実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド

文字の大きさ
上 下
1 / 123

田中家に養子に出される

しおりを挟む
 3月中旬。

 東京都内に嘘のような敷地を持つ東条院の宗家の野外練習場では、東条院に匹敵する月御門つきみかど家との異能他流試合が行われ、

「グアアアアっ!」

 鳥型の式神の攻撃をまともに受けて、派手に吹き飛んで倒れたのは東条院家の宗家当主の嫡男で、中学3年生を卒業したばかりの15歳の青夜せいやだった。

 式神を繰り出したのは13歳の春休みだから中学1年生と2年生の間の月御門家の二男の鬼丸で、

「それまで。月御門の勝利っ!」

 審判役の大人が判定し、式神を放った本人が一番不思議そうにする中、対戦を見ていた下座の大人達が、

「弱過ぎる」

「あれが東条院宗家の次の跡目とは」

「弟君や妹君は優秀だというのに」

「いい加減、廃嫡にすべきだ」

「同感だな」

「出来るならとっくにやってるだろ」

「ああ、廃嫡などにしたら、許嫁の白鳳院はくほういん家と母親筋の二千院にせんいん家が黙っていないぞ」

 東条院に仕える大人達が口々に小声で囁いたのだった。

 上座では月御門の当主の閻魔えんまが苦笑気味に、

「ええっと、何と言っていいか・・・」

「実は困ってましてな」

 東条院の当主で青夜の実父の青蓮せいれんがそう苦々しく返した。

 その後、気絶した青夜が医務室に運ばれて、青夜の弟で13歳の青刃せいはが連戦となる月御門鬼丸と他流試合らしく良い戦いを演じたのだった。





 ◇





 それから3日後、東条院宗家屋敷の当主執務室に呼ばれた青夜に対して、青蓮は、

「例え、我が長男でも無能に家は継がせん。おまえを東条院家から追放し、他家に養子に出す」

 そう宣言した。

「そ、そんな・・・これまで以上に精進しますから」

 そうすがる青夜に、

「黙れっ! これはもう決定事項だっ! そこに居るのが今日からおまえの父親になる田中一狼いちろうだっ! いいかっ! もう東条院の名前を名乗るんじゃないぞっ! 私物や資産の持ち出しも許さんっ! 写真もだっ! さっさと出て行けっ!」

「ま、待って下さい・・・・・・急にそんな事を言われてもっ!」

 狼狽する青夜に、青蓮は、

「『急に』ではないっ! 何度も警告したぞっ! 『東条院家の嫡子に相応しい振る舞いをしろ』とっ!」

「でも・・・」

「『でも』じゃないっ! チャンスは今までに十分与えたっ!」

「百歩譲って東条院から出るとしても、どうしてそちらの田中家なんですか? 母の実家の二千院家に・・・」

「無能者はいらんと断られたはっ!」

「そんなぁ~」

「ともかく、今日からおまえは東条院と二千院とは縁もゆかりもないただの田中青夜だっ! その事を肝に銘じて大人しく生きていけっ! そうそう、許嫁の件も白紙になったから白鳳院家に頼る事も許さんからなっ!」

 一方的に青蓮が宣言し、視線で合図すると、壁際に立ってた53歳の田中一狼が、

「青夜君、よろしくな」

「・・・はい」 

「では行こうか。宗家様、青夜君をお預かりしますね」

(宗家様? 陪臣ばいしんか)

「『預かる』? 勘違いするなよ。縁を切ったのだからな」

 と大人達が話す中、青夜は、

「これまで育てていただきありがとうございました」

 そう深々と頭を下げたのだが、誰からも見えないその口元は計算通りと言わんばかりにニヤリとしていた。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

処理中です...