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30台の玉突き事故、関三宝兎
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入学式の翌日は青龍大学の高等部では始業式で通学日だ。
青夜も二千院家の車で通学となった。
朝から田中家にやってきた青セーラー服の野々宮稲穂は野暮ったい眼鏡と三つ編みを止めていた。黒髪ロングのクールビューティーに変身している。まあ、まだ15歳なのだが。
「イメチェンか、野々宮? 似合ってるぞ」
「ありがと。田中君に良く見られたかったから」
褒められた稲穂は照れながら一緒に車に乗り込み、通学を始めた訳だが。
二千院家が回した車は運転席と後部席が防弾ガラスで完全に区切られた海外仕様で、完全な密室だった。
だからだろうか。稲穂が大胆に、
「叙勲おめでとう、田中君。叙勲祝いに私にエッチな命令をしてもいいわよ。田中君になら私、総てを捧げられるから」
青夜の太股に手を置いて、いきなり迫ってきた。
稲穂のこの行動が『青夜が強い』と判明してからの掌返しでない事を青夜は知っていた。
稲穂は中等部時代、青龍大学内で弱者に偽装した情けない青夜に対して、それでも熱視線を送ってくる数少ない女生徒の1人だったのだから。
お陰で悪目立ちして青夜もその視線に気付いていた。
青夜からしてみれば、このテの女生徒は『最悪な部類』で警戒の対象だったからだ。
と言うのも、青夜には白鳳院鈴という許嫁が居り、白鳳院の嫡流のお姫様だけあって、それはまあ、性格がキツイ。青夜が女生徒と仲良く喋った日には青夜の事を監視させてるのか『許嫁の声が聞きたい』という名の詰問の電話が掛かってくるくらいに。
よって、稲穂に変な下心がない事を知っていたので、別に大股に置かれた手を退ける事もなく青夜が、
「朝日奈の『寅』から助けたからか?」
「それもあるけど、私を虐めてた二組の5人を授業中に書道室の裏で再起不能にして助けて貰ったから」
「・・・・・・それは視てないよな、野々宮?」
「ううん、視てたよ。この子を雀に入れて」
そう言って稲穂は影から鳩の霊獣のポッピーを出し、更にポッピーの気配を消した。
「ほう、確かに虫並みの気配だ。気付かないかもな。でもサイズの小さな雀にも入れれるのか?」
「ええ、霊獣だから」
「人間にも?」
青夜の鋭い追及に、
「内緒よ」
稲穂が認めると、霊獣の汎用性に感心した青夜が『あの時、黙っていた褒美』とばかりに、
「当分は車内で手を繋ぐだけな」
そう言って太股に置かれた稲穂の手を握ったのだった。
指を絡めた恋人握りをされて稲穂は幸せそうに喜んだが、
「私はもっと色々な事をされても・・・・・・」
「少し待ってくれ。許嫁の件を先方がどうも諦めてなくてな。叙勲で配属される部署も許嫁の兄君の直属だし。どうなるか微妙でな」
と青夜は苦笑し、手を握ったまま本題とばかりに、
「高等部の1年の女子は野々宮が仕切るようにな」
「えっと、『十二支の霊獣』の私的使用を宮内庁に禁止されてて」
「・・・そうなのか? 朝日奈は好きに使ってたが?」
「それで消失して危機感を持ったらしく、自衛以外には使うなと」
「何だ、使えるのか。なら拡大解釈でよろしくね」
「まあ、やれるだけはやってみるけど」
「野々宮、昨日の入学式で気付いた事はあるか?」
「気付くも何もあれだけ派手にやれば・・・」
手を繋ぐ稲穂が苦笑し、青夜が、
「違う違う。欠席者が4人居た方だよ。予知か偶然かはこの際どうでもいい。危険を回避した結果だけが重要なのだからな。外部進学組の最大の目玉はお笑いな事に関三宝兎らしいが、そのミッーーコホン、関も入学式を欠席だ」
「関三宝兎。昨年、山陰地方の七瀬忍軍を横浜で壊滅させた凄腕よね? 父親は横浜中華街の日本の関帝信仰の総元締めの関一族で、母親は太郎御伽の首座、吉備一族」
関帝とは三国志の武将の関羽の事だ。
何故か中国で神様に昇華して祀られているが、異能も当然、存在する。
商売の神様だが、青龍偃月刀の神様でもあった。
「田中君、もしかして知り合いなの?」
「母方の実家が神奈川県の関係で数回会っただけさ。だが問題は関じゃない。残る欠席者の中等部からの内部進学組の風祭葵と面堂緋色でも。外部進学組の仁科一郎、コイツだ」
「仁科一郎? 聞いた事のない名前ね。誰なの?」
「分からん。おそらくは偽名だ。日本人しか通学出来ない青龍大学で偽名なのだから、どこかの忍軍ならまだマシで、最悪、大陸系のスパイの可能性がある。気を付けるようにな」
と車内で意思統一をたっぷりやったのだった。
途中で車が進まなくなった。
青夜が『眼』飛ばして交通状況を確認すると東京名物の渋滞に嵌っていた。
運転手達がニヤニヤしていなければ、普通の渋滞だと青夜も勘違いしていただろう。
「馬鹿な連中だ。オレを遅刻させる為に雇われたらしいが」
青夜がパチンッと指を弾くと、一斉に片道2車線の渋滞で停車中の車が突如動き出し、渋滞なのだから、ガコッ、グシャッ、と何度も玉突き事故を起こしながら、追い越し車線のスペースを開けて始めた。
二千院の車の運転手が敷居の強化ガラスの向こう側で『うわぁ』と驚き、
「いいの、田中君。こんな事して?」
「えっ? 野々宮はオレがやったとでも?」
青夜が白々しく演技したのを受け、『もういいわ』と稲穂は呆れ、道が出来た追い越し車線を通過して、青夜が乗る車は通学時間中に高等部の正門を潜ったのだった。
車から降りると、もはや青夜は注目の的だった。
昨日の入学式の『青夜様』コール事件の情報が飛び交ってるのか上級生達も視線を向けてくる。
視線を向けてくるだけではなく3年生の『青龍大学高等部、有志護衛隊』の腕章付きの生徒5人が車降り場で待っていて青夜に向かって、
「今は田中なんだってな? 随分とやりたい放題・・・」
何か言おうとしたが、その背後に居た女生徒が、
「じゃ~まぁ~」
と言うと同時にスカートなのに3年の有志護衛隊員の頭部を蹴っていた。
空手の蹴りとは微妙に違う。カンフー系だ。
そして異能力や気のある世界だ。
軽く手加減された蹴りでも今の1撃で蹴られた生徒は7メートルくらい軽く吹き飛んでいた。
残る4人が、
「な?」
「1年か? 何をやって・・・」
「う」
掌底でバキッ。
「る」
ピンク色のパンチラ上段蹴りでゴキッ。
「さ」
ピンク色のパンチラ顔面跳び膝蹴りでバキッ。
「い」
顔面パンチでグシャッ。
1文字言う度に女生徒が残る3年生4人(男3人、女子1人)をボコって5メートル以上吹き飛ばして排除してから、
「よう、久しぶりだな、東条院のお坊ちゃん」
そう青夜に挨拶したのは関三宝兎だった。
身長171センチ。黒髪の後ろオシャレ御団子ヘアで、たった今、暴力を振るっていた割には、涼やかでお淑やかな雰囲気を纏い、美しい仙女を思わす神秘的な女生徒だった。
美脚でもある。パンツはピンク色。
そして最大の特徴は甘い桃の匂いがかすかに身体から薫る事だった。
三宝兎は異能界ではもう有名人だ。実力もある。
だが、所属を巡って揉めに揉め、その間、青龍大学に通う事が出来ず、この春、所属問題に決着が付き、ようやく高等部から晴れて青龍大学に入学していた。
「今は田中だよ、ミッチー」
「だぁ~かぁ~らぁ~、ミッチー言うなつってるだろうがっ!」
「はいはい、関サマ」
「関サバみたいな口調で言うなっ!」
「ったく、朝から元気だねぇ~。なんて呼べばお気に召すので?」
「最近のマイブームは関帝様の娘の関銀塀に倣ってギン様」
(名前の原型ないじゃん、それだと。もういいや、言い出したら聞かないし。後、面倒臭いくらい強いから)
「はいはい、ギン様」
「それで? 青夜は昨日の入学式で大暴れしたらしいな? 何か官位も貰ったって話だし。もう弱いフリは止めたのか?」
「ああ、念願叶って東条院を出られたからね。それよりも、そっちは昨日はどうして欠席を? 悪い卦でも出てたの?」
「うんにゃあ。白鳳院のお茶会に長老様が初めて呼ばれてその護衛さ。『顔を売れ』とか言われて。マジで最悪だったから。入学式の晴れ舞台よりもお茶会の護衛を優先するか、普通?」
「ノーコメントにさせてくれ」
「ん? ああ、白鳳院に頭が上がらないんだっけ、青夜は? で、誰、そっちの女は?」
「あれ、知らない? 昨年、霊獣使いのナンバー2になった・・・」
「ああ、『巳』の野々宮稲穂か。へぇ~」
フルネームで呼ばれる程、稲穂の方も、もう有名な霊獣術師だった。
三宝兎の値踏みするような好戦的な視線に呆れながら青夜は、
「喧嘩しないでね、ギン様、野々宮」
「どっちが強いか決めるのもダメなのか?」
「試合形式ならギン様だからね」
「それだと実戦だと私が負けるみたいじゃねえか?」
「寝てる時に霊獣で襲われたらギン様も負けると思うぞ」
「そりゃ、誰でもだろうが? あっ、そうか、蛇は呪詛のカウンターがあったな。それに遠隔襲撃。なるほど、実戦ね。まあ、いいや。青夜の顔を立てて止めとこう。よろしくな、私の事はギン様でよろしく」
「こちらこそ、ギン様。私は稲で」
そんな事を喋りながら3人で下足箱へと向かった訳だが、青夜の下足箱には稚拙な術式が施されていた。
それを見た青夜が手を出さずに『はぁ~』と大袈裟に呆れる中、
「何? こんなのこうすりゃいいだろ、青夜」
簡単に三宝兎が手で触れて、軽く、そして雑に『呪い返し』をした。
1秒後に『ギャアア』とか奥の廊下から男の悲鳴が聞こえてきたが、青夜は無視して上履きに手を伸ばそうとして、
「ったく・・・邪気抽出」
上履きに込められた『呪い』を抽出した。
『呪い』は蜥蜴の形になり、術者の許へと戻っていく。
そして上履きを履いて廊下を歩いてると、また『ギャアア』と今度は職員室から女の悲鳴が聞こえたのだった。
「青夜、馬鹿しか居ないのか、この学校?」
「まあね。大変だよ」
そう認めながら青夜は教室に向かったのだった。
青夜も二千院家の車で通学となった。
朝から田中家にやってきた青セーラー服の野々宮稲穂は野暮ったい眼鏡と三つ編みを止めていた。黒髪ロングのクールビューティーに変身している。まあ、まだ15歳なのだが。
「イメチェンか、野々宮? 似合ってるぞ」
「ありがと。田中君に良く見られたかったから」
褒められた稲穂は照れながら一緒に車に乗り込み、通学を始めた訳だが。
二千院家が回した車は運転席と後部席が防弾ガラスで完全に区切られた海外仕様で、完全な密室だった。
だからだろうか。稲穂が大胆に、
「叙勲おめでとう、田中君。叙勲祝いに私にエッチな命令をしてもいいわよ。田中君になら私、総てを捧げられるから」
青夜の太股に手を置いて、いきなり迫ってきた。
稲穂のこの行動が『青夜が強い』と判明してからの掌返しでない事を青夜は知っていた。
稲穂は中等部時代、青龍大学内で弱者に偽装した情けない青夜に対して、それでも熱視線を送ってくる数少ない女生徒の1人だったのだから。
お陰で悪目立ちして青夜もその視線に気付いていた。
青夜からしてみれば、このテの女生徒は『最悪な部類』で警戒の対象だったからだ。
と言うのも、青夜には白鳳院鈴という許嫁が居り、白鳳院の嫡流のお姫様だけあって、それはまあ、性格がキツイ。青夜が女生徒と仲良く喋った日には青夜の事を監視させてるのか『許嫁の声が聞きたい』という名の詰問の電話が掛かってくるくらいに。
よって、稲穂に変な下心がない事を知っていたので、別に大股に置かれた手を退ける事もなく青夜が、
「朝日奈の『寅』から助けたからか?」
「それもあるけど、私を虐めてた二組の5人を授業中に書道室の裏で再起不能にして助けて貰ったから」
「・・・・・・それは視てないよな、野々宮?」
「ううん、視てたよ。この子を雀に入れて」
そう言って稲穂は影から鳩の霊獣のポッピーを出し、更にポッピーの気配を消した。
「ほう、確かに虫並みの気配だ。気付かないかもな。でもサイズの小さな雀にも入れれるのか?」
「ええ、霊獣だから」
「人間にも?」
青夜の鋭い追及に、
「内緒よ」
稲穂が認めると、霊獣の汎用性に感心した青夜が『あの時、黙っていた褒美』とばかりに、
「当分は車内で手を繋ぐだけな」
そう言って太股に置かれた稲穂の手を握ったのだった。
指を絡めた恋人握りをされて稲穂は幸せそうに喜んだが、
「私はもっと色々な事をされても・・・・・・」
「少し待ってくれ。許嫁の件を先方がどうも諦めてなくてな。叙勲で配属される部署も許嫁の兄君の直属だし。どうなるか微妙でな」
と青夜は苦笑し、手を握ったまま本題とばかりに、
「高等部の1年の女子は野々宮が仕切るようにな」
「えっと、『十二支の霊獣』の私的使用を宮内庁に禁止されてて」
「・・・そうなのか? 朝日奈は好きに使ってたが?」
「それで消失して危機感を持ったらしく、自衛以外には使うなと」
「何だ、使えるのか。なら拡大解釈でよろしくね」
「まあ、やれるだけはやってみるけど」
「野々宮、昨日の入学式で気付いた事はあるか?」
「気付くも何もあれだけ派手にやれば・・・」
手を繋ぐ稲穂が苦笑し、青夜が、
「違う違う。欠席者が4人居た方だよ。予知か偶然かはこの際どうでもいい。危険を回避した結果だけが重要なのだからな。外部進学組の最大の目玉はお笑いな事に関三宝兎らしいが、そのミッーーコホン、関も入学式を欠席だ」
「関三宝兎。昨年、山陰地方の七瀬忍軍を横浜で壊滅させた凄腕よね? 父親は横浜中華街の日本の関帝信仰の総元締めの関一族で、母親は太郎御伽の首座、吉備一族」
関帝とは三国志の武将の関羽の事だ。
何故か中国で神様に昇華して祀られているが、異能も当然、存在する。
商売の神様だが、青龍偃月刀の神様でもあった。
「田中君、もしかして知り合いなの?」
「母方の実家が神奈川県の関係で数回会っただけさ。だが問題は関じゃない。残る欠席者の中等部からの内部進学組の風祭葵と面堂緋色でも。外部進学組の仁科一郎、コイツだ」
「仁科一郎? 聞いた事のない名前ね。誰なの?」
「分からん。おそらくは偽名だ。日本人しか通学出来ない青龍大学で偽名なのだから、どこかの忍軍ならまだマシで、最悪、大陸系のスパイの可能性がある。気を付けるようにな」
と車内で意思統一をたっぷりやったのだった。
途中で車が進まなくなった。
青夜が『眼』飛ばして交通状況を確認すると東京名物の渋滞に嵌っていた。
運転手達がニヤニヤしていなければ、普通の渋滞だと青夜も勘違いしていただろう。
「馬鹿な連中だ。オレを遅刻させる為に雇われたらしいが」
青夜がパチンッと指を弾くと、一斉に片道2車線の渋滞で停車中の車が突如動き出し、渋滞なのだから、ガコッ、グシャッ、と何度も玉突き事故を起こしながら、追い越し車線のスペースを開けて始めた。
二千院の車の運転手が敷居の強化ガラスの向こう側で『うわぁ』と驚き、
「いいの、田中君。こんな事して?」
「えっ? 野々宮はオレがやったとでも?」
青夜が白々しく演技したのを受け、『もういいわ』と稲穂は呆れ、道が出来た追い越し車線を通過して、青夜が乗る車は通学時間中に高等部の正門を潜ったのだった。
車から降りると、もはや青夜は注目の的だった。
昨日の入学式の『青夜様』コール事件の情報が飛び交ってるのか上級生達も視線を向けてくる。
視線を向けてくるだけではなく3年生の『青龍大学高等部、有志護衛隊』の腕章付きの生徒5人が車降り場で待っていて青夜に向かって、
「今は田中なんだってな? 随分とやりたい放題・・・」
何か言おうとしたが、その背後に居た女生徒が、
「じゃ~まぁ~」
と言うと同時にスカートなのに3年の有志護衛隊員の頭部を蹴っていた。
空手の蹴りとは微妙に違う。カンフー系だ。
そして異能力や気のある世界だ。
軽く手加減された蹴りでも今の1撃で蹴られた生徒は7メートルくらい軽く吹き飛んでいた。
残る4人が、
「な?」
「1年か? 何をやって・・・」
「う」
掌底でバキッ。
「る」
ピンク色のパンチラ上段蹴りでゴキッ。
「さ」
ピンク色のパンチラ顔面跳び膝蹴りでバキッ。
「い」
顔面パンチでグシャッ。
1文字言う度に女生徒が残る3年生4人(男3人、女子1人)をボコって5メートル以上吹き飛ばして排除してから、
「よう、久しぶりだな、東条院のお坊ちゃん」
そう青夜に挨拶したのは関三宝兎だった。
身長171センチ。黒髪の後ろオシャレ御団子ヘアで、たった今、暴力を振るっていた割には、涼やかでお淑やかな雰囲気を纏い、美しい仙女を思わす神秘的な女生徒だった。
美脚でもある。パンツはピンク色。
そして最大の特徴は甘い桃の匂いがかすかに身体から薫る事だった。
三宝兎は異能界ではもう有名人だ。実力もある。
だが、所属を巡って揉めに揉め、その間、青龍大学に通う事が出来ず、この春、所属問題に決着が付き、ようやく高等部から晴れて青龍大学に入学していた。
「今は田中だよ、ミッチー」
「だぁ~かぁ~らぁ~、ミッチー言うなつってるだろうがっ!」
「はいはい、関サマ」
「関サバみたいな口調で言うなっ!」
「ったく、朝から元気だねぇ~。なんて呼べばお気に召すので?」
「最近のマイブームは関帝様の娘の関銀塀に倣ってギン様」
(名前の原型ないじゃん、それだと。もういいや、言い出したら聞かないし。後、面倒臭いくらい強いから)
「はいはい、ギン様」
「それで? 青夜は昨日の入学式で大暴れしたらしいな? 何か官位も貰ったって話だし。もう弱いフリは止めたのか?」
「ああ、念願叶って東条院を出られたからね。それよりも、そっちは昨日はどうして欠席を? 悪い卦でも出てたの?」
「うんにゃあ。白鳳院のお茶会に長老様が初めて呼ばれてその護衛さ。『顔を売れ』とか言われて。マジで最悪だったから。入学式の晴れ舞台よりもお茶会の護衛を優先するか、普通?」
「ノーコメントにさせてくれ」
「ん? ああ、白鳳院に頭が上がらないんだっけ、青夜は? で、誰、そっちの女は?」
「あれ、知らない? 昨年、霊獣使いのナンバー2になった・・・」
「ああ、『巳』の野々宮稲穂か。へぇ~」
フルネームで呼ばれる程、稲穂の方も、もう有名な霊獣術師だった。
三宝兎の値踏みするような好戦的な視線に呆れながら青夜は、
「喧嘩しないでね、ギン様、野々宮」
「どっちが強いか決めるのもダメなのか?」
「試合形式ならギン様だからね」
「それだと実戦だと私が負けるみたいじゃねえか?」
「寝てる時に霊獣で襲われたらギン様も負けると思うぞ」
「そりゃ、誰でもだろうが? あっ、そうか、蛇は呪詛のカウンターがあったな。それに遠隔襲撃。なるほど、実戦ね。まあ、いいや。青夜の顔を立てて止めとこう。よろしくな、私の事はギン様でよろしく」
「こちらこそ、ギン様。私は稲で」
そんな事を喋りながら3人で下足箱へと向かった訳だが、青夜の下足箱には稚拙な術式が施されていた。
それを見た青夜が手を出さずに『はぁ~』と大袈裟に呆れる中、
「何? こんなのこうすりゃいいだろ、青夜」
簡単に三宝兎が手で触れて、軽く、そして雑に『呪い返し』をした。
1秒後に『ギャアア』とか奥の廊下から男の悲鳴が聞こえてきたが、青夜は無視して上履きに手を伸ばそうとして、
「ったく・・・邪気抽出」
上履きに込められた『呪い』を抽出した。
『呪い』は蜥蜴の形になり、術者の許へと戻っていく。
そして上履きを履いて廊下を歩いてると、また『ギャアア』と今度は職員室から女の悲鳴が聞こえたのだった。
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