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田中家に養子に出される
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3月中旬。
東京都内に嘘のような敷地を持つ東条院の宗家の野外練習場では、東条院に匹敵する月御門家との異能他流試合が行われ、
「グアアアアっ!」
鳥型の式神の攻撃をまともに受けて、派手に吹き飛んで倒れたのは東条院家の宗家当主の嫡男で、中学3年生を卒業したばかりの15歳の青夜だった。
式神を繰り出したのは13歳の春休みだから中学1年生と2年生の間の月御門家の二男の鬼丸で、
「それまで。月御門の勝利っ!」
審判役の大人が判定し、式神を放った本人が一番不思議そうにする中、対戦を見ていた下座の大人達が、
「弱過ぎる」
「あれが東条院宗家の次の跡目とは」
「弟君や妹君は優秀だというのに」
「いい加減、廃嫡にすべきだ」
「同感だな」
「出来るならとっくにやってるだろ」
「ああ、廃嫡などにしたら、許嫁の白鳳院家と母親筋の二千院家が黙っていないぞ」
東条院に仕える大人達が口々に小声で囁いたのだった。
上座では月御門の当主の閻魔が苦笑気味に、
「ええっと、何と言っていいか・・・」
「実は困ってましてな」
東条院の当主で青夜の実父の青蓮がそう苦々しく返した。
その後、気絶した青夜が医務室に運ばれて、青夜の弟で13歳の青刃が連戦となる月御門鬼丸と他流試合らしく良い戦いを演じたのだった。
◇
それから3日後、東条院宗家屋敷の当主執務室に呼ばれた青夜に対して、青蓮は、
「例え、我が長男でも無能に家は継がせん。おまえを東条院家から追放し、他家に養子に出す」
そう宣言した。
「そ、そんな・・・これまで以上に精進しますから」
そうすがる青夜に、
「黙れっ! これはもう決定事項だっ! そこに居るのが今日からおまえの父親になる田中一狼だっ! いいかっ! もう東条院の名前を名乗るんじゃないぞっ! 私物や資産の持ち出しも許さんっ! 写真もだっ! さっさと出て行けっ!」
「ま、待って下さい・・・・・・急にそんな事を言われてもっ!」
狼狽する青夜に、青蓮は、
「『急に』ではないっ! 何度も警告したぞっ! 『東条院家の嫡子に相応しい振る舞いをしろ』とっ!」
「でも・・・」
「『でも』じゃないっ! チャンスは今までに十分与えたっ!」
「百歩譲って東条院から出るとしても、どうしてそちらの田中家なんですか? 母の実家の二千院家に・・・」
「無能者はいらんと断られたはっ!」
「そんなぁ~」
「ともかく、今日からおまえは東条院と二千院とは縁もゆかりもないただの田中青夜だっ! その事を肝に銘じて大人しく生きていけっ! そうそう、許嫁の件も白紙になったから白鳳院家に頼る事も許さんからなっ!」
一方的に青蓮が宣言し、視線で合図すると、壁際に立ってた53歳の田中一狼が、
「青夜君、よろしくな」
「・・・はい」
「では行こうか。宗家様、青夜君をお預かりしますね」
(宗家様? 陪臣か)
「『預かる』? 勘違いするなよ。縁を切ったのだからな」
と大人達が話す中、青夜は、
「これまで育てていただきありがとうございました」
そう深々と頭を下げたのだが、誰からも見えないその口元は計算通りと言わんばかりにニヤリとしていた。
東京都内に嘘のような敷地を持つ東条院の宗家の野外練習場では、東条院に匹敵する月御門家との異能他流試合が行われ、
「グアアアアっ!」
鳥型の式神の攻撃をまともに受けて、派手に吹き飛んで倒れたのは東条院家の宗家当主の嫡男で、中学3年生を卒業したばかりの15歳の青夜だった。
式神を繰り出したのは13歳の春休みだから中学1年生と2年生の間の月御門家の二男の鬼丸で、
「それまで。月御門の勝利っ!」
審判役の大人が判定し、式神を放った本人が一番不思議そうにする中、対戦を見ていた下座の大人達が、
「弱過ぎる」
「あれが東条院宗家の次の跡目とは」
「弟君や妹君は優秀だというのに」
「いい加減、廃嫡にすべきだ」
「同感だな」
「出来るならとっくにやってるだろ」
「ああ、廃嫡などにしたら、許嫁の白鳳院家と母親筋の二千院家が黙っていないぞ」
東条院に仕える大人達が口々に小声で囁いたのだった。
上座では月御門の当主の閻魔が苦笑気味に、
「ええっと、何と言っていいか・・・」
「実は困ってましてな」
東条院の当主で青夜の実父の青蓮がそう苦々しく返した。
その後、気絶した青夜が医務室に運ばれて、青夜の弟で13歳の青刃が連戦となる月御門鬼丸と他流試合らしく良い戦いを演じたのだった。
◇
それから3日後、東条院宗家屋敷の当主執務室に呼ばれた青夜に対して、青蓮は、
「例え、我が長男でも無能に家は継がせん。おまえを東条院家から追放し、他家に養子に出す」
そう宣言した。
「そ、そんな・・・これまで以上に精進しますから」
そうすがる青夜に、
「黙れっ! これはもう決定事項だっ! そこに居るのが今日からおまえの父親になる田中一狼だっ! いいかっ! もう東条院の名前を名乗るんじゃないぞっ! 私物や資産の持ち出しも許さんっ! 写真もだっ! さっさと出て行けっ!」
「ま、待って下さい・・・・・・急にそんな事を言われてもっ!」
狼狽する青夜に、青蓮は、
「『急に』ではないっ! 何度も警告したぞっ! 『東条院家の嫡子に相応しい振る舞いをしろ』とっ!」
「でも・・・」
「『でも』じゃないっ! チャンスは今までに十分与えたっ!」
「百歩譲って東条院から出るとしても、どうしてそちらの田中家なんですか? 母の実家の二千院家に・・・」
「無能者はいらんと断られたはっ!」
「そんなぁ~」
「ともかく、今日からおまえは東条院と二千院とは縁もゆかりもないただの田中青夜だっ! その事を肝に銘じて大人しく生きていけっ! そうそう、許嫁の件も白紙になったから白鳳院家に頼る事も許さんからなっ!」
一方的に青蓮が宣言し、視線で合図すると、壁際に立ってた53歳の田中一狼が、
「青夜君、よろしくな」
「・・・はい」
「では行こうか。宗家様、青夜君をお預かりしますね」
(宗家様? 陪臣か)
「『預かる』? 勘違いするなよ。縁を切ったのだからな」
と大人達が話す中、青夜は、
「これまで育てていただきありがとうございました」
そう深々と頭を下げたのだが、誰からも見えないその口元は計算通りと言わんばかりにニヤリとしていた。
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