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東条院青蓮の葬儀
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『四』は『死』。
『九』は『苦』。
そう読める事から日本では『4』や『9』の数字は縁起が悪いとされており、異能界では4月を『死月』と読んでいたりしたが。
(パパに続いて親父殿までが『4月中』に死ぬなんてな。オレ、誕生日『4月4日』なのに『4』が縁起が悪いとかマジで勘弁してくれよぉ~。ってか、もしかして『お母様の予言』まだ終わっていないのか? 4月一杯までは大人しくしてた方が良かったりするぅ~?)
と自分の身の振り方を青夜は真剣に考えたものだった。
◇
そして病院で死んだ2日後の4月21日、東条院青蓮の葬儀が行われた。
東条院の宗家当主の葬儀だ。
葬儀場所は葬儀ホールなどではなく、都内にある東条院ゆかりの青福寺を丸々借り切って行われた。
参拝者は2000人では利かず、ごった返していた。
異能界は重鎮や名家の代理が全国からやって来てるし、政財界の大物も多い。
焼香の場所は本堂内と本堂前の二カ所に設置され、御経を読む僧侶も20人以上居た。
そんな中、青夜も学生服姿で参列していた。
通常は東条院宗家の嫡子として青色の紋付だが、他家に養子に出されたので学生服だ。
それでも親族席に座って葬儀の参加した訳だが、本堂内での青夜の焼香の順番になり、焼香を上げてると、
「死ねえぇぇぇぇっ!」
「四乃森の怨みを思い知れえぇぇぇぇっ!」
と傍に居た警備担当の黒服2人が乱心して袖に隠し持った匕首で青夜の腹を左右から貫いたのだった。
「ぐあああ」
2本の匕首は刃が紫色で明らかに呪詛が施されており、青夜の断末魔に乱心者は勝ち誇ったが、次の瞬間、ポンッと紙人形に戻った。
『へ?』『嘘?』と乱心者(後に法子の嫁入りで東条院に仕えた四乃森の一党だと判明する)2人がマヌケな声を出し、次の瞬間には周囲の男達に『この愚か者が』と取り押さえられる中、弔問客達からは、
「紙人形? 凄い錬度だな、偽物とは全く気付かなかったぞ?」
「噂通り、本当に実力を隠してた訳か」
「それで? 本人はどこだ?」
「そりゃ、どこかに・・・」
「ん? まさか、居ない? 来てないのか?」
「信じられん。東条院の宗家当主、実の父親の葬式に紙人形を代参させていたのか?」
「まあ、養子に出されてるのだから生家の葬儀にのこのこと顔を出せないのも分かるが・・・」
「それよりも今の言葉・・・また四乃森か。東条院とは因縁があるとはいえ」
「ああ、残党にも温情を掛けたらしいが、やはり潰すべきだ」
「それよりも嫡子は本当に来てないのか?」
「四乃森の血を引く後継指名された御子達も保護されてて姿を見せていないし」
「東条院はこの先どうなるんだ?」
と声が上がり、宗家代理の藤名金城と曾祖父の二千院目高は頭痛を覚えたのだった。
と言うのも、青夜は本当に宗家当主の葬儀に欠席していたからだ。
昨日の通夜も紙人形が出席していたくらいだ。
紙人形が代参で立った理由は『宗家当主の遺体奪取を考えてる身の程知らずな輩を駆逐するのが長子の役目ってね。東条院流青龍拳の秘伝が欲しい中国から、もうわんさかと入ってきてるんでしょ、凄腕が?』『他家に養子に出されたからね。のこのこと顔は出せないさ』『白鳳院も養子に件は認めてるよ。認める条件があの叙勲なんだから』これらだったが、その総てが論破出来ず、宗家代理と曾祖父ごときでは、わがままなお坊ちゃんの青夜を出席させる事が叶わなかったのだ。
そして実際に出席しなかった方が『正解だ』とたった今、証明された訳だ。
青夜は能力が高過ぎるが、扱いが難し過ぎる。
この葬儀の主役の死んだ宗家当主の(息子の実力を知ってた)青蓮でさえ、青夜を宗家屋敷から放逐せざるを得なかったくらいだ。
何せ、どうして宗家が『東条院の宗家屋敷から青夜を出したのか』曽祖父の目高が東京に戻ってきた宗家代理の金城に問うと、
「あれ、目高殿は御存知なかったのですか、若様の韓国逃亡計画を?」
「はあ? 冗談じゃよな?」
「いえ、本当です。宗家屋敷脱出の為だけに若様が日本に来てた韓国のアイドルグループの頭の軽そうな女と義兄弟の盃を交わしたらしく宗家周辺で大問題になりましたから」
「待て、義兄弟の盃とは何だ?」
「ほら、三国志にもあるでしょう。『我ら生まれた日は違えども死す時は同じ日同じ時を願わん』って。アレですよ」
「待て待て待て、それでは完全に術式の方ではないか? あんな縛りだらけの術式をあの青夜が交わす訳がなかろうが」
「そう思うでしょ、目高殿も? 全員そう決めて掛かってて、私はその頃、道後に居たので息子から後日、総ての顛末を聞いたのですが、若様が生活資金を韓国の銀行口座に振り込んだ事で、念の為にそのアイドル本人に大金を掴ませて喋らせたところ『16歳の誕生日までに家を出ないと死ぬ、と母に言われて困ってる。助けたんだから助けてくれ。義兄弟の杯を交わしてもいい』と若様本人が言ってたらしく、それで日本脱出計画が露見し、宗家も『国外にはさすがに出せん』と陪臣の家に養子に出す事になったと」
「貴子が青夜にそんな予言を? 初耳だぞ?」
「目高殿は御孫様には嫌われてましたからねぇ~」
「五月蠅いわい。じゃあ、義兄弟の杯も・・・」
「ええ、本当に術式で交わされてたらしいです。韓国ではそのアイドルは重宝されてますよ。日本の四柱家の東条院に影響力が持てるのですから」
「滅茶苦茶な話だな」
との会話が交わされており、他国の人間と義兄弟の術式を交わした曾孫の青夜に東条院の宗家を継がせる事を目高も、もう諦めていた。
(せっかく一番優秀な孫娘を東条院の宗家当主に嫁がせたのに。二千院の血が東条院の宗家に入らないとは・・・・・・思い通りにはならんものだな)
葬儀の御経を聞きながら目高は青蓮の遺影を見て溜息を吐いたのだった。
葬儀の途中で青福寺の境内の方が騒がしくなったと思ったら、藤名家の喪服姿の使用人が金城の許に走ってきて、
「たった今、遠隔の呪詛を受けて人が1人倒れました」
御経で聞こえるか聞こえないかの声でそう囁いた。
「ほう、素性は?」
「葬儀屋のアルバイトの大学生です」
「? そんなどうでも良い事、大切な葬儀の最中にワシの耳に入れ・・・」
『るな』と言い終わる前に使用人が、
「その大学生、名字が田中でした。念の為に下の名前を確認したら『正哉』でした」
と報告し、さすがに偶然な訳がなく『狙いは若様か』と金城も理解した。
「一部の者が倒れた者の名前を知り、騒いでいます。御指示を下さい」
「若様は青福寺には居ないから無駄に騒ぐな、と一党に伝えろ。追撃は必要ない」
「ですが」
「伝えろ」
小声で、不機嫌でも何でもない風に、さらりと二度言うと『畏まりました』と使用人は本堂の外へと戻っていった。
更にしばらくするとまた青福寺の境内の方が騒がしくなり『今度は何だ?』と金城が視線を向けると、本堂内に白鳳院の侍従達が現れた。
8人の団体で、その中で一番偉いのは五席侍従の比良賀三郎だった。
三郎は53歳で、身長161センチ。額禿げのリーゼントに灰色のサングラスの男だ。恰好は白鳳院の侍従を意味する灰色の詰襟服。
だが、騒がしくなったのは白鳳院の侍従が現れたからではない。
その侍従達に付き添われて(現在、保護という名の幽閉中の)東条院青蓮の子供で、裏切り者の法子の血を引く青刃と青花が姿を見せたからだった。
青夜の2歳年下の異母弟は幽閉中に誕生日を迎えたので14歳。中学2年生だ。青夜よりも知的な風貌をしている。青龍大学の中等部の青色の詰襟の制服だった。
青夜の4年歳下の異母妹の青花は誕生日がまだなので11歳。小学6年生だ。黒髪のミディアムをツインテールにして可愛らしい。通学してる卑弥呼道女子大の初等部の制服を着てたので黄土色のワンピースタイプのセーラー服姿だった。
その2人が焼香を済ませ、その後、喪主席に座る藤名金城に近付き、
「兄上は?」
(四乃森の襲撃に、遠隔の呪詛に、捕縛隔離中の異母弟妹の登場か。実の父親の葬儀に若様が出席されない訳だ。縁が切れた白鳳院の姫様が出席されていないのが唯一の救いか)
「廃嫡されて東条院から養子に出されたので欠席ですな」
「妹だけでも助けるように伝えておいてくれ」
自分の立場をちゃんと理解してる青刃がそう金城に頼んだ。
金城がそれには答えず、
「どうして『当主生誕の儀』の夜に軽井沢に居られたのですかな?」
「お母様の指示だ」
「青刃様は『東条院落とし』を御存知だったのですかな?」
「直接的な言葉はお母様からは聞いていないが薄々は勘付いていた」
と証言した事で、御経が流れる本堂内に居た東条院の一党が殺気立ったが、白鳳院の侍従達が視線や手で制した。
「そうですか。青花様は知らなかったのですね?」
金城が問うと、青花がキョトンと、
「何が?」
「お父君の宗家当主が死ぬ事をです」
『うん』と肯定したが、
「お母様が『青刃兄様が近々当主になる』って言ってたのは聞いたけど」
本当の事を話した青花に、青刃が、
「馬鹿、青花っ!」
慌てて叱責するが、青刃が偽証してた事などとっくにお見通しの金城が、
「伝えるだけは伝えますな」
そう返事をすると、五席侍従の三郎に『いきましょう』と連れられて行かれそうになり、
「お兄ちゃん、見てるんでしょ? 助けてっ!」
青花がそう本堂内の天井の一方を見て叫んだが、すぐに白鳳院の侍従に術で黙らされて歩いて行き、その後ろ姿を、
(あの側室殿にも困ったものだな。成功するまで伝えなければ良かったものを。まあ、故意に東条院を追い出されるように動いたワシも似たようなものか)
金城は見送ったのだった。
その後、喪主を東条院の宗家代理の藤名金城が務め上げて、霊柩車が火葬場に向けて出発したところで葬儀は終わったのだった。
『九』は『苦』。
そう読める事から日本では『4』や『9』の数字は縁起が悪いとされており、異能界では4月を『死月』と読んでいたりしたが。
(パパに続いて親父殿までが『4月中』に死ぬなんてな。オレ、誕生日『4月4日』なのに『4』が縁起が悪いとかマジで勘弁してくれよぉ~。ってか、もしかして『お母様の予言』まだ終わっていないのか? 4月一杯までは大人しくしてた方が良かったりするぅ~?)
と自分の身の振り方を青夜は真剣に考えたものだった。
◇
そして病院で死んだ2日後の4月21日、東条院青蓮の葬儀が行われた。
東条院の宗家当主の葬儀だ。
葬儀場所は葬儀ホールなどではなく、都内にある東条院ゆかりの青福寺を丸々借り切って行われた。
参拝者は2000人では利かず、ごった返していた。
異能界は重鎮や名家の代理が全国からやって来てるし、政財界の大物も多い。
焼香の場所は本堂内と本堂前の二カ所に設置され、御経を読む僧侶も20人以上居た。
そんな中、青夜も学生服姿で参列していた。
通常は東条院宗家の嫡子として青色の紋付だが、他家に養子に出されたので学生服だ。
それでも親族席に座って葬儀の参加した訳だが、本堂内での青夜の焼香の順番になり、焼香を上げてると、
「死ねえぇぇぇぇっ!」
「四乃森の怨みを思い知れえぇぇぇぇっ!」
と傍に居た警備担当の黒服2人が乱心して袖に隠し持った匕首で青夜の腹を左右から貫いたのだった。
「ぐあああ」
2本の匕首は刃が紫色で明らかに呪詛が施されており、青夜の断末魔に乱心者は勝ち誇ったが、次の瞬間、ポンッと紙人形に戻った。
『へ?』『嘘?』と乱心者(後に法子の嫁入りで東条院に仕えた四乃森の一党だと判明する)2人がマヌケな声を出し、次の瞬間には周囲の男達に『この愚か者が』と取り押さえられる中、弔問客達からは、
「紙人形? 凄い錬度だな、偽物とは全く気付かなかったぞ?」
「噂通り、本当に実力を隠してた訳か」
「それで? 本人はどこだ?」
「そりゃ、どこかに・・・」
「ん? まさか、居ない? 来てないのか?」
「信じられん。東条院の宗家当主、実の父親の葬式に紙人形を代参させていたのか?」
「まあ、養子に出されてるのだから生家の葬儀にのこのこと顔を出せないのも分かるが・・・」
「それよりも今の言葉・・・また四乃森か。東条院とは因縁があるとはいえ」
「ああ、残党にも温情を掛けたらしいが、やはり潰すべきだ」
「それよりも嫡子は本当に来てないのか?」
「四乃森の血を引く後継指名された御子達も保護されてて姿を見せていないし」
「東条院はこの先どうなるんだ?」
と声が上がり、宗家代理の藤名金城と曾祖父の二千院目高は頭痛を覚えたのだった。
と言うのも、青夜は本当に宗家当主の葬儀に欠席していたからだ。
昨日の通夜も紙人形が出席していたくらいだ。
紙人形が代参で立った理由は『宗家当主の遺体奪取を考えてる身の程知らずな輩を駆逐するのが長子の役目ってね。東条院流青龍拳の秘伝が欲しい中国から、もうわんさかと入ってきてるんでしょ、凄腕が?』『他家に養子に出されたからね。のこのこと顔は出せないさ』『白鳳院も養子に件は認めてるよ。認める条件があの叙勲なんだから』これらだったが、その総てが論破出来ず、宗家代理と曾祖父ごときでは、わがままなお坊ちゃんの青夜を出席させる事が叶わなかったのだ。
そして実際に出席しなかった方が『正解だ』とたった今、証明された訳だ。
青夜は能力が高過ぎるが、扱いが難し過ぎる。
この葬儀の主役の死んだ宗家当主の(息子の実力を知ってた)青蓮でさえ、青夜を宗家屋敷から放逐せざるを得なかったくらいだ。
何せ、どうして宗家が『東条院の宗家屋敷から青夜を出したのか』曽祖父の目高が東京に戻ってきた宗家代理の金城に問うと、
「あれ、目高殿は御存知なかったのですか、若様の韓国逃亡計画を?」
「はあ? 冗談じゃよな?」
「いえ、本当です。宗家屋敷脱出の為だけに若様が日本に来てた韓国のアイドルグループの頭の軽そうな女と義兄弟の盃を交わしたらしく宗家周辺で大問題になりましたから」
「待て、義兄弟の盃とは何だ?」
「ほら、三国志にもあるでしょう。『我ら生まれた日は違えども死す時は同じ日同じ時を願わん』って。アレですよ」
「待て待て待て、それでは完全に術式の方ではないか? あんな縛りだらけの術式をあの青夜が交わす訳がなかろうが」
「そう思うでしょ、目高殿も? 全員そう決めて掛かってて、私はその頃、道後に居たので息子から後日、総ての顛末を聞いたのですが、若様が生活資金を韓国の銀行口座に振り込んだ事で、念の為にそのアイドル本人に大金を掴ませて喋らせたところ『16歳の誕生日までに家を出ないと死ぬ、と母に言われて困ってる。助けたんだから助けてくれ。義兄弟の杯を交わしてもいい』と若様本人が言ってたらしく、それで日本脱出計画が露見し、宗家も『国外にはさすがに出せん』と陪臣の家に養子に出す事になったと」
「貴子が青夜にそんな予言を? 初耳だぞ?」
「目高殿は御孫様には嫌われてましたからねぇ~」
「五月蠅いわい。じゃあ、義兄弟の杯も・・・」
「ええ、本当に術式で交わされてたらしいです。韓国ではそのアイドルは重宝されてますよ。日本の四柱家の東条院に影響力が持てるのですから」
「滅茶苦茶な話だな」
との会話が交わされており、他国の人間と義兄弟の術式を交わした曾孫の青夜に東条院の宗家を継がせる事を目高も、もう諦めていた。
(せっかく一番優秀な孫娘を東条院の宗家当主に嫁がせたのに。二千院の血が東条院の宗家に入らないとは・・・・・・思い通りにはならんものだな)
葬儀の御経を聞きながら目高は青蓮の遺影を見て溜息を吐いたのだった。
葬儀の途中で青福寺の境内の方が騒がしくなったと思ったら、藤名家の喪服姿の使用人が金城の許に走ってきて、
「たった今、遠隔の呪詛を受けて人が1人倒れました」
御経で聞こえるか聞こえないかの声でそう囁いた。
「ほう、素性は?」
「葬儀屋のアルバイトの大学生です」
「? そんなどうでも良い事、大切な葬儀の最中にワシの耳に入れ・・・」
『るな』と言い終わる前に使用人が、
「その大学生、名字が田中でした。念の為に下の名前を確認したら『正哉』でした」
と報告し、さすがに偶然な訳がなく『狙いは若様か』と金城も理解した。
「一部の者が倒れた者の名前を知り、騒いでいます。御指示を下さい」
「若様は青福寺には居ないから無駄に騒ぐな、と一党に伝えろ。追撃は必要ない」
「ですが」
「伝えろ」
小声で、不機嫌でも何でもない風に、さらりと二度言うと『畏まりました』と使用人は本堂の外へと戻っていった。
更にしばらくするとまた青福寺の境内の方が騒がしくなり『今度は何だ?』と金城が視線を向けると、本堂内に白鳳院の侍従達が現れた。
8人の団体で、その中で一番偉いのは五席侍従の比良賀三郎だった。
三郎は53歳で、身長161センチ。額禿げのリーゼントに灰色のサングラスの男だ。恰好は白鳳院の侍従を意味する灰色の詰襟服。
だが、騒がしくなったのは白鳳院の侍従が現れたからではない。
その侍従達に付き添われて(現在、保護という名の幽閉中の)東条院青蓮の子供で、裏切り者の法子の血を引く青刃と青花が姿を見せたからだった。
青夜の2歳年下の異母弟は幽閉中に誕生日を迎えたので14歳。中学2年生だ。青夜よりも知的な風貌をしている。青龍大学の中等部の青色の詰襟の制服だった。
青夜の4年歳下の異母妹の青花は誕生日がまだなので11歳。小学6年生だ。黒髪のミディアムをツインテールにして可愛らしい。通学してる卑弥呼道女子大の初等部の制服を着てたので黄土色のワンピースタイプのセーラー服姿だった。
その2人が焼香を済ませ、その後、喪主席に座る藤名金城に近付き、
「兄上は?」
(四乃森の襲撃に、遠隔の呪詛に、捕縛隔離中の異母弟妹の登場か。実の父親の葬儀に若様が出席されない訳だ。縁が切れた白鳳院の姫様が出席されていないのが唯一の救いか)
「廃嫡されて東条院から養子に出されたので欠席ですな」
「妹だけでも助けるように伝えておいてくれ」
自分の立場をちゃんと理解してる青刃がそう金城に頼んだ。
金城がそれには答えず、
「どうして『当主生誕の儀』の夜に軽井沢に居られたのですかな?」
「お母様の指示だ」
「青刃様は『東条院落とし』を御存知だったのですかな?」
「直接的な言葉はお母様からは聞いていないが薄々は勘付いていた」
と証言した事で、御経が流れる本堂内に居た東条院の一党が殺気立ったが、白鳳院の侍従達が視線や手で制した。
「そうですか。青花様は知らなかったのですね?」
金城が問うと、青花がキョトンと、
「何が?」
「お父君の宗家当主が死ぬ事をです」
『うん』と肯定したが、
「お母様が『青刃兄様が近々当主になる』って言ってたのは聞いたけど」
本当の事を話した青花に、青刃が、
「馬鹿、青花っ!」
慌てて叱責するが、青刃が偽証してた事などとっくにお見通しの金城が、
「伝えるだけは伝えますな」
そう返事をすると、五席侍従の三郎に『いきましょう』と連れられて行かれそうになり、
「お兄ちゃん、見てるんでしょ? 助けてっ!」
青花がそう本堂内の天井の一方を見て叫んだが、すぐに白鳳院の侍従に術で黙らされて歩いて行き、その後ろ姿を、
(あの側室殿にも困ったものだな。成功するまで伝えなければ良かったものを。まあ、故意に東条院を追い出されるように動いたワシも似たようなものか)
金城は見送ったのだった。
その後、喪主を東条院の宗家代理の藤名金城が務め上げて、霊柩車が火葬場に向けて出発したところで葬儀は終わったのだった。
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