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卒業パーティーで婚約者に婚約破棄された子爵令嬢は貴族学校に通わされていた平民の替え玉だった。御指示がありませんのでお嬢様らしく振る舞いますね
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「ルカリア・バルーゼンっ! おまえとは婚約破棄させて貰うっ!」
ハブランサス王国の貴族学校でそう大声で私を指差されたのはバルーゼン子爵家のルカリアお嬢様の婚約者である伯爵令息のイロード・クロメンセ様でした。
ひぃえええっ!
どうしましょう?
こんなの想定外なんですけど。
イロード様に指差された私は内心の盛大に動揺しながらも、習ったポーカーフェイスを駆使して微笑を保ったのでした。
私が誰なのか、ですって?
私はバルーゼン子爵家の仕えるただのメイドです。
名前はアンナ。
家名なんて立派な物はありません。
だって、平民なんですから。
そう、平民なんです。
なのに、なのに。
ルカリアお嬢様の替え玉で貴族学校の卒業パーティーに出席しております。
顔もそれほど似ていないのに。
と言うか、ルカリアお嬢様とイロード様が婚約する前の初対面の顔合わせの15歳の時から、ずっと替え玉を担当してたりするんですねぇ~、これが。
つまりですね。
私は、貴族学校もルカリアお嬢様の替え玉として入学して、何食わぬ顔で2年間も通学し、とうとうバレずに本日、卒業を迎えて用意された貴族のドレスを着て、卒業パーティーに出席しているという訳です。
2年間、良くバレずに無事に済んだわ、私って偉い。
そう卒業パーティーで感慨深げに安堵してたところに、「これ」が始まった訳です。
ホント、どうしましょう。
婚約破棄されるなんて、こっちはまったく想定してませんって。
こういう時は、
「臨機応変に対応しろ」
って旦那様に言われてますから、やりましょう。
ここでルカリアお嬢様が言い出しそうな言葉は、
「あぁ~ら、ありがとうございますわ。婚約破棄していただけて。わたくしもアナタのようなつまらない男との婚約は内心、嫌でしたのよ。なのに、お父様が、どうしても、とおっしゃるから結びましたが、前回のわたくしの誕生日にもセンスのないつまらないプレゼントしか贈ってきませんでしたものね。というか、値段を調べさせましたけど、あのブローチ、200銀貨でしたわよ。騙されましたの? それとも本当にあんな物がこのわたくしに似合うと本気で思われましたの? ああ、それとも、もしやクロメンセ伯爵家は金銭的に問題がおありなのかしら? この卒業パーティーにもわたくしにドレスの一着も用意しなかったのですから」
私は一息でそう言い切りました。
そうなのです。
私がお仕えするルカリアお嬢様はお喋りで、こういう嫌味な性格なのです。
そして、私は平民ですけど、この2年間、ルカリアお嬢様の替え玉をやっていた事もあって、これくらいは貴族の令息相手にも言えるようになっていました。
バレたら処刑ですわよね?
平民が貴族に向かってこんな不敬な事を言ってるのですから?
「黙れ、黙れ、黙れっ! おまえとの婚約はおまえの瑕疵でーー」
「大人達が不在の卒業パーティーで婚約者に婚約破棄を言い渡すっ? 会場の皆様、どう思われますぅ? こんな事が許されると思いますか? こんな常識のない男が次期クロメンセ伯爵なのですのよっ? あり得ませんわっ!」
「黙れ、黙れっ!」
「そもそも、婚約者が居ながら別の令嬢をエスコートしてるだなんて何を考えておられますのっ? 確か男爵家の令嬢のクロエ様でしたわよね? 貴族学校でも恋人のようにイチャイチャされてましたけど? ですが、それは貴族学校の甘い思い出。卒業したら婚約者の私の許に戻ってくると思って黙認しておりましたが、まさかの浮気が本気になって卒業パーティーで婚約破棄ですよ、皆様? こんな浮気男がハブランサス王国の伯爵になるなんてどう思われます?」
と卒業生達を巻き込んで煽り始めた。
断っておきますが、私の性格ではありませんわよ。
ルカリアお嬢様がこういう性格なだけで。
「確かに滅茶苦茶ですわね」
「卒業パーティーで婚約破棄なんてあり得んからな」
「そもそも婚約破棄の時点でおかしいですわ。普通は婚約解消ですのに」
「大方、親の了承を得られてないのではないかしら?」
「それで強行して既成事実を作った訳か」
「浅ましいですわ」
と参加者が私に味方する中、
「婚約者を裏切るような男は、いずれに国も裏切りますわ。この謀反人っ!」
そう決め付けた私はビシッとイロード様を指差したのでした。
もう一度言いますが、私はこんな性格じゃありませんわよ。
ルカリアお嬢様が言いそうな事をチョイスしてるだけですから。
「だ、誰が、謀反人だっ!」
とイロード様がおっしゃられましたが、
「さっさとこのパーティーから出て行けっ!」
「そうですわ。浮気者にこのパーティーには相応しくありませんわっ!」
「浮気者がっ!」
「と言うか、私、あのお2人が校舎の陰でキスされてるの見ましたわよ」
「ああ、寝取った訳ね。男爵令嬢はこれだから」
「裏切り者っ!」
「あれが伯爵かよ、情けない」
周囲から罵詈雑言が飛び出し始めました。
イロード様とクロエ様のお2人はこの卒業パーティーでの婚約破棄がうまくいくと本気で思っていたらしく、その反応に青ざめ、そして泣きそうな顔をされてましたわ。
私はルカリアお嬢様らしく、
「婚約破棄、承りましたわ。ちゃんとお父様に報告しますわね。そちらの浮気が本気になって婚約破棄されたと。では、ごきげんよう。と言うか、さっさと退席なさいませ、この女の敵っ!」
カーテシーを決めて、そう言葉を投げ付けると、お2人は負け犬のように卒業パーティーの会場から逃げていき、残った私は、
「愚かな元婚約者が興を醒ましてしまい、申し訳ありませんでした。引き続き、卒業パーティーをお楽しみ下さい」
と皆さんに言って、卒業パーティーは再開されて私も最後まで居座ったのでした。
卒業パーティーからバルーゼンチ子爵邸に戻った私は旦那様とルカリアお嬢様に逐一本日あった事を報告した。
「相手の浮気での婚約破棄だなんて、よくやったわ、アンナっ!」
そうお喜ばれられたルカリアお嬢様に対して、旦那様は、
「やり過ぎだ、アンナ」
と頭痛を覚えられました。
ですよね、やっぱり?
因みに、ルカリアお嬢様が貴族学校に替え玉を使ってたのは、別に健康上の理由とか、引きこもりとか、そんなんじゃありません。
ただの面倒臭がりなだけですから。
本当、貴族様って楽が出来ていいですよね。
「あら、どうしてですの?」
と聞くルカリアお嬢様に、旦那様が、
「こっちは替え玉のアンナを貴族学校に送り込んでるのだぞ? そんな騒動を起こせば、さすがに全員の記憶にアンナの顔が残る。デビュタントで貴族学校に替え玉を送り込んでいたとバレたらと思うと」
「えっ、そうなの、お父様? 宰相様と取引して、許可が下りた、と聞いてましたけど?」
「宰相閣下だけだ。陛下や王家はまだなんだよ」
「そうなんですの?」
「ああ、ともかくデビュタントまで大人しくしてろ。アンナは領地に行って貰う。いいな?」
旦那様に話を振られて、
「えっ? そうなんですか?」
初耳だったので私はビックリしました。
私自身は王都出身で、運良く子爵家の御屋敷に雇われる事になったのですが。
「ああ、伯爵家との婚約破棄が成立して慰謝料が振り込まれるまでは替え玉の件がバレたら困るからな。馬車を用意する。明日には発って貰うからその準備をしておくように」
そう旦那様に命令されて、
「畏まりました」
私は納得して退室したのでした。
翌日、私は王都のバルーゼン子爵邸から領地に出発しました。
それも貴族馬車で。
「貴族馬車での移動なんて、さすがは旦那様。気が利いているわ。まあ、私の顔を外部に晒さない為だろうけど」
呑気な私は小旅行気分でしたが、それが拙かったのです。
貴族が平民を切り捨てるのは良くある事で、まさか、旦那様があれだけお仕えして、ルカリアお嬢様の替え玉まで務めた私を切り捨てるだなんて。
崖に作られた道を通る時に、窓から外を眺めながら、
「こんなところを通るの? 結構危険だと思うんだけど」
そう呟いた時には、ガタンッと馬車が傾き、
「ーーえっ? キャアアア」
そのまま馬車は私ごと崖の底へと転落したのでした。
◇◆◇
ハブランサス王国の貴族学校の卒業生達は王宮パーティーでデビュタントの日を迎えていた。
このデビュタントは国王陛下への拝謁も含まれており、ハブランサス王国の全貴族の令息と令嬢に課せられた義務で、余程の理由がない限り、出席しなければならない。
そんな訳で、出席者は本年度に貴族学校を卒業したばかりの貴族の令息令嬢なので全員が既に顔見知りだった。
その中に、替え玉を使ったルカリア・バルーゼン子爵令嬢が混ざってたのだから、控室から誰もが好奇な目で見ていたが、デビュタントが始まり、ダンスの間で国王陛下の前で貴族の令息や令嬢が挨拶を始める中、
「バルーゼン子爵家の長女ルカリアです。お見知りおきを、陛下」
ルカリアの番が来て、そうルカリアがカーテシーをして挨拶をした瞬間、参加者の全員がギョッとした。
貴族学校で見知ったルカリアではなかったからだ。
それは当然の事で、貴族学校に通学していたルカリアの方は替え玉のアンナだったからなのだが、替え玉の事情を知らない貴族令息の1人、と言うか、卒業パーティーでやらかして散々父親に怒られ、ルカリアに恨みすらあった元婚約者の伯爵令息のイロード・クロメンセが、
「陛下、発言をお許しください」
と口を開き、
「ん? 良かろう。何だ?」
「そちらに居るバルーゼン子爵令嬢のルカリア嬢は真っ赤な偽物ですっ! 元婚約者として自信を持って証言しますっ!」
と進言し、本日デビュタントを迎えた全員が同意するように頷いたので騒ぎとなった。
「どういう事だ? その者の親は前に出ろ」
玉座の国王陛下が不機嫌そうに声を掛け、バルーゼン子爵夫妻が青ざめながら保護者の集団の中から前に出て来て、
「実は・・・宰相閣下には事情を話したのですが」
しどろもどろに釈明し、埒が明かない、とばかりに国王陛下が宰相を睨み、
「宰相、おまえの口から報告しろっ!」
「はっ、実は馬車事故でルカリア嬢が死亡し、悲嘆にくれたバルーゼン子爵が遠縁の娘をルカリアとしてデビュタントさせたい、と打診してきて、娘を失ったばかりの父親に、そんな事は出来ない、とは強くは言えず、本日を迎えてしまいました」
と宰相がさらりと下位貴族のバルーゼン子爵を切り捨てた事から、
「ちょ、違うっ! 私が本物のルカリアよっ! 貴族学校に通ってた方が替え玉だったんだからっ!」
ドレスを纏ったルカリアが驚きながら発言したが、
「そこの娘っ! 誰の許可を得て、陛下に発言しているっ!」
国王陛下の隣に控える侍従長がそう一喝し、
「遠縁とは言っても平民らしいですからね。礼儀の方はさっぱりで・・・」
そう宰相が完全に切り捨てたので、国王陛下が不機嫌そうに、
「どうしてそんな娘が栄えあるハブランサス王国のデビュタントに混ざり込んでるっ? こんな事は前代未聞の不祥事だぞっ! さっさと平民を牢へ繋げっ! そこの入れ替えを企んだ子爵夫妻もだっ!」
「はっ」
「ちょ、違うわっ! 私は本当にルカリア・バルーゼンなんだからっ! 貴族学校を卒業して馬車の事故で死んだ方がアンナっていうメイドだったんだからっ!」
と喚きながらルカリアとバルーゼン子爵夫妻は連行されていき、騒ぎはあったもののこの年のデビュタントは恙無く終了したのだった。
デビュタントを騒がせた偽物の取り調べは当然、苛烈を極め、宰相が切り捨てた為に、子爵令嬢になろうとした替え玉平民として、本物のルカリア・バルーゼンは貴族ではなく、平民として縛り首にされたのだった。
替え玉を用意したバルーゼン子爵は取り潰しとなり、平民として夫妻揃って労役に出されたのだった。
◇◇◇
マヌケな替え玉平民の記事が紙面に躍る頃、アンナである私はハブランサス王国の王宮でメイドをやっていました。
実を言うと、あのデビュタントの日も。
どうして、そんな事になってるかと言えば・・・・・・
バルーゼン子爵には報告していませんでしたが、実は貴族学校に通学中に、私がルカリア・バルーゼンではない、と見抜いた令息が1人だけ居たからです。
それが宰相閣下の御令息のオレンド様でした。
最初は、本物ですわ、と言い続けたのですが、
「本当の事、教えてくれないと何か口が滑りそうだなぁ~」
と脅迫されて、仕方なく事情を説明すると、
「なんて馬鹿な事を。おまえ、殺されるぞ?」
と呆れられました。
「バレたら、でしょ?」
「上手くやり抜いても、バルーゼン子爵にだよ」
「まさかぁ~。バルーゼン子爵家は旦那様もルカリアお嬢様もいい人よ」
「いい人なんて貴族には居ないんだよ」
凄い偏見をオレンド様が言い、その後も色々と便宜を図っていただき無事、卒業出来・・・
例の崖の転落事故の時には、出発した馬車を追い掛けてきてくれたらしいのですけど、崖の転落阻止には間に合わず、それでも川に落ちた馬車の中から脱出した私を何とか救助してくれたのでした。
そして貴族馬車を崖に落とした馭者を殺人未遂で捕縛。
その後も、私と馭者の2人の死亡情報をバルーゼン子爵家に届けてくれたり、と色々と助けていただき・・・・・・
そして王宮のメイドの仕事を世話して貰い、デビュタントの日に私も王宮に居て、3人が逮捕されるのをメイドの1人として見ていたくらいでした。
オレンド様は性格が少し悪い御方です。
父親の宰相閣下に手を回して、私を罪人となって地下牢に閉じ込められてるルカリアお嬢様に食事を届けさせる係にするくらい。
そんな訳で、私は食事を運びに地下牢へと出向き、
「お食事です、お嬢様」
そう声を掛けて鉄格子の隙間から料理を差し入れると、ルカリアお嬢様が私の顔に気付き、
「ありが・・・アンナ? ど、どうして生きてるのっ? 死んだはずでしょっ!」
「死んだ、ではなくて、殺した、ではないんですか? ホント、信じられませんよ。あれだけ尽くしたのに崖から馬車ごと落とすだなんて。ああ、特別に教えてあげますが、もう全員知ってますよ。国王陛下も宰相閣下も貴族学校に通学していたのが替え玉の私だったって。なのに、みせしめとして、偽物の平民として縛り首にされるんですから、お嬢様は可哀想な御方ですわよねぇ~。可哀想で涙が出ちゃう」
悪い笑みを浮かべながら私はそう罪人のルカリアお嬢様を見下したのでした。
えっ、性格が悪い?
御冗談は止めて下さい。
あれだけ尽くしてたのに、先に裏切って崖から馬車ごと落として殺そうとしたのは、お嬢様達の方なんですから。
それを許すのがヒロインの宿命?
私は聖女じゃないんですよ。
ただの平民なんです。
許すなんて無理に決まってるでしょ。
「アンタねぇ。アンタの所為でこうなってるのよっ! 助けなさいよっ!」
「平民の私なんかに無理に決まってるじゃないですか。本当の事を喋り続ければいいと思いますよ。私は本物のルカリア・バルーゼンよ、って。そして頭のおかしな平民女として殺されてくださいまし。では失礼っ!」
と私がクスクス笑いでお別れを言うと、ルカリアお嬢様は絶望した顔をされたのでした。
その後、必死に、
「私は本物よ。替え玉のアンナは生きて王宮でメイドをやってるんだからっ!」
なんてルカリアお譲様は喚いていたそうですが、誰も取り合わず、平民扱いですので、平民の処刑方法の縛り首になられたのでした。
さすがにお嬢様の処刑までは見に行きませんでしたよ。
王宮のメイドって意外と忙しいですから。
後、意外や門を通過するのが大変で気軽に出られなくて。
そして、私は王宮のメイドをしながら、この春から文官となられたオレンド様に廊下で、
「なあ、いい加減、結婚してくれよ。オヤジが次男のオレにまで政略結婚をさせようとし始めてさ。ヤバイから」
「だから何度も言ってるでしょ。無理ですよ。オレンド様は貴族様。私は平民なんですから」
「それだけだよな、障害は? オレの事・・・好きなんだよな?」
「まあ、好きか嫌いかで言えば、割と好きですわよ」
「はあ? 割とって何だよ」
「だってオレンド様って性格が悪いし」
「アンナの性格も相当なもんだろうがよ」
仕事中に口説かれながら、満更でもなさげにイチャイチャしてたのでした。
オレンド様が、私の預かり知らぬところで勝手に私をとある男爵家の養女にして、指輪を用意して私にプロポーズするのは、その日から僅か10日後の事でした。
おわり
ハブランサス王国の貴族学校でそう大声で私を指差されたのはバルーゼン子爵家のルカリアお嬢様の婚約者である伯爵令息のイロード・クロメンセ様でした。
ひぃえええっ!
どうしましょう?
こんなの想定外なんですけど。
イロード様に指差された私は内心の盛大に動揺しながらも、習ったポーカーフェイスを駆使して微笑を保ったのでした。
私が誰なのか、ですって?
私はバルーゼン子爵家の仕えるただのメイドです。
名前はアンナ。
家名なんて立派な物はありません。
だって、平民なんですから。
そう、平民なんです。
なのに、なのに。
ルカリアお嬢様の替え玉で貴族学校の卒業パーティーに出席しております。
顔もそれほど似ていないのに。
と言うか、ルカリアお嬢様とイロード様が婚約する前の初対面の顔合わせの15歳の時から、ずっと替え玉を担当してたりするんですねぇ~、これが。
つまりですね。
私は、貴族学校もルカリアお嬢様の替え玉として入学して、何食わぬ顔で2年間も通学し、とうとうバレずに本日、卒業を迎えて用意された貴族のドレスを着て、卒業パーティーに出席しているという訳です。
2年間、良くバレずに無事に済んだわ、私って偉い。
そう卒業パーティーで感慨深げに安堵してたところに、「これ」が始まった訳です。
ホント、どうしましょう。
婚約破棄されるなんて、こっちはまったく想定してませんって。
こういう時は、
「臨機応変に対応しろ」
って旦那様に言われてますから、やりましょう。
ここでルカリアお嬢様が言い出しそうな言葉は、
「あぁ~ら、ありがとうございますわ。婚約破棄していただけて。わたくしもアナタのようなつまらない男との婚約は内心、嫌でしたのよ。なのに、お父様が、どうしても、とおっしゃるから結びましたが、前回のわたくしの誕生日にもセンスのないつまらないプレゼントしか贈ってきませんでしたものね。というか、値段を調べさせましたけど、あのブローチ、200銀貨でしたわよ。騙されましたの? それとも本当にあんな物がこのわたくしに似合うと本気で思われましたの? ああ、それとも、もしやクロメンセ伯爵家は金銭的に問題がおありなのかしら? この卒業パーティーにもわたくしにドレスの一着も用意しなかったのですから」
私は一息でそう言い切りました。
そうなのです。
私がお仕えするルカリアお嬢様はお喋りで、こういう嫌味な性格なのです。
そして、私は平民ですけど、この2年間、ルカリアお嬢様の替え玉をやっていた事もあって、これくらいは貴族の令息相手にも言えるようになっていました。
バレたら処刑ですわよね?
平民が貴族に向かってこんな不敬な事を言ってるのですから?
「黙れ、黙れ、黙れっ! おまえとの婚約はおまえの瑕疵でーー」
「大人達が不在の卒業パーティーで婚約者に婚約破棄を言い渡すっ? 会場の皆様、どう思われますぅ? こんな事が許されると思いますか? こんな常識のない男が次期クロメンセ伯爵なのですのよっ? あり得ませんわっ!」
「黙れ、黙れっ!」
「そもそも、婚約者が居ながら別の令嬢をエスコートしてるだなんて何を考えておられますのっ? 確か男爵家の令嬢のクロエ様でしたわよね? 貴族学校でも恋人のようにイチャイチャされてましたけど? ですが、それは貴族学校の甘い思い出。卒業したら婚約者の私の許に戻ってくると思って黙認しておりましたが、まさかの浮気が本気になって卒業パーティーで婚約破棄ですよ、皆様? こんな浮気男がハブランサス王国の伯爵になるなんてどう思われます?」
と卒業生達を巻き込んで煽り始めた。
断っておきますが、私の性格ではありませんわよ。
ルカリアお嬢様がこういう性格なだけで。
「確かに滅茶苦茶ですわね」
「卒業パーティーで婚約破棄なんてあり得んからな」
「そもそも婚約破棄の時点でおかしいですわ。普通は婚約解消ですのに」
「大方、親の了承を得られてないのではないかしら?」
「それで強行して既成事実を作った訳か」
「浅ましいですわ」
と参加者が私に味方する中、
「婚約者を裏切るような男は、いずれに国も裏切りますわ。この謀反人っ!」
そう決め付けた私はビシッとイロード様を指差したのでした。
もう一度言いますが、私はこんな性格じゃありませんわよ。
ルカリアお嬢様が言いそうな事をチョイスしてるだけですから。
「だ、誰が、謀反人だっ!」
とイロード様がおっしゃられましたが、
「さっさとこのパーティーから出て行けっ!」
「そうですわ。浮気者にこのパーティーには相応しくありませんわっ!」
「浮気者がっ!」
「と言うか、私、あのお2人が校舎の陰でキスされてるの見ましたわよ」
「ああ、寝取った訳ね。男爵令嬢はこれだから」
「裏切り者っ!」
「あれが伯爵かよ、情けない」
周囲から罵詈雑言が飛び出し始めました。
イロード様とクロエ様のお2人はこの卒業パーティーでの婚約破棄がうまくいくと本気で思っていたらしく、その反応に青ざめ、そして泣きそうな顔をされてましたわ。
私はルカリアお嬢様らしく、
「婚約破棄、承りましたわ。ちゃんとお父様に報告しますわね。そちらの浮気が本気になって婚約破棄されたと。では、ごきげんよう。と言うか、さっさと退席なさいませ、この女の敵っ!」
カーテシーを決めて、そう言葉を投げ付けると、お2人は負け犬のように卒業パーティーの会場から逃げていき、残った私は、
「愚かな元婚約者が興を醒ましてしまい、申し訳ありませんでした。引き続き、卒業パーティーをお楽しみ下さい」
と皆さんに言って、卒業パーティーは再開されて私も最後まで居座ったのでした。
卒業パーティーからバルーゼンチ子爵邸に戻った私は旦那様とルカリアお嬢様に逐一本日あった事を報告した。
「相手の浮気での婚約破棄だなんて、よくやったわ、アンナっ!」
そうお喜ばれられたルカリアお嬢様に対して、旦那様は、
「やり過ぎだ、アンナ」
と頭痛を覚えられました。
ですよね、やっぱり?
因みに、ルカリアお嬢様が貴族学校に替え玉を使ってたのは、別に健康上の理由とか、引きこもりとか、そんなんじゃありません。
ただの面倒臭がりなだけですから。
本当、貴族様って楽が出来ていいですよね。
「あら、どうしてですの?」
と聞くルカリアお嬢様に、旦那様が、
「こっちは替え玉のアンナを貴族学校に送り込んでるのだぞ? そんな騒動を起こせば、さすがに全員の記憶にアンナの顔が残る。デビュタントで貴族学校に替え玉を送り込んでいたとバレたらと思うと」
「えっ、そうなの、お父様? 宰相様と取引して、許可が下りた、と聞いてましたけど?」
「宰相閣下だけだ。陛下や王家はまだなんだよ」
「そうなんですの?」
「ああ、ともかくデビュタントまで大人しくしてろ。アンナは領地に行って貰う。いいな?」
旦那様に話を振られて、
「えっ? そうなんですか?」
初耳だったので私はビックリしました。
私自身は王都出身で、運良く子爵家の御屋敷に雇われる事になったのですが。
「ああ、伯爵家との婚約破棄が成立して慰謝料が振り込まれるまでは替え玉の件がバレたら困るからな。馬車を用意する。明日には発って貰うからその準備をしておくように」
そう旦那様に命令されて、
「畏まりました」
私は納得して退室したのでした。
翌日、私は王都のバルーゼン子爵邸から領地に出発しました。
それも貴族馬車で。
「貴族馬車での移動なんて、さすがは旦那様。気が利いているわ。まあ、私の顔を外部に晒さない為だろうけど」
呑気な私は小旅行気分でしたが、それが拙かったのです。
貴族が平民を切り捨てるのは良くある事で、まさか、旦那様があれだけお仕えして、ルカリアお嬢様の替え玉まで務めた私を切り捨てるだなんて。
崖に作られた道を通る時に、窓から外を眺めながら、
「こんなところを通るの? 結構危険だと思うんだけど」
そう呟いた時には、ガタンッと馬車が傾き、
「ーーえっ? キャアアア」
そのまま馬車は私ごと崖の底へと転落したのでした。
◇◆◇
ハブランサス王国の貴族学校の卒業生達は王宮パーティーでデビュタントの日を迎えていた。
このデビュタントは国王陛下への拝謁も含まれており、ハブランサス王国の全貴族の令息と令嬢に課せられた義務で、余程の理由がない限り、出席しなければならない。
そんな訳で、出席者は本年度に貴族学校を卒業したばかりの貴族の令息令嬢なので全員が既に顔見知りだった。
その中に、替え玉を使ったルカリア・バルーゼン子爵令嬢が混ざってたのだから、控室から誰もが好奇な目で見ていたが、デビュタントが始まり、ダンスの間で国王陛下の前で貴族の令息や令嬢が挨拶を始める中、
「バルーゼン子爵家の長女ルカリアです。お見知りおきを、陛下」
ルカリアの番が来て、そうルカリアがカーテシーをして挨拶をした瞬間、参加者の全員がギョッとした。
貴族学校で見知ったルカリアではなかったからだ。
それは当然の事で、貴族学校に通学していたルカリアの方は替え玉のアンナだったからなのだが、替え玉の事情を知らない貴族令息の1人、と言うか、卒業パーティーでやらかして散々父親に怒られ、ルカリアに恨みすらあった元婚約者の伯爵令息のイロード・クロメンセが、
「陛下、発言をお許しください」
と口を開き、
「ん? 良かろう。何だ?」
「そちらに居るバルーゼン子爵令嬢のルカリア嬢は真っ赤な偽物ですっ! 元婚約者として自信を持って証言しますっ!」
と進言し、本日デビュタントを迎えた全員が同意するように頷いたので騒ぎとなった。
「どういう事だ? その者の親は前に出ろ」
玉座の国王陛下が不機嫌そうに声を掛け、バルーゼン子爵夫妻が青ざめながら保護者の集団の中から前に出て来て、
「実は・・・宰相閣下には事情を話したのですが」
しどろもどろに釈明し、埒が明かない、とばかりに国王陛下が宰相を睨み、
「宰相、おまえの口から報告しろっ!」
「はっ、実は馬車事故でルカリア嬢が死亡し、悲嘆にくれたバルーゼン子爵が遠縁の娘をルカリアとしてデビュタントさせたい、と打診してきて、娘を失ったばかりの父親に、そんな事は出来ない、とは強くは言えず、本日を迎えてしまいました」
と宰相がさらりと下位貴族のバルーゼン子爵を切り捨てた事から、
「ちょ、違うっ! 私が本物のルカリアよっ! 貴族学校に通ってた方が替え玉だったんだからっ!」
ドレスを纏ったルカリアが驚きながら発言したが、
「そこの娘っ! 誰の許可を得て、陛下に発言しているっ!」
国王陛下の隣に控える侍従長がそう一喝し、
「遠縁とは言っても平民らしいですからね。礼儀の方はさっぱりで・・・」
そう宰相が完全に切り捨てたので、国王陛下が不機嫌そうに、
「どうしてそんな娘が栄えあるハブランサス王国のデビュタントに混ざり込んでるっ? こんな事は前代未聞の不祥事だぞっ! さっさと平民を牢へ繋げっ! そこの入れ替えを企んだ子爵夫妻もだっ!」
「はっ」
「ちょ、違うわっ! 私は本当にルカリア・バルーゼンなんだからっ! 貴族学校を卒業して馬車の事故で死んだ方がアンナっていうメイドだったんだからっ!」
と喚きながらルカリアとバルーゼン子爵夫妻は連行されていき、騒ぎはあったもののこの年のデビュタントは恙無く終了したのだった。
デビュタントを騒がせた偽物の取り調べは当然、苛烈を極め、宰相が切り捨てた為に、子爵令嬢になろうとした替え玉平民として、本物のルカリア・バルーゼンは貴族ではなく、平民として縛り首にされたのだった。
替え玉を用意したバルーゼン子爵は取り潰しとなり、平民として夫妻揃って労役に出されたのだった。
◇◇◇
マヌケな替え玉平民の記事が紙面に躍る頃、アンナである私はハブランサス王国の王宮でメイドをやっていました。
実を言うと、あのデビュタントの日も。
どうして、そんな事になってるかと言えば・・・・・・
バルーゼン子爵には報告していませんでしたが、実は貴族学校に通学中に、私がルカリア・バルーゼンではない、と見抜いた令息が1人だけ居たからです。
それが宰相閣下の御令息のオレンド様でした。
最初は、本物ですわ、と言い続けたのですが、
「本当の事、教えてくれないと何か口が滑りそうだなぁ~」
と脅迫されて、仕方なく事情を説明すると、
「なんて馬鹿な事を。おまえ、殺されるぞ?」
と呆れられました。
「バレたら、でしょ?」
「上手くやり抜いても、バルーゼン子爵にだよ」
「まさかぁ~。バルーゼン子爵家は旦那様もルカリアお嬢様もいい人よ」
「いい人なんて貴族には居ないんだよ」
凄い偏見をオレンド様が言い、その後も色々と便宜を図っていただき無事、卒業出来・・・
例の崖の転落事故の時には、出発した馬車を追い掛けてきてくれたらしいのですけど、崖の転落阻止には間に合わず、それでも川に落ちた馬車の中から脱出した私を何とか救助してくれたのでした。
そして貴族馬車を崖に落とした馭者を殺人未遂で捕縛。
その後も、私と馭者の2人の死亡情報をバルーゼン子爵家に届けてくれたり、と色々と助けていただき・・・・・・
そして王宮のメイドの仕事を世話して貰い、デビュタントの日に私も王宮に居て、3人が逮捕されるのをメイドの1人として見ていたくらいでした。
オレンド様は性格が少し悪い御方です。
父親の宰相閣下に手を回して、私を罪人となって地下牢に閉じ込められてるルカリアお嬢様に食事を届けさせる係にするくらい。
そんな訳で、私は食事を運びに地下牢へと出向き、
「お食事です、お嬢様」
そう声を掛けて鉄格子の隙間から料理を差し入れると、ルカリアお嬢様が私の顔に気付き、
「ありが・・・アンナ? ど、どうして生きてるのっ? 死んだはずでしょっ!」
「死んだ、ではなくて、殺した、ではないんですか? ホント、信じられませんよ。あれだけ尽くしたのに崖から馬車ごと落とすだなんて。ああ、特別に教えてあげますが、もう全員知ってますよ。国王陛下も宰相閣下も貴族学校に通学していたのが替え玉の私だったって。なのに、みせしめとして、偽物の平民として縛り首にされるんですから、お嬢様は可哀想な御方ですわよねぇ~。可哀想で涙が出ちゃう」
悪い笑みを浮かべながら私はそう罪人のルカリアお嬢様を見下したのでした。
えっ、性格が悪い?
御冗談は止めて下さい。
あれだけ尽くしてたのに、先に裏切って崖から馬車ごと落として殺そうとしたのは、お嬢様達の方なんですから。
それを許すのがヒロインの宿命?
私は聖女じゃないんですよ。
ただの平民なんです。
許すなんて無理に決まってるでしょ。
「アンタねぇ。アンタの所為でこうなってるのよっ! 助けなさいよっ!」
「平民の私なんかに無理に決まってるじゃないですか。本当の事を喋り続ければいいと思いますよ。私は本物のルカリア・バルーゼンよ、って。そして頭のおかしな平民女として殺されてくださいまし。では失礼っ!」
と私がクスクス笑いでお別れを言うと、ルカリアお嬢様は絶望した顔をされたのでした。
その後、必死に、
「私は本物よ。替え玉のアンナは生きて王宮でメイドをやってるんだからっ!」
なんてルカリアお譲様は喚いていたそうですが、誰も取り合わず、平民扱いですので、平民の処刑方法の縛り首になられたのでした。
さすがにお嬢様の処刑までは見に行きませんでしたよ。
王宮のメイドって意外と忙しいですから。
後、意外や門を通過するのが大変で気軽に出られなくて。
そして、私は王宮のメイドをしながら、この春から文官となられたオレンド様に廊下で、
「なあ、いい加減、結婚してくれよ。オヤジが次男のオレにまで政略結婚をさせようとし始めてさ。ヤバイから」
「だから何度も言ってるでしょ。無理ですよ。オレンド様は貴族様。私は平民なんですから」
「それだけだよな、障害は? オレの事・・・好きなんだよな?」
「まあ、好きか嫌いかで言えば、割と好きですわよ」
「はあ? 割とって何だよ」
「だってオレンド様って性格が悪いし」
「アンナの性格も相当なもんだろうがよ」
仕事中に口説かれながら、満更でもなさげにイチャイチャしてたのでした。
オレンド様が、私の預かり知らぬところで勝手に私をとある男爵家の養女にして、指輪を用意して私にプロポーズするのは、その日から僅か10日後の事でした。
おわり
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