実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド

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利根川強歩、その5、30分間の水神市の名所巡り

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 桃太郎の異能力はどれも反則なモノばかりだが、その1つ『鬼退治』の中の鬼レーダーも『属性が鬼』の異能力者からしたら最悪なモノだった。

 何せ、結界や障壁やアイテムでどれだけ『鬼の気配』を隠しても日本国内だとバレるのだから。

 そしてゴブリンのタトゥーの『邪属性』も『桃太郎』の異能力の前では『鬼』と断じられ、それゆえ絶対的な鬼レーダーを持つ三宝兎の前では水神市に潜むゴブリンのタトゥー持ち達は完全に居場所を把握されたのだった。

 その三宝兎を連れて青夜は大跳躍と空中着地で水神市の夜空を移動していた。

 青夜が狙うのは当然、雑魚ではなく『強い邪の力』を持つ異能力者だ。

 まず最初が水神神宮の宮司だった。

 まあ、ゴブリンはどんなに強くてもあの程度だったが。





 青夜達が次に訪れたのは水神市の霞ヶ浦だった。

 特攻服を着た暴走族4人がバイク4台で霞ヶ浦の水面・・を疾走していた。

 水面をタイヤの付いたバイクで走れる訳がないのに、物理法則を無視して水上バイクのように疾走しているのだから異能力を使ってる事は確実で、速度もあり得ないくらい速かったのだが・・・

 それを上回る速度で上空から接近したのが三宝兎を抱えた青夜だった。

 一番後方の奴を蹴って吹き飛ばし、更に三番目の奴を蹴り飛ばしたところまでは良かったが、二番目の奴を蹴ろうとしたら、水面で二輪ドリフトされて車体を倒されてギリギリ躱された。

「へぇ~、今のを躱せるのか。やるな、おまえ」

「・・・いきなり襲ってくるなんて喧嘩を売ってるワケ?」

 バイクを停止させて青夜の蹴りを躱した暴走族が話し掛けてきた。

 その暴走族は女でピンク色の特攻服を着ていた。

 年齢は17歳。長い髪で顔立ちも美人の部類に入ったが、そんな容姿が吹き飛ぶくらいの肌の色をしていた。白っぽい肌色な訳だが、時々緑色にも見えるのだ。

 星明かりの光加減なんかじゃない。

 異能力に喰われ掛けていた。

「何、あれ?」

 青夜にお姫様だっこされてる三宝兎が問う中、

「分の過ぎた異能力を与えられるとこうなる」

「私は大丈夫なんだよな?」

「『桃太郎』と『関帝信仰』はまともな異能力だからね」

 と答えてると先頭を走ってた奴もUターンして戻ってきた。

 戻ってきた暴走族は17歳の男で、白の特攻服を着てたが、肌色はまともだったが、耳がゴブリンのように尖っていた。

「そっちもか。2人とも悪い事は言わない。治療を受けろ。水を操る異能力はともかく、ゴブリンのタトゥーの方はそろそろヤバイから」

 青夜のそんな忠告など聞く訳もなく、

「なら実力で言う事を聞かせてみろよ」

「分かった」

 問答が術式発動の時間稼ぎで最初から吹き飛ばす気満々の青夜が術を使うと、霞ヶ浦の水が2匹の龍の形となって2人の足元から突き上がった。

 2人とも水の龍の中に飲み込まれて女の方はそのまま気絶したが、男の方は小賢しくもバイクで脱出して水龍の背を走って湖面に戻ってきたが、そこを青夜に蹴られて、

「ぐはばらぁぁぁっ!」

 と吹き飛んで気絶したのだった。

「ふん。まあ、死ぬ事はないだろう」

 青夜は倒した4人を放っておいて『次の強い邪の気配』がする場所へと向かった。





 徳川の御代で剣術と言えば『表の柳生新陰流、裏の血桜一統流』だ。

 『血桜一統流』とは江戸時代に徳川幕府が『血桜武尊たける流』をベースに名だたる異能力系剣術の良いトコ取りをして進化(統合)させた流派で、その強力過ぎる剣技が故に明治の時代にも生き残ったが、昭和の大戦敗北時に占領軍によって『血桜一統流』は禁呪にされて、秘伝書は焼却の憂き目に遭っている。

 だが、それで廃れる訳もなく、名前を変え、その剣は日本で生き残っていた。

 ここ茨城県は昔は水戸藩な訳で、水戸徳川の領地だけあり血桜一統流が存在し、今も『櫻井葵流』として残り、その亜流の『櫻井水神流』の剣道場が水神市にも存在していた訳だが、

「お邪魔しまぁ~す」

 深夜に上空から敷地内に舞い降りた三宝兎をお姫様だっこした青夜の訪問を受けていた。

 陽気な青夜の挨拶が体育館を思わせる静かな剣道場の玄関前のガレージに響く。

「青夜、居るぞ。2人、それもかなり強いのが」

「ギン様、悪いけど降ろすな。剣術は相性が悪いから」

 本当は嫌だったが『うん』と三宝兎が了承し、地面に下ろされ、青夜と2人して剣道場に入ると、3人が日本刀で戦っていた。

 そして周囲には血のように真っ赤な桜吹雪の幻影が舞ってる。これがベースとなった剣術が血桜武尊流と名乗る由縁だ。

 戦闘中にあんなもんが視界を遮り、日本刀で攻撃された日には、そりゃあ剣筋が読めないのだから大変だ。

 2人掛かりで1人を襲ってるように見え、

「分かってると思うが2人の方だぞ、青夜」

「さすがにこれだけ強い邪の気を放ってたら分かるよ」

 2人組は183センチの黒髪革ジャン男と168センチの茶髪ロング白セーラー服女だった。

 2人ともまだゴブリンのタトゥーには飲み込まれていなかったが『強い邪の力』を放っていた。

 対する1人は165センチ、黒髪ポニーテールの剣道着女子だった。大学生くらいだろうか。

 その1人の女の方が青夜達に先に気付いて、

「手を出さないでっ! 一族の恥晒しは私の手が斬るんだからっ!」

「一族の恥晒しだと? おまえのそういうところが気に入らないんだよっ!」

「ホントホント、真面目ぶってさぁっ!」

「それで悪に走ったの? 馬鹿なんじゃないのっ!」

「何だとっ!」

「悪じゃないわよっ!」

 何やら3人とも血縁やら因縁やらがあるようだ。

「どうする? 何か事情があるっぽいけど・・・」

 三宝兎が目にも留まらない剣劇に眼を輝かせながら青夜に視線を移した時には、青夜が正拳突きを繰り出して、青龍の拳圧を出したところだった。

 10メートル級の青龍の拳圧が3人・・を襲う。

「なっ!」

「ふざけっ!」

「ちょっ!」

 3人は回避したが周囲に舞っていた真っ赤な桜吹雪の幻影は青龍の拳圧で消し飛んでいた。

 最初から真っ赤な桜吹雪の幻影の掃除が狙いで、青龍の拳圧がUターンして戻ってきた時には瞬動で革ジャン男の背後に移動した青夜が『まずは1人』と蹴りで革ジャン男を青夜は青龍の拳圧の前に蹴り飛ばしていた。

 蹴りも十分な威力で負傷したが、

「ぐはっ! ・・・ギャアアアアアアア」

 更に青龍の拳圧を喰らった革ジャン男がボロボロになった。

「何よ、アンタっ!」

 白セーラー服の女が苦情を言った時には、

「『口よりも剣を動かせ』って教わらなかったのか?」

 コンマ1秒で真正面にまで間合いを詰めた青夜がゼロ距離から正拳突きをして、

「キャアアアアアアア」

 5メートル級の青龍の拳圧で白セーラー服を吹き飛ばし、

「ふん、警戒する程でもなかったなーーおわっ!」

 勝ち誇った青夜が慌ててしゃがむと、

「手を出さないでって言ったでしょうがっ!」

 剣道着女が放った日本刀の斬撃がしゃがんだ青夜の頭上をビュンッと通過し、反射的に、

「何すんだよっ!」

 しゃがんだ青夜が拳を放って、5メートル級の青龍の拳圧を出してから、

「あっ、しま・・・・・・」

 と気付いた時には剣道着女子も綺麗に吹き飛んでいた。

 3人目もズタボロだ。

 三宝兎が呆れながら、

「青夜ぁ~、そっちは違うって言っただろうが」

「先に斬りかかってきた向こうが悪いって事で」

 嫌な汗を流しながらも青夜はそう誤魔化したのだった。





 水神製鉄所は西井グループが作った水神市が誇る日本屈指の製鉄所だ。

 その製鉄所の工場の敷地内ではスケボーに乗った10人前後の悪ガキ集団が勝手に侵入して遊んでいた訳だが、そこにお邪魔したのが三宝兎をお姫様だっこした青夜だった。

 その青夜は、

「工場は潰さない、みんなが怒るから。工場は潰さない、みんなが怒るから」

 呪文のようにそう何度も呟いていた訳だが、

「潰すフリにしか聞こえないぞ、青夜」

 三宝兎はそう呆れたのだった。

 狙うは悪ガキ集団の先頭をスケボーで滑るリーダーだったが、

「ん?」

 青夜は別の方向に視線を向けた。

「どうしたんだ、青夜?」

「あっちに強い邪の力の奴は居ないんだよ、ギン様?」

 青夜の問いかけに三宝兎が、

「『強いのは』な。雑魚が10人程居るだけで」

 と答えた瞬間、青夜はニヤリと笑い、

「なら、あっちに居るのは誰なのかなぁ~」

 スケボー集団を無視して工場の一角を目指したのだった。





 水神製鉄所の空き倉庫内には簡易のベッドが4台置かれており、その4台のベッドには4人の若者が眠っていた。

 そして身長183センチ、ボサボサの金髪で無精髭の芸術家っぽい白人の男が煙草を吹かしながらゴブリンのタトゥーを寝てる日本人の青年の肌に彫ってる最中だった。

 異能力を授与するくらいのタトゥーを彫るのだ。

 片手間や遊びで彫れる訳もない。

 真剣も真剣で、男は全神経をタトゥーを彫る事だけに向けていた。

 その為、背後から迫る7メートル級の青龍の拳圧に気付かず、上から巨大なハンマーで叩かれたように白人男は潰されたのだった。





 こうして茨城県水神市のタトゥー大量発生事件の方は解決したのだった。
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