実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド

文字の大きさ
上 下
14 / 123

青夜の16歳の誕生日、その1、運命が切り替わる

しおりを挟む
 青夜の母親は東条院貴子といった。

 実家は神奈川県の名家の二千院。その一族でも東条院の嫡子に嫁げる程、優秀な『夢見』だったらしい。

 まあ、青夜が6歳の時に死んだ訳だが(2歳年下の異母弟の青刃と4歳年下の異母妹の青花は既に生まれてる)。

 その死ぬ前に病床で伏せる貴子と2人で会った時、

「青夜、16歳までに東条院の家を出なさい。家を出ないと命を落とす事になるから」

 と言われた。

 子供ながらに貴子がバンバン予言を当ててるのを知ってた青夜は、

「はい、お母様。最悪、国外に脱出しても家を出ます」

 と答えたものだった。

 青夜はそれまでは青龍拳、陰陽道の双方で麒麟児として知られていたが、その予言後は無能を演じるようになった。





 ◇





 4月4日、青夜は布団で目覚めた。

 田中家の私室だ。間違いない。寝てる間に移動させられた等々はなかった。

「今日で16歳か。いや、確かオレの出産時間は朝10時3分だったっけ。それまでは気が抜けないぞ」

 そう気合いを入れて青夜は顔を洗って歯磨きをして、それから3階のキッチンダイニングに向かった。

 一狼、愛、弥生、葉月、アンジェリカ、シャンリーと挨拶して、朝食となり、その席で誕生日プレゼントを貰った。

 一狼からは暗器の鎖分銅。

 愛からは特別製の破魔札。

 弥生からはクナイ。

 葉月からは青夜しか使えない『添い寝券10枚セット』。

 アンジェリカからは青夜しか使えない『1日デート券(翌朝まで、当然エッチ付き)』。

 シャンリーからは1億円の残高の青夜名義の銀行口座だった。

「ありがとう。どれも嬉しいよ」

 青夜はそう笑顔で答えて朝食を食べたのだった。





 朝食後、青夜は葉月とアンジェリカに呼び止められた。

「何?」

「これも誕生日プレゼントよ」

「ありがたく貰うように、青夜」

 左右からほっぺにキスされた。

「ありがとう、葉月さん、アン」

「私もそろそろ呼び捨てがいいわ、青夜」

「じゃあ、葉月」

 青夜がそう葉月に笑い掛け、アンジェリカが、

「青夜、デートする?」

「いや、誕生時間までは家で大人しくしてるよ。それに今日は招かれざる客が来るっぽいから」

「そう」

「明日の約束忘れないでね」

 そう言って2人と別れたのだった。





 3階のリビングでスマホ画面の時計が10時3分になったのを確認した青夜は、

「よっしゃあっ!」

 とガッツポーズした。

 正確には、誕生した時間になり『運命が切り替わった』のを感じてガッツポーズした、だったが。

 妙に清々しい。

 いや、『首に掛かった死神の鎌が外れた』との表現の方が正しいか。

 ここ半年くらい顕著にまとわり付いてた陰鬱な灰色の嫌な感じが総て払拭された事を青夜は明確に感じ取った。

「それじゃあ、東条院に喧嘩を売った後妻筋の四乃森の馬鹿どもを狩りにでも行くかなぁ~。30年前の報復って今更何を考えてるんだか。それを御破算にする為の親父殿と法子さんの政略側室結婚だったのに。執念深ぁ~」

 そう背伸びをしたら、背後に愛が居て、

「聞いてない、聞いてないから、私は何も聞いてないわよ」

 そう焦った顔をしたのだった。

「そんなに焦らなくても大丈夫だって、ママ。宗家屋敷のあれは四乃森の独断で三族同盟の彼岸花と鬼札は知らないはずだから。この前、このビルを襲った彼岸花も、ただの暗殺依頼を受けただけだろうし」

「だから聞きたくないって、青夜君」

 愛が更に焦りながら言う中、青夜が、

「それよりも分かるよね、ママなら?」

「? もしかして青夜君にまとわり付いてたかすかな死相が完全に消えた事?」

「そう、それそれ」

「死相を消すのが目的で田中家うちに来てたの、青夜君って?」

「『東条院を出た』だけどね。内緒だよ、ママ」

 青夜が茶目っ気たっぷりに唇に人差指を当ててウインクした。

「ええっと、なら目的を達したから東条院に帰っちゃうの?」

「まさか、さすがにそんな恥ずかしい真似はしないよ。自分の『帝国』くらい、自分で一から作るからさ」

 青夜は清々しくそう笑ったのだった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

処理中です...