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総ては始皇帝の所為
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日本の異能力者のレベルは世界的に見ても高い。
その原因は外国の異能力者がやたらと日本にやってくるからで、その防衛の為に鍛えねばならず(時には異能や血を取り込んで)自ずとレベルが上がる訳だが。
では何故、外国の異能力者が日本にやってくるのかと言えば偏に『不老不死信仰』にあった。
富や名声を手に入れた権力者の行きつく先は大体これなのである。
そして日本の異能界にも古くから逸話が残っていた。
人魚の肉を食べた八尾比丘尼。
かぐや姫が帝に渡した不死の薬。
玉手箱を開ける前の若々しい浦島太郎。
他にも色々と。
それでも、各国にもそのテの『不老不死の逸話』は無くはない。
なのに『日本には不老不死の秘宝がある』と全世界の権力者が考え、不老不死を求めて異能力者がわんさか派遣されるその総ての元凶は中国の最初の皇帝、ーー『始皇帝』にあった。
正確にはその始皇帝に『東方の三神山に長生不老の霊薬がある』と囁いた徐福の所為で、始皇帝は『ダメ元で『探してこい』と命じただけ』だったが。
お陰で中国からも古来より人が多数入ってきており異能力の技法も日本に伝わっている。
東条院宗家が使う青龍拳や白虎寺の白虎信仰なんかも『徐福が一緒に連れてきた使い手によって日本に伝わった』との言い伝えが残ってるくらいだ。
その後、本場の中国では長い歴史の中で何度となく国が滅び、その間に青龍拳の秘伝が失われ、日本にのみに東条院流青龍拳(正式名称『中国神話神仙術・北斗派青龍』)の秘伝(『上下巻』)が残るという逆転現象が起き、更に言えば、その青龍拳の総て(秦巻、倭巻を含む全4巻)を習得出来たのは東条院宗家では青夜が東条院家を興した初代についで2人目だった訳だが。
まあ、それはさておき。
その徐福の歴史が拙いのだ。
『始皇帝が命じたのだから何かあるに違いない』と歴代の中国の皇帝が思い、中国とは文字通り『世界の中心の国』なのでアジア圏の他の周辺国も追従し、西洋列強までが『東洋の神秘』に中てられて『黄金の島ジパング』に注目して調査員を派遣してるのだから。
こうして日本には異能力者が溢れていた。
さて。
そんな訳で日本には『不老不死の霊薬』があると思われてるが、実はもうない。
日本でも時の権力者が不老不死になりたくて探し尽くしているのだから。
有名なのが豊臣秀吉の『太閤検地』や伊能忠敬の『伊能大図』で、その真の目的は『不老不死の霊薬』探しだった。
明治政府の壬申戸籍も『浦島太郎』や『乙姫』の異能力者狩りが目的だった、と言われているくらいだ。
だが、その時代にはもう『不老不死の霊薬』の発見には至らなかった事が分かっている。
その反面『不老不死の詐欺話』は当時からやたらと溢れており、現代の日本にも転がっていた。
異能力がある世界だ。
『不老不死』もあると考えられていたので。
そして『不老不死』の詐欺話でさえ蔓延しているのだから、傷をたちどころに治す『霊薬』の詐欺話なんかはその『百倍』日本に溢れ返っていた。
今、東条院の宗家当主は呪詛を浴びて死に掛けてる。
なので、胡散臭い詐欺師連中が東条院の一党に接触したらしく、東条院の分家頭の藤名家の屋敷に呼び出されて下校途中に立ち寄った青夜は、
「ぶふふっ! マジで? マジでそんな『霊薬詐欺』に引っ掛かったの? 今どき子供でも引っ掛からないぞ、そんな話、ギャハハハハ」
涙眼で大爆笑する破目になったのだった。
テーブルの上には4本も『どんな傷や呪いでも一瞬を治す霊薬(偽物に決まってる。本物な訳がない)』の入った瓶が並んでいた。
東条院の宗家代理の藤名金城が渋い顔で、
「ワシではありませんぞ。『一党の馬鹿どもが』です。それにこれは笑い事でもありませんからな、若様。こんな偽物にもう20億円も払ってるんですから。宗家が落ちた東条院がまだまだナメられてる証拠ですぞ、これは」
頭痛を覚えたのか頭を振っていた。
『はぁ~、笑った』と満足した青夜が、
「一党に通達すればいいだろ、『そんな怪しい薬は買うな』って」
「通達したのに引っ掛かっとるんですよ。『藤名の隠居様は宗家代理の地位に居続けたいが為に宗家当主を治療したくないのだ』とかホザかれて宗家代理の命令を無視して。それに『もし宗家を助けたら宗家の覚えもめでたくなる』との皮算用も働いてるらしく偽物の確率を考慮しながら危ない橋を承知で渡って。若様、どうにかして下され」
「どうしてオレが? 宗家代理はジイなんだから、ジイの好きなように・・・」
「お願いします」
「いやいや、オレは『落ちこぼれ』で有名で・・・・・・」
「青龍大学の入学式であれだけの事をしておいて今更何を言っておられるのです? ついでに言えば『四乃森落とし』も重症の宗家当主ではなく『若様の仕業だ』とバレてますからな。今更無能者のフリをしても通じませんので諦められますように。なので無駄な抵抗は止めて何卒良い知恵をお願いしますじゃ」
真面目な顔で金城が頭を下げたので青夜が仕方なく少し考えて、
「東条院の宗家当主の治療は白鳳院が薬師寺に話を付けて、間もなく完治するので無駄な買い物はしないように。そう通達しろ」
「本当ですか、それ?」
「白鳳院が薬師寺を手配したところまでは本当だ。『親父殿はもう助からない』が白鳳院の診断らしいが。ただ青刃と青花を贄にして親父殿の呪詛を移せばあるいは。でも、どうも宗家屋敷の邪気爆発は親父殿が悪いっぽくてな。まあ、そんな事は難を逃れる為に宗家を怒らせて東条院から逃げてたジイの方がよっぽど詳しいか。ジイは何をどこまで知ってるんだ?」
「いえいえ、ワシは何も・・・」
「そういう無駄な問答はいいから。早く教えろ」
「・・・東条院の初代以来、初めて青龍拳を総て継承した若様が、恐れ多くも白鳳院の嫡流のお姫様を許嫁にいただき、その白鳳院は御当主様の御子息が死んだ為に御孫様が次期当主。その身に何かあった場合、婿入りした若様が白鳳院家の名跡を継ぐ事も・・・」
「出来る訳ないだろ、そんな事っ! 白鳳院には嫡流以外にも多数人が居るのにっ!」
とツッコんでから青夜は、
「えっ、まさか、親父殿、白鳳院にオレを送り込むなんて大それた事を考えてたのか?」
「・・・はてさて。そんな未来がもし視えたら大変ですなぁ~と。もしくはあちら様の誰かが疑心暗鬼に駆られたら」
そう金城はとぼけたが、青夜は側頭部に右手の人差指と中指を離して押し当てながら、
「粛清される訳だ、関与してそうな分家ごとゴッソリ・・・・・・で、その粛清される未来をお母様は親父殿に伝えなかった訳ね。まあ、四乃森と側室結婚をしてた親父殿に伝える訳もないか。それにしても白鳳院乗っ取りを企んだ東条院が似たような事を四乃森にされてたら世話ないな」
呆れ果てながらも納得した青夜が『そうだ』と思い出して気軽に、
「親父殿が死んだら分家から宗家当主の選出をよろしくね、ジイ。オレはやらないから」
「冗談ですよね?」
「いや、本気だけど。最悪、副宗家か宗家代理で東条院に院政を布く。そこまでだからな、オレの譲歩は。ようやく出られたのに今更『東条院』に戻って堪るかよ。余り強要すると外国に逃げるかもね」
「何も御母堂様の言いつけをそこまで忠実に守らなくても」
「・・・お母様の『予言』って凄かったんだろ?」
「ええ、かなり。余り使われませんでしたが」
「なら、東条院宗家はその路線で決定な」
「・・・種はいただけるのですよね?」
「何?」
「ですから、14年後、ピチピチの18歳になった小巻園緑子に若様の子供を産ませて、その子供を東条院の宗家当主に」
真面目な顔で言う金城に対して、青夜がゲンナリしながら、
「勘弁してくれ、ジイ。緑子はまだ4歳だろうが。それに緑子はオレの従妹。2代前は先代宗家、つまりはオレの爺様で十分、東条院の濃い血が入ってるから問題ないはずだろ。まさか、違うのか?」
「いえ、違いませんが・・・」
「なら問題ないだろ」
「いえいえ、若様。『緑子に種をやる』、または『別の女が生んだ息子に宗家を継がす』との確約がないと院政の件は承服出来ません」
「チッ。分かったよ。子供が出来たら宗家に養子に出すから緑子は勘弁してくれ」
「ついでに分家の鵜殿と小巻園にも」
「チッ。分かったよ」
「では取引成立という事で。若様も今の約束、くれぐれも忘れませんように」
金城と約束を交わした後『それと』と青夜がテーブルの上の薬瓶を指差して、
「その4本の成分を調べたら1本が『呪詛促進剤』だったとも一党に伝えるように」
「なるほど、当主の暗殺目的で薬品を売り付けてる勢力が居ると匂わせるのですな? 東条院はそうでなくとも色々と恨まれておりますからな。そっちの方が一党には効果があるでしょう、直ちに」
こんな話し合いがされたのだった。
そして青夜が田中家に帰ると田中一狼が真面目な顔で、
「青夜、話がある」
「何、パパ?」
「実は宗家の呪詛を払う特別な薬を格安で売りたいと・・・」
『ここでもか』と思いながら青夜は、
「パパ、ママはなんて?」
「詐欺だって」
「それで合ってるよ」
「だが、もし宗家様の呪詛を本当に治せるのなら・・・」
「パパ、それが逆に命を縮める暗殺用の毒薬だったらどうするの? 粛清モノだよ?」
「えっ? まさか・・・」
「東条院は恨まれまくってるからね。宗家代理に届けられた霊薬の1本が呪詛促進剤とかで藤名の家は大騒ぎだったから」
「そうか。東条院を攻撃する為に・・・分かった。ソイツの素性をちゃんと確かめるな」
そう一狼が答えたのを見て『本当に分かってるのかねぇ~』と思ったが青夜は人格者なので口には出さず、代わりに、
「それよりもパパ、最近疲れてない? 精気が急激に弱ってるみたいだけど?」
「最近、愛がベッドで激しくてな、アハハハハ」
『へぇ~、お嬢様風なのに閨では激しいのか、ママって』と想像してしまい、
「聞いたオレが馬鹿だったよ。ほどほどにね」
青夜はそう呆れたのだった。
その原因は外国の異能力者がやたらと日本にやってくるからで、その防衛の為に鍛えねばならず(時には異能や血を取り込んで)自ずとレベルが上がる訳だが。
では何故、外国の異能力者が日本にやってくるのかと言えば偏に『不老不死信仰』にあった。
富や名声を手に入れた権力者の行きつく先は大体これなのである。
そして日本の異能界にも古くから逸話が残っていた。
人魚の肉を食べた八尾比丘尼。
かぐや姫が帝に渡した不死の薬。
玉手箱を開ける前の若々しい浦島太郎。
他にも色々と。
それでも、各国にもそのテの『不老不死の逸話』は無くはない。
なのに『日本には不老不死の秘宝がある』と全世界の権力者が考え、不老不死を求めて異能力者がわんさか派遣されるその総ての元凶は中国の最初の皇帝、ーー『始皇帝』にあった。
正確にはその始皇帝に『東方の三神山に長生不老の霊薬がある』と囁いた徐福の所為で、始皇帝は『ダメ元で『探してこい』と命じただけ』だったが。
お陰で中国からも古来より人が多数入ってきており異能力の技法も日本に伝わっている。
東条院宗家が使う青龍拳や白虎寺の白虎信仰なんかも『徐福が一緒に連れてきた使い手によって日本に伝わった』との言い伝えが残ってるくらいだ。
その後、本場の中国では長い歴史の中で何度となく国が滅び、その間に青龍拳の秘伝が失われ、日本にのみに東条院流青龍拳(正式名称『中国神話神仙術・北斗派青龍』)の秘伝(『上下巻』)が残るという逆転現象が起き、更に言えば、その青龍拳の総て(秦巻、倭巻を含む全4巻)を習得出来たのは東条院宗家では青夜が東条院家を興した初代についで2人目だった訳だが。
まあ、それはさておき。
その徐福の歴史が拙いのだ。
『始皇帝が命じたのだから何かあるに違いない』と歴代の中国の皇帝が思い、中国とは文字通り『世界の中心の国』なのでアジア圏の他の周辺国も追従し、西洋列強までが『東洋の神秘』に中てられて『黄金の島ジパング』に注目して調査員を派遣してるのだから。
こうして日本には異能力者が溢れていた。
さて。
そんな訳で日本には『不老不死の霊薬』があると思われてるが、実はもうない。
日本でも時の権力者が不老不死になりたくて探し尽くしているのだから。
有名なのが豊臣秀吉の『太閤検地』や伊能忠敬の『伊能大図』で、その真の目的は『不老不死の霊薬』探しだった。
明治政府の壬申戸籍も『浦島太郎』や『乙姫』の異能力者狩りが目的だった、と言われているくらいだ。
だが、その時代にはもう『不老不死の霊薬』の発見には至らなかった事が分かっている。
その反面『不老不死の詐欺話』は当時からやたらと溢れており、現代の日本にも転がっていた。
異能力がある世界だ。
『不老不死』もあると考えられていたので。
そして『不老不死』の詐欺話でさえ蔓延しているのだから、傷をたちどころに治す『霊薬』の詐欺話なんかはその『百倍』日本に溢れ返っていた。
今、東条院の宗家当主は呪詛を浴びて死に掛けてる。
なので、胡散臭い詐欺師連中が東条院の一党に接触したらしく、東条院の分家頭の藤名家の屋敷に呼び出されて下校途中に立ち寄った青夜は、
「ぶふふっ! マジで? マジでそんな『霊薬詐欺』に引っ掛かったの? 今どき子供でも引っ掛からないぞ、そんな話、ギャハハハハ」
涙眼で大爆笑する破目になったのだった。
テーブルの上には4本も『どんな傷や呪いでも一瞬を治す霊薬(偽物に決まってる。本物な訳がない)』の入った瓶が並んでいた。
東条院の宗家代理の藤名金城が渋い顔で、
「ワシではありませんぞ。『一党の馬鹿どもが』です。それにこれは笑い事でもありませんからな、若様。こんな偽物にもう20億円も払ってるんですから。宗家が落ちた東条院がまだまだナメられてる証拠ですぞ、これは」
頭痛を覚えたのか頭を振っていた。
『はぁ~、笑った』と満足した青夜が、
「一党に通達すればいいだろ、『そんな怪しい薬は買うな』って」
「通達したのに引っ掛かっとるんですよ。『藤名の隠居様は宗家代理の地位に居続けたいが為に宗家当主を治療したくないのだ』とかホザかれて宗家代理の命令を無視して。それに『もし宗家を助けたら宗家の覚えもめでたくなる』との皮算用も働いてるらしく偽物の確率を考慮しながら危ない橋を承知で渡って。若様、どうにかして下され」
「どうしてオレが? 宗家代理はジイなんだから、ジイの好きなように・・・」
「お願いします」
「いやいや、オレは『落ちこぼれ』で有名で・・・・・・」
「青龍大学の入学式であれだけの事をしておいて今更何を言っておられるのです? ついでに言えば『四乃森落とし』も重症の宗家当主ではなく『若様の仕業だ』とバレてますからな。今更無能者のフリをしても通じませんので諦められますように。なので無駄な抵抗は止めて何卒良い知恵をお願いしますじゃ」
真面目な顔で金城が頭を下げたので青夜が仕方なく少し考えて、
「東条院の宗家当主の治療は白鳳院が薬師寺に話を付けて、間もなく完治するので無駄な買い物はしないように。そう通達しろ」
「本当ですか、それ?」
「白鳳院が薬師寺を手配したところまでは本当だ。『親父殿はもう助からない』が白鳳院の診断らしいが。ただ青刃と青花を贄にして親父殿の呪詛を移せばあるいは。でも、どうも宗家屋敷の邪気爆発は親父殿が悪いっぽくてな。まあ、そんな事は難を逃れる為に宗家を怒らせて東条院から逃げてたジイの方がよっぽど詳しいか。ジイは何をどこまで知ってるんだ?」
「いえいえ、ワシは何も・・・」
「そういう無駄な問答はいいから。早く教えろ」
「・・・東条院の初代以来、初めて青龍拳を総て継承した若様が、恐れ多くも白鳳院の嫡流のお姫様を許嫁にいただき、その白鳳院は御当主様の御子息が死んだ為に御孫様が次期当主。その身に何かあった場合、婿入りした若様が白鳳院家の名跡を継ぐ事も・・・」
「出来る訳ないだろ、そんな事っ! 白鳳院には嫡流以外にも多数人が居るのにっ!」
とツッコんでから青夜は、
「えっ、まさか、親父殿、白鳳院にオレを送り込むなんて大それた事を考えてたのか?」
「・・・はてさて。そんな未来がもし視えたら大変ですなぁ~と。もしくはあちら様の誰かが疑心暗鬼に駆られたら」
そう金城はとぼけたが、青夜は側頭部に右手の人差指と中指を離して押し当てながら、
「粛清される訳だ、関与してそうな分家ごとゴッソリ・・・・・・で、その粛清される未来をお母様は親父殿に伝えなかった訳ね。まあ、四乃森と側室結婚をしてた親父殿に伝える訳もないか。それにしても白鳳院乗っ取りを企んだ東条院が似たような事を四乃森にされてたら世話ないな」
呆れ果てながらも納得した青夜が『そうだ』と思い出して気軽に、
「親父殿が死んだら分家から宗家当主の選出をよろしくね、ジイ。オレはやらないから」
「冗談ですよね?」
「いや、本気だけど。最悪、副宗家か宗家代理で東条院に院政を布く。そこまでだからな、オレの譲歩は。ようやく出られたのに今更『東条院』に戻って堪るかよ。余り強要すると外国に逃げるかもね」
「何も御母堂様の言いつけをそこまで忠実に守らなくても」
「・・・お母様の『予言』って凄かったんだろ?」
「ええ、かなり。余り使われませんでしたが」
「なら、東条院宗家はその路線で決定な」
「・・・種はいただけるのですよね?」
「何?」
「ですから、14年後、ピチピチの18歳になった小巻園緑子に若様の子供を産ませて、その子供を東条院の宗家当主に」
真面目な顔で言う金城に対して、青夜がゲンナリしながら、
「勘弁してくれ、ジイ。緑子はまだ4歳だろうが。それに緑子はオレの従妹。2代前は先代宗家、つまりはオレの爺様で十分、東条院の濃い血が入ってるから問題ないはずだろ。まさか、違うのか?」
「いえ、違いませんが・・・」
「なら問題ないだろ」
「いえいえ、若様。『緑子に種をやる』、または『別の女が生んだ息子に宗家を継がす』との確約がないと院政の件は承服出来ません」
「チッ。分かったよ。子供が出来たら宗家に養子に出すから緑子は勘弁してくれ」
「ついでに分家の鵜殿と小巻園にも」
「チッ。分かったよ」
「では取引成立という事で。若様も今の約束、くれぐれも忘れませんように」
金城と約束を交わした後『それと』と青夜がテーブルの上の薬瓶を指差して、
「その4本の成分を調べたら1本が『呪詛促進剤』だったとも一党に伝えるように」
「なるほど、当主の暗殺目的で薬品を売り付けてる勢力が居ると匂わせるのですな? 東条院はそうでなくとも色々と恨まれておりますからな。そっちの方が一党には効果があるでしょう、直ちに」
こんな話し合いがされたのだった。
そして青夜が田中家に帰ると田中一狼が真面目な顔で、
「青夜、話がある」
「何、パパ?」
「実は宗家の呪詛を払う特別な薬を格安で売りたいと・・・」
『ここでもか』と思いながら青夜は、
「パパ、ママはなんて?」
「詐欺だって」
「それで合ってるよ」
「だが、もし宗家様の呪詛を本当に治せるのなら・・・」
「パパ、それが逆に命を縮める暗殺用の毒薬だったらどうするの? 粛清モノだよ?」
「えっ? まさか・・・」
「東条院は恨まれまくってるからね。宗家代理に届けられた霊薬の1本が呪詛促進剤とかで藤名の家は大騒ぎだったから」
「そうか。東条院を攻撃する為に・・・分かった。ソイツの素性をちゃんと確かめるな」
そう一狼が答えたのを見て『本当に分かってるのかねぇ~』と思ったが青夜は人格者なので口には出さず、代わりに、
「それよりもパパ、最近疲れてない? 精気が急激に弱ってるみたいだけど?」
「最近、愛がベッドで激しくてな、アハハハハ」
『へぇ~、お嬢様風なのに閨では激しいのか、ママって』と想像してしまい、
「聞いたオレが馬鹿だったよ。ほどほどにね」
青夜はそう呆れたのだった。
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