ブルーナイトディスティニー

竹井ゴールド

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本編

詫びバトル1と残念なお知らせ

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 柚子太は弐賀邸の執務室で弐買桂敏と二人っきりで、

「事情は絵梨から聞いた。結果論としては囮となり絵梨を危険から守った訳だが・・・命令違反とはな。どうして戻らなかった?」

「速攻の方が良いと判断し・・・」

「で、『露図の息子程度も御せない』と他の者達から絵梨は軽く見られる訳だ」

「その点については大変申し訳なく・・・」

「『なら私も』と更なる造反が続いた場合、どう責任を取るつもりだ」

「無論、ソイツを潰して御覧に入れます」

「それでは命令違反を犯した露図の息子が特別扱いになるではないか。絵梨が特別扱いすれば『婿候補の噂』が立つ可能性もあるな。まさか、それが狙いか?」

「いえいえ、そんな大それた事は。そもそも弐賀とは家格が違い過ぎてますし」

「・・・徐瀬芙の娘と結婚するのか?」

「候補の一人ですが、どっちの家名を名乗るかで平行線でして」

「分かった。私から徐瀬芙にーー」

「勘弁して下さい。嫌われてしまいますよ」

「絵梨に恥を掻かせておいて自分だけは無傷でいたい、か」

「ですから今回は増援の可能性を加味して命令を無視してまで早めの決着を――」

「可能性だよな?」

「エリ姫が死ぬよりはマシです」

「・・・想定された危険とは?」

「人型ロボット複数の増援です。最悪の場合、パワードスーツ、またはエアバイクを使用」

「その状態の敵と遭遇した事は?」

「まだありません。ですが、戦術ランクSは未知の領域ですので時間を掛けるのは得策ではないと愚考致しました」

「ふむ。なるほどな。それで潰れた絵梨のメンツはどう保つつもりだ?」

「何をしろと」

 その後も延々と弐賀財閥総帥の桂敏と交渉をする破目になった。

 絵梨とエッチイ事がある訳でもない。

 これが絵梨の言う「おしおきタイム」だった。

 何せ、「柚子太は危険」、それが弐賀財閥の柚子太の認識なのだから。

 「危険」と言っても貞操での意味でだが。

 柚子太の周囲では偶発的な事象により若い娘の密着や卑猥な事が頻発する事が財閥でも確認されているので。

 だから桂敏が直接顔を出していた。

 絵梨の直接面会は危険なので。

 との経緯から柚子太は何の因果か日曜日の夜に、譲歩を引き出すべく桂敏と必死に交渉しており、どうにか今回は厳重注意で済んだのだが無論、罰則はあり、










 柚子太:本日はエリ姫の指示に従わずに皆様を窮地に立たせてしまい誠に申し訳ございませんでした。

 柚子太:今後は二度とそのような事をしないと誓わせていただきます。

 柚子太:皆様に多大なご迷惑をお掛けしたお詫びにプロジェクト参加の皆様の強化に努めさせていただきます。

 レイ:誰なの?

 レイ:今、先輩のスマホを使ってる人?

 柚子太:本人だよ。

 柚子太:エリ姫の父君に20分も今、指導を受けてさ~。

 柚子太:見える形でプロジェクトに貢献する事になったんだよ。

 レイ:先輩が協力してくれるの?

 柚子太:1回だけな。

 イバウ:なら協力して貰おうかしら。

 イバウ:自宅が巻き込まれるのよね、今夜。

 灰かぶり:私も。

 柚子太:誰?

 灰かぶり:蛇津よ。

 柚子太:びっくりした。誰かと思ったよ。

 1000:私もお願いするわ。

 凛:私も。

 凛:NEタンクがもっと欲しいから。

 柚子太:了解。

 柚子太:時間帯を教えて。










 エリ姫のプロジェクト参加は弐賀絵梨、府井美葉、音糸知穂、四重仁葉里、馬音佐英夢、利々場千、城路那須羽、露図柚子太の初期メンバー8名に加えて、途中参加の緋位多怜、蛇津九羽、手離イバウ、礼智瑠夏、眞明凛の5名を加えた13名である(プロジェクトに参加していた芹井兎院は戦術ランクSのブルーフィールドでの戦闘を拒否して脱退扱い)。

 更なる拡大を目指す予定だが、まずはプロジェクト参加者の戦力強化だ。





 との事情も加味して、命令違反で反省中の柚子太は戦術ランクSをクリアした夜に格下のブルーフィールドで奮闘を続ける事となった。





 ◇





 まずは手離イバウに呼ばれて戦術ランクCだ。

 このイバウは先程の戦術ランクSのブルーフィールドの際、2連装レイカノン砲の砲手だった関係でMVPと殲滅型3機撃破ボーナスを得ている。ついでとばかりに一つ星の階級も。

 なので実は戦術ランクCのブルーフィールドも一人で余裕だったのだが、

「えっ、オレとのイチャイチャエアバイクデートがお望みだったの?」

「どういう解釈よ。一人だと乗るのが怖いから後部席に一緒に乗ってって言ってるだけでしょ」

「高いところが苦手って――女の子だね~」

(本当にそんな理由で呼んだのか、このオレを? マジで?)

「悪い?」

「いいや。可愛いって思っただけさ。あれ、でも冬季のオリンピック選手なら雪山でリフトに乗るよね?」

「あれに乗るのが嫌でクロスカントリースキーの選手をしてるのよ。リフトを乗せられた時はテンションが下がってタイムが悪いんだけどね」

「大変なんだね。それじゃあ乗りますか。たっぷりと特訓に付き合ってあげるよ。おっ、何か今の言葉の響き、エロかったかも」

「あのね~」

 イバウが出したエアバイクに乗ってイバウが運転席に跨る中、柚子太も後部座席に乗った。

「変なところに触らないでよ」

「あれ、知らない? バトルスーツ越しだと感触がないって」

「そうなの?」

「ほら」

 柚子太は堂々とイバウの胸に触れたがバトルスーツの強度が固くて歪む事はなく、手にも全く感触が伝わらなかった。

「あら、ホント――でも、だからって気安く触らないでよね。ったく」

「これは失礼。このバトルスーツ、飛行士用じゃないよね?」

 飛行士用はパラシュート付きとプロジェクト情報で報告されている。

「ええ、まだ持ってないの。だから落ちた時はフォローよろしくね」

「了解」

 こうして柚子太も一緒に乗ったが、上空を飛行してもイバウの反応は、

「あれ、怖くない。どうして?」

「ナノマシンが作用してるんじゃないの。適当に言っただけで分からないけど」

「そうなんだ~。だったら――アナタを呼ぶ必要もなかったわね」

「呼んでおいて、それ酷くない?」

 呆れつつも、

「どうせなら検証しようか」

「検証? どういう?」

「パワードスーツの搭乗時間が判定みたいだったからさ。エアバイクに搭乗してクリアした時の選択アイテムとかの」

「いいわよ」

「まずは10分後の支援物資ボックスね。手離さんが取っていいから何が出たのか教えてね」

「支援物資ボックスが出るまでの時間は何をしてるの?」

「普通に攻略・・・と言いたいところだけど戦術ランクSの後にCなんてやる気がでないよね~。あれ、そう言えば手離さんは戦術ランクCでエクセレントを出した事は?」

「ないけど」

「じゃあ狙う、エクセレントクリア?」

「狙えるの?」

「戦術ランクCは50分以上あるからね。余裕だと思うよ。他のナノマシン戦闘員が邪魔しなければ。まあ、LV24一人だから大丈夫でしょ」

 そう言いながら柚子太は別の事を気にしていた。

 というのも、レーダーで探すも、

(やはり情報送信装置がないな? もしかしてタワー基地を潰したからか? それって次のフェーズに進んだって事だよな。叛逆ロボット軍団が劣勢を覆す為に何らかのアクションを起こすのは眼に見えてる。ヤダヤダ)

 こうして戦術ランクCを攻略していき、エアバイクに乗りながら黒色のポストに扮した支援物資ボックスを触れたイバウは、

「えっ、エアバイク専用の強化装甲が出たわよ」

「エアバイク判定で支援アイテムが出た訳か。どうなってるんだか」

「パターンがあるの?」

「さあ。でも必要なモノが結構出るからね、支援物資ボックスって」

「ふ~ん」

 その後も何の山場もないかと思いきや、ビル群の隙間の幹線道路を5階の高さで飛行していたら幹線道路で夜間工事中のクレーン車が出現して、エアバイクとドゴンッと激突した。

 その衝撃で、

「えっ? キャアア――」

 エアバイクに対応していないバトルスーツのイバウだけが投げ出されて、

「嘘だろ」

 柚子太は回転中のエアバイクの運転席に飛び移ってハンドルを握ってエアバイクを加速させ、

「――アアアアアア」

 落下してるイバウに地上すれすれで追い付いて、お姫様だっこして救出したのだった。

 さすがに肝を冷やした柚子太が、

「ふ~、驚かせてくれるぜ」

「ありがと、露図くん」

「だけど、手離さん。その、残念がお知らせがあるんだけど」

「何? エアバイクが壊れたの?」

「いや、壊れたのはバトルスーツの方で――」

 ヘルメットのカバー越しにイバウの身体に視線を向ければ、耐久値30%以下のビリビリ状態になっていた。

 胸や下腹部や太股が半分くらい見えている。クオーターなのでナイスバディーの白肌とともに大事なところがモロに。

「キャアアアア」

 イバウが両手で慌てて胸を隠す中、柚子太はと言えば、

(ヤッバ~。無意識で【ブラスト】モードを使ってオレのスペシャルナノマシンの効果で手離さんのバトルスーツが破れたよな、今? エアバイクでも発動するんだ~。一つ、検証する手間が省けたな――じゃない。バレたら絶対に怒られるだろ、これ。すっとぼけよう。ってか、味方にもダメージがあるんだ~。マジで気を付けないとな~。女子を脱がしたら大顰蹙確定だし)

 自分の失敗を闇に葬ったのだった。

「予備のバトルスーツは?」

「耐久値5の新兵用のが」

「着替えた方がいいかもね」

「ええっと、着替えても引き継がれるのよね、ブルーフィールドの戻る場所?」

「あっ、そう言えば、まだ試した事がないな~。今度自分の部屋で試すか」

「ちょっと~。それだと色々と拙いでしょ。こんなところで、もし戻されたら。私の家、夜、外出禁止なのよ」

「えっ、じゃあ、もしかしてこのままでいるの」

「仕方ないでしょ。見ないでよ」

「出来るだけね」

「あのね~。そこは『はい』でしょ」

「いやいや、手離さんみたいな美人がそんな恰好をしてたら見るでしょ、男なら」

「ったく」

 妙に照れたイバウは背中のバトルスーツが破れてない事実に気付いて、

「私が運転するわ」

「ちゃんと前方を確認してよ」

「もちろんよ」

 その後も半裸のイバウが運転するエアバイクの後部席に柚子太は乗ってエクセレントクリアを目指したのだが。





 エアバイクに乗っていればビルの側面に張り付けるムシも攻撃をしてきて意外と脅威である。

 だが、レーダーがあるので事前に居場所が確認出来てどうにかなった。

 やはり最大の脅威の雑魚敵機は地上と同じく、遠距離から撃ってくる砲台型のボックスとレイ手榴弾装備、もしくは数機で陣形を組んでレイネットを展開してるプロペラだ。

 それらに対処しながらブルーフィールドを攻略していたのだが、

「どんなものよ」

 敵8機を倒して得意がるイバウに、

「何油断してるの、手離さん? ビルの陰にももう1機プロペラが居るのに」

「えっ、先に言って――嘘」

 ビルの陰からエアバイクの高度に浮遊するプロペラがレイ手榴弾を投げて来て、ギュオォォンっと未来的なエネルギー爆発をした。

「効くかっ! ーーおわっと」

 柚子太がSSAのレイシールドでダメージは防いだが、エアバイクが揺れて思わず運転席のイバウに背後から抱き締めたら、

「キャアアア、どこ触ってるのよ」

「いや、違う。これはエアバイクが揺れたからで。それに感触ないし」

「こっちはあるのよ。早く手を離しなさいよね」

 というハプニングが1回あった。

「信じられない。触るだなんて。それもあんなところに」

「全然感触がないから実感がないんだけど、どこ触ったの?」

「教える訳ないでしょ」

 その後は順調に攻略して最後にフィールドボスの、





 b防御型ムシc-12
 耐久値1250





 余裕で撃破して、





【フィールドボスの撃破を確認。フィールドボスの撃破に伴い、3秒後にブルーフィールドが解除されます】





「今夜はありがとね、露図くん」

「どう致しまして。手離さんがエアバイクが乗れて良かったよ」






【戦術ランクCのブルーフィールド、エクセレントクリア。クリアボーナス、全ステータス数値+2。ナノマシンの成長ポイント、210ポイント。アイテムを1つ選択出来ます(制限時間5分)】




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