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白鳳院枢の訃報
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死んだ当日は『忌日』といい、通夜でも何でもない。
通夜とは死んだ日の翌日の事なのだから。
それでも白鳳院枢の訃報を聞いて続々と白鳳院の屋敷に都内在住の異能界の重鎮達が顔を出していた。
代参ではなく本人達がだ。
白鳳院家は日本屋敷ではなくオシャレな美術館を思わす外観だが、都内とは思えないくらいの大豪邸で、玄関前にも広い敷地があり、その玄関に東条院の車列が5台入ってきた。
東条院の車列から降りた青夜は東条院の嫡子正装の青地の紋付羽織袴姿だったが、その腕には4歳の緑子をだっこしていた。
緑子の方も東条院の正装の青地の紋付だ。子供用にあつらえた特注品のだが。
他にも、東条院の宗家代理の藤名金城、東条院の陪臣筆頭の如月一族の平三、陪臣次席の日ノ岡月雄を主軸に10人以上が従っていた。
野々宮一族の当主の稲穂もギリギリ最後尾に続いている。
玄関ホールに入ると、挨拶を済ませて帰らずに立ち話をしていた弔問客達が、
「おい、あれ」
「宗家と分家が軒並み落ちた東条院の御登場か。『御前のお気に入り』が連れてるあの子供は誰だ?」
「さあ、青地の紋付を着てるのだから東条院の縁者らしいが・・・」
「確か先代の姪が難を逃れたはずだぞ。それじゃないのか?」
などの雑音を無視して青夜達は霊安室へと進んだ。
因みに『御前のお気に入り』とは青夜の事だ。
青夜は『落ちこぼれ』を演じたが、白鳳院の御前には通用せず(当主の令の鶴の一声で)嫡流の孫娘の鈴と婚約させた事から周囲の認識では青夜は『お気に入り』に分類されていた。
皇居での叙勲の際には長々と15分間も皇居の叙勲室で話し込んでいる。
青夜にとっては普通の事だったが、白鳳院の御前と5分以上も団欒など通常ではあり得ない事なので。
「こちらです、東条院の皆様方」
22歳、164センチ、焦茶髪のミディアムで右眼に赤薔薇の刺繍入りの黒眼帯をしてる男装黒服の桑原紗枝の案内で、白鳳院枢の眠る棺がある部屋に通された。
棺の蓋が開いており、青夜が覗くと本当に枢が死んでいた。
美しい死に顔だった。
今にも動き出しそうだが、それは素人目には、だ。
(霊魂が既に消えてる訳ね。早いな、処置が・・・本当に本人なのか? いや、それ以前に本当に死んでるのか、それとも仮死状態なのか触れて確認したいんだが・・・)
視線を棺の枢から室内に動かすまでもなく、遺体から記憶を抜かれては敵わないので白鳳院の精鋭が室内にはズラリと20人体制で控えていた。
青夜も『さすがに触るのは無理か。本当に死んでたら白鳳院の記憶を抜いた罪で一生投獄だし』と自重して、枢の遺体に触れる事はなかった。
青夜が抱いてる緑子が、
「セーヤお兄ちゃん、誰、この人? お兄ちゃんのお友達?」
と質問してきたので、
「オレのわがままを許してくれた大恩人だよ」
「ふ~ん、早く良くなるといいね」
というのが4歳の緑子の認識だった。
まだ子供だから死んでる事を説明しても理解出来ないだろうから『そうだな』と答えて数珠を手に両手を合わせた青夜だったが、
(これまた妙な事を口走ったぞ、緑子が。『治る』と無意識に判断したのか? それともまだ子供だから死んでる事を認識していないだけ? う~ん)
と悩みながら、そんな事を考えてるとは思えないくらいのポーカーフェイスで、紗枝に、
「お姫様はまだ伊勢?」
「はい」
「情報が下りてこなかったけど御当主様は本当に手術をしたんだよね?」
「ええ、極秘中に極秘でしたので動けるようになるまで未発表の予定でしたが」
「成功したんだよね、御当主様の手術は?」
「無論です」
「なら良かった」
青夜はそう安堵してから、
「当主代理様の手術の方の外的要因の可能性は?」
つまりは『人為的』かとの質問だったが、
「ございません。心臓との相性が悪かっただけだそうです」
「ふ~ん」
「では次の弔問客の方が来られましたので」
「わかった。東条院用の部屋に通して貰おうか」
本当はさっさと帰りたかったがそう青夜がさらりと要求し、
「御冗談を。もう鈴姫様との婚約は白紙になったのですから、そのような便宜は図り兼ねます。明日、またお越し下さい」
紗枝に答えられて、青夜は内心で『よっしゃぁぁ』とガッツポーズしたが、素っ気ない顔で、
「分かった。今日はこれで帰らせて貰うな」
そう言って東条院の一団を引き連れて玄関を出て東条院の車で帰っていったのだった。
白鳳院に弔問に出向いた後、青夜は藤名屋敷を経由して田中家に戻った。
帰るまでが利根川強歩らしいので、これでようやく青龍大学の高等部の宿泊研修は終了したのだった。
人が死んだ忌日を1日目と数えて7日目は初七日法要の日だ。
17日に死んだ田中一狼の初七日法要は4月23日な訳だが。
一狼の葬儀の日に東条院青蓮が死に、更にその2日後の青蓮の葬儀があった日の翌日が利根川強歩の初日だった。
つまり何が言いたいかと言えば、カレンダーを見ればお分かりだろうが、利根川強歩が終わる2日目にして白鳳院枢の忌日が23日で『一狼の初七日法要の日』でもあった。
最初から養父である一狼の初七日法要には間に合わなかった訳だが、帰宅した青夜が田中ビルの3階に顔を出し、
「ただいま、弥生さん。パパの初七日法要はどうだった?」
「無事終わったわよ」
普段は仕事だが初七日法要で仕事を休んだ弥生が家に居て答えた。
この田中ビルには仏間や仏壇がない。近所のお寺さんで初七日法要を済ませており、もう弥生は喪服ドレスではなく私服だった。
「そう。無事に済んだのなら何より」
「ねえ。それよりも白鳳院の若様が死んだ話、本当なの?」
「うん、さっきお悔やみを言ってきたよ」
「今年の4月は初日から色々と起こるわね」
「本当だよ」
青夜はその後、弥生と少し話をした。
その日の夜、青夜は夢を見た。
白鳳院枢がいつもの白の詰襟服で立っており、
「よう、義弟よ」
死んだ割には妙に陽気に挨拶してきた。
『この気配、本物だ』と瞬時に悟ると同時に『そうか、本当に死んでたのか』と理解した青夜は普段通りの最上級の礼をもって、
「御無沙汰しております」
「まさか、ドナーから提供された心臓との相性が悪かったとはな。我ながら運がない」
戯けるように枢は笑った。
「これが最後の挨拶になるのでしょうか? それとも今後もチョクチョク?」
「無論、義弟が馬鹿な事をすれば、その都度、苦言をしに夢に出るさ」
「ええぇ~、大人しく成仏して下さいよぉ~」
「無理だな。まだ当主に献じた私の心臓が動いているのだから」
「確かに。死んだ気配もありませんでしたしね。それで本日の御用件はそれを言いに来られたのでしょうか?」
「そんな訳があるか、二つ言っておく事がある」
と指を立てた枢が、
「一つ、我が祖父を見ても妙な詮索をしない」
「・・・・・・もしや御当主様に憑かれてますので?」
「『詮索しない』だ」
「はい」
「二つ、白鳳院の後継には白鳳院鎌足がなる」
白鳳院の家名だが白鳳院の一族としては端の人物だ。
だが藤原氏の始祖で、学校でも習う中臣鎌足と同名だったので青夜も覚えていた。
「? 御当主様からは血筋が遠かったと記憶してますが」
「なので妹と結婚する」
「なら納得ですね」
「だが納得しないのも居る。叔父御だ」
「御当主様の次男君の晴彦様?」
「そうだ。白鳳院では五十日祭では喪は明けない。百日祭でようやく喪が明ける訳だが、それまでは喪中で祝い事の話は一切出ない。当主代理の私が死に、当主は術後で静養中。鈴も伊勢だ。つまり3月と10日の間、叔父御が白鳳院の当主代理を務め、『自分が後継者だ』と思ってたところに遠縁が後継指名されて鈴と婚約だ。納得する訳がない」
「ええっと、もしや大ナタを振るわれますので?」
「当主の決定に従わないのであればな。よって叔父御の話には絶対に乗るなよ」
「オレは白鳳院と距離を取りますから。ですが二千院や分家の年寄り達は百日祭の頃にはとっくに晴彦様の陣営だと思いますよ」
「だろうな。鎌足が白鳳院の当主など誰も想像していないだろうから」
溜息を吐きながら、
「噂先行だと鎌足が暗殺されるだろうし・・・何かいい案はないか?」
「ありませんよ。そもそも女子は継げないんですよね、白鳳院家?」
「まだ男子継承の伝統を覆す時ではないのでな」
「いっそ、鈴様の性別が男だった事にしますか?」
「伊勢で巫女見習いをしてるのにか?」
「ですよねぇ~、他はともかく伊勢で巫女修行をしておいて『男でした』は通りませんよねぇ~」
「まあいい。今宵はこれだけだ」
「今宵は?」
青夜が嫌そうに問う中、
「日本、ひいては白鳳院の為に動いて貰わねばならないからな」
「ええぇ~」
「当然だろうが。そもそも『伍ノ首』がそろそろなのだからな。分かってると思うが普段のように『良いトコ取り』など考えるなよ? 日本国全体が窮地なのだからな」
「『覚醒候補』の不名誉を嫌って術死で死んだ人が言いますか、それ?」
「ーーっ! やはり知っていたな、青夜っ! 貴様という奴はっ!」
青夜の失言からその後、夢の中で枢の説教が始まって『帰る』と言った癖に長々と話は続いた。
翌朝、青夜は目覚めた訳だが、
「死んだ当日に血縁でもないのにオレの夢枕に立つか、普通? その大半が説教って。寝た気がしないぞ」
と呟いてから、両腕に重量を感じ、左右で寝息を立ててる葉月とアンジェリカに視線を向けて青夜はしみじみと苦笑したのだった。
通夜とは死んだ日の翌日の事なのだから。
それでも白鳳院枢の訃報を聞いて続々と白鳳院の屋敷に都内在住の異能界の重鎮達が顔を出していた。
代参ではなく本人達がだ。
白鳳院家は日本屋敷ではなくオシャレな美術館を思わす外観だが、都内とは思えないくらいの大豪邸で、玄関前にも広い敷地があり、その玄関に東条院の車列が5台入ってきた。
東条院の車列から降りた青夜は東条院の嫡子正装の青地の紋付羽織袴姿だったが、その腕には4歳の緑子をだっこしていた。
緑子の方も東条院の正装の青地の紋付だ。子供用にあつらえた特注品のだが。
他にも、東条院の宗家代理の藤名金城、東条院の陪臣筆頭の如月一族の平三、陪臣次席の日ノ岡月雄を主軸に10人以上が従っていた。
野々宮一族の当主の稲穂もギリギリ最後尾に続いている。
玄関ホールに入ると、挨拶を済ませて帰らずに立ち話をしていた弔問客達が、
「おい、あれ」
「宗家と分家が軒並み落ちた東条院の御登場か。『御前のお気に入り』が連れてるあの子供は誰だ?」
「さあ、青地の紋付を着てるのだから東条院の縁者らしいが・・・」
「確か先代の姪が難を逃れたはずだぞ。それじゃないのか?」
などの雑音を無視して青夜達は霊安室へと進んだ。
因みに『御前のお気に入り』とは青夜の事だ。
青夜は『落ちこぼれ』を演じたが、白鳳院の御前には通用せず(当主の令の鶴の一声で)嫡流の孫娘の鈴と婚約させた事から周囲の認識では青夜は『お気に入り』に分類されていた。
皇居での叙勲の際には長々と15分間も皇居の叙勲室で話し込んでいる。
青夜にとっては普通の事だったが、白鳳院の御前と5分以上も団欒など通常ではあり得ない事なので。
「こちらです、東条院の皆様方」
22歳、164センチ、焦茶髪のミディアムで右眼に赤薔薇の刺繍入りの黒眼帯をしてる男装黒服の桑原紗枝の案内で、白鳳院枢の眠る棺がある部屋に通された。
棺の蓋が開いており、青夜が覗くと本当に枢が死んでいた。
美しい死に顔だった。
今にも動き出しそうだが、それは素人目には、だ。
(霊魂が既に消えてる訳ね。早いな、処置が・・・本当に本人なのか? いや、それ以前に本当に死んでるのか、それとも仮死状態なのか触れて確認したいんだが・・・)
視線を棺の枢から室内に動かすまでもなく、遺体から記憶を抜かれては敵わないので白鳳院の精鋭が室内にはズラリと20人体制で控えていた。
青夜も『さすがに触るのは無理か。本当に死んでたら白鳳院の記憶を抜いた罪で一生投獄だし』と自重して、枢の遺体に触れる事はなかった。
青夜が抱いてる緑子が、
「セーヤお兄ちゃん、誰、この人? お兄ちゃんのお友達?」
と質問してきたので、
「オレのわがままを許してくれた大恩人だよ」
「ふ~ん、早く良くなるといいね」
というのが4歳の緑子の認識だった。
まだ子供だから死んでる事を説明しても理解出来ないだろうから『そうだな』と答えて数珠を手に両手を合わせた青夜だったが、
(これまた妙な事を口走ったぞ、緑子が。『治る』と無意識に判断したのか? それともまだ子供だから死んでる事を認識していないだけ? う~ん)
と悩みながら、そんな事を考えてるとは思えないくらいのポーカーフェイスで、紗枝に、
「お姫様はまだ伊勢?」
「はい」
「情報が下りてこなかったけど御当主様は本当に手術をしたんだよね?」
「ええ、極秘中に極秘でしたので動けるようになるまで未発表の予定でしたが」
「成功したんだよね、御当主様の手術は?」
「無論です」
「なら良かった」
青夜はそう安堵してから、
「当主代理様の手術の方の外的要因の可能性は?」
つまりは『人為的』かとの質問だったが、
「ございません。心臓との相性が悪かっただけだそうです」
「ふ~ん」
「では次の弔問客の方が来られましたので」
「わかった。東条院用の部屋に通して貰おうか」
本当はさっさと帰りたかったがそう青夜がさらりと要求し、
「御冗談を。もう鈴姫様との婚約は白紙になったのですから、そのような便宜は図り兼ねます。明日、またお越し下さい」
紗枝に答えられて、青夜は内心で『よっしゃぁぁ』とガッツポーズしたが、素っ気ない顔で、
「分かった。今日はこれで帰らせて貰うな」
そう言って東条院の一団を引き連れて玄関を出て東条院の車で帰っていったのだった。
白鳳院に弔問に出向いた後、青夜は藤名屋敷を経由して田中家に戻った。
帰るまでが利根川強歩らしいので、これでようやく青龍大学の高等部の宿泊研修は終了したのだった。
人が死んだ忌日を1日目と数えて7日目は初七日法要の日だ。
17日に死んだ田中一狼の初七日法要は4月23日な訳だが。
一狼の葬儀の日に東条院青蓮が死に、更にその2日後の青蓮の葬儀があった日の翌日が利根川強歩の初日だった。
つまり何が言いたいかと言えば、カレンダーを見ればお分かりだろうが、利根川強歩が終わる2日目にして白鳳院枢の忌日が23日で『一狼の初七日法要の日』でもあった。
最初から養父である一狼の初七日法要には間に合わなかった訳だが、帰宅した青夜が田中ビルの3階に顔を出し、
「ただいま、弥生さん。パパの初七日法要はどうだった?」
「無事終わったわよ」
普段は仕事だが初七日法要で仕事を休んだ弥生が家に居て答えた。
この田中ビルには仏間や仏壇がない。近所のお寺さんで初七日法要を済ませており、もう弥生は喪服ドレスではなく私服だった。
「そう。無事に済んだのなら何より」
「ねえ。それよりも白鳳院の若様が死んだ話、本当なの?」
「うん、さっきお悔やみを言ってきたよ」
「今年の4月は初日から色々と起こるわね」
「本当だよ」
青夜はその後、弥生と少し話をした。
その日の夜、青夜は夢を見た。
白鳳院枢がいつもの白の詰襟服で立っており、
「よう、義弟よ」
死んだ割には妙に陽気に挨拶してきた。
『この気配、本物だ』と瞬時に悟ると同時に『そうか、本当に死んでたのか』と理解した青夜は普段通りの最上級の礼をもって、
「御無沙汰しております」
「まさか、ドナーから提供された心臓との相性が悪かったとはな。我ながら運がない」
戯けるように枢は笑った。
「これが最後の挨拶になるのでしょうか? それとも今後もチョクチョク?」
「無論、義弟が馬鹿な事をすれば、その都度、苦言をしに夢に出るさ」
「ええぇ~、大人しく成仏して下さいよぉ~」
「無理だな。まだ当主に献じた私の心臓が動いているのだから」
「確かに。死んだ気配もありませんでしたしね。それで本日の御用件はそれを言いに来られたのでしょうか?」
「そんな訳があるか、二つ言っておく事がある」
と指を立てた枢が、
「一つ、我が祖父を見ても妙な詮索をしない」
「・・・・・・もしや御当主様に憑かれてますので?」
「『詮索しない』だ」
「はい」
「二つ、白鳳院の後継には白鳳院鎌足がなる」
白鳳院の家名だが白鳳院の一族としては端の人物だ。
だが藤原氏の始祖で、学校でも習う中臣鎌足と同名だったので青夜も覚えていた。
「? 御当主様からは血筋が遠かったと記憶してますが」
「なので妹と結婚する」
「なら納得ですね」
「だが納得しないのも居る。叔父御だ」
「御当主様の次男君の晴彦様?」
「そうだ。白鳳院では五十日祭では喪は明けない。百日祭でようやく喪が明ける訳だが、それまでは喪中で祝い事の話は一切出ない。当主代理の私が死に、当主は術後で静養中。鈴も伊勢だ。つまり3月と10日の間、叔父御が白鳳院の当主代理を務め、『自分が後継者だ』と思ってたところに遠縁が後継指名されて鈴と婚約だ。納得する訳がない」
「ええっと、もしや大ナタを振るわれますので?」
「当主の決定に従わないのであればな。よって叔父御の話には絶対に乗るなよ」
「オレは白鳳院と距離を取りますから。ですが二千院や分家の年寄り達は百日祭の頃にはとっくに晴彦様の陣営だと思いますよ」
「だろうな。鎌足が白鳳院の当主など誰も想像していないだろうから」
溜息を吐きながら、
「噂先行だと鎌足が暗殺されるだろうし・・・何かいい案はないか?」
「ありませんよ。そもそも女子は継げないんですよね、白鳳院家?」
「まだ男子継承の伝統を覆す時ではないのでな」
「いっそ、鈴様の性別が男だった事にしますか?」
「伊勢で巫女見習いをしてるのにか?」
「ですよねぇ~、他はともかく伊勢で巫女修行をしておいて『男でした』は通りませんよねぇ~」
「まあいい。今宵はこれだけだ」
「今宵は?」
青夜が嫌そうに問う中、
「日本、ひいては白鳳院の為に動いて貰わねばならないからな」
「ええぇ~」
「当然だろうが。そもそも『伍ノ首』がそろそろなのだからな。分かってると思うが普段のように『良いトコ取り』など考えるなよ? 日本国全体が窮地なのだからな」
「『覚醒候補』の不名誉を嫌って術死で死んだ人が言いますか、それ?」
「ーーっ! やはり知っていたな、青夜っ! 貴様という奴はっ!」
青夜の失言からその後、夢の中で枢の説教が始まって『帰る』と言った癖に長々と話は続いた。
翌朝、青夜は目覚めた訳だが、
「死んだ当日に血縁でもないのにオレの夢枕に立つか、普通? その大半が説教って。寝た気がしないぞ」
と呟いてから、両腕に重量を感じ、左右で寝息を立ててる葉月とアンジェリカに視線を向けて青夜はしみじみと苦笑したのだった。
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この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
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