実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド

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アンジェリカの20歳の誕生日のエスコート、その1、エリザベート襲来

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 青夜の誕生日の翌日の4月5日はアンジェリカの誕生日だ。

 だが、日本とアンジェリカが生まれたアメリカ合衆国のニューヨークでは時差が13時間ある。

 日本の方が13時間早いのだ。

 青夜てきにはそんな事知ったこっちゃあなかったが、田中家には田中家のルールがあり『ニューヨーク時間に合わせる』との事で、日本時間の13時、つまりは昼食後の昼1時になると同時にアンジェリカの誕生日会が行われた。

 青夜もちゃんとアンジェリカにプレゼントをした。

 事前に欲しいというので『20歳の誕生日のエスコート券』を。





 と言う訳で青夜はアンジェリカと昼からデートに昼から出掛けた。

 アンジェリカのマイブームは『ジャパンかぶれ』だ。

 白黒の黒澤映画やジャパンホラー、それに陶芸教室にも通っていた。

 その中でもアンジェリカが今、お気に入りなのが忍者修行だった。

 異能がある世界だ。

 つまりは忍者も実在し、アンジェリカは大金をはたいて忍者の先生を雇っていた。

 そんな訳で、BB財団の自社ビル2階のダンスフロアっぽい部屋に、60代でバーコード頭の草臥くたびれた定年間際のサラリーマン風の男が背広姿で現れたのだが、その男を見た瞬間、

「ぶふっ! アンタ、こんなところで何やってんだっ!」

 青夜はお坊ちゃんキャラに似つかわしくないマヌケな息を吹いて心底驚いたのだった。

 青夜が驚くのも無理はない。

 この男は外見はこうだが、所属は日本で最も有名な伊賀忍軍で、その役職は総帥。名前は23代目『服部半蔵』その人だったのだから。

 冗談ではなく本当に正真正銘だ。

 有名人過ぎて青夜でさえ半蔵と顔見知りなくらいだった。

 そして服部半蔵の名前が使えるのは60代ながら伊賀忍軍最強を意味した。

 実際に日本の最高峰の忍者だった。

 外見こそ冴えないが。

「おお、東条院の若様、久しぶり」

「マジなの、アン? 本当にコイツに忍術を習ってるの?」

「ええ、そうよ。週3で」

「習い事のように言わないでくれよ、アン。ってか、アンタも断れよ」

「いやいや、アメリカ外交に屈した日本政府の正式要請で断れなくてさ。それに1時間2000万円の授業料は美味しいし」

「時給2000万ってボッタクリ過ぎだろうがぁぁぁっ!」

「正規料金さ。ほら、ワシって日本最高峰の忍者だから」

「自分で言うなぁぁぁっ!」

 その後、本当にBB財団のビルのダンスフロアで忍者修行が始まった。

 現在は分身の術のレクチャーだ。

 ただの幻影の分身じゃなくて実体分身の方の。

 つまり、もうアンは上忍のレベルに達していた。

 因みに、青夜の東条院宗家も長い歴史の中で、甲賀や真田、伊賀のくのいちを妻にして、使える忍法の一部を青龍拳に取り入れている。

 紙人形を媒体に使わない実体分身も青夜は出来た。

「はっ! 実体分身っ!」

 赤色の近代風の忍装束(全身タイツ系のスーツ)を纏ったアンジェリカの横に分身が出現する。

「惜しい。気の練りが甘い。それだとすぐにバレますよ、お嬢様」

 習い事デートかと思いきや、アンジェリカは1時間ミッチリ練習してる。

 青夜はそれを壁際で見ていた。

 と言うか、服部半蔵も的確にアドバイスをして本気で忍術を教えてる。

 才能があったのか、この日の練習終了間際には、

「実体分身っ!」

 青夜も『あっ、出来た』と思うくらいの錬度の実体分身が出来ていた。

「お見事、80点っ! 並みの奴ならこれは見抜けませんよ、さすがはお嬢様。才能があるっ!」

 半蔵が褒め、『確かに才能があるかも』と青夜も感心し、その日の練習は終わったのだった。





 忍術の練習後にアンジェリカがシャワーを浴びに行ってる間に、青夜は半蔵と話す機会があった。

「若様は東条院の宗家屋敷の件、黒幕が誰か把握してるのかい?」

「全然。興味もないし」

「興味がない?」

「だって親父殿が悪いんでしょ?」

「・・・情報もなしのノーヒントでドンピシャって相変わらずだね、若様は」

 そう呆れた半蔵が、

「今後の流れだけど『東条院宗家は入れ替え』『四乃森は捨て駒』で決着らしいよ」

「分家が宗家襲名か。まあ、いいんじゃないの」

「東条院の副宗家か宗家代理が若様で、しん宗家はお飾りの完全に若様の院政だけどね」

「はあぁぁぁぁっ? 絶対にやらないぞ、オレ」

「ワシのお嬢様への忍術修行同様、断れないさ」

「・・・」

「まあ、頑張るんだね」

 そう笑って半蔵は部屋を出て行き、青夜はBB財団の日本生まれでちゃんと日本語が喋れる日本支社の社員の案内で部屋に通され、アンジェリカがシャワーを終えるのを待った。





 シャワーを浴び終えたアンジェリカは真っ赤なセレブドレスに着替えて部屋にやってきた。

 髪型も専用の美容師に任せてアップになっておりバッチリだ。

 そのドレス姿でお茶をする。というか、青夜の太股の上にアンジェリカは座っていた。これもエスコートの内だと言われて。

 両腕を青夜の首に絡めてくるアンジェリカが、

「どう、青夜? 今の私?」

「綺麗だよ、アン。食べちゃいたいくらい」

「もう、青夜ったら」

 アンジェリカはそう嬉しそうに照れたが、青夜の方は『面倒な事になったな』と思った。

 アンジェリカはBB財団の日本支部の支配人で、今日が20歳の誕生日だ。

 夕方には大々的にパーティーが催されるらしく、既に青夜もタキシードに着替えさせられていたのだから。

 『本国からも家族が来るって言ってたし』と思ってると、ドアがいきなりノックもなく開いて、

「アン、会いたかったわよ」

 金髪で青ドレスを纏った42歳のセレブマダムが現れた。

 英語だったが、東条院は外国勢力に狙われまくっていたので敵対した他国勢力の言葉は覚えないと自分の身の安全がおびやかされる関係から青夜も習得しておりペラペラだった。

「ママ、私もよ」

 アンジェリカも立ち上がって母親のエリザベートにハグをしてから挨拶をし、近況を報告する中、しばらくしてアンジェリカがエリザベートに、

「私のダーリンの青夜よ」

 そう紹介した。

「どうも、アンのダーリンの青夜です」

 青夜もそう明快に英語で挨拶したが、

「おまえかっ! 私のアンに付いた悪い虫というのはっ!」

 エリザベートが突如ブチギレてきた。

「いえいえ、いい虫ですから」

「テストしてあげるわ。バトルルームに来なさい」

「ちょっと、ママ。ダメだって。青夜は強いんだから」

「それでもテストはあるのよ」

 という訳でせっかくタキシードを纏ってるのにバトルルームとやらに移動させられた。





 バトルルームは1階にあった。

 コンクリの打ちっぱなしで天井、床、壁には魔法陣の術式が施されてる。

「ここで私のボディーガートと戦って貰うわっ! 負けたらアンからは手を引いて貰うからねっ!」 

「ちょっと、ママ」

 エリザベートの言葉にアンジェリカが苦情を言おうとしたが、アンジェリカよりもわがままなエリザベートが、

「黙ってなさい、アンっ! いいわねっ!」

 黙らせ、そんな訳で青夜は戦闘させられる破目になった。

 部屋の中央で青夜と対峙するように立ってるのは身長193センチ、黒髪のドレッドヘアで褐色肌にサングラスの黒服だった。見るからに海外のボディーガードっぽいが血生臭さが違う。バリバリの軍人あがりっぽかった。

(ブラッディームーン一族のボディーガードか。元軍人で『恐竜因子手術』は確実。アフリカ系の呪術師とは違うが、それでも『死を操る』タイプっぽいな。面倒臭ぁ~。わざと負けるのもありだが・・・・・・)

 実力を隠すのが日常の青夜がテンションを下げ、わざと負けるのを視野に入れてチラッとアンジェリカを見ると、アンジェリカが今にも泣きそうな顔で青夜を見てたので、妙にやる気が出てしまった。

「勝利条件は?」

 青夜が問うと、

「どちらかが倒れるまでよ」

 勝利を確信してるエリザベートが獲物を嬲るような残忍な笑みを浮かべ、

「では始め」

 と合図した。

 直後にコンマ1秒でボディーガードが突進してくるが、カウンター気味にそれよりも早く青夜が動き、身長差があったのでジャンプしてボディーガードの顔面を右足の裏で踏み抜くように蹴った。

 1秒後には20メートル先の壁にドゴンッとめり込んだボディーガードの姿があり、更に空中でジャンプして音速のスピードと凄いエネルギー量で追撃した青夜の横壁着地姿勢の靴底蹴り踏みが壁にはりつけにされたボディーガードの顔面に決まり、

「・・・ガハッ」

 ボディーガードがそう悲鳴を上げた。

 それで決着だ。

「これでいいんですよね?」

 床に軽やかに着地した青夜がエリザベートを見て尋ねると、

「あのね。倒すまでって言ったはずよ?」

 エリザベートがそう余裕の笑みを見せたが、

「だから倒しましたが?」

 青夜がつまらなそうに言うと、壁にめり込んでたボディーガードが床に前のめりに倒れた。

 それっきり動かなくなる。

 当然だ。完全に気絶してるのだから。

 本当にボディーガードが気絶してる事を理解したエリザベートが驚きながら、

「どういう事? 何をやったの? ソイツは『ティラノサウルス』で私のボディーガードの中では最強の男なのに?」

「アナタの娘はちゃんと男を見る眼があったって事ですよ」

 そう青夜はつまらなそうに言って、乱れた前髪を指先で弾いたのだった。
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