実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド

文字の大きさ
上 下
47 / 123

利根川強歩、その3、夜の部が始まる前に

しおりを挟む
 予定地点に到着し、初日の宿泊研修の利根川強歩は終了した。

 利根川から水神市の水神神宮そばのビジネスホテルへと車で移動する。

 ビジネスホテルは一棟が丸々、青龍大学の高等部の一年以組の貸し切りだった。

「ビジネスホテルとはいえ1クラスで丸々貸し切りって、やっぱ、青龍大学は普通じゃないよなぁ~」

「このクラスだけだと思うわよ、ギン様」

 稲穂がそう指摘する中、

「青夜が居るからか?」

「いいえ、白虎寺が本気で水神市を制圧するって決めたからよ、きっと」

 その稲穂の言葉に、

「面白え。まだまだやる訳ね」

 ニヤリと三宝兎は笑ったのだった。

 1階のロビー前で、春菜が、

「全員、夜11時まで休憩ね。一応、このビジネスホテルは白虎寺と東条院の人員が守ってるけど・・・油断はしないように。夜11時の10分前には体操着姿でこの場所に集まる事。その時に利根川強歩、夜の部の予定を発表するから」

「何ですか、夜の部って? 中等部にはありませんでしたけど?」

 青夜が警戒するように質問すると、

「当然でしょ、夜の部は高等部にしかないんだから」

「・・・今考えましたよね、春菜センセーが?」

「まさか、考えたのは青龍大学の高等部に赴任させられて学校の行事スケジュールを見た当日よ」

「一緒じゃないですか」

 『全然違うじゃない』と答えた春菜が、

「ともかく、解散。夕食は学校側が用意してるけど、好きに食べに出てもいいわよ。私としては仮眠する事をお勧めするけど」

 これで本当に部屋のカードキーを渡されて解散となった。





 この一年以組は青夜を中心に回ってる。

「どうする、青夜? 近くに焼き肉店があるらしいから、そっちに行くか?」

 スマホで情報を仕入れた三宝兎が問う中、青夜が答える前に弁真が、

「お待ちを。敵地ですので青夜様の口にする物はーー」

 やんわりと断り、三宝兎も『そう言えば』と七瀬忍軍の時の事を思い出し、

「本当に大変だな、東条院のお坊ちゃんって」

「今は田中だよ。オレは時間まで部屋で休んでるから。護衛のみんなも各々休憩してくれていいよ。ああ、そうだ。入浴する時はギン様と野々宮以外は気を付けるようにな。水が遠隔で操られて襲ってきたとかがあるかもしれないから」

 と青夜が嘘臭い笑顔で言ったが、

「ノリが悪いな、青夜。一緒に飯を食おうぜ」

 外泊でテンションの高い三宝兎の音頭で、

「田中君、シャワーを浴びたら私も合流していい?」

「私も、そうするわね」

 稲穂と良子も言ってきて『まあ、いいけど』と答えた青夜は、

(単独行動は取れない、か。チョッチ白咲って奴に個人的に用があったんだが)

 と苦笑したのだった。





 7階の(一番広い部屋をあてがわれた)青夜の部屋が合流場所となった。

 年頃の女子の3人がシャワーで汗を流して湯上りなので妙に色っぽい。

「嬉しいだろ、青夜。これだけの美女に囲まれて?」

「許嫁の件が片付いてなくて手が出せないんだから微妙かな」

「ああ、噂の白鳳院のお嬢様ね。下宿先で桑原の爺さんが教えてくれたぞ。でも、もう白紙になったんだろ?」

「のはずなんだけど、ほら、オレっていい男だから手放すのが勿体無いだろ? だから先方の態度が微妙でさ」

「自分でいい男とか言うなよな」

 などとベッドの上で重箱を広げて青夜が美女3人と夕食を食べる中、稲穂が、

「白咲という男の監視、いつまで続けるの、田中君?」

「今、どこ? まだ水神南高校?」

「ええ」

 と答える中、三宝兎が不思議そうに、

「この時間にまだ学校なのか?」

「私達を誘ってるんじゃない? まあ、罠なんだから出向かないけど。ギン様も出向いちゃダメよ」

「みんな色々と考えてるんだな」

「監視にも気付いてるっぽいし、もうポッピーを戻していいよ」

「分かったわ」

 などとも喋った。

 夕食が終わると、三宝兎が別のベッドに横たわって、

「今日は疲れたぁ~。そうだ、青夜、マッサージしてくれよ、足」

 それには青夜の方が『はあ? オレが?』と露骨に嫌そうな顔をした。

「何でそんな嫌そうな顔をするんだよ? 普通は美人の私の身体に触れるんだから『嬉しいなぁ』ってリアクションをするトコだろうが?」

「いやいや、マッサージなんて使用人がやる仕事だろ? どうしてオレが?」

 東条院のお坊ちゃんの青夜が理解出来ずにそう答え、三宝兎が堂々と、

「青夜に私の身体を触らせて悩殺する為に決まってるだろ?」

「いやいや、それなら青龍偃月刀で青龍破を出してくれた方が100倍悩殺されるけど」

「それって青夜が拳で出してるあれ・・を青龍偃月刀を振って出すって意味だよな?」

「うん」

「出せるのか、私?」

「中国の関帝信仰は出せたはずだけど」

「チッ。本場中国の関帝信仰の秘伝書さえあればな」

「? 武神なら戦闘中に対戦相手の奥義を盗まないと。もしくは自力で開眼」

「まあ、その話はまた今度で。ともかくマッサージを頼むな」

「嫌に決まってるだろ、ギン様」

「はあ?」

 同席していた稲穂や良子も、まさかこんな下らない事が喧嘩の火種になるとは思ってもおらず、初手で鎮火しなかったので、

「表に出ろ、青夜。私が勝ったら青夜にマッサージさせるからな」

「出るまでもないだろ、オレの方が強いんだから」

「その上から目線が気に入らないんだよっ! 青夜、ここで初めてもいいんだぞ?」

「はいはい、出るよ」

 と2人して部屋の外に出ようとして、

「田中君、ギン様? 嘘よね?」

「2人ともしたら。宿泊研修に来てまで」

 稲穂と良子も止めようとしたが、

「これは私と青夜の問題だ」

「いやいや、問題はギン様のわがままだけ・・だろ?」

「はあ?」

「はいはい」

 と三宝兎と青夜は2人して出ていったのだった。





 別室で使用人2人に足どころか全身をエステさせてケアしていた春菜の許に、稲穂と良子が、

「春菜先生、大変ですっ!」

 と顔を出し、腹這いの上半身裸のパンツ姿の春菜の背中に十二神将の真達羅しんだらの凄い和彫りがあったのに驚きつつ、春菜が、

「何? 今、休憩時間のはずだけど?」

「田中君とギン様が喧嘩を初めて、外に・・・」

「やらせておけば? 『雨降って地固まる』って奴よ」

 と呑気な事を言って初動しょどうが遅れた為に・・・・・・





 ◇





 茨城県水神市の水神神宮そばのビジネスホテルから少し離れた地元のJリーグチームのホームグラウンドの茨城県立水神サッカースタジアム。





 コホン、決してK市のKサッカースタジアムではない。

 創作小説の創作都市なのだから。

 でないと本当に困るのだ。

 これから起こる展開を考えると本当に。





 青夜と三宝兎がビジネスホテルを出て、20分後。

 稲穂と良子の報告ではベッドから身体を起こしもしなかった春菜だったが、白虎寺の部下からの報告を聞いて慌てて水神サッカーグラウンドに駆け付けた時には、

「おらぁぁぁぁっ! 今度こそ喰らいやがれ、青龍破ぁぁぁぁっ!」

 夜の無人の真っ暗なサッカーグラウンドで三宝兎が青龍偃月刀で衝撃波を放ち、

「だから、ギン様。それはただの斬撃の衝撃波だって」

 10メートル先の青夜がヒョイッと横に躱すも、その斬撃は止まる事も消える事もなく、そのままコートを突っ切って、スタジアムの観客席にズシャァァッと直撃して完全に斬れていた。

 三宝兎の攻撃が凄い斬撃なのは言うまでもない。

 斬撃がスタジアムを貫通し、外側が見えているのだから。

「ふ、2人とも、何をやってるのよぉぉぉぉぉぉっ?」

 春菜が絶叫するのも無理はない。

 スタジアムはどう見ても全方向に15カ所以上、今出来たような斬撃の傷跡があった。

「ん? 春菜ちゃん、まだ集合時間じゃないだろ? 待っててくれ。いくぞ、青夜、今度こそっ!」

 青龍偃月刀を構える三宝兎に春菜が、

「ストップ、関ぃぃぃっ! まず何をやってるのか言いなさいぃぃぃぃぃぃっ!」

「ええっと、青夜が青龍偃月刀で青龍破が出せたらキスしてくれるって言うから・・・」

「アホかぁぁぁぁぁぁっ! そんな下らない事の為に関はスタジアムをオジャンにしたのぉぉぉぉぉぉっ?」

「だってぇ~。私の足をマッサージしなかった青夜が悪いっ!」

「する訳ないだろ」

「アンタラねぇぇぇぇっ! そんな下らない理由でぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 頭痛を覚える春菜が、

「田中、絶対に弁償させるからねぇぇぇぇぇぇっ! このスタジアムの改修ーーはどう見ても不可能だから新しいスタジアムの建造費ぃぃぃぃぃぃっ!」

「えっ、どうしてです? 原因不明のカマイタチが発生したとか発表して保険屋に出させたらいいじゃないですか? もしくはスタジアム建造を請け負った業者の手抜き工事とかにして?」(これは創作都市の話です)

「その保険屋が白虎寺傘下の西井グループなのよぉぉぉぉぉぉっ!」

「それは御愁傷様です」

「ナニ、他人事みたいに言ってるのよ、田中ぁぁぁぁぁっ! こんな事は海に向かってしなさいよねぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「海に行く前にいい場所を見つけたから」

「あんたねぇぇぇぇぇぇっ!」

 春菜の絶叫は続いたのだった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

処理中です...