実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド

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『日本神話ヤマタノオロチ・伍ノ首』討伐の論功行賞

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 『日本神話ヤマタノオロチ・伍ノ首』を発現した鍋島加我は討伐された。

 その討伐の戦功は、





 第1戦功、『伍ノ首』討伐者、一番槍、2度の富士の樹海への転移成功(罪科、草薙剣無断持ち出し)、吉備桃矢。

 第2戦功、富士の樹海決戦参戦、標的、三番槍、分身による都内足止めと吉備桃矢に合流しての富士の樹海への転移援護、田中青夜。

 第3戦功、富士の樹海決戦での逃亡封じの結界展開、本体の首と胴体回収、脱皮3体の回収、月御門閻魔。

 第4戦功、『伍ノ首』覚醒者の実名1番報告、高橋弾正。

 第5戦功、3度の都内発見通報、鷹丘紅子。

 第6戦功、都内足止め、飲酒成功、東条院青刃。

 第7戦功、都内足止め(戦死)、夏目夏雄。

 第8戦功、都内足止め、飲酒成功(戦死)、上杉刑部。

 第9戦功、二番槍、三文字竜也。

 第10戦功、富士の樹海の決戦場の完全封鎖、脱皮1体の回収、富士鷹秋乃。

 第11戦功、1度の都内発見通報、花水木英次。

 第11戦功、1度の都内発見通報、木上黒猫。





 となった。

 中でも富士の樹海決戦で『日本神話ヤマタノオロチ・伍ノ首』と戦った吉備桃矢と田中青夜の武名は日本中に知られる事となった。





 そして鍋島加我の討伐から5日後の5月10日の平日、皇居にて論功行賞が執り行われた。

 式典をつかさどるのは術後でまだ静養中の白鳳院当主の令に代わり、新たに当主代理を務める白鳳院晴彦だ。

 第1戦功の吉備桃矢の褒美は凄まじく、国宝の三種の神器、草薙剣を許可なく持ち出した罪の分を相殺しても、正二位、阿大臣まで昇格し、中国地方の旧国名の守護職全部を与えられていた。

 褒賞金も月々50億円を死ぬまで貰えるらしい。





 続いて、

「『日本神話ヤマタノオロチ・伍ノ首』討伐の第2戦功、賽河原権近衛中将、田中青夜。前へ」

「はっ」

 青夜が前に出る中、

「分身を使っての東京月御門屋敷での『伍ノ首』の足止めによる吉備桃矢が合流するまでの時間稼ぎと都内から富士の樹海への転移援護、富士の樹海決戦での『ヤマタノオロチ・伍ノ首』の討伐助力、そして何より『伍ノ首』の標的となって都内の被害を最小限に抑えた事、大儀であった。その甚大な功績に報い、ここに従三位、吽近衛大将んこのえたいしょうに任ずる。同時に紀伊守、相模守、伊豆守にも任ずる。『ヤマタノオロチ・伍ノ首』討伐の報奨金を50年間分割で毎月20億円与えるものとする。一層、日本国の為に励めよ」

 『毎月20億円で、1年間で240億円。それが50年間で合計1兆2000億円。空母1隻の値段を考えれば安い気もするが』と瞬時に計算しながら青夜は、

「ははっ!」

 と答えながら、

(従四位下、従四位上、正四位下、正四位上、従三位だから4階級特進か。そりゃあ確かに数百年周期の『ヤマタノオロチ』の1つを倒したんだから、そうなるんだろうけどさ。まさか、東条院宗家の最高官位に16歳で到達するとはな。が西で、が東だから、東日本の皇軍司令官って事だよな? ってか、親父殿が死んで空席になった地位に親父殿の四十九日法要が終わる前に座らせるか、普通? マジでやりたくないんだけど。紀伊守と毎月20億円の金はともかく。そうか、月々か。飼い殺しって訳ね)

 ウンザリした。

「同時に、異母弟、青刃、異母妹、青花の従三位、東条院青蓮呪詛殺害の三族連座の罪状も白赦とする」

(『白赦』・・・白鳳院のよる大赦か。『ヤマタノオロチ討伐の第2戦功』でも『皇赦』が出ない訳ね。何とも不細工な。御当主様と前代理様なら絶対にしない悪手だぞ。この男の独断か? 今後も東条院を操ろうとしてるのが透けて見えるな)

 などと思いながらも完璧なポーカーフェイスで、

「ははっ、ありがたき幸せっ!」

「但し、2人が東条院の家名を名乗る事は認めぬ故、肝に銘じるように」

「ははっ!」

 こうして青夜はまた偉くなったのだった。





 因みに異母弟の東条院青刃は、

「『日本神話ヤマタノオロチ・伍ノ首』討伐の第6戦功、東条院青刃。都内、東京月御門の屋敷において『伍ノ首』の足止め、並びに『伍ノ首』への飲酒に成功、見事である。よって、東条院青蓮の呪詛殺害の三族連座の罪状を正式に白赦し、従六位上、吽兵衛大尉んひょうえのだいじょうに任ずる。また褒賞として金100億円を一括授与する」

「ははっ!」

 と官位も貰っていた。





 式典が終わると、負傷した左肩がまだ全快していない桃矢が、

「悪いな、青夜。『ヤマタノオロチ・伍ノ首』討伐の手柄を貰って」

「いえいえ、桃矢さんの19歳の誕生日プレゼントですから」

 青夜は桃矢を見た。

 桃矢は既に『神気』を纏っていた。

 当然だ。『日本神話ヤマタノオロチ』の討伐報酬の会得異能力は(空位時は)古来より『日本神話スサノオ』と決まっているのだから。

 もう桃矢は『日本神話スサノオ』の異能力も発現し始めていた。

「可愛い事言ってくれるねぇ~」

 桃矢が青夜の肩を組みながら、

「『伍ノ首』の礼だ。関三宝兎はくれてやるよ。恋人でも好きにしろ」

「ええっと、それだけじゃないですよね、桃矢さん? そっちは『スサノオ』を得ておいて」

 青夜が真顔で質問すると、

「チッ、やっぱりそれだけじゃあダメか。その内、もっと凄いのをプレゼントしてやるよ。じゃあな」

 桃矢はさっさと帰っていった。

 青夜は東条院の一党の富士鷹秋乃を見た。

「やあ、助かったよ」

「いえいえ、副宗家様のお役に立てて光栄です」

「今回の『伍ノ首』もだけど、百合白虹の件もありがとね」

「いえいえ」

「駿河守が貰えたらプレゼント出来たんだけど、ーー伊豆守、いる?」

「どんな罰ですか? 私を御山から離さないで下さい」

「だよねぇ~」

「絶対に要りませんからね、そんな役職。では、失礼します」

「ああ、ありがとね」

 秋乃が気を利かせて早々に離れていく中、不貞腐れた青刃の顔を見た青夜が、

「久しぶりだな。背が伸びたかな?」

「まあね」

「で? どうして釈放されたのに連絡しなかったんだ? 無茶し過ぎだぞ、青刃、『ヤマタノオロチ』に突っかかるなんて? 柳原がオレに連絡してきたから良かったものの」

「だって功績が必要だったから」

 青夜の苦言に青刃がすねたように甘えた。

「まあ、結果オーライか。14歳で従六位上だからな。こりゃあ、まだまだ出世するぞ、青刃」

「16歳で東条院宗家の極官まで登り詰めた兄に言われてもね」

「極官なんて難しい言葉、良く知ってるな。さすがはインテリ。兄として誇らしいよ」

「はいはい」

「あっ、信じてないなぁ~」

「それよりも行くんでしょ、藤名屋敷?」

「ああ、臨時の一族会が待ってる。先代が死んだところだ。嫌味くらいは覚悟しておけよ」

「はいはい」

 そう言いながら一緒に車に乗って皇居を出ていった訳だが·······





 車内にて、

「で、どうして兄貴が副宗家なの?」

 青刃に詰め寄られた。

「?」

「東条院の宗家当主を緑子に譲った事を言ってるんだけど、オレは」

「ああ、それね。予知をバンバン当てるオレの死んだお母様に16歳までに東条院から出ろって言われたんだよ、さもないと死ぬって。そんな予知をされたら家を出るだろ、普通?」

「もしかして、それで下手な『落ちこぼれ』のふりをしてたの?」

「下手って何だよ? 名演技だっただろうが」

 という自画自賛が青夜自身の評価だった。

「そもそも青刃が悪いんだぞ、せっかく宗家後継を譲ったのに東条院の宗家屋敷の邪気爆発なんかを知ってた。せめて毒とか飲んで病院に入院してればなぁ~。法子さんはそういうところ甘かったから」

「ってかさ、ママが自刃したって何なの? 絶対にしない性格なのは兄貴も良く知ってるでしょ?」

「報告ではそうだが、自刃ってのは刃を使ったって事だ・・・青刃も分かるだろ?」

「東条院の忠臣に自刃に見せ掛けて殺害されたって事?」

「東条院の『宗家落とし』なんかをやったら普通はそうなる。そうでなくても東条院や四乃森を嫌ってる連中は多いのに」

「・・・」

 黙って長考する青刃に青夜が、

「青刃、この件はもう追うなよ」

「どういう意味?」

「どうも東条院うちの親父殿が白鳳院を乗っ取ろうとか考えてたのが邪気爆発の原因らしくてな」

「そう言えば枢様が死んだって聞いたけど本当なの?」

「ああ、心臓移植で適合しなかったとかでな」

「嘘臭ぁ、本当は生きてるんじゃない?」

「夢枕に立たれるまでは、オレも『ヤマタノオロチ・伍ノ首』の覚醒候補を仮死状態でやり過ごす『裏ワザ』を使ってるとも思ったが、今では『本当に死んでる』が9割だな」

 と青夜はひょうしてから、

「・・・でだ。今のこの状況で、もし邪気爆発がなくて親父殿が生きてたら、オレが白鳳院に送り込む画策がされてて日本中が大変な事になってた訳さ、今頃は」

「えっ? それって兄貴の『落ちこぼれ』のふりもなくて『ヤマタノオロチ・伍ノ首』の討伐もしてて、戦功を手土産に白鳳院に婿入りして次期当主になるって事? まさか無理だって」

 青刃が呆れる中、青夜が、

「そう思うだろ、普通? ・・・親父殿は博打が好きだったからな」

「なら、東条院の宗家屋敷の邪気爆発の黒幕は先手を打って攻撃した白鳳院? 四乃森は踊らされただけ?」

「分からん。もし本当に白鳳院が黒幕なら探ったら100パーセントされるからな。オレもお母様の予知にビビって東条院関連には出来るだけ関わらないようにしているし。青刃も止めろよ、白鳳院を怒らせたら宗家呪殺の三族連座の白赦なんて簡単にくつがえるんだから」

「・・・えっ、そうなの? 皇居で発表されたのに?」

 青刃が背筋を正して探るように青夜を見る中、青夜が、

「だって、白赦それを言ったの代理であって白鳳院の当主様じゃないんだから。そもそも本当に代理かもどうかも怪しいしな。当主様は手術後一度も表舞台に顔を出していないんだから。『論功行賞の査定を見直す』なんて言われてみろ。簡単にくつがえるから。白赦が白鳳院が認める大赦なだけに嘘みたいに簡単に」

「つまり、これからもそれをネタに東条院を脅せるって事? 前から思ってたけど白鳳院ってムカつかない? あの許嫁なんてすぐに兄貴にビンタするし」

「ノーコメント」

「何、その答え方? もうあの女との許嫁話は白紙なんでしょ?」

「白鳳院は何でもやるからな」

「前言撤回の再婚約とか?」

「そういう事。警戒は必要だからな。まずは身の安泰さ」

 そんな事を喋ってると東条院の分家頭の藤名の屋敷に車は到着したのだった。
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