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藤名屋敷の祝賀会、田中家の祝賀会、真シャンリー
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青夜が次に向かったのは藤名の屋敷だった。
藤名金城に『ご相談があります』と呼び出されて出向けば、東条院緑子、鵜殿青刃、小巻園青花ら、東条院の親族も揃っており、
「何、これ、月弥さん?」
薄々気付きながらも青夜が尋ねると、
「火武祭、二部門で優勝された副宗家を祝う内々の祝賀会でございます、副宗家様。宗家代理より催すように指示されましたので」
大城月弥改め藤名月弥が答えた。
月弥はもう東条院の補佐も始めてる。社会人経験者だけあり事務処理の方は優秀だった。
金城の評価は『小賢しさに実力が追い付いてないから増長した瞬間に暗殺されますな』だったが。
「さっき一年以組で祝賀会はしたところなんだがな。まあ、いいか。6月の雨武祭は信長鎮魂祭とその警備の為に出場出来ないから。だったよね?」
「はい。ですが青刃殿は去年に引き続いての水術部門の雨武祭連覇が掛かっておられますがどうされますか?」
「青刃、どうする?」
「出ないよ、兄貴。どうせ、関って兄貴のクラスの吉備女が優勝するだろうから」
「コホン、鵜殿殿、例え血の繋がった御兄弟でも副宗家様ですので敬語を······」
月弥が青刃の口調をやんわりと注意しようとして青夜が呆れながら、
「ジイみたいな事言わないでよ、月弥さん。身内だけなんだから」
「はっ」
「そう言えば、そのジイは?」
「所用で出かけております」
「宝物庫の件?」
「聞いておりません」
『ふ~ん』と興味無さそうに返事した青夜は祝賀会を始め、異母弟妹に、
「2人ともどうだ、学校は?」
「問題ないよ。兄貴が暴れてるお陰で青龍大学の中等部ではみんながオレを遠巻きに見てるだけだし」
「私は大変かな?」
青花が答えたので、青夜と青刃が心配して妹に視線を集めると、
「だって、名字が小巻園なんだもん。昨日もテストで間違って東条院って書いちゃったしぃ~」
心配した兄2人が『あのなぁ』『それくらいすぐに慣れるさ』と答える中、
「セーヤお兄ちゃん、だっこ」
「はいはい、緑子様」
「様じゃなくてちゃん」
「緑子ちゃん」
青夜が新宗家の機嫌を取り、青夜が視線で合図した事で青刃と青花も緑子の機嫌を取ったのだった。
東条院分家の藤名金城と言えば『三老剣豪』とも呼ばれてるが、その他に『古狸』とも青夜などからは呼ばれている。
実際に古狸と称されるくらいのずる賢さも持ち合わせていた。
なので、火武祭が終わった当日に、青夜達が藤名の屋敷で祝賀会をしてる頃、金城はヌケヌケと明治坂田の屋敷まで足を運んでいた。
理由は当然、祝賀会をしてる青夜の許に明治坂田の傍系が近付いた件で『手を打ちに』だ。
一方、平常心の時ならいざ知らず白虎寺との会談が物別れに終わり、更には放った傍系7人の利き腕が落とされたと聞いて頭にきてる金四郎が応対したものだから勝負にならず、
「東条院の副宗家に相撲勝負を挑みたいようだが、まずはきちんと審査で『部下』に相撲で勝って貰わんとダメじゃからな。登下校時に待ち伏せして勝負など挑んでくれるなよ?」
との挑発に、挑発だとは分かっていながらも、まんまと金四郎が乗せられて、
「それはその部下とやらに勝ったら副宗家と相撲勝負が出来るという事か?」
「まあのう。じゃが、東条院の『部下』は鬼のように相撲が強いぞ? おそらくじゃが、そちらでは勝てぬやもしれんが」
「上等じゃぁぁぁぁぁぁっ! 明日の早朝稽古にその部下を連れてこぃぃぃぃぃぃっ! 朝の4時じゃからなぁぁぁぁぁぁっ!」
などとの重要な取り決めが青夜の知らぬところで交わされてしまったのだった。
はしゃいだ緑子がおネムの時間となって退室した藤名屋敷の祝賀会では、長兄の青夜が保護者モードで、
「青花、習い事はちゃんとするようにな」
「ええぇ~。それだと友達と遊べないじゃない」
その妹の言葉に青夜は『友達ねぇ』と苦笑しながら青刃を見て、
「青刃は友達はいるのか?」
「まさか。東条院の直系に友達なんて対等な存在、出来る訳ないでしょ。対等な他の四柱も、月御門は京都、白虎寺は真達羅通一門が囲い込み外部に一切出ず、吉備は西日本なのに。部下だけだよ」
『だよな』と青夜も納得しながら、
「青花、頼むから『友達が誘拐されたから』とか言って『護衛を撒いたり』しないでくれよ。東条院は色々と怨まれててそういうのもあるから」
と忠告したが、青刃が、
「無理だと思うよ、兄貴。青花は兄貴以上のヤラカシ系だから」
そう断じたのだった。
◇
藤名の屋敷での祝賀会を終えて田中家が滞在してるソフトンニューヨークホテル東京のロイヤルスイートに戻ると、
「遅いわよ、青夜」
「そうよ、せっかく待ってたのに」
葉月とアンジェリカが部屋で青夜を出迎えた訳だが・・・・・・・・
何故か葉月とアンジェリカはバニーガールの恰好をしていた。
葉月はベストと蝶ネクタイ系、アンジェリカがボンテージ系の。
「・・・何これ?」
青夜が面を喰らう中、
「あれ、嬉しくない? 学校の大会で優勝したっていうから青夜をお祝いする為に着たんだけど?」
「本場のバニーガールを見たいって言ってたでしょ、青夜?」
葉月とアンジェリカに左右から腕を組まれて、無駄に広いホテルのリビングルームに向かうと、赤面した愛もソファーに座っていた。
愛の衣裳は巫女ビキニだった。
つまりは巫女の衣裳なのだが、ビキニにカットされてて、素肌がモロ露出していた。
「ええっと、ママまで何やってるの? ママは未亡人になったところでしょ? パパの四十九日法要もまだなのに?」
柄にもなく青夜の方が常識的にツッコむ破目になった。
「違うの、青夜君。アンちゃんが無理矢理私にこれを着させて。着ないとカトリック系の教会を紹介しないって言うから」
羞恥で涙眼なのが初々しい。
「ママが悪いんでしょ、息子である青夜の活躍を祝おうとしない」
それがわがままアンジェリカの主張で、アンジェリカにわがままで勝てる者は田中家には居ないので、その主張が通ったのだった。
「ようやく帰ってきたの? それじゃあ、さっさと始めましょう」
別室から出てきたシャンリーも超ミニでバックレスのチャニナドレス姿だった。
「えっ、シャンリーさんまで? どうして?」
「何よ、悪いの?」
とシャンリーが青夜を睨む中、葉月が横から、
「感謝してるらしいわよ。体調を戻してくれた青夜に対して」
そう教えられて青夜は納得した。
◇
火武祭初日の夕方。
シャンリーは青夜を朱雀の神気『治癒の炎』で治療した後、ぶっ倒れた。
復活した青夜を面白がって葉月とアンジェリカが看病してるところに、治療した3時間後に愛が神妙な顔で現れて、
「青夜君、シャンリーちゃんが拙いわ。死にそう」
そう告げるくらいの症状で、青夜が部屋で眠るシャンリーのところまで出向けば、本当にシャンリーが苦しそうどころか顔面蒼白で死に掛けてて、
「あっ、本当に死にそう。でも、オレを朱雀の神気の『治癒の炎』で治療したにしては・・・あれ? これ、もしかして『星の力』が外部から奪われてる?」
「やっぱり外から術式の干渉を受けてるわよね、これって?」
中国系なので確証が持てなかった愛が問う中、青夜が気軽に、
「よし、力の流れを逆流させよう」
「ちょ、出来るの、そんな事?」
「ええ。前に読んだ東条院の秘伝書にそんなのが書いてありましたから(大ウソ)」
青夜が嘘臭い笑顔でそう愛を騙して、シャンリーの額に中国神話神仙術の印を朱色の筆で書いて、
「朱雀の名において、朱雀七宿を守護する第3宿『柳宿』、第5宿『張宿』よ。弱る第4宿『星宿』に借り物の力を戻せ。願わくば更なる宿の力を与えよ。総ては朱雀の為なり」
中国神話神仙術の印を結ぶと、方陣が出現して、直後に(遥か遠方の中国で『気』をゴッソリと奪われた者達が居る訳だが、それとは対照的に)シャンリーの体内に『気』が戻り、死に掛けてた癖にあっという間に回復して、
「何、みんなして?」
目覚めたのだった。
「えっ? 何、これ?」
シャンリーが自分の力の充実に気付いた。
『星宿』の力が普段の1・7倍増しの出力になってるのだから、さすがに気付く。
「私に何をしたの?」
(中国系の術式に詳しく)こんな事が出来るのは青夜くらいだ。なので青夜を見ると、
「『星の力』が奪われてたからシャンリーさんに戻しただけだよ。それが普段のシャンリーさんの出力だから覚えておいてね」
さらりと言ったのだった。
まあ、青夜としては治癒して貰った借りを返しただけなのだが。
◇
その時の事を感謝してるのか、シャンリーまで超ミニのチャニナドレスを着て、祝賀会が始まったのだが(何がどうなったのか青夜も理解に苦しむのだが、女子特有の変なテンションで)ただのコスプレ祝賀会だったはずが、パーティーゲームが始まってしまった。
アンジェリカが用意したツイスターゲームだ。
これは密着系のゲームで、餌食となったのは青夜だった。
対戦相手はそれぞれ家族が担当し、最初の対戦相手は(ルーレットでそれぞれの色を選んだら)愛だったのだが、その非常なルーレットの結果、
「ちょ、嘘でしょ? 青夜君、絶対に匂いを嗅いじゃダメよ。後、横から覗いてもダメだからね。私、この下に下着を穿いてないんだから」
仰向けで開脚し、青夜が股間に顔を近付ける大変な姿勢になっており、
「いやいや、無理だから」
「息を止めて眼を瞑りなさい」
「ええぇ~」
「ってか、早く次のルーレットを回してよ、葉月さん」
と白熱し(負けた方が罰ゲームで1枚衣装を脱ぐ事となりビキニ衣裳の愛は負けられず)愛が限界だったので、大人の青夜が仕方なく負けたのだが。
続くシャンリーもチャイナドレスがワンピースタイプだったので負けられなかったのだが、シャンリーはド乱視なので勝負序盤で眼鏡を落としてしまい、両手が塞がってて眼鏡を拾えず、呆気なく踏み外して負けてしまい、
「もう絶対に参加しないから、こんな馬鹿騒ぎ」
そう言いながらも罰ゲームは義理堅く履行し、背を向けてチャイナドレスを脱ぎ(バックレスドレスだったのでブラをしてない事は分かってたが、やはりそうで)両腕で胸を隠しながらピンク色の高級パンツ姿になって赤面したのだった。
続いて葉月との対戦中に、
「ただいまぁ~」
弥生が帰ってきた事でこの祝賀会を兼ねたパーティーゲームはようやく終了したのだった。
と言うのも、
「・・・アナタ達、何をやってるの? ママにシャンリーまで?」
眼の色変えて弥生が怒ったからだ。
「まさか、青夜、アナタが操って?」
とばっちりで疑われた青夜が、
「そんな訳ないでしょ。青龍大学の火武祭で優勝したからみんなが祝賀会をしてくれただけなのに。少し衣裳が過激で、何故か罰ゲームが脱衣のツイスターゲームが始まっちゃって『これはダメなんじゃあ』とは思ったけど」
「あのねぇ~。思ってたんなら止めなさいよね。ったく、全員、さっさとその馬鹿げた衣装を着替えなさいっ! こんな事がバレたら私達、東条院家から粛清されるわよっ! そうでなくても青夜に東条院の廃れた分家の家名を継がせる計画が持ち上がってるのにっ!」
「えっ? 何、それ? オレ、嫌だよ。田中家に居るからね」
青夜がそんな事を言い、父親の一狼が妻をとっかえひっかえしてるので家長代理でもある長姉の弥生の権限が強い田中家では、弥生の言葉に妹達(葉月とアンジェリカ)も渋々と従ってコスプレの祝賀会はお開きになったのだった。
藤名金城に『ご相談があります』と呼び出されて出向けば、東条院緑子、鵜殿青刃、小巻園青花ら、東条院の親族も揃っており、
「何、これ、月弥さん?」
薄々気付きながらも青夜が尋ねると、
「火武祭、二部門で優勝された副宗家を祝う内々の祝賀会でございます、副宗家様。宗家代理より催すように指示されましたので」
大城月弥改め藤名月弥が答えた。
月弥はもう東条院の補佐も始めてる。社会人経験者だけあり事務処理の方は優秀だった。
金城の評価は『小賢しさに実力が追い付いてないから増長した瞬間に暗殺されますな』だったが。
「さっき一年以組で祝賀会はしたところなんだがな。まあ、いいか。6月の雨武祭は信長鎮魂祭とその警備の為に出場出来ないから。だったよね?」
「はい。ですが青刃殿は去年に引き続いての水術部門の雨武祭連覇が掛かっておられますがどうされますか?」
「青刃、どうする?」
「出ないよ、兄貴。どうせ、関って兄貴のクラスの吉備女が優勝するだろうから」
「コホン、鵜殿殿、例え血の繋がった御兄弟でも副宗家様ですので敬語を······」
月弥が青刃の口調をやんわりと注意しようとして青夜が呆れながら、
「ジイみたいな事言わないでよ、月弥さん。身内だけなんだから」
「はっ」
「そう言えば、そのジイは?」
「所用で出かけております」
「宝物庫の件?」
「聞いておりません」
『ふ~ん』と興味無さそうに返事した青夜は祝賀会を始め、異母弟妹に、
「2人ともどうだ、学校は?」
「問題ないよ。兄貴が暴れてるお陰で青龍大学の中等部ではみんながオレを遠巻きに見てるだけだし」
「私は大変かな?」
青花が答えたので、青夜と青刃が心配して妹に視線を集めると、
「だって、名字が小巻園なんだもん。昨日もテストで間違って東条院って書いちゃったしぃ~」
心配した兄2人が『あのなぁ』『それくらいすぐに慣れるさ』と答える中、
「セーヤお兄ちゃん、だっこ」
「はいはい、緑子様」
「様じゃなくてちゃん」
「緑子ちゃん」
青夜が新宗家の機嫌を取り、青夜が視線で合図した事で青刃と青花も緑子の機嫌を取ったのだった。
東条院分家の藤名金城と言えば『三老剣豪』とも呼ばれてるが、その他に『古狸』とも青夜などからは呼ばれている。
実際に古狸と称されるくらいのずる賢さも持ち合わせていた。
なので、火武祭が終わった当日に、青夜達が藤名の屋敷で祝賀会をしてる頃、金城はヌケヌケと明治坂田の屋敷まで足を運んでいた。
理由は当然、祝賀会をしてる青夜の許に明治坂田の傍系が近付いた件で『手を打ちに』だ。
一方、平常心の時ならいざ知らず白虎寺との会談が物別れに終わり、更には放った傍系7人の利き腕が落とされたと聞いて頭にきてる金四郎が応対したものだから勝負にならず、
「東条院の副宗家に相撲勝負を挑みたいようだが、まずはきちんと審査で『部下』に相撲で勝って貰わんとダメじゃからな。登下校時に待ち伏せして勝負など挑んでくれるなよ?」
との挑発に、挑発だとは分かっていながらも、まんまと金四郎が乗せられて、
「それはその部下とやらに勝ったら副宗家と相撲勝負が出来るという事か?」
「まあのう。じゃが、東条院の『部下』は鬼のように相撲が強いぞ? おそらくじゃが、そちらでは勝てぬやもしれんが」
「上等じゃぁぁぁぁぁぁっ! 明日の早朝稽古にその部下を連れてこぃぃぃぃぃぃっ! 朝の4時じゃからなぁぁぁぁぁぁっ!」
などとの重要な取り決めが青夜の知らぬところで交わされてしまったのだった。
はしゃいだ緑子がおネムの時間となって退室した藤名屋敷の祝賀会では、長兄の青夜が保護者モードで、
「青花、習い事はちゃんとするようにな」
「ええぇ~。それだと友達と遊べないじゃない」
その妹の言葉に青夜は『友達ねぇ』と苦笑しながら青刃を見て、
「青刃は友達はいるのか?」
「まさか。東条院の直系に友達なんて対等な存在、出来る訳ないでしょ。対等な他の四柱も、月御門は京都、白虎寺は真達羅通一門が囲い込み外部に一切出ず、吉備は西日本なのに。部下だけだよ」
『だよな』と青夜も納得しながら、
「青花、頼むから『友達が誘拐されたから』とか言って『護衛を撒いたり』しないでくれよ。東条院は色々と怨まれててそういうのもあるから」
と忠告したが、青刃が、
「無理だと思うよ、兄貴。青花は兄貴以上のヤラカシ系だから」
そう断じたのだった。
◇
藤名の屋敷での祝賀会を終えて田中家が滞在してるソフトンニューヨークホテル東京のロイヤルスイートに戻ると、
「遅いわよ、青夜」
「そうよ、せっかく待ってたのに」
葉月とアンジェリカが部屋で青夜を出迎えた訳だが・・・・・・・・
何故か葉月とアンジェリカはバニーガールの恰好をしていた。
葉月はベストと蝶ネクタイ系、アンジェリカがボンテージ系の。
「・・・何これ?」
青夜が面を喰らう中、
「あれ、嬉しくない? 学校の大会で優勝したっていうから青夜をお祝いする為に着たんだけど?」
「本場のバニーガールを見たいって言ってたでしょ、青夜?」
葉月とアンジェリカに左右から腕を組まれて、無駄に広いホテルのリビングルームに向かうと、赤面した愛もソファーに座っていた。
愛の衣裳は巫女ビキニだった。
つまりは巫女の衣裳なのだが、ビキニにカットされてて、素肌がモロ露出していた。
「ええっと、ママまで何やってるの? ママは未亡人になったところでしょ? パパの四十九日法要もまだなのに?」
柄にもなく青夜の方が常識的にツッコむ破目になった。
「違うの、青夜君。アンちゃんが無理矢理私にこれを着させて。着ないとカトリック系の教会を紹介しないって言うから」
羞恥で涙眼なのが初々しい。
「ママが悪いんでしょ、息子である青夜の活躍を祝おうとしない」
それがわがままアンジェリカの主張で、アンジェリカにわがままで勝てる者は田中家には居ないので、その主張が通ったのだった。
「ようやく帰ってきたの? それじゃあ、さっさと始めましょう」
別室から出てきたシャンリーも超ミニでバックレスのチャニナドレス姿だった。
「えっ、シャンリーさんまで? どうして?」
「何よ、悪いの?」
とシャンリーが青夜を睨む中、葉月が横から、
「感謝してるらしいわよ。体調を戻してくれた青夜に対して」
そう教えられて青夜は納得した。
◇
火武祭初日の夕方。
シャンリーは青夜を朱雀の神気『治癒の炎』で治療した後、ぶっ倒れた。
復活した青夜を面白がって葉月とアンジェリカが看病してるところに、治療した3時間後に愛が神妙な顔で現れて、
「青夜君、シャンリーちゃんが拙いわ。死にそう」
そう告げるくらいの症状で、青夜が部屋で眠るシャンリーのところまで出向けば、本当にシャンリーが苦しそうどころか顔面蒼白で死に掛けてて、
「あっ、本当に死にそう。でも、オレを朱雀の神気の『治癒の炎』で治療したにしては・・・あれ? これ、もしかして『星の力』が外部から奪われてる?」
「やっぱり外から術式の干渉を受けてるわよね、これって?」
中国系なので確証が持てなかった愛が問う中、青夜が気軽に、
「よし、力の流れを逆流させよう」
「ちょ、出来るの、そんな事?」
「ええ。前に読んだ東条院の秘伝書にそんなのが書いてありましたから(大ウソ)」
青夜が嘘臭い笑顔でそう愛を騙して、シャンリーの額に中国神話神仙術の印を朱色の筆で書いて、
「朱雀の名において、朱雀七宿を守護する第3宿『柳宿』、第5宿『張宿』よ。弱る第4宿『星宿』に借り物の力を戻せ。願わくば更なる宿の力を与えよ。総ては朱雀の為なり」
中国神話神仙術の印を結ぶと、方陣が出現して、直後に(遥か遠方の中国で『気』をゴッソリと奪われた者達が居る訳だが、それとは対照的に)シャンリーの体内に『気』が戻り、死に掛けてた癖にあっという間に回復して、
「何、みんなして?」
目覚めたのだった。
「えっ? 何、これ?」
シャンリーが自分の力の充実に気付いた。
『星宿』の力が普段の1・7倍増しの出力になってるのだから、さすがに気付く。
「私に何をしたの?」
(中国系の術式に詳しく)こんな事が出来るのは青夜くらいだ。なので青夜を見ると、
「『星の力』が奪われてたからシャンリーさんに戻しただけだよ。それが普段のシャンリーさんの出力だから覚えておいてね」
さらりと言ったのだった。
まあ、青夜としては治癒して貰った借りを返しただけなのだが。
◇
その時の事を感謝してるのか、シャンリーまで超ミニのチャニナドレスを着て、祝賀会が始まったのだが(何がどうなったのか青夜も理解に苦しむのだが、女子特有の変なテンションで)ただのコスプレ祝賀会だったはずが、パーティーゲームが始まってしまった。
アンジェリカが用意したツイスターゲームだ。
これは密着系のゲームで、餌食となったのは青夜だった。
対戦相手はそれぞれ家族が担当し、最初の対戦相手は(ルーレットでそれぞれの色を選んだら)愛だったのだが、その非常なルーレットの結果、
「ちょ、嘘でしょ? 青夜君、絶対に匂いを嗅いじゃダメよ。後、横から覗いてもダメだからね。私、この下に下着を穿いてないんだから」
仰向けで開脚し、青夜が股間に顔を近付ける大変な姿勢になっており、
「いやいや、無理だから」
「息を止めて眼を瞑りなさい」
「ええぇ~」
「ってか、早く次のルーレットを回してよ、葉月さん」
と白熱し(負けた方が罰ゲームで1枚衣装を脱ぐ事となりビキニ衣裳の愛は負けられず)愛が限界だったので、大人の青夜が仕方なく負けたのだが。
続くシャンリーもチャイナドレスがワンピースタイプだったので負けられなかったのだが、シャンリーはド乱視なので勝負序盤で眼鏡を落としてしまい、両手が塞がってて眼鏡を拾えず、呆気なく踏み外して負けてしまい、
「もう絶対に参加しないから、こんな馬鹿騒ぎ」
そう言いながらも罰ゲームは義理堅く履行し、背を向けてチャイナドレスを脱ぎ(バックレスドレスだったのでブラをしてない事は分かってたが、やはりそうで)両腕で胸を隠しながらピンク色の高級パンツ姿になって赤面したのだった。
続いて葉月との対戦中に、
「ただいまぁ~」
弥生が帰ってきた事でこの祝賀会を兼ねたパーティーゲームはようやく終了したのだった。
と言うのも、
「・・・アナタ達、何をやってるの? ママにシャンリーまで?」
眼の色変えて弥生が怒ったからだ。
「まさか、青夜、アナタが操って?」
とばっちりで疑われた青夜が、
「そんな訳ないでしょ。青龍大学の火武祭で優勝したからみんなが祝賀会をしてくれただけなのに。少し衣裳が過激で、何故か罰ゲームが脱衣のツイスターゲームが始まっちゃって『これはダメなんじゃあ』とは思ったけど」
「あのねぇ~。思ってたんなら止めなさいよね。ったく、全員、さっさとその馬鹿げた衣装を着替えなさいっ! こんな事がバレたら私達、東条院家から粛清されるわよっ! そうでなくても青夜に東条院の廃れた分家の家名を継がせる計画が持ち上がってるのにっ!」
「えっ? 何、それ? オレ、嫌だよ。田中家に居るからね」
青夜がそんな事を言い、父親の一狼が妻をとっかえひっかえしてるので家長代理でもある長姉の弥生の権限が強い田中家では、弥生の言葉に妹達(葉月とアンジェリカ)も渋々と従ってコスプレの祝賀会はお開きになったのだった。
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職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
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最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
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彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
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僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
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この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
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