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凡庸で取り柄のない令嬢は国母に相応しくないので婚約破棄ですか? 別に構いませんが呪われてる王子を隣で癒やしてた私を手放して大丈夫なんですか?
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「ミリア・ニサニオルっ! おまえはマリーゴールド王国の王太子であるこの私、オリオン・マリーゴールドの妻になるには凡庸過ぎるっ! 容姿も平凡っ! 勉学も平凡っ! 教養も平凡っ! お茶会の采配も平凡っ! ダンスも平凡っ! 執務も平凡っ! 外交での交渉も平凡っ! そんな女にマリーゴールド王国の未来の国母を任せても王国の繁栄が期待出来る訳がないっ! よってこの卒業パーティーで王太子の名の許におまえとの婚約破棄を宣言するっ!」
マリーゴールド王国の貴族学校の卒業パーティーで、大声でそう宣言したのは私こと、ミリア・ニサニオルの婚約者であるオリオン・マリーゴールド殿下でした。
確かにオリオン殿下は容姿端麗の上、能力も高スペック。
政治にも、外交にも、軍略にも、経済にも精通し、学生ながらマリーゴールド王国の執政として国王陛下に代わって国政を牛耳っておられ、正直、平均点の私が婚約者でいいのかなぁ~、とは内心思ってましたけども。
まさか、殿下の方から婚約破棄を言い出されるとは。
ってか、何も貴族学校の卒業パーティーで婚約破棄をしなくてもいいじゃないですか。
礼節も完璧なオリオン殿下がこんな暴挙に出るなんて、よっぽど平凡な私の事がお嫌いなのね。
そうしみじみ思った私は、
「ですが、殿下。私と殿下の婚約は・・・」
「おまえに言われなくても分かってるっ! 今は亡き祖父王が、我々が子供の頃に決めた婚約であろう事はっ! だが、おまえのような凡庸な娘が国母になったのでは我がマリーゴールド王国は衰退してしまうっ! 両陛下の許可も取ったっ! 我が国の為に婚約破棄を受け入れてくれっ!」
マリーゴールド王国の繁栄を願って、と強調されておられますが、だったら、せめて横にエスコートしてる公爵令嬢のレイナ・ローターキー様の腰に手を回すのは止めて欲しいですわ。
これではどう見ても、浮気が本気になって、婚約者をすげ替えるようにしか見えませんもの。
ってか、私が婚約者になったのって確か・・・幼少期に殿下が呪いで明日をも知れぬ命だったのが理由だったとお爺様や祖父王に伺ってましたが・・・
まあ、今更どうでもいいですわね。
殿下もこんなにお元気なのですから。
でも、1つだけ。
「あの、この場合の婚約破棄の瑕疵はどうなるのでしょうか? 正直、私の伯爵家は裕福ではなく・・・」
「ああ、私の浮気による有責で構わんっ! ちゃんと伯爵家に尉謝料も払ってやるっ!」
「ありがとうございます。それと殿下と婚約破棄となりますと、もうお嫁には行けませんので修道院に入りたいのですが、王国内を移動する許可をいただきたく・・・」
「よかろう。マリーゴールド王国内を好きに移動出来る命令書を後で届けさせよう」
と言われて、私は、
「ありがとうございます。では、マリーゴールド王国の繁栄と王太子殿の栄光を祈り、私は失礼させていただきます」
そうカーテシーをして、せっかくの卒業パーティーを退席したのでした。
だって、婚約破棄された後に残っても笑い物になるだけですから。
まあ、もう充分、卒業パーティーに参加されてる皆さんの笑い物になってましたけど。
◇
馬車での移動中、御付きのメイドと一緒に乗ってた訳ですけど、私は婚約破棄を言い渡されたのにまったく悲しくなくて涙が出なかった事が少しだけショックでした。
そうか。私、オリオン殿下の事、何とも思っていなかったんだぁ。
まあ、子供の頃から会う度に、もっとああしろ、こうしろ、って言われてましたからね。
それからようやく解放されると思うと、淑女らしからぬ口元のニヤつきが・・・
おっと、悲しい顔をしませんと。
王宮から派遣されてるメイドが同席してるんですから。
◇
卒業パーティーが催されていた貴族学校から出た私はニサニオル伯爵邸へと帰宅しました。
お父様が在宅していたので、婚約破棄されたと報告すると、
「なぁ~にぃ~、婚約破棄されただとぉ~っ! この役立たずがっ! どうして殿下の御心をしっかり掴んでおかなかったのだっ!」
と叱られました。
そうなのです。
私のお父様も上昇志向が高かったんですよねぇ~。
殿下のような実力はないのですが、祖父王とお爺様が結んだ私と殿下の婚姻を使って王家に食い込む野心だけは人一倍強くって。
亡くなった私のお母様はお父様のどこが良くて他国から嫁がれたのかしら?
本当に不思議だわ。
「婚約破棄は殿下の瑕疵で、殿下がちゃんと慰謝料を払ってくれると皆の前でお約束して下さいました」
と私が言うと、お父様の怒気も和らぎ、その隙を突いて私は、
「明日には殿下から修道院への移動の命令書が届くので荷造りを始めますね」
「待て。殿下に、修道院に行け、と言われたのか?」
「はい。王太子妃候補として王国が今進めてる政治や外交の機密を知ってる可能性があるとか言われて」
私はさらっと嘘を吐きました。
死んだお爺様ならともかく、お父様なんかに任せてたら、とんでもない家に嫁がされるのは目に見えてますからね。
高スペックのオリオン殿下からは凡庸とか言われてますけど、これくらいは私にだって出来ますのよ、無能なお父様が相手なら。
現に、お父様は、
「ふむ。確かにな」
と納得されてますし。
「では、お父様、失礼します」
私は退室して、自室で荷造りを始めたのでした。
◇
私をさっさと修道院へと送りたいのか、仕事の速いオリオン殿下は卒業パーティーが終わって王宮に戻ると同時に命令書を発行したらしく、その日の夜には移動許可が下りたのでした。
◇
そして翌朝、お父様が玄関前で見送る中、馬車の前で、
「お父様。では行って参りますね」
「ああ、元気で暮らせよ」
「修道院からお手紙をお書きしますね」
「別に要らんわ。手紙など寄越さなくてもいい」
これが私のお父様です。
今生の別れだというのに、この応対。
というか、どこの修道院に出向くのかも聞きもしない。
そこが、まあ、私のお父様のいいところなのですけど。
「では、行って参ります」
私は馬車に乗り込み、修道院へ向けて出発しました。
◇
こうして私は20日の旅路の末、隣国のガーベラ王国へと到着しました。
えっ? 修道院はどうしたのかって?
誰もマリーゴールド王国の修道院に行くとは言っておりませんわよ?
そもそも、死んだわたくしのお母様はガーベラ王国出身でしたから。
殿下から婚約破棄された事で王宮から派遣されてた者達は全員が王宮に引き揚げたので、今回の馬車の旅の使用人(馭者やメイド達)は全員、お母様と同じガーベラ王国出身者で固めてあります。
もうマリーゴールド王国に帰る事もありませんから全員、大喜びですわ。
そして、私は殿下直筆の移動命令書も、ニサニオル伯爵の馬車も使いませんでした。
殿下はともかく、あの公爵令嬢のレイナ・ローターキー様は陰険な性格ですからね。
わたくしを笑う為に生かしておくか、気に入らずに殺すか、は五分五分でしたから。
そんな訳で貴族馬車の方には影武者を乗せて、別の国へと脱出させていますわ。
わたくしの方は隊商の馬車の列に紛れて国境を難無く突破致しました。
それでは修道院に出向く前にお母様の実家に御挨拶でも行きましょうかね。
と思っていると、豪華な貴族馬車が待っており、その馬車から下りて来られたのはガーベラ王国の王太子のチェリオ・ガーベラ様でした。
「信じられん。諜報員の報告を聞いて、まさか、とは思いましたが、本当に来られたのですね、ミリア・ニサニオル殿。その商人風の恰好も可愛くお似合いですよ」
「チェリオ殿下は相変わらずお口がお上手ですわね。御挨拶が遅くなりました。お久しぶりです。国王陛下の誕生パーティー以来でしたか?」
「御無沙汰しております。それでどうしてこちらへ? 卒業パーティーで婚約破棄されて修道院へ入られると聞きましたが?」
「もうお耳に?」
「はい。隣国の王太子妃の交代情報でしたので」
そりゃそうですわよね。
「マリーゴールド王国の修道院よりもガーベラ王国の修道院に入ろうと思いまして。まあ、その前に母の祖国の観光を楽しむつもりですが」
「そうですか、では私がガーベラ王国の名所を案内しますよ」
と案内を買って出られて、辞退したのですけど断れ切れず、私はチェリオ殿下とガーベラ王国の観光を楽しんだのでした。
◇◆◇
卒業パーティーから40日が過ぎた頃。
マリーゴールド王国の王宮で朝を迎えた王太子オリオンは目覚めと共に全身の激痛に襲われたのだった。
「グガアアアアアアア」
との声で使用人がドアから入室し、
「如何されましたか?」
質問すると、激痛でベッドから起きられない王太子オリオンが、
「グガガ・・・全身が、全身が、宮廷医師を呼べ」
との事で、直ちに宮廷医師が呼ばれる事となった。
宮廷医師の診断は、
「これは呪いですな」
「グアアア・・・馬鹿を言え、そんな物がある訳が・・・」
「いえ、殿下は幼少期も同じ症状の呪いで苦しまれておられましたので間違いございません。それを先代の祖父王陛下が治療法を発見されて元気になられたのを私は昨日のように覚えております」
長年勤務する宮廷医師が断言するので、王太子オリオンは、
「アアア・・・その時はどうやって治療したのだ?」
「それが秘中の秘らしく、我々宮廷医師の誰にも教えていただけませんでした」
「グアアアアア・・・痛過ぎるっ! ともかく探せっ! 何としても治療法をっ!」
「はっ」
宮廷医師はそう言って退室したのだが、治療法を探す必要はまったくなかった。
国王夫妻が王太子オリオンの呪いの治療法を知っていたからだ。
王太子が呪いを発症した、と朝食時に報告を聞いた瞬間、国王陛下は、
「何だと? まだ王太子の呪いは治っていなかったのか?」
と呟きながら、
(父王が、けしてミリアを離すな、とおっしゃってたが婚約破棄させたのは誤りだったか?)
と自問した。
「はい。直ちに治療法を調査しますので、先代陛下の日記等々の文書の閲覧の許可をいただきたく――」
「必要ありませんわ。治療法は分かってますから。ですわよね、陛下?」
「ああ、先代陛下が発見した。元婚約者のニサニオル伯爵令嬢のミリアを王宮に呼び出せ」
「王太子妃候補だったミリア様ですか?」
「ああ、聖なる体質のあの娘が傍に居れば大丈夫なのだ。修道院から直ちに連れ戻せっ!」
と国王陛下は厳命したのだった。
通常ならばこれで万事解決なのだが・・・
マリーゴールド王国内にあるどの修道院にもミリアの姿はなかった。
「修道院にミリアが居ないだと? どうなってるのだ?」
国王陛下が騎士団に怒鳴る中、
「それが殿下発行の移動許可の命令書を使って北側国境からダンデライオン王国に出国した記憶がございます。その際の担当官の話では『ダンデライオン王国の修道院が一番厳しいと聞いておりますので』と言ったそうです」
「あの娘っ! 国外に出ていたのかっ! 婚約破棄された意趣返しのつもりか? ニサニオル伯爵を捕え、戻らねば父親を処刑すると国内外に通達せよっ!」
と国王陛下はそう命令を出したが、ミリアからの連絡は一切なかった。
その後もダンデライオン王国の修道院に何人も使者を送ったが、そもそもダンデライオン王国にミリアはおらず、総ての修道院に人を送っても発見する事はなかった。
そして悪戯に日数だけが過ぎていき・・・
激痛の呪い発症から300日が過ぎた頃。
容姿端麗だった王太子オリオンは、
「グアアアアアアアアアアアアア・・・・・・ミリア、 許してくれ・・・・・・戻ってきてくれ、ミリア、ミリア、ミリア・・・・・・」
王国最高の延命治療を受ける事300日間、激痛に耐えるも、食事はロクに喉を通らず、激痛で頭髪は真っ白になり、呪いを解く方法も発見出来ず、遂にはガリガリに痩せこけた骨と皮だけの姿で、ミリアの名前を呼びながら衰弱死したのだった。
マリーゴールド王国の希望の星であった優秀な王太子オリオンの死んだ当日には、新婚約者のレイナ・ローターキー公爵令嬢は、
「嫌です、王妃様。わたくしは死にたくはーーなっ、何をっ!」
「黙りなさいっ! おまえさえ、おまえさえ、オリオンにちょっかいを掛けなければ、私の大切な息子は死なずに済んだのよっ! おまえも一緒にオリオンと冥府へと旅立ちなさいっ!」
ミリアとオリオンの婚約破棄を許しておきながらその事を棚に上げて、激怒した王妃殿下のメイド達に身体や腕を掴まれて、開けられた口から毒の入った紅茶を無理矢理流し込まれたのだった。
そしてレイナの死は、オリオン殿下の死を悼んで愛を貫いた殉死、として発表されたのだった。
同日、マリーゴールド王国の王宮の処刑場では断頭台に固定されたミリアの父親のニサニオル伯爵が、
「助けて下さいっ! 陛下っ!」
命乞いをしていた。
対して、王妃と同じくミリアとオリオンの婚約破棄を認めた為に、マリーゴールド王国の希望の星である最愛の王太子を失った国王陛下が、自分の不始末を棚に上げて、ニサニオル伯爵にブチキレながら、
「黙れっ! どうして11ヶ月間経ってもおまえの娘は父親に便りの1つも寄越さないのだっ! 帰国せねば父親のおまえが死ぬと通知してあるのだぞっ? なのに帰国した形跡もまったくないっ! おまえはどういう教育を王太子妃候補だった娘に施してきたのだっ? それ以前に、どうして、父親のおまえが娘がどこの修道院に行ったのかも知らないのだっ? いや、そもそもどうして修道院に行く事自体を認めたっ? それでも実の父親かっ!」
と喚き散らしていた。
王太子オリオンが卒業パーティーで婚約破棄を突き付けた時点で、用済みとばかりに、王太子妃候補だったミリアに王宮から付けていたメイドや護衛全員を引き揚げさせた事が現在、ミリアの居場所が分からぬ最大の原因だというのに。
更に言えば、父王の今際の際の最後の言葉が、絶対にミリアを手放すな、であったのにその言葉を守らず息子可愛さに言われるがままに婚約破棄を認め、ミリアを手放したのが原因だというのに。
「いえ、修道院行きは殿下の命令だとーー」
「そんな事、オリオンからは命令してはいないっ! おまえの娘が言い出した事だっ! それを止めるのが親の務めであろうがっ! この役立たずがっ! ええぇい、もういいっ! やれっ!」
との国王陛下の合図で頭上に固定されてる刃を結ぶ縄が斬られ、
「ギャアアアアアア」
ニサニオル伯爵の首は落ちたのだった。
罪状は伯爵領での税以上の加税徴収の罪だが、その罪は国王が捏造した物だった。
そしてこの王太子オリオンの死を以て、マリーゴールド王国は衰退の一途を辿るのだった。
◇◇◇
卒業パーティーの婚約破棄から2年後。
わたくしは結婚式を挙げる事となった。
ガーベラ王国の王宮の礼拝堂で王太子のチェリオ様と。
ガーベラ王国を漫遊中に口説かれてしまって、その、いい感じになってしまいまして、使用人達も私が修道院に入るのは実は反対だったらしく、その後、すったもんだがありましたが、1日だけ修道院に入る、という事で落ち着いて、結局はガーベラ王国の国王陛下からも結婚の許可が下りてしまい、本日、こうなりました。
「綺麗ですよ、ミリア。そのウエディングドレスを着た姿も」
「ありがとうございます、チェリオ様。ですが、よろしいのですか? わたくしは凡庸ですけども?」
「どこが凡庸ですか? 聖女の血筋でありながら」
らしいですわね、何やらお母様の系譜が。
ガーベラ王国に来て初めて知りましたが。
マリーゴールド王国では元婚約者の呪いを無自覚に中和していたそうですし。
他にも何やら無自覚で周囲の潜在能力を高めてたらしくて。
元婚約者が有能だったのも、もしかしたら・・・
「らしいですが、わたくしにはどう凄いのかイマイチ分かりませんわ」
「無知なマリーゴールド王国で苦労したのですね、ミリアは。我がガーベラ王国はミリアを大切に扱いますよ」
そう言ったチェリオ様がチュッと私にキスされ、
「もう、チェリオ様は・・・まだ式の前ですのに」
窘めながらも私は頬を染めたのでした。
こうして私はチェリオ様と結婚して、前の婚約者とは違い、本当に大切にされて幸せに暮らしたのでした。
そうそう。
何故かチェリオ様との結婚直後にマリーゴールド王国が攻めてきましたが、侵攻の大義名分がない上にオリオン殿下の死去で士気も低く(殿下を亡くされてから陛下が錯乱してるとの噂もありますし)、オリオン殿下が抜擢した優秀な軍人も総て降格させていたので、ガーベラ王国の兵にボロ負けして、マリーゴールド王国の領地の3分の2をガーベラ王国に割譲して下さったので、本当に幸せに暮らしましたわ。
おわり
マリーゴールド王国の貴族学校の卒業パーティーで、大声でそう宣言したのは私こと、ミリア・ニサニオルの婚約者であるオリオン・マリーゴールド殿下でした。
確かにオリオン殿下は容姿端麗の上、能力も高スペック。
政治にも、外交にも、軍略にも、経済にも精通し、学生ながらマリーゴールド王国の執政として国王陛下に代わって国政を牛耳っておられ、正直、平均点の私が婚約者でいいのかなぁ~、とは内心思ってましたけども。
まさか、殿下の方から婚約破棄を言い出されるとは。
ってか、何も貴族学校の卒業パーティーで婚約破棄をしなくてもいいじゃないですか。
礼節も完璧なオリオン殿下がこんな暴挙に出るなんて、よっぽど平凡な私の事がお嫌いなのね。
そうしみじみ思った私は、
「ですが、殿下。私と殿下の婚約は・・・」
「おまえに言われなくても分かってるっ! 今は亡き祖父王が、我々が子供の頃に決めた婚約であろう事はっ! だが、おまえのような凡庸な娘が国母になったのでは我がマリーゴールド王国は衰退してしまうっ! 両陛下の許可も取ったっ! 我が国の為に婚約破棄を受け入れてくれっ!」
マリーゴールド王国の繁栄を願って、と強調されておられますが、だったら、せめて横にエスコートしてる公爵令嬢のレイナ・ローターキー様の腰に手を回すのは止めて欲しいですわ。
これではどう見ても、浮気が本気になって、婚約者をすげ替えるようにしか見えませんもの。
ってか、私が婚約者になったのって確か・・・幼少期に殿下が呪いで明日をも知れぬ命だったのが理由だったとお爺様や祖父王に伺ってましたが・・・
まあ、今更どうでもいいですわね。
殿下もこんなにお元気なのですから。
でも、1つだけ。
「あの、この場合の婚約破棄の瑕疵はどうなるのでしょうか? 正直、私の伯爵家は裕福ではなく・・・」
「ああ、私の浮気による有責で構わんっ! ちゃんと伯爵家に尉謝料も払ってやるっ!」
「ありがとうございます。それと殿下と婚約破棄となりますと、もうお嫁には行けませんので修道院に入りたいのですが、王国内を移動する許可をいただきたく・・・」
「よかろう。マリーゴールド王国内を好きに移動出来る命令書を後で届けさせよう」
と言われて、私は、
「ありがとうございます。では、マリーゴールド王国の繁栄と王太子殿の栄光を祈り、私は失礼させていただきます」
そうカーテシーをして、せっかくの卒業パーティーを退席したのでした。
だって、婚約破棄された後に残っても笑い物になるだけですから。
まあ、もう充分、卒業パーティーに参加されてる皆さんの笑い物になってましたけど。
◇
馬車での移動中、御付きのメイドと一緒に乗ってた訳ですけど、私は婚約破棄を言い渡されたのにまったく悲しくなくて涙が出なかった事が少しだけショックでした。
そうか。私、オリオン殿下の事、何とも思っていなかったんだぁ。
まあ、子供の頃から会う度に、もっとああしろ、こうしろ、って言われてましたからね。
それからようやく解放されると思うと、淑女らしからぬ口元のニヤつきが・・・
おっと、悲しい顔をしませんと。
王宮から派遣されてるメイドが同席してるんですから。
◇
卒業パーティーが催されていた貴族学校から出た私はニサニオル伯爵邸へと帰宅しました。
お父様が在宅していたので、婚約破棄されたと報告すると、
「なぁ~にぃ~、婚約破棄されただとぉ~っ! この役立たずがっ! どうして殿下の御心をしっかり掴んでおかなかったのだっ!」
と叱られました。
そうなのです。
私のお父様も上昇志向が高かったんですよねぇ~。
殿下のような実力はないのですが、祖父王とお爺様が結んだ私と殿下の婚姻を使って王家に食い込む野心だけは人一倍強くって。
亡くなった私のお母様はお父様のどこが良くて他国から嫁がれたのかしら?
本当に不思議だわ。
「婚約破棄は殿下の瑕疵で、殿下がちゃんと慰謝料を払ってくれると皆の前でお約束して下さいました」
と私が言うと、お父様の怒気も和らぎ、その隙を突いて私は、
「明日には殿下から修道院への移動の命令書が届くので荷造りを始めますね」
「待て。殿下に、修道院に行け、と言われたのか?」
「はい。王太子妃候補として王国が今進めてる政治や外交の機密を知ってる可能性があるとか言われて」
私はさらっと嘘を吐きました。
死んだお爺様ならともかく、お父様なんかに任せてたら、とんでもない家に嫁がされるのは目に見えてますからね。
高スペックのオリオン殿下からは凡庸とか言われてますけど、これくらいは私にだって出来ますのよ、無能なお父様が相手なら。
現に、お父様は、
「ふむ。確かにな」
と納得されてますし。
「では、お父様、失礼します」
私は退室して、自室で荷造りを始めたのでした。
◇
私をさっさと修道院へと送りたいのか、仕事の速いオリオン殿下は卒業パーティーが終わって王宮に戻ると同時に命令書を発行したらしく、その日の夜には移動許可が下りたのでした。
◇
そして翌朝、お父様が玄関前で見送る中、馬車の前で、
「お父様。では行って参りますね」
「ああ、元気で暮らせよ」
「修道院からお手紙をお書きしますね」
「別に要らんわ。手紙など寄越さなくてもいい」
これが私のお父様です。
今生の別れだというのに、この応対。
というか、どこの修道院に出向くのかも聞きもしない。
そこが、まあ、私のお父様のいいところなのですけど。
「では、行って参ります」
私は馬車に乗り込み、修道院へ向けて出発しました。
◇
こうして私は20日の旅路の末、隣国のガーベラ王国へと到着しました。
えっ? 修道院はどうしたのかって?
誰もマリーゴールド王国の修道院に行くとは言っておりませんわよ?
そもそも、死んだわたくしのお母様はガーベラ王国出身でしたから。
殿下から婚約破棄された事で王宮から派遣されてた者達は全員が王宮に引き揚げたので、今回の馬車の旅の使用人(馭者やメイド達)は全員、お母様と同じガーベラ王国出身者で固めてあります。
もうマリーゴールド王国に帰る事もありませんから全員、大喜びですわ。
そして、私は殿下直筆の移動命令書も、ニサニオル伯爵の馬車も使いませんでした。
殿下はともかく、あの公爵令嬢のレイナ・ローターキー様は陰険な性格ですからね。
わたくしを笑う為に生かしておくか、気に入らずに殺すか、は五分五分でしたから。
そんな訳で貴族馬車の方には影武者を乗せて、別の国へと脱出させていますわ。
わたくしの方は隊商の馬車の列に紛れて国境を難無く突破致しました。
それでは修道院に出向く前にお母様の実家に御挨拶でも行きましょうかね。
と思っていると、豪華な貴族馬車が待っており、その馬車から下りて来られたのはガーベラ王国の王太子のチェリオ・ガーベラ様でした。
「信じられん。諜報員の報告を聞いて、まさか、とは思いましたが、本当に来られたのですね、ミリア・ニサニオル殿。その商人風の恰好も可愛くお似合いですよ」
「チェリオ殿下は相変わらずお口がお上手ですわね。御挨拶が遅くなりました。お久しぶりです。国王陛下の誕生パーティー以来でしたか?」
「御無沙汰しております。それでどうしてこちらへ? 卒業パーティーで婚約破棄されて修道院へ入られると聞きましたが?」
「もうお耳に?」
「はい。隣国の王太子妃の交代情報でしたので」
そりゃそうですわよね。
「マリーゴールド王国の修道院よりもガーベラ王国の修道院に入ろうと思いまして。まあ、その前に母の祖国の観光を楽しむつもりですが」
「そうですか、では私がガーベラ王国の名所を案内しますよ」
と案内を買って出られて、辞退したのですけど断れ切れず、私はチェリオ殿下とガーベラ王国の観光を楽しんだのでした。
◇◆◇
卒業パーティーから40日が過ぎた頃。
マリーゴールド王国の王宮で朝を迎えた王太子オリオンは目覚めと共に全身の激痛に襲われたのだった。
「グガアアアアアアア」
との声で使用人がドアから入室し、
「如何されましたか?」
質問すると、激痛でベッドから起きられない王太子オリオンが、
「グガガ・・・全身が、全身が、宮廷医師を呼べ」
との事で、直ちに宮廷医師が呼ばれる事となった。
宮廷医師の診断は、
「これは呪いですな」
「グアアア・・・馬鹿を言え、そんな物がある訳が・・・」
「いえ、殿下は幼少期も同じ症状の呪いで苦しまれておられましたので間違いございません。それを先代の祖父王陛下が治療法を発見されて元気になられたのを私は昨日のように覚えております」
長年勤務する宮廷医師が断言するので、王太子オリオンは、
「アアア・・・その時はどうやって治療したのだ?」
「それが秘中の秘らしく、我々宮廷医師の誰にも教えていただけませんでした」
「グアアアアア・・・痛過ぎるっ! ともかく探せっ! 何としても治療法をっ!」
「はっ」
宮廷医師はそう言って退室したのだが、治療法を探す必要はまったくなかった。
国王夫妻が王太子オリオンの呪いの治療法を知っていたからだ。
王太子が呪いを発症した、と朝食時に報告を聞いた瞬間、国王陛下は、
「何だと? まだ王太子の呪いは治っていなかったのか?」
と呟きながら、
(父王が、けしてミリアを離すな、とおっしゃってたが婚約破棄させたのは誤りだったか?)
と自問した。
「はい。直ちに治療法を調査しますので、先代陛下の日記等々の文書の閲覧の許可をいただきたく――」
「必要ありませんわ。治療法は分かってますから。ですわよね、陛下?」
「ああ、先代陛下が発見した。元婚約者のニサニオル伯爵令嬢のミリアを王宮に呼び出せ」
「王太子妃候補だったミリア様ですか?」
「ああ、聖なる体質のあの娘が傍に居れば大丈夫なのだ。修道院から直ちに連れ戻せっ!」
と国王陛下は厳命したのだった。
通常ならばこれで万事解決なのだが・・・
マリーゴールド王国内にあるどの修道院にもミリアの姿はなかった。
「修道院にミリアが居ないだと? どうなってるのだ?」
国王陛下が騎士団に怒鳴る中、
「それが殿下発行の移動許可の命令書を使って北側国境からダンデライオン王国に出国した記憶がございます。その際の担当官の話では『ダンデライオン王国の修道院が一番厳しいと聞いておりますので』と言ったそうです」
「あの娘っ! 国外に出ていたのかっ! 婚約破棄された意趣返しのつもりか? ニサニオル伯爵を捕え、戻らねば父親を処刑すると国内外に通達せよっ!」
と国王陛下はそう命令を出したが、ミリアからの連絡は一切なかった。
その後もダンデライオン王国の修道院に何人も使者を送ったが、そもそもダンデライオン王国にミリアはおらず、総ての修道院に人を送っても発見する事はなかった。
そして悪戯に日数だけが過ぎていき・・・
激痛の呪い発症から300日が過ぎた頃。
容姿端麗だった王太子オリオンは、
「グアアアアアアアアアアアアア・・・・・・ミリア、 許してくれ・・・・・・戻ってきてくれ、ミリア、ミリア、ミリア・・・・・・」
王国最高の延命治療を受ける事300日間、激痛に耐えるも、食事はロクに喉を通らず、激痛で頭髪は真っ白になり、呪いを解く方法も発見出来ず、遂にはガリガリに痩せこけた骨と皮だけの姿で、ミリアの名前を呼びながら衰弱死したのだった。
マリーゴールド王国の希望の星であった優秀な王太子オリオンの死んだ当日には、新婚約者のレイナ・ローターキー公爵令嬢は、
「嫌です、王妃様。わたくしは死にたくはーーなっ、何をっ!」
「黙りなさいっ! おまえさえ、おまえさえ、オリオンにちょっかいを掛けなければ、私の大切な息子は死なずに済んだのよっ! おまえも一緒にオリオンと冥府へと旅立ちなさいっ!」
ミリアとオリオンの婚約破棄を許しておきながらその事を棚に上げて、激怒した王妃殿下のメイド達に身体や腕を掴まれて、開けられた口から毒の入った紅茶を無理矢理流し込まれたのだった。
そしてレイナの死は、オリオン殿下の死を悼んで愛を貫いた殉死、として発表されたのだった。
同日、マリーゴールド王国の王宮の処刑場では断頭台に固定されたミリアの父親のニサニオル伯爵が、
「助けて下さいっ! 陛下っ!」
命乞いをしていた。
対して、王妃と同じくミリアとオリオンの婚約破棄を認めた為に、マリーゴールド王国の希望の星である最愛の王太子を失った国王陛下が、自分の不始末を棚に上げて、ニサニオル伯爵にブチキレながら、
「黙れっ! どうして11ヶ月間経ってもおまえの娘は父親に便りの1つも寄越さないのだっ! 帰国せねば父親のおまえが死ぬと通知してあるのだぞっ? なのに帰国した形跡もまったくないっ! おまえはどういう教育を王太子妃候補だった娘に施してきたのだっ? それ以前に、どうして、父親のおまえが娘がどこの修道院に行ったのかも知らないのだっ? いや、そもそもどうして修道院に行く事自体を認めたっ? それでも実の父親かっ!」
と喚き散らしていた。
王太子オリオンが卒業パーティーで婚約破棄を突き付けた時点で、用済みとばかりに、王太子妃候補だったミリアに王宮から付けていたメイドや護衛全員を引き揚げさせた事が現在、ミリアの居場所が分からぬ最大の原因だというのに。
更に言えば、父王の今際の際の最後の言葉が、絶対にミリアを手放すな、であったのにその言葉を守らず息子可愛さに言われるがままに婚約破棄を認め、ミリアを手放したのが原因だというのに。
「いえ、修道院行きは殿下の命令だとーー」
「そんな事、オリオンからは命令してはいないっ! おまえの娘が言い出した事だっ! それを止めるのが親の務めであろうがっ! この役立たずがっ! ええぇい、もういいっ! やれっ!」
との国王陛下の合図で頭上に固定されてる刃を結ぶ縄が斬られ、
「ギャアアアアアア」
ニサニオル伯爵の首は落ちたのだった。
罪状は伯爵領での税以上の加税徴収の罪だが、その罪は国王が捏造した物だった。
そしてこの王太子オリオンの死を以て、マリーゴールド王国は衰退の一途を辿るのだった。
◇◇◇
卒業パーティーの婚約破棄から2年後。
わたくしは結婚式を挙げる事となった。
ガーベラ王国の王宮の礼拝堂で王太子のチェリオ様と。
ガーベラ王国を漫遊中に口説かれてしまって、その、いい感じになってしまいまして、使用人達も私が修道院に入るのは実は反対だったらしく、その後、すったもんだがありましたが、1日だけ修道院に入る、という事で落ち着いて、結局はガーベラ王国の国王陛下からも結婚の許可が下りてしまい、本日、こうなりました。
「綺麗ですよ、ミリア。そのウエディングドレスを着た姿も」
「ありがとうございます、チェリオ様。ですが、よろしいのですか? わたくしは凡庸ですけども?」
「どこが凡庸ですか? 聖女の血筋でありながら」
らしいですわね、何やらお母様の系譜が。
ガーベラ王国に来て初めて知りましたが。
マリーゴールド王国では元婚約者の呪いを無自覚に中和していたそうですし。
他にも何やら無自覚で周囲の潜在能力を高めてたらしくて。
元婚約者が有能だったのも、もしかしたら・・・
「らしいですが、わたくしにはどう凄いのかイマイチ分かりませんわ」
「無知なマリーゴールド王国で苦労したのですね、ミリアは。我がガーベラ王国はミリアを大切に扱いますよ」
そう言ったチェリオ様がチュッと私にキスされ、
「もう、チェリオ様は・・・まだ式の前ですのに」
窘めながらも私は頬を染めたのでした。
こうして私はチェリオ様と結婚して、前の婚約者とは違い、本当に大切にされて幸せに暮らしたのでした。
そうそう。
何故かチェリオ様との結婚直後にマリーゴールド王国が攻めてきましたが、侵攻の大義名分がない上にオリオン殿下の死去で士気も低く(殿下を亡くされてから陛下が錯乱してるとの噂もありますし)、オリオン殿下が抜擢した優秀な軍人も総て降格させていたので、ガーベラ王国の兵にボロ負けして、マリーゴールド王国の領地の3分の2をガーベラ王国に割譲して下さったので、本当に幸せに暮らしましたわ。
おわり
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