実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド

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豪邸探検、シャンリー問題

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 引っ越した当日の直後の事だ。

 愛が改めて豪邸を見学するというので青夜も付き添う事になった。

 アンジェリカと葉月は部屋のセッティングをしており、シャンリーはトレーニングルームのランニングマシーンで汗を掻いていて、使用人3人も引っ越しの掃除等々で忙しく、愛と2人でだったが。





 この新田中邸には御堂がある。

 厳密には御堂は8畳くらいの床間な訳だが、その上座には阿修羅像が鎮座していた。

 どうやら前の家主が置いていったようだ。
 
 異能力がある世界だ。

 その御堂の阿修羅像は微かに霊力を帯びていた。

 愛と共に阿修羅像を見学してた青夜が、

「ママ、問題ないんだよね、この阿修羅像?」

「ええ。この家の守り神っぽいし」

「なら手を合わせておこうっと」

 と青夜は手を合わせた訳だが御存知、この豪邸の前の家主を破産させて不幸にしたのは青夜だ。

 なので阿修羅像に『認められない』と思いきや、多比丘家の面々はなかなかどうして異能力を使って『あくどい商売』をしており阿修羅像も守るのに辟易していたのか、感覚的な事だが1回手を合わせただけで簡単に青夜は『認められた』と感じた。

「あれ、認められた?」

「そりゃ、それだけ強ければね。阿修羅は戦いの神様だから」

 そうひょうしながら愛も一緒に手を合わせたのだった。





 この豪邸にはお風呂が3つもある。

 1階に2つ、2階に1つ。

 中でも青夜の部屋となった1階傍のお風呂場には浴槽が2つあった。1つは水風呂専用で脱衣ルームにはサウナ室もあった。

「サウナか。実は好きなのよねぇ~、私」

 それが愛の感想で、

「青夜君が居ない時につぅ~かおっと」

「別にオレが居る時も使って貰っても構わないけど」

「義理の息子とお風呂場で裸でバッティングとか色々と困るから。だから青夜君が居ない時にね」

「ママ、それ、フリにしか聞こえないよ」

 青夜はそう愛に注意したのだった。





 豪邸には茶室もあった。

「茶室か。利用する事はないな」

「あら、嫌いなの、茶道?」

「外の式典でことあるごとに飲まされるからね。『家の中でまで飲むのは『ないな』』って意味」

「アンちゃんが凝り出すかもよ」

「それ、あるかもね」

 青夜はそんな事を愛と喋った。





 豪邸には座禅室があった。

 床間と畳間が半々で、畳間側が高い空間だ。

「霊的な場所でもないのに座禅とか興味無いし」

「あら、そうなの? 確かに恩恵は受けられないけど、精神集中にはいいと思うわよ」

 それが愛の感想だった。





 庭には温室花壇がある。

 強化ガラスだが円柱系の立派なのが。

 但し、前の家主が温室で育てられていた花々は総て刈り取られていた。

 土も掘り起こされてる。

 だが、それ以上にこの温室花壇には呪詛の術式の痕跡や最近になって邪気を祓った真新しい痕跡が残っていた。

 青夜が、

「ここは少し問題かもね」

「確かにね」

 邪気の残り香を感じた愛も頷いた。

「死体でも埋まってたのかしら?」

 愛のその冗談を受けて青夜が軽く眼を細めて、

「脱税した隠し資産っぽいよ。金の延べ棒と札束の入ったトランクが5個。後は『呪詛花』の『死岸花』と『早百合』の温室栽培かな?」

「それで邪気と呪詛系の術式の痕跡が残ってる訳ね」

 と納得した愛が2秒後に青夜を見て、

「えっ? 青夜君って『過去視』も出来たの?」

「いや『』だよ、今のは」

「本当? 私の裸とか『過去視』でこっそり見てないでしょうね?」

「見てないよ、『過去視』なんて使えないし。それに裸を見たければ『見せて』ってちゃんとママに言うから、オレ」

 青夜が真顔でズレた事を言ったので愛が呆れながら、

「あのね。頼まれたくらいじゃあ見せないわよ、青夜君」

「えっ? そうなの?」

 『どうして?』と青夜が心底意外そうな顔をして愛を見る。

 『やっぱり本心から『見せる』と思ってたわね、今。さすがは東条院宗家のお坊ちゃんだわ。ここはちゃんとガツンと言っておかないと』と思いながら、

「私を何だと思ってるの、青夜君は? 絶対服従してる東条院の使用人じゃないのよ。これでも元は鴨川家のお嬢様なんだから」

 愛は青夜の一般常識の欠如を指摘したのだった。





 2階も探検した。

 広過ぎるベランダに出て周囲の様子を確認する。

「随分と見晴らしがいい事で」

 『狙撃ポイントだらけだな』と青夜が苦笑した時、愛が空に向かって陰陽札を放った。

 放った陰陽札が鳥になり、そして空中で何かにギィンッと直撃する。直撃と同時に鳥になった陰陽札も消滅した。

 『こちらを偵察する為に飛ばされてきた『眼』を潰した』と青夜は理解しながら、

「ママって意外と好戦的なんだね?」

「今の視線は知り合いのだったからね」

「えっ、今のって月読機関お抱えの『百目』っぽかったけど?」

「あら、そうだったかしら、オホホ」

 と愛はそう誤魔化しながら『小賢しくも波長を変えてたのに簡単に言い当てるのね。月読機関の監視もスルーだし』と青夜の凄さを再認識したのだった。





 ◇





 まだ引っ越した当日の日曜日の昼間の事だ。

 というか豪邸を愛と探検していた時の事だ。

 この豪邸の1階にはトレーニングルームが存在する。

 引っ越し前にトレーニングルームにトレーニングマシーンを購入して豪邸に搬入させたのは実母の遺産を丸々受け継いだお金持ちのシャンリーだった。

 田中ビル崩壊後、新たなジムとは契約せず、本日ランニングマシーンで久々に走った訳だが、そのシャンリーの恰好は3月中旬の頃の肌の露出のないトレーニングウエアが嘘のように、スポーツブラにスパッツ姿で肌をやたらと露出していた。

 というか半裸だった。

 お腹も丸見えで身体のラインもバッチリ分かる訳だが、これは別に田中邸内で唯一の男である青夜にサービスしようとか、そういう意図はシャンリーにはない。

 3月中旬の田中ビルのトレーニングジムの場合は公共の場。

 5月中旬の豪邸のここはプライベートエリア。

 その違いだけでそんな恰好で走っていた。

 ランニングマシーンを利用するシャンリーの恰好に問題は別にない。

 問題なのはシャンリーの力量にあった。

 二十八宿の『星宿』の守護者なのだからシャンリーは強い。

 それは確実なのだが。

 星の継承時の不具合か、それとも二十八宿の完全掌握を目論む中国政府が外部から干渉してるのか、純粋に訓練不足なのか、シャンリーは気配探知が稚拙だった。

 具体的に説明すると異能力者の癖に、十字路の出会い頭でぶつかるのだ。

 つまりは豪邸の廊下の曲がり角でも。

 田中家で十字路でぶつかるのは次女の葉月と四女のシャンリーだけだった。

 他は全員、愛も弥生もアンジェリカも青夜も気配探知が出来るのだから。

 もうお分かりだろう。

 ランニングマシーンで30分間走ったシャンリーがトレーニングルーム内に入れた冷蔵庫内の冷えたスポーツドリンクを飲み、そのままシャワーに入るべく浴室へと向かっていた訳だが、無駄に広い豪邸の廊下の曲がり角の前で反対側から豪邸を探検中で廊下を歩く愛と青夜の2人はシャンリーの気配に気付いて立ち止まったのに対し、1秒でも早くシャワーを浴びたくて廊下を早歩きで移動してるシャンリーは減速せずにそのまま廊下の角を曲って2人に気付くも止まれず、愛に突っ込み、

「キャッ」

「嘘」

 シャンリーと愛がぶつかって、そのまま青夜の方に、

「ちょ・・・」

 倒れ込んできた。

 だが、青夜は別にラブコメ体質ではなかったので、その場でもつれるように倒れて、偶然、愛と唇を重ねたり、シャンリーのスパッツに指が掛かってズラしてノーパンに顔面をダイブさせたりするような嬉し恥ずかしな事にはならない。

 青夜は倒れずに愛とシャンリーの2人の身体をムギュッと抱き止めただけだった。

 右手で愛のスカートの布地越しのお尻を鷲掴みにして、左手を汗を掻いた素肌のシャンリーの腰に回して、2人の胸が青夜の胸板で形を変えるくらい押し付けられたくらいで、何のラブコメ展開も起きなかった。

「あ、ありがと、青夜君」

「ホントに」

「いえいえ。シャンリーさんは汗だくだね、走ってたの?」

「まあね。それで2人はどうして曲がり角で私が来るのを待ち構えていたのよ?」

 そのシャンリーの言葉には愛が呆れながら、

「待ち構えてなんかいないわよ。シャンリーちゃんが反対側の廊下から歩いてきたのが分かったから、ぶつからないように足を止めただけなのに、そっちが突っ込んできたんでしょ? シャンリーちゃんも廊下の角では減速してよね」

「立ち止まるならそっちこそ気を利かせて3歩手前で止まってよね、ママ」

 シャンリーが理不尽な事を言い、

「ってか、いい加減、気配探知を覚えてよ、シャンリーちゃん」

「必要ないわ」

 と喋った後、シャンリーが青夜を見て、

「で? いつまで私を抱き締めてるのかしら、青夜は? 私、シャワーを浴びたいんだけど?」

「おっと、余りに抱き心地が良かったもので」

 青夜がそう言ってシャンリーだけを解放した。

「そういう冗談を言わないの、じゃあ」

 シャンリーがそう言って廊下を歩いていく中、愛が青夜に、

「青夜君はいつまで私を抱いてるつもり?」

「嫌がってなかったので」

「気付かないふりをしてたのよ。義理の息子にお尻を鷲掴みにされてるんだから」

「ええっと、一応言っておくけど偶然だよ」

「最初は偶然でも、こんなに長々と掴んでたら故意じゃないの」

「これは失礼を」

 と青夜はようやく愛を解放した。

「ママも相当ナイスバディーだよね」

「義理でも母親をそういう眼で見ないの、青夜君。ほら、次はガレージに通じてるもう1つの玄関を見に行くわよ。ってか、勝手口もあるから玄関は3個か。リビングの窓からも庭に出られるし。防犯面ではこの屋敷は落第点ね」

 などと喋りながら青夜と愛は探険を続けたのだった。
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