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治癒魔法の使えない平民聖女は偽物と断罪されて辺境に追放されました。これでこの話は終わりなのですが神様が御立腹らしく
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「ライジーっ! 治癒魔法も使えないのに何が聖女だっ! おまえのような偽物の聖女とは結婚など出来ないっ! よってライジー、平民のおまえとの婚約はここで破棄するっ! そして真の聖女であるアイリスとこの私、クリフトス・ライラックの新たな婚約をここに発表するっ!」
とライラック王国の王宮の謁見の間で、私ことライジーを指差して、そう盛大に宣言されたのはこのライラック王国の王太子のクリフトス様でした。
クリフトス様のお隣には公爵令嬢で同じく聖女であるアイリス様が居られました。
何やら勝ち誇った笑みを浮かべて私を見て、
「ごめんなさいね、ライジー。アナタの地位を奪うような真似をして」
と心にもない謝罪をされました。
この人、性格が悪いんですよね。
どうして聖女になれたのかしら? 本当に不思議だわ。
この婚約破棄を発表する為でしょうか。
謁見の間には私の他にも、多数の貴族の人達が控えられておられました。
私は上座の国王様に視線を向けました。
王太子のクリフトス様がどれだけ喚いても、結局は国王様の裁定が必要ですから。
と言うか、私の方も結婚したくもないのに無理矢理、この国王様によって王太子のクリフトス様との婚約をさせられているのですけどもね。
「王太子がそう言うのであれば仕方がない。認めよう」
と国王様がおっしゃられたので、次に私が視線を向けたのは神官長様でした。
この人も、無理矢理、私とクルフトス様との婚約を推し進めた一人です。
権力志向が強く、教会よりも王宮向きの神官長様ですからね。
その神官長も、
「御髄意のままに」
と了承されましたので、
「畏まりました」
私はようやく発言しました。
「ふん。では、即刻、おまえを北の辺境へと追放処分とするっ! その枯れた土地を豊かにするまで帰ってくるなっ!」
「畏まりました」
と私は一礼をして、そのまま騎士に囲まれて謁見の間から王宮の入口まで警護され(まあ、連行ですが)、玄関で待ってた馬車に乗せられて辺境の地へ護送されたのでした。
なんて事はない。
これでこの話は終わりです。
私的にはあの王宮から解放されて嬉しかったのですが、神様の方は聖女の私の余りの扱いに御立腹らしく・・・・・・・
◇◆◇
ライラック王国の王宮から平民聖女ライジーが辺境に追放されて旅立った日の夜、王宮に出仕していた神官長が教会に戻るべく馬車で移動していると、星々が輝く夜空の中、ピッシャーンッと雷が降り注ぎ、馬車に直撃して、馬車は炎上して神官長は帰らぬ人となったのだった。
その後、神官長側近の俗物1人と神官長候補2人が、同じような落雷で死亡し、王家に追従しない人物が神官長に就任した。
不可解な現象はそれだけでは終わらず、聖女ライジーを辺境に追放した直後から、王都中の井戸が枯れ、雨も降らず日照りが続きで、大地も痩せ細り始め・・・・・
神官長と幹部3人の死によって、教会の体制と方針が一新された事により、真の聖女アイリスが雨乞いの祈祷と治癒治療を、寝る時間の少ないスケジュールで毎日のように強いられ、それでも雨は降らず、
「最近、雨が降らないな」
「今度の聖女は何と役立たずな」
「所詮は死んだ神官長達に賄賂を贈って得た聖女の称号だろうて」
と無能の烙印を押され、アイリスが婚約者の王太子や実家の公爵家に泣き付くも、聖女の運用に関しては王権よりも教会の方が権限が強く、治療魔法が使えるのだから、と聖女として馬車馬のように働かされて、30日後には美しかった髪や肌はポロポロになって、遂には王太子のクリフトスによって、
「雨も降らせられぬ聖女など聞いた事がないっ! そんな偽聖女との婚約は破棄するっ!」
と見限られたのだった。
◇◇◇
偽聖女の烙印を押された私は王都から馬車に揺られて20日間を費やして、ライラック王国の北の辺境へとやってきていました。
辺境とは名ばかりで、私が来た頃には大地は荒野のようでしたが、滞在10日後には一面が草原地帯に変わり、大地は肥え、耕して畑にすれば作物が育ち、元々あった田畑で育てていた野菜や果物はたくさん実るようになりました。
「聖女様が来て下さったお陰です」
「本当です。ありがとうございます」
辺境の民の皆さんがそう言ってくれますが、
「私は別段、何もしていませんよ。治癒魔法も使えませんし」
と答えるしかありませんでした。
言葉通り、日課の礼拝堂での祈祷しかしていないのですから。
「ずっと、居て下さいね、ライジー様」
「ええ」
と私は民の皆さんに笑顔で応えたのでした。
◇◆◇
ライラック王国の王都周辺は平民聖女ライジーを追放から60日目には大変な事になっていた。
王都は井戸が完全に枯れた事で平民達の生活がままならず、近隣の穀倉地帯も日照りで、大地が痩せ衰え、穀物が採れなくなったのだ。
更に問題なのが天気だ。
この60日間、日照りが続き、雨が一切降らない。
遂には責任問題に発展し、教会では異端審問会が開かれ、
「聖女アイリスっ! この雨の降らぬ天候はおまえのような偽物が聖女になった事に父なる神が怒っておられるからだっ! よって、ここにアイリスから聖女の称号を剥奪し、この偽聖女を火あぶりの刑に処すっ!」
異端審問会が満場一致で採決を下し、
「お、お待ちくださいっ!」
もう髪も肌もボロボロでガリガリのアイリスが泣きそうな顔で待ったを掛ける中、新神官長が、
「安心しろ。教会にも慈悲はある。猶予期間の7日間は柱にくくりつけられるだけだ。その間に雨が降れば火あぶりの刑は中止するから、死ぬ気で祈ると良かろう」
と冷笑し、アイリスは教会から運行されたのだった。
民衆も見れる広場に設置された柱にくくりつけられたアイリスは、民衆達の前で7日間、雨が降るのを祈り続けたが、雨が降る訳もなく、火あぶりの刑の執行直前、怒れる民衆によって、
「このニセ聖女がっ!」
「おまえの所為で雨が降らないんだっ! さっさと死ねっ!」
「そうだ、偽物がっ!」
「おまえが王子様をたぶらかしてライジー様を陥れたのは知っているんだからなっ!」
「さっさとその命で罪を償えっ!」
と石を投げられて、
「痛い・・・いや、止めて。ああ、火を掛けないで・・・死にたくないっ!」
と泣き叫ぶも、足下に薪が並べられて火が焚べられて、アイリスは偽聖女として火あぶりにされたのだった。
その日、アイリスが火あぶりとなった事で、アイリスが偽聖女である事が民衆にも知れ渡り、怒った暴徒によってアイリスの実家の公爵邸は襲撃され、公爵以下家族達も全員、殺害されたのだった。
ライラック王国の首脳部はこの間、何も静観していた訳ではない。
聖女アイリスが使い物にならないと分かると同時に、実は聖女ライジーを呼び戻すべく使者を既に10回以上派遣していたのだが、その度に辺境へと向かう道中で落雷に遭って使者が命を落としており、
「報告します。晴天の中、落雷が落ちたので付近を捜索すると、使者の一団200名が全滅していた、と巡回中の警備隊よりの報告がありました」
「またかっ! どうなってるっ?」
王太子のクリフトスが喚き、
「次だっ! ライジーの許へ王宮への帰還命令の使者を送れっ! 今度は500人だっ!」
と平然と命令する中、周囲の側近達が、
「恐れながら皆、落雷を恐れ・・・」
「使者になりたがる者が居りません」
と進言するも、王太子のクリフトスは、
「ライラック王国の一大事なのだぞっ! そんな悠長な事を言ってられるかっ! 死ね、王国の為にっ! それが忠臣というものだろうがっ!」
と檄を飛ばし、全員が、おまえが本物の聖女と婚約破棄をしたからだろうが、とは思ってはいても口には出さず、その後も使者を何十回と送るも辺境まで辿り着けた使者は1人としていなかった。
◇◇◇
王都を追放されて90日が経った頃、私は辺境に到着してから仲良くなった辺境出身の騎士のアンゼス様と恋仲になっていたのですが、遂に、
「ライジー、オレの妻になってくれ」
そう求婚されて、
「喜んで」
私は赤面しながらも笑顔で承諾したのでした。
その求婚が周囲に知れ渡ってからは、周囲の祝福と支援もあって、あっという間に結婚準備が整い、10日後には結婚式を挙げる事となりました。
辺境の教会の神父様や辺境に顔見知りの民の皆さんに祝福されながら結婚式を挙げて、私はアンゼス様の妻となったのでした。
◇◆◇
ライジーが追放されて180日が経過した頃、ライラック王国の王都では王家に向けられていた民衆の怒りが遂に暴発して、王宮が襲撃されていた。
教会や一部の貴族達が裏で民衆を支持し、心ある兵士や騎士も暴徒に参加した為、王宮の門は簡単に開き、
「聖女ライジー様を追放した王太子のクリフトスを血祭りにあげろっ!」
「それよりも王妃だっ! あの悪女が聖女ライジー様を蔑ろにしていたのは有名は話だからなっ!」
「国王もだっ!」
「但し、殺すなよ。断頭台に乗せるんだからっ!」
「側近達は殺してかまわんっ!」
「女官達も聖女ライジー様を王宮で虐めていたらしいっ! 殺してしまえっ!」
暴徒は王宮で暴れ回った。
王宮勤めの重臣や侍従、侍女官達は殺され、王族達は捕縛された。
そして断頭台が設置された広場に集まる民衆達の前に引きずり出された王太子のクリフトスは、
「違う。オレは悪くないっ! オレは悪女アイリスに騙されて・・・痛いっ! 石を投げるなっ! 無礼者がっ! オレは王太子だぞっ!」
怒る群衆達に石を投げられていた。
断頭台の首枷にクリフトスの首が固定される。
「止めろっ! こんな事をして雨が降る訳が······ギャアアアアアアアア」
こうして聖女ライジーを追放したクリフトスは処刑され、その他、国王や王妃も処刑されると、良くやった、と言わんばかりに恵みの雨が半年ぶりに空から降ってきたのだった。
◇◆◇
ライラック王国の北の辺境で幸せな新婚生活を送り、子供を授かった私の許に使者が訪れたのは追放から280日目が経った頃でした。
使者は高位の神官の方で、国名がライラック王国からライラック聖教国に変更したと教えられました。
「そうですか。アイリス様やクリフトス様はもう既に・・・」
これでも聖女ですから、いい気味、とはさすがに言いませんけど、内心は思ってますよ、そりゃ。
「それで、一度、王都を訪ねていただきたいのですが、お子を授かっておられるのであれば、旅は無理ですよね」
私のお腹を見ながら探るように尋ねられたので、私が、
「はい」
「では、そのように伝えますね」
どうやら私を主都に連れ戻す為に来られたようですが、物分かりが良く、その高位の神官の方はその1回で話を打ち切られて、世間話と要望を尋ねられてから王都に帰って行かれました。
その後、私は北の辺境、いえ、第2聖都となった地で幸せに暮らしたのでした。
おわり
とライラック王国の王宮の謁見の間で、私ことライジーを指差して、そう盛大に宣言されたのはこのライラック王国の王太子のクリフトス様でした。
クリフトス様のお隣には公爵令嬢で同じく聖女であるアイリス様が居られました。
何やら勝ち誇った笑みを浮かべて私を見て、
「ごめんなさいね、ライジー。アナタの地位を奪うような真似をして」
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この人、性格が悪いんですよね。
どうして聖女になれたのかしら? 本当に不思議だわ。
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謁見の間には私の他にも、多数の貴族の人達が控えられておられました。
私は上座の国王様に視線を向けました。
王太子のクリフトス様がどれだけ喚いても、結局は国王様の裁定が必要ですから。
と言うか、私の方も結婚したくもないのに無理矢理、この国王様によって王太子のクリフトス様との婚約をさせられているのですけどもね。
「王太子がそう言うのであれば仕方がない。認めよう」
と国王様がおっしゃられたので、次に私が視線を向けたのは神官長様でした。
この人も、無理矢理、私とクルフトス様との婚約を推し進めた一人です。
権力志向が強く、教会よりも王宮向きの神官長様ですからね。
その神官長も、
「御髄意のままに」
と了承されましたので、
「畏まりました」
私はようやく発言しました。
「ふん。では、即刻、おまえを北の辺境へと追放処分とするっ! その枯れた土地を豊かにするまで帰ってくるなっ!」
「畏まりました」
と私は一礼をして、そのまま騎士に囲まれて謁見の間から王宮の入口まで警護され(まあ、連行ですが)、玄関で待ってた馬車に乗せられて辺境の地へ護送されたのでした。
なんて事はない。
これでこの話は終わりです。
私的にはあの王宮から解放されて嬉しかったのですが、神様の方は聖女の私の余りの扱いに御立腹らしく・・・・・・・
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その後、神官長側近の俗物1人と神官長候補2人が、同じような落雷で死亡し、王家に追従しない人物が神官長に就任した。
不可解な現象はそれだけでは終わらず、聖女ライジーを辺境に追放した直後から、王都中の井戸が枯れ、雨も降らず日照りが続きで、大地も痩せ細り始め・・・・・
神官長と幹部3人の死によって、教会の体制と方針が一新された事により、真の聖女アイリスが雨乞いの祈祷と治癒治療を、寝る時間の少ないスケジュールで毎日のように強いられ、それでも雨は降らず、
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「今度の聖女は何と役立たずな」
「所詮は死んだ神官長達に賄賂を贈って得た聖女の称号だろうて」
と無能の烙印を押され、アイリスが婚約者の王太子や実家の公爵家に泣き付くも、聖女の運用に関しては王権よりも教会の方が権限が強く、治療魔法が使えるのだから、と聖女として馬車馬のように働かされて、30日後には美しかった髪や肌はポロポロになって、遂には王太子のクリフトスによって、
「雨も降らせられぬ聖女など聞いた事がないっ! そんな偽聖女との婚約は破棄するっ!」
と見限られたのだった。
◇◇◇
偽聖女の烙印を押された私は王都から馬車に揺られて20日間を費やして、ライラック王国の北の辺境へとやってきていました。
辺境とは名ばかりで、私が来た頃には大地は荒野のようでしたが、滞在10日後には一面が草原地帯に変わり、大地は肥え、耕して畑にすれば作物が育ち、元々あった田畑で育てていた野菜や果物はたくさん実るようになりました。
「聖女様が来て下さったお陰です」
「本当です。ありがとうございます」
辺境の民の皆さんがそう言ってくれますが、
「私は別段、何もしていませんよ。治癒魔法も使えませんし」
と答えるしかありませんでした。
言葉通り、日課の礼拝堂での祈祷しかしていないのですから。
「ずっと、居て下さいね、ライジー様」
「ええ」
と私は民の皆さんに笑顔で応えたのでした。
◇◆◇
ライラック王国の王都周辺は平民聖女ライジーを追放から60日目には大変な事になっていた。
王都は井戸が完全に枯れた事で平民達の生活がままならず、近隣の穀倉地帯も日照りで、大地が痩せ衰え、穀物が採れなくなったのだ。
更に問題なのが天気だ。
この60日間、日照りが続き、雨が一切降らない。
遂には責任問題に発展し、教会では異端審問会が開かれ、
「聖女アイリスっ! この雨の降らぬ天候はおまえのような偽物が聖女になった事に父なる神が怒っておられるからだっ! よって、ここにアイリスから聖女の称号を剥奪し、この偽聖女を火あぶりの刑に処すっ!」
異端審問会が満場一致で採決を下し、
「お、お待ちくださいっ!」
もう髪も肌もボロボロでガリガリのアイリスが泣きそうな顔で待ったを掛ける中、新神官長が、
「安心しろ。教会にも慈悲はある。猶予期間の7日間は柱にくくりつけられるだけだ。その間に雨が降れば火あぶりの刑は中止するから、死ぬ気で祈ると良かろう」
と冷笑し、アイリスは教会から運行されたのだった。
民衆も見れる広場に設置された柱にくくりつけられたアイリスは、民衆達の前で7日間、雨が降るのを祈り続けたが、雨が降る訳もなく、火あぶりの刑の執行直前、怒れる民衆によって、
「このニセ聖女がっ!」
「おまえの所為で雨が降らないんだっ! さっさと死ねっ!」
「そうだ、偽物がっ!」
「おまえが王子様をたぶらかしてライジー様を陥れたのは知っているんだからなっ!」
「さっさとその命で罪を償えっ!」
と石を投げられて、
「痛い・・・いや、止めて。ああ、火を掛けないで・・・死にたくないっ!」
と泣き叫ぶも、足下に薪が並べられて火が焚べられて、アイリスは偽聖女として火あぶりにされたのだった。
その日、アイリスが火あぶりとなった事で、アイリスが偽聖女である事が民衆にも知れ渡り、怒った暴徒によってアイリスの実家の公爵邸は襲撃され、公爵以下家族達も全員、殺害されたのだった。
ライラック王国の首脳部はこの間、何も静観していた訳ではない。
聖女アイリスが使い物にならないと分かると同時に、実は聖女ライジーを呼び戻すべく使者を既に10回以上派遣していたのだが、その度に辺境へと向かう道中で落雷に遭って使者が命を落としており、
「報告します。晴天の中、落雷が落ちたので付近を捜索すると、使者の一団200名が全滅していた、と巡回中の警備隊よりの報告がありました」
「またかっ! どうなってるっ?」
王太子のクリフトスが喚き、
「次だっ! ライジーの許へ王宮への帰還命令の使者を送れっ! 今度は500人だっ!」
と平然と命令する中、周囲の側近達が、
「恐れながら皆、落雷を恐れ・・・」
「使者になりたがる者が居りません」
と進言するも、王太子のクリフトスは、
「ライラック王国の一大事なのだぞっ! そんな悠長な事を言ってられるかっ! 死ね、王国の為にっ! それが忠臣というものだろうがっ!」
と檄を飛ばし、全員が、おまえが本物の聖女と婚約破棄をしたからだろうが、とは思ってはいても口には出さず、その後も使者を何十回と送るも辺境まで辿り着けた使者は1人としていなかった。
◇◇◇
王都を追放されて90日が経った頃、私は辺境に到着してから仲良くなった辺境出身の騎士のアンゼス様と恋仲になっていたのですが、遂に、
「ライジー、オレの妻になってくれ」
そう求婚されて、
「喜んで」
私は赤面しながらも笑顔で承諾したのでした。
その求婚が周囲に知れ渡ってからは、周囲の祝福と支援もあって、あっという間に結婚準備が整い、10日後には結婚式を挙げる事となりました。
辺境の教会の神父様や辺境に顔見知りの民の皆さんに祝福されながら結婚式を挙げて、私はアンゼス様の妻となったのでした。
◇◆◇
ライジーが追放されて180日が経過した頃、ライラック王国の王都では王家に向けられていた民衆の怒りが遂に暴発して、王宮が襲撃されていた。
教会や一部の貴族達が裏で民衆を支持し、心ある兵士や騎士も暴徒に参加した為、王宮の門は簡単に開き、
「聖女ライジー様を追放した王太子のクリフトスを血祭りにあげろっ!」
「それよりも王妃だっ! あの悪女が聖女ライジー様を蔑ろにしていたのは有名は話だからなっ!」
「国王もだっ!」
「但し、殺すなよ。断頭台に乗せるんだからっ!」
「側近達は殺してかまわんっ!」
「女官達も聖女ライジー様を王宮で虐めていたらしいっ! 殺してしまえっ!」
暴徒は王宮で暴れ回った。
王宮勤めの重臣や侍従、侍女官達は殺され、王族達は捕縛された。
そして断頭台が設置された広場に集まる民衆達の前に引きずり出された王太子のクリフトスは、
「違う。オレは悪くないっ! オレは悪女アイリスに騙されて・・・痛いっ! 石を投げるなっ! 無礼者がっ! オレは王太子だぞっ!」
怒る群衆達に石を投げられていた。
断頭台の首枷にクリフトスの首が固定される。
「止めろっ! こんな事をして雨が降る訳が······ギャアアアアアアアア」
こうして聖女ライジーを追放したクリフトスは処刑され、その他、国王や王妃も処刑されると、良くやった、と言わんばかりに恵みの雨が半年ぶりに空から降ってきたのだった。
◇◆◇
ライラック王国の北の辺境で幸せな新婚生活を送り、子供を授かった私の許に使者が訪れたのは追放から280日目が経った頃でした。
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「そうですか。アイリス様やクリフトス様はもう既に・・・」
これでも聖女ですから、いい気味、とはさすがに言いませんけど、内心は思ってますよ、そりゃ。
「それで、一度、王都を訪ねていただきたいのですが、お子を授かっておられるのであれば、旅は無理ですよね」
私のお腹を見ながら探るように尋ねられたので、私が、
「はい」
「では、そのように伝えますね」
どうやら私を主都に連れ戻す為に来られたようですが、物分かりが良く、その高位の神官の方はその1回で話を打ち切られて、世間話と要望を尋ねられてから王都に帰って行かれました。
その後、私は北の辺境、いえ、第2聖都となった地で幸せに暮らしたのでした。
おわり
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