ブルーナイトディスティニー

竹井ゴールド

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本編

10秒フィールドと階級:二つ星

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 夕食後は徐瀬芙家の音楽室でヴァイオリンの演奏会だ。

 ヴァイオリンを演奏してるのは柚子太だったが。

 柚子太はヴァイオリンを卒業しており今更演奏するつもりはなかったのだが、蘭に、

「柚子太のヴァイオリンを久しぶりに聞きたいわ」

「嫌だよ、面倒臭い」

「私の裸を見て触ったでしょ。そのお詫びに弾いてよ」

「ったく、今日だけ特別だぞ」

 柚子太は渋々ながらも完璧にヴァイオリンを弾き、

(あれ、ナノマシンのアドバンテージか? 精密ナノマシンに加えて、知覚ナノマシンで触覚と聴覚が研ぎ澄まされている?)

 柚子太は1時間も演奏会をして、21時30分頃に徐瀬芙家の豪邸を迎えの車に乗って後にしたのだった。





 最近の柚子太はエリ姫発足のプロジェクトの他の戦闘員に一つ星を取らす為の介護バトルに駆り出されている。

 今夜も介護バトルに参加するべく、徐瀬芙家の豪邸を出てから弐賀邸に向かっていたのだが、





【ブルーフィールド展開、戦術ランクE、フィールドカウント6分6秒】





 移動中にいきなり予測出来ない40%の方のブルーフィールドに巻き込まれた。

(おっと、不意討ちの方のブルーフィールドか。戦術ランクE、ってか6分? それでもENタンクを補充するんだけどね、オレは)

 柚子太はバトルスーツと加速ブーツを纏って下車してムシ1機とプロペラ2機を撃破して進んだが、ブルーフィールドが始まって僅か10秒後、





【フィールドボスの撃破を確認。フィールドボスの撃破に伴い、3秒後にブルーフィールドが解除されます】





 信じられない事にそうアナウンスされ、3秒後には柚子太は車内の日常に戻されたのだった。

(・・・クソ、オレのNEタンク1500が。なるほど、見知らぬ戦闘員と鉢合わせるとこういう事も起こる訳ね。ってか、10秒でクリアって。眼の前にフィールドボスでも居たのか?)





【戦術ランクE、フィールドクリアボーナス、アイテムを1つ選択出来ます(制限時間5分)】

【戦術ランクE、フィールドのスピードレコード。レコードボーナス、ナノマシンの成長ポイント、100ポイント、アイテムを1つ選択出来ます(制限時間5分)】




 
(3機倒しただけなんだけどな~)
 苦笑しながらクリアボーナスの選択画面を開くと、
 レイシールド-A3
 NEタンク20-2
 レイガン-A54・ノクターン
 レイ電磁手榴弾-ダンディライオン1
 望遠スコープ-アイコンタクト
 試作型バトルスーツ-1ノーマルソルジャー
 武器庫スペース+1とレイシールド-AA20
 武器庫スペース+1と治癒ナノマシン注射器(軽傷用)-5
 武器庫スペース+1とレイ手榴弾-ウルフ10





 戦術ランクEのクリアボーナスでも武器庫スペース1か。助かるな~。





 スピードレコードの選択画面は、
 レイライフル-PX61・マリリン
 レイショットガン・81・Jダルク
 レイサブマシンガン-201A・ケンタッキー
 レイグローブ-インシン
 レイブーツ-パシティック
 レイロッド-グランドキャニオン





 スピードレコードのアイテムの方がクリアボーナスよりもショボイ?

 どういう原理だ?

 柚子太はSNSで報告し、車は弐賀邸に向かったのだった。





 一度、弐賀邸を経由するのは現地を合流場所にすると柚子太がブルーフィールド発生時刻に遅刻する可能性があったからである。

 柚子太は別に遅刻常習犯ではなかったが、何かと騒動に巻き込まれる体質なので。

 弐賀邸の正門は潜ったが屋敷内には入らずガレージにてリムジンカーに柚子太は乗り込み、車内で待っていた音糸知穂と城路那須羽に、

「どうやらお嬢様方をお待たせしたようで」

「本当よ」

「19時台の戦術ランクEに出向けないって何をしてたの?」

「前にステータスの数値30オーバーでぶっ倒れた事があって、親が海外だから家族ぐるみで付き合ってる家での週1ディナーが義務付けられていて」

「蘭のところの事よね?」

 今日もお嬢様ワンピース姿の知穂が確認する。

「まあね。それよりも・・・このメンツで22時台の戦術ランクEのエクセレントクリアを目指す訳ね」

「普通のなら戦術ランクBでももうエクセレントクリア出来そうだけどね」

 那須羽の方は何故かラメ入りの赤地に龍の図柄のミニスカのチャイナドレス姿だった。

 焦茶髪の左テール美女で、胸は御存知Iカップ。だが美脚も長くて良い。

 それでも柚子太が気にしたのは別の事で、

「ミニスカのチャイナドレス? あれ、もしかしてJ高在籍の女子高生株トレーダー?」

「あら、知っててくれたんだ? 露図グループの御曹司さん」

「父に会ったら勧誘しろって言われてる」

「露図グループに就職なんてしないわよ。人のお金で株取引なんて馬鹿らしいから」

「弐賀財閥の庇護の許、荒稼ぎをしてるのか?」

「まさか。エリ姫にはブルーフィールド内で知り合っただけよ。向こうは私の事を知ってたみたいだけど。もちろん、そちらの音系銀行からも何の融資も受けてないわ」

「自力で成り上がった訳ね~。因みに何歳から親の名義で株トレーダーをやってるんだ?」

「内緒よ」

 などと喋る中、リムジンカーは目的地に進んだのだが、この日はブルーフィールドが多数発生しているらしく、





【ブルーフィールド展開、戦術ランクC、ナノマシン数値半減フィード、フィールドカウント56分56秒】

【一つ星戦闘員のナノマシン耐性でナノマシン数値の変動を無効化しました】





 突然、前触れもなくアナウンスが流れて青色のフィルターが視界に掛かった。

「はあ? また予測の40%の方を引き当てた? 今夜だけで2回目だぞ。それも今回のは・・・」

「ナノマシンのステータス数値が本当に半減されてるわ」

「最悪ね」

「オレは階級が一つ星だからかナノマシン数値の変動が無効化されてるが」

「そうなの?」

「ああ」

 柚子太と知穂が喋りながらバトルスーツに着替える中、同じくバトルスーツを着た那須羽が、

「それよりもどうする? ステータスの数値が半分だけど? 数値の変動がなかったら正直、戦術ランクCでもエクセレントクリアが狙えたわよね、私達なら?」

「危険は避けましょう」

「ええ~、狙おうぜ、エクセレントクリア~」

 拒否した知穂に対して、柚子太はエクセレントクリア狙いを主張した。

「安全第一よ」

「制限フィールドでのエクセレントクリアの検証をする絶好のチャンスだろうが。ほらほら、エリ姫のプロジェクトにも貢献って事で」

「却下よ」

「じゃあ、お互い好きにするって事で」

 柚子太はそう捨て台詞を残すとリムジンカーのドアから飛び出して、加速ブーツでブルーフィールドを駆けていった。

 車内に残された那須羽は知穂に、

「上手いのね、露図グループの御曹司の操り方?」

「失礼な。私は正論を言っただけよ。それよりも少しは戦闘で貢献しましょう」

 レーダーからどんどん凄い速度で敵機の反応が消えていくのを確認しつつ、知穂と那須羽もリムジンカーから出たのだった。





 エアバイクがチューンナップ中の柚子太の戦闘スタイルは加速ブーツによる最短距離での敵機への接近である。

 敵のビーム攻撃はあえて避けずレイシールドで遮断だ。まあ、ボックスやプロペラが装備してるレイ手榴弾はさすがに避けたが。

 新たに手に入れたレイステッキも試す。

「30秒でNE消費2って。加速ブーツとのコンボで使いたい放題だから」

 柚子太は御機嫌にムシを倒し、上空のプロペラも地上や壁走り、または電柱や街灯を足場にしてのジャンプ増強で簡単に接近して木刀よりも短いレイステッキで殴って潰した。

 その後は空中でスーツを変形させて滑空だ。

「戦術ランクCのブルーフィールドの広さは縦横10キロ。予想敵機数は300機。余裕だな」

 柚子太はビルの中層階の窓に壁立ちして、レイステッキで破壊して屋内に侵入してビル内に居るムシを撃破したのだった。





 知穂と那須羽の方は、

「ねえ、使えない武器とレイシールドがない?」

「あるわ。ステータスの武器庫の数値が半減した事と関係してるっぽいわね」

「この状況ーー本来であれば危険なんでしょうけど」

「ええ、敵機が居ないのよね~。半径700メートル内に1機も。凄過ぎない、彼? 本当にステータスの数値の上限120縛りなの?」

「露図は元々そういうふざけたスペックの持ち主だからね」

「彼って、エリ姫の婿候補なの?」

「そんな訳ないでしょ。露図は少しブレーキが利かないところがあるから候補にも入ってないわ」

「でも好きなんでしょ?」

「エリ姫が? まさか」

「違う違う。音糸さんよ」

「あのね。どうして、そうーー」

 恋バナをしてると、





【フィールドボスの撃破を確認。フィールドボスの撃破に伴い、3秒後にブルーフィールドが解除されます】





「えっ?」

「まだフィールドカウント41分よ? 諦めた? それとも他にも戦闘員が居てーー」

 知穂と那須羽が驚く中、





 3秒後にはブルーフィールドが始まるリムジンカーの空間に戻ったのだった。





【戦術ランクCの上級ブルーフィールド、エクセレントクリア。クリアボーナス、階級:二つ星。スペシャルナノマシン【ビースト】。NE全体量+150。全ステータス数値+2。ナノマシンの成長ポイント、210ポイント。アイテムを1つ選択出来ます(制限時間5分)】





 柚子太がニヤリとする中、

「嘘、もうエクセレントクリアしたの?」

「早過ぎでしょ。うわ、本当だわ。武器庫2にパワードスーツとエアバイクが入ってる」

 知穂と那須羽が柚子太に呆れる中、柚子太は選択画面に移動し、





 戦術ランクSSのエスケープチケット(使い捨て)
 戦術ランクSのエスケープチケット(使い捨て)
 戦術ランクAのエスケープチケット(使い捨て)
 戦術ランクBCDEのエスケープチケット(使い捨て)
 戦術ランクSSの救援要請チケット(使い捨て)
 戦術ランクSの救援要請チケット(使い捨て)
 戦術ランクAの救援要請チケット(使い捨て)
 戦術ランクBCDEの救援要請チケット(使い捨て)





 どれもいらね~。

 おっ、ステータス数値の上限が取っ払われてる?

 ならNEタンクもだよな?





【階級:二つ星の男性戦闘員のステータスの合計数値は140までです】

【階級:二つ星の戦闘員の武器庫保管のNEタンク保有量は合計7000までです。武器庫2に移動させて下さい】





 あっそ。





 階級:一つ星→二つ星
 newスペシャルナノマシン【ビースト】
 敵機撃破スコア:1108→1399
 ナノマシン成長LV:14→17(ナノマシン成長ポイント1209→1415)
 NE185/185→350/350
 武器庫(次の武器庫解放は20):17→19
 メイン武器【レイガン-A56・レクイエム】
      【レイロッド-グランドキャニオン】
 ガンファイト・威力/射程補正:6→8
 ガンファイト・継続/弾数補正:6→8
 肉体ナノマシン:17→20+α
 知覚ナノマシン:23→25+α
 精密ナノマシン:17→20
 肉体治癒ナノマシン:17→20+α
 NE回復ナノマシン:17→20+α



 武器庫リスト(スペース27/34→28/34)
 レイガン-LQ12・エチュード
 レイガン-LQ12・エチュード
 レイガン-A56・レクイエム
 レイショットガン-81・ダルク
 レイショットガン-88・Kアーサー
 レイバズーカー10X-アポロン
 レイロッド-グランドキャニオン
 レイ電磁手榴弾-イエローローズ30
 レイ手榴弾-ウルフ10
 NEタンク100-1
 NEタンク200-7
 NEタンク400-3
 NEタンク500-3
 NEタンク700-4
 新兵用バトルスーツ-01ルーキーソルジャー
 滑空型バトルスーツ-16.2バッドオフィサー
 パワードスーツBE専用パイロットスーツ-17Eプロトオフィサー
 飛行士用ヘルメット-Bクィーン
 加速ブーツ-04レッドキャップ
 加速ブーツ-06アシュラ
 レイシールド-A200
 レイシールド-AA10→30
 レイシールド-SSA97
 治癒ナノマシン注射器(軽傷用)-3
 治癒ナノマシン注射器(重傷用)-1
 戦術ランクBCDE専用レーダー、スパイダーネット-BCDE
 戦術ランクD専用レーダー、スパイダーネット-D
 new戦術ランクSSのエスケープチケット(使い捨て)



 武器庫2リスト(スペース10/32)
 パワードスーツ-BEジャブ・兵装1aタイプ(スペース3)
 【チューンナップ中:完了まで70時間31分】エアバイク-GXアナコンダ(スペース2)
 BE専用パワードスーツ修理キット
 エアバイク修復キット
 NEタンク20-6
 NEタンク200-1





 ビーストって、何か野蛮だよな?

 どうせなら、アメリカンコミックのスピード特化のヒーローが良かったんだけどな~。

 周囲がスロー、もしくはストップしてる中で自分だけが動けるみたいなのが。





 柚子太は満足しながら、

「もう、戦術ランクEを取らなくてもいいよな?」

「そうね、NEタンク1500は自分達で取るわ」

 知穂がリムジンの運転手にマイクで指示を出す中、那須羽が、

「15分で戦術ランクCをエクセレントクリアって、本当に凄いのね?」

「そう? 普通だと思うけど」

「そうだ、スカートの中のパンツ当てが得意って聞いたけど?」

「いや、得意って程では――」

「私が今、どんなパンツを穿いてるか分かる?」

「えっ、ノーパンだろ?」

 柚子太が当たり前のようにノータイムで言って、最初から当てさせるつもりがなくてパンツを穿いていなかった那須羽が、

「えっと、どうして分かったの?」

「何となく」

「凄いのね」

 那須羽はそう柚子太を評価したのだった。





 リムジンカーで何気にSNSでプロジェクトに情報を提供すると、すぐに直電がきた。エリ姫だ。

『40%の方の戦術ランクCのナノマシン数値が半減になるブルーフィールドに巻き込まれてエクセレントクリアを出して、階級が二つ星になってスペシャルナノマシン【ビースト】が出たって何? 分かりやすく説明しなさい』

「分かりやすくも何もオレもどういう経緯で取れたのか分からず」

『ステータス数値は上限140縛りなのね?』

「うん。あっ、でも何か肉体、知覚、肉体治癒、NE回復に+αが付いてる」

『他には?』

「得には」

『スペシャルナノマシン【ビースト】の特性は?』

「いや、クリア後に出ただけだから分からないよ」

『今からどこかのブルーフィールドに向かって検証して来なさい』

「ええ~。明日で許してよ、エリ姫」

『絶対よ』

「は~い」

 これで電話が切れ、知穂が、

「階級:二つ星なの?」

「うん」

「四月の頭なのよね、ナノマシン戦闘員になったのって?」

「そうだけど」

 その異常さに那須羽も少しマジマジと柚子太を観察したのだった。

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