会談を申し込み、首席侍従に断れた話は本当らしい』
『ここ数日、白鳳院本邸に晴彦殿と君清殿が連日足を運んでる』
白鳳院本邸の様子が探られ始めたのは。
それらの情報を総合すると『とある疑問』へと辿り付く。
つまりは、
『本当に白鳳院令の心臓手術は成功したのか?』
『白鳳院令は生きているのか?』
と。
御前が生きてたら不敬過ぎるので誰も口に出したりはしなかったが。
そして、その憶測に飛び付いたのが御池藤花鳥だった。
(もしかして、本当に御前が死んだのを隠してる? または生きてるが意識がない?)
それだと話は大分変わってくる。
何故なら白鳳院当主が意識不明なら、死んだ白鳳院枢の賽河原卿の後任人事の正統性がなくなり、それ以後の賽河原の決定も総て無効に出来るからだ。
『いける。孫を助けられるぞ』との考えに達した時、花鳥は孫可愛さに一線を越えた。
『偽りの勅命』を使って私的に皇宮警察の異能部門『羅城天』を皇居警備以外に運用したのだ。
だが、この企みは1人では出来ない。
「『極秘』だが御上より勅が出た。白鳳院令殿の生存確認だ。半数は皇居警備を任せた。残りの半数で白鳳院の邸宅に向かうぞ」
と叫ぶ花鳥の背後で、もっともらしい顔で、皇居首席秘書である『従四位上、篁頭』の菊今出辰斗が控えていなければ。
これにより他の皇宮警察の異能部隊『羅城天』の面々は本当に『異例の勅命』が出たと思い込み、皇居警備に(花鳥にとって都合の悪い)半数を残して、花鳥が残りの半分を引き連れて白鳳院本邸を包囲したのだった。
◇
近代美術館を思わせる白鳳院本邸の開かれた門の前では次席侍従の流川守が、
「これはこれは、本日はどうされました、皇宮警察の皆様?」
と立ち塞がった。
たった1人なのに『凄い圧』だ。
それもそのはず。この老人は『日本の影使い』のトップなのだから。
その強さは伝説で語り草にもなってる。
それくらい有名だったが、皇宮警察の長官服の花鳥が、
「御前の安否を確かめにきた。これは御上からの命令だ」
「ほう?」
そんな嘘が見抜けぬほど守は愚者ではなかったが、不意に守のスマホが鳴った。
「はい・・・畏まりました」
と電話相手に答えて道を開けたので花鳥以下皇宮警察『羅城天』の面々は屋敷に入れると思ったが、同時に本邸の玄関から4人の男が出てきたのが見えた。
「マジかよ。緊急事態って言うから来たってのに、こんなつまらねえ事の為に呼ばれたのか?」
桃色スーツを身に纏った吉備一族トップ、吉備桃矢が腕のストレッチをしながら呟き、
「まあ、こんな事もあるさ」
陰陽服を纏った月御門閻魔が苦笑し、
「『羅城天』が相手とは。さっさと片付けようか」
動きにくそうな紫法衣姿を白虎寺雷司が笑った。
そして当然、
(御前って本当怖いよなぁ~。今日の呼び出し、テストの前日の5日前から決まってたのに。つまりは5日前には皇宮警察『羅城天』の襲撃が見えてた訳ね。それにさっきチラッと見たら何か凄い事になってたし)
と思いながら、
「怪我しない程度に頑張りますか」
ノースリーブの青色の空手着に鎖帷子の青夜も居た。
「なっ、なっ、なっ・・・」
四柱家の揃い踏みに花鳥が驚く中、
「おら、行くぜ」
桃矢が特攻して、コンマ1秒で花鳥まで距離を詰めて花鳥の顔面を殴ろうとして、皇居警察の異能部門『羅城天』の4人がその速度に対応出来て立ち塞がったが桃矢を止めれず、4人全員を殴り飛ばして花鳥も殴り飛ばして、それで戦闘が始まったのだった。
まあ、四柱家の最強の4人に勝てる訳もなく、皇宮警察『羅城天』は僅か1分で全滅した。
皇宮警察『羅城天』の半数を全滅させた後、門前にて守が、
「皆様、御苦労様でございました」
と礼を言った。
「別にいいって、流川の爺さん。ってか、どうせ、これも青夜が原因なんだろ?」
「あっ、酷い、桃矢さん。その決め付け。全然違うのに」
「嘘つけ。聞いてるぞ。東条院による小木製薬と逢坂銀行の完全支配と、竜崎グループと越後グループに役員を送り込んだ話。後、三族連座での公家への嫌がらせも」
「いやいや、誤解だって、桃矢さん。それはただの迷惑料なだけで、悪いのは全部、青龍大学で馬鹿を育てた大僧正なんだから」
「オレに話を振らないでくれよな、麒麟児。そんな組織の末端まで眼が届く訳がないだろうが」
3人が騒ぐ中、閻魔が守に、
「もう帰っていいんですか?」
「はい、本日はありがとうございました」
「いえいえ、白鳳院の緊急招集に応じるのは当然の事ですから。青夜君、桃矢君、雷司君、来月の信長鎮魂祭は頼んだからね」
閻魔のその言葉に、
「うい~す、閻魔サマ」
「分かりました」
「はぁ~い」
桃矢、雷司、青夜は返事したのだった。
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