実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド

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星宿の守護者と石兵八陣

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 田中シャンリーの母親シャンファーは香港の富豪で、同時に『二十八宿』の朱雀七星宿の1つ、第4宿『星宿』の守護者だった。

 中国の党本部は『二十八宿』の総ての独占を企んで集めている訳だが、シャンファーは幸いにも潤沢な資金があったので香港からアメリカ合衆国に逃げ延びていた。

 そして、アンジェリカの誕生と同時に母親のエリザベートと離婚した田中一狼と恋かフェロモンか知らないが燃え上って結婚し、娘のシャンリーが生まれたのだった。

 『二十八宿』は中国の党本部が独占を企むだけあり、強力な異能だ。

 強力な異能は縛りも強い。

 発動条件等々で。

 『二十八宿』の異能は、守護者は世界で28人だけ(1宿に付き、守護者は1人)。

 更に継承は完全な『一子相伝』だった。

 つまり、誕生したばかりの娘のシャンリーにシャンファーの異能は受け継がれていた。

 そうなると異能を失った母親のシャンファーは散々中国の党本部に逆らった訳で、ついでに言えば異能力者のシャンリーさえ居れば何の問題もなく、中国の暗殺部隊によってアメリカ合衆国で暗殺され、その後、田中一狼が娘のシャンリーを連れて日本に帰国してからもシャンリーは中国政府に頻繁に狙われていた。

 その理由は朱雀七星宿の第4宿『星宿』にある。

 星宿はうみへび座に属する訳だが、朱雀七星宿の内、うみへび座に属する『宿』は他に第3宿『柳宿』と第5宿『張宿』もあったのだ。

 その為、3宿の守護者が揃うと更に強い異能が発揮出来、残る2宿の守護者を抑えてる中国政府は是が非でもシャンリーが欲しかったのだ。

 そんなシャンリーを日本で守ったのが当然、父親の田中一狼ではなく、その主家である日本の異能界の名家、東条院とその一党。

 そして2年前からは突如アメリカ合衆国から日本に現れた三姉、アンジェリカだった。

 アンジェリカの方は特に凄く、それまでは中国の非正規部隊による自宅への襲撃も稀にあったのだが、アンジェリカが来てからは自宅への襲撃が一切なくなっていた。

 無論、中国がBB財団に遠慮したのではなく、放った異能部隊がBB財団の異能部隊に駆逐されて田中家のビルまで到着出来なかったという意味だ。





 ◇





 なので、田中シャンリーは春休みの4月上旬、安心して自宅で勉強していた訳だが。

 やはり春先は変な奴が出るのか。

 久々に自宅で襲われた。

 自室で英文での勉強中に不意に『線香の煙が視界に入った』と思ったら次の瞬間には『別の場所』に移動させられていたのだ。

 どこかの倉庫内で、シャンリーが居るのは五芒星の術式の中央。周囲には多数の蠟燭と無数の石像があり、香炉から炊かれた大量の煙が充満していた。

(『転移』、いえ、中国系で石像があるなら意外にポピュラーな『石兵八陣』の術式? 自宅から強制的に移動させるってそんな事も出来るの?)

 シャンリーが驚く中、

「やあ、お嬢さん。君が星宿の守護者で間違いないかい?」

 身長181センチ、30代で長髪の中国貴族を思わせる品があるが、それで居て凄味のある中国服の男に中国語で話し掛けられた。

 術者はこの男ではなく、隣に座ってる老師とその弟子数人掛かりっぽいが。

 周囲には他にも中国人と思われる中国服が20人は居た。

 『星宿』の守護者の異能の所為か、シャンリーは何故か中国語が最初から喋れた訳で、

「だったら、どう・・・・・・」

 シャンリーがすぐさま、うみへび座(ギリシャ神話ではヒュドラ座)の異能を使おうとしたが、ドクンッと心臓が鼓動を打っただけで異能は使えなった。

「『二十八宿』の守護者とやり合うんだから対策を講じてるに決まってるだろう。それにしても『大変だ』と聞いていたがBB財団の姉君が旅行に出掛けただけでここまで警備がザルになるなんてな。何やら日本の名家も勝手に自滅してるし」

 馬鹿にしたように男が笑い『それで仕掛けてきたのね』と男を睨んだシャンリーは視界の奥に居る人物に注目する破目になった。

 最初は『見間違えた』と思ったが違う。

 本当に居た。

 義理の弟の青夜が。

 それがゆっくりと構えて、そして正拳突きをした。

 放たれた拳圧が青龍の姿になり、

「嘘でしょっ!」

 慌ててシャンリーが床に這う中、

「へ?」

 中国貴族が振り返った時には青龍の一撃に飲み込まれていた。

 配下の20人全員もだ。

 シャンリーは床に伏せてて無事だったが。

「大丈夫、シャンリー? いきなり気配が消えてビックリしたよ」

「助けてくれたのは感謝するけど、もう少しスマートに出来なかったの? 私まで巻き添えになるところだったじゃないの」

 と起き上がって青夜の前で喋ったシャンリーは眼鏡こそ無事だったが、ポニーテールを束ねた髪ゴムや着ていたお気に入りのキャミソールとミニスカどころか、下着もビリビリに吹き飛んで真っ裸だった。

 本当に真っ裸だった。

「キャアアアアアア」

 さすがに両手で裸の大切な箇所を隠すが隠れる訳もなく、青夜は、

「ええっと、綺麗だよ、シャンリー。弟として鼻が高いから」

「それでフォローしてるつもりかぁぁぁぁっ! ってか、今回は私は悪くないからねぇぇぇっ! 後、見るなぁぁぁぁぁぁっ!」

 そうシャンリーは叫んだのだった。





 それだけで済む訳がなく、青夜が相手の術式『石兵八陣』を転用して、『転移』で田中家のシャンリーの自室に戻ると、自室にはシャンリーの気配が突然消えた事に驚いた愛が居て、

「キャア」

 突然現れた2人に驚き、更に着地が不完全で青夜の上に裸のシャンリーが覆い被さり、というか青夜の顔にシャンリーが跨って座って股間を押し付けてるのを見て、

「えっ? シャンリーちゃん、アナタ、真っ裸で何やってるの?」

「イタタタ。キャア、アンタ、どうして私の下に居るのよ?」

 そう言って慌てて立ち上がったシャンリーが両手で必死に裸を隠し、愛に、

「ちょ、変な誤解をしないでよ、ママっ! 私は被害者なんだからっ! 青夜に服を引きちぎられて・・・ってか、アンタ、どうしてまだ居るのよ? さっさと私の部屋から出て行きなさいよねっ!」

「助けたのにこの扱い。ホント、あり得ないから、このお色気要員だけは」

「やっぱりっ! アンタ、私の事、そんな風に思ってたのねっ!」

 下腹部を隠してた右手で怒り任せに青夜を指差しながら、

「ってか、誰がお色気要員よっ! 変なくくりで私を呼ぶなぁぁっ! 私は人気者の綺麗なお姉さんなんだからぁぁぁっ! ってか、さっさと出て行けぇぇぇっ!」

 青夜が頭を横に振りながら部屋を退室する中、その後もシャンリーは愛に事情を説明する破目になったのだった。





 このような顛末からシャンリーは実は結構な窮地だったのだが、助けてくれた青夜に感謝する事は全くと言っていいほどなかった。
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