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本編

10、ハンター庁総監、五咲次元は看破する

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「この続きはまた今度って事で」

オレが通路を歩きながら受けてたインタビューをそう締め括った直後に、背広のイケオジが女子アナ達の居る前で、

「私はハンター庁の永倉と申します。上役が壱式様との会見を希望されており、お時間がおありでしたら今から御一緒にきていただけないでしょうか?」

名乗って、オレに名刺を渡してきた。

受け取った名刺を見たら新撰組二番隊組長の永倉新八と同じ永倉だった。

永倉の姓だけでもポイントが高いのに、女子アナ達が見てる前で声を掛けてくるなんて更にポイントが高いぞ、永倉さん。

因みにハンター庁とは日本全国に出没するコスモアネモニーを討伐するハンターを統括する部署である。

猛者揃いのハンターを統括する省庁だけあって、ただのお役所ではない。

チンピラなハンターの暴走の抑止も職務なので、職員も強かったりする。

この永倉さんも強い部類だった。

「暇ですから全然いいですよ」

「では、こちらにどうぞ」

「じゃあ、ごめんね」

興味津々で見ていた三人の美女達に気軽に手を振ってオレは永倉さんと一緒に地下駐車場から車に乗り込んで、東京闘技場を後にした。





運転手さんが運転する車内の後部席で横に並んで座る永倉さんに向かってオレは、

「ふ~、助かったよ。どうやって無事闘技場から出るか思案してたから」

「壱式様の実力なら余裕だと思いますが」

「余裕だけど手加減がね~。一生ものの傷を相手に負わせて慰謝料とか請求されたらキツイし」

「・・・時に、いつから気闘法を使えるのですか?」

「今朝だよ。これまでは必要がなかったから練習を一回もしてこなかったし」

「柊流でそれはないでしょう?」

「ああ、言い方が悪かったね、今のは。柊流での練習の時は『はああああああ』とか言ってただけって事だよ(嘘)」

「――そのような無駄な時間を?」

「無駄かどうかは見方によるね。現に柊家からは無事脱出出来たし」

「無事とは?」

「オレが強いのがバレていたら西郷家なら柊家を乗っ取る為に毒殺とか平気でしてくるでしょ。そういう事だよ」

「西郷家は表の権力を失って必死ですからね」

「裏の権力が凄いのにどうしてそんなに必死なんでしょうね?」

「実力のある四大流派が言う事を聞かないからだと思いますよ」

「支部の発言力が強い柊流の惣領家当主を裏から操っても意味なんてないのに」

そんな世間話や探りをされて、オレは別の場所へと移動した。





 ◇





都内にあるハンター庁の施設の一つにでも案内されるかと思っていたオレだったが、いきなりハンター庁本部ビルの総監室に通された。

それもハンター庁を統べる元ハンターの五咲次元本人がオレの前に現れていた。

四大流派の一つ、五咲のところの爺様だ。

柊家の御曹司なだけあり、オレの子供の頃から面識があった。

「よう、小僧。久しぶりじゃな」

「どうも、御隠居様」

「で、誰だ、おまえさん?」

「申し遅れました、壱式誠と申します」

「そうじゃない――別の壱式誠じゃよな?」

おっ、分かるのか。

さすがだね~、この爺様も。

問題はを言っていいかどうかだ。

「何ですか、それは? まさか双子だとでも?」

「いや、ワシは平行世界を疑っておる」

「何ですか、その夢物語は? 勘弁して――」

五咲の爺様の雰囲気が一転してオレは黙った。

殺気全開だ。

オレをこの場で始末する気か?

この爺様の持つ杖は仕込み刀。

それも当然のように、こっちの世界で一番硬いレッドムーン鉱刀。

オレが攻撃されるとしたら居合な訳だが。

いくら強力なレッドムーン鉱刀であろうと当たらなければどうという事はないーーはずなんだけど。

こっちの世界には気闘法があるんだよな~。

気闘法の肉体強化でスピードアップも可能な訳で、もしかしてオレでも対応出来ない速度の居合だったりするのか?

チッ。

自分の命をこんなつまらない事で賭けたくないよね~。

「ええっと? 何ですか、この殺気?」

「ほら、嘘とかつかれるとムカつくじゃろ、小僧も? なので、ついつい漏れてしまってのう、温厚なワシでも~」

ムカつく喋り方で煽ってきやがる。

チッ、チッ。

どうする?





「はあ~、もういいや。御隠居の勝ちだ。そうだよ。御隠居の読み通りだ、オレは別の世界の柊誠だよ」
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