ブルーナイトディスティニー

竹井ゴールド

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本編

柚子太の主人公体質と家族ぐるみの付き合いの徐瀬芙家

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 普通の男子高校生は学校でラッキースケベなんかに遭遇したりしないものだが主人公体質の柚子太はかなりの確率で遭遇していた。

 8割の桜が散り始めた通学路の本筋前の住宅路で、キャップ帽子を風で落とした女子が拾ってる時に神風が吹いてスカートがめくれて白のパンツが見えたりして。

 問題はその女子が一年の緋位多怜で、スカートがめくれた事に気付いて不機嫌そうにスカートの裾を押さえながら振り返って柚子太と視線が合い、

「今の見ました?」

 詰め寄られた。

 怜は168センチ。長い黒髪で登校中だがアメリカロックバンドのロゴのキャップの帽子を被る。不良と言われてるが制服のサイズは普通だ。

「見たくもないのに見せられたかな?」

「あっそ。運が悪かったですね。まあ、ケジメって事でドンマイ」

 次の瞬間には上段蹴りが飛んできたが、柚子太はナノマシンのアドバンテージ中だ。片手どころか人差指1本で余裕で受け止めた。

「至近距離のオレからは見えてないが、また見えてると思うぞ。スカートでそれだけ開脚したら」

「やっぱり強いんですね、先輩って。今のを指一本で止めるだなんて」

 緋位多一族は血統の掛け合わせによって筋肉の密度が一般よりも濃い。

 つまり怜の今の蹴りも「かなり重い」のだ。それを軽々と指一本で止めるのだから怜は柚子太を認めつつ敵意を解いた。

 怜が敵意を解いた事で柚子太が学校へと歩き出し、その横を怜が続く。

「ズルをしてるからな。ってか、試されたのか、今のって?」

「ええ、露図グループの御曹司がどのくらい強いか」

「そういうそっちは筋肉密度が少し高い緋位多一族だよな」

「ええっと、体力測定の時に読めなかったのって、もしかして演技だったんですか?」

「いいや、話しかけられるまで緋位多一族なんて知りもしなかった」

「なら調べたんだ~、さすがはお金持ち」

「不自然に近付いてきた相手の素性は調べる決まりだからな。そっちは知っててオレに近付いてきたのか?」

「いいえ。100メートル走を見て気になって家の者に調べさせました」

「お互い様か。因みに親になんて言われた?」

「露図は駄目だ。他国の勢力と揉め過ぎてる、と」

「オレも緋位多の娘は駄目だと言われてる」

「でも、周囲に止められたら逆に燃えません?」

 そう笑った怜とは対照的に、柚子太はげんなりと、

「燃えないよ。オレ、シンガポールに連れて行こうとする親との攻防で大変だから」

「意気地がないんですね、先輩って。情報と少し違うかも」

「情報ってどんな?」

「露図の御曹司は常識人に見えて頭のネジが数本外れてる」

「失敬な。オレでもTPOは守るさ。そっちは、そもそもどうして不良なんて呼ばれてるんだ?」

「喧嘩が強いですから」

「えっ、一般の雑魚を殴ってるのか、筋肉密度が違うのに?」

「サンドバッグを殴るのってストレスの解消になりますからね」

「可愛そうなサンドバッグ達だな」

 そんな事を喋って柚子太は怜と懇意になったのだった。





 学校の廊下を歩けば角で女生徒にぶつかるのがラブコメの主人公な訳で柚子太も当然のようにぶつかって、

「キャ」

 相手がよろけて倒れそうになったので腰に手を回して支え、

「おっと悪い」

「露図、いつもこんな事をやってるの?」

 相手は女子生徒ではなくジャージ姿の女体育教師のもり雨火うかだった。

 ジャージ姿なので当然、その下に纏うのはスポーツブラだ。なので柚子太にハグされて胸の膨らみはかなり潰れた。柚子太はそれが伝わり、満足してリリースした。

「いえいえ、廊下の角でぶつかられて相手が倒れそうになるのは久しぶりです」

「ったく、ほどほどにね」

 雨火はそう言って廊下を歩いていったのだった。





 柚子太が高校生活で現在、最新の注意を払ってるのは体育である。

 何せ、ナノマシンのアドバンテージがあるので常人以上の身体能力を発揮してしまう。仕方なく10%に抑えてやってる訳だが、それだと馬鹿馬鹿しくやってられない。だが集中力を切らしたら最後なので無駄に精神をすり減らした。





 モテモテ主人公の柚子太は放課後も女子と一緒に下校だ。

「あら、後輩くん?」

「どうも」

「もしかして私を待ち伏せしてたの」

「どうしてそういう発想になるんですか? 下校時間に掃除当番がなければかち合う事だって普通にあるでしょ。それですよ」

「何だ、つまらないの」

 校門で府井美葉と一緒になって喋って帰っていた。

「後輩くんのデジャブフィールドの考察は?」

「昨日のですか? ただの偶然ですよ。他の二人が警戒し過ぎなんです」

「敵ロボット軍団が仕掛けてきたとは思わなかったの?」

「まったく」

「緊張感がないわね」

「仕方ないでしょ。あんなヌルイ難易度なら」

「えっ、そういう体感なの、後輩くんからしたら?」

「えっ、違うんですか」

「ええ、戦術ランクBでもヌルイの?」

「凄く」

「でもNEが途中でーーああ、初挑戦の時には既にタンク長者だったんだっけ?」

「まあ」

「武器庫リストはどのくらい埋まってるの?」

「スペース32に23ってところですね」

「レイシールドとレイ手榴弾はどのくらい持ってる?」

「レイシールドは300以上。レイ手榴弾は全然ですね」

「EN消費のない武器も集めた方がいいわよ」

「プロジェクト情報にあった白兵戦のアックスやメイスといった奴ですか?

「ええ。あのロボット、こっちの素手攻撃ではどんなにやっても耐久値が減らないから」

「鉄パイプでも?」

「その検証はまだね」

「しといて下さいよ。今度オレの方でやっときますね」

 そんな事を喋ってた訳だが、不意に、

「おっと、危ない」

 美葉がそう言って横飛びした。

 というか突然、柚子太にぶつかってきた。思わず柚子太は抱き締めつつ勢いのまま足を軸にその場で横反転して美葉を反対側で手放した。

「何ですか、今の?」

「カラスの影に私の影が触れないようにしたのよ。縁起が悪いでしょ」

「そんな自分ルールを常識みたいに言わないで下さいよ」

「私を抱き締められたんだからラッキーだと思いなさいよ。嬉しかったでしょ、このHカップを押し付けられて」

「一瞬ですから分かりませんって」

(やっぱりマイクルビキニをチョイスするだけあって少し変? でも普通に喋る分には外見通り知的なんだよな~)

「なら、ウリウリ。カラスの影に触れなかったお礼も込めて」

 腕を絡めて横乳を押し付けてきた。

「勘弁して下さい」

 柚子太はそう言ったが勘弁されず、分かれ道までの残り3分間、横乳を押し付けられて、

「じゃあね」

「ええ、また」

 美葉は帰っていった。

(やっぱり変な人か?)

 後ろ姿を眺めつつ、柚子太は下校したのだった。





 本日の柚子太の予定は徐芙家の大豪邸訪問だ。

「本日はお招きに預かりまして」

「あら、よくきたわね、柚子太くん。蘭も帰ってるわ。蘭の部屋で待っててね」

 母親の杏がメイドさん数人と出迎えて、そう誘導しようとしたが、

(その手には乗るか。どうせ着替えてる最中なんだろ。それでバッタリ。ふふん、そんなお約束に引っ掛かるオレではないのだよ)

「いやいや、来客室でいいですよ」

 柚子太はそう主張して勝手知ったる来客室に向かおうとしたが、この手のイベントは回避不可能だ。曲がり角からバスタオルで身体を隠したシャワー上がりの蘭が現れて、

「えっ? ちょ、どうしてもう来てるのよ」

 驚くと同時に結び目というかバスタオルを引っ掛けている箇所を握って警戒した。

 蘭は幼馴染だけあり、ラブコメ主人公体質の柚子太の前では何故か身体を隠すバスタオルの引っ掛けがほどける事を知っていたのだ。

「蘭が成長してお父さんは嬉しいぞ」

 柚子太にマジマジと見られて蘭は赤面して恥ずかしがりながら、

「誰がお父さんよ――じゃなくて見ないでよね、もう」

 そう言われたので柚子太は礼儀として視線を逸らしたのだった。





 来客室で待つ事20分。

「どうしてこんなに早くきたのよ?」

 気合を入れて肌が露出する海外セレブ御用達のホルターネックドレスを纏った蘭が現れた。ノーブラだと分かる過激さである。

「ほら、オレ。面倒事に良く巻き込まれるから。時間ギリギリの到着移動だとトラブる可能性があるし」

「もう。時間まで何する?」

「勉強でもしようか」

「ムードがないわね」

「なら予習。青い世界の。情報は知ってる?」

「ええ、エリ姫のプロジェクト情報は貰ってるから」

「じゃあチークダンスをしながら答え合わせね」

「はいはい」

 柚子太はその後、本格的な社交ダンスではなく、頬を寄せ合ってユルく踊りながら喋ったのだが、ラッキースケベはどこにでも転がっている。

 柚子太が高身長な事もあって身長の兼ね合いから、屋内ながらダンス用のヒールを蘭は履いていたのだが、そのヒールが突如折れて、

「キャ」

「おっと」

 チークダンスをしてたので元々ハグをしており蘭が倒れる事はなかったが、左ヒールの違和感から視線を落としてヒールの踵が折れた事を確認し、

「ヤダ、ヒールが折れてるわ」

 と顔を上げた時、ちょうどホルターネックドレスの結び目が解けた。

 ホルターネックドレスとは首の後ろで結んで前側の布地を固定してるドレスの事で、蘭のドレスは海外セレブ御用達の露出系。ノーブラだと分かる胸の谷間がない布地な事から、

「あっ」

「へっ」

 結び目が解けて上半身の布地がズレ落ち、蘭の上半身は真っ裸になったのだ。

 2秒後の硬直ののち

「ーーキャアアア」

 胸の膨らみを隠した蘭が急ぎ退室しようとしたがヒールが折れてて倒れそうになり、

「おっと、危ない」

 柚子太が抱き締めたら手が偶然、右乳にモミュッと触れてしまい、

「ちょ」

 暴れた蘭は転んでしまったのだった。

 柚子太は倒れなかったが、

「そうだ、二人ともーー」

 そこに母親の杏が登場して、娘の半裸現場を見て怒る事なくニヤニヤと面白がって、

「ええっと?」

「嘘のような話ですが、今回も事故です」

 柚子太が説明してる間に蘭はメイドに横から抱えられて補助付きで退室した。

 蘭の退室を待って杏が柚子太に、

「柚子太くん、責任とって徐瀬芙家の婿になりなさいね」

「蘭が露図家の嫁なら何ら問題ありませんが」

「蘭は徐芙家の一人娘よ。婿よ、いいわね」

「オレも一人息子ですよ。両親と話して下さい」

 それが柚子太と蘭の最大の障壁だった。

 二人とも名家の一人っ子の為に家督を継がねばならないのだ。

「ったく、そうそう、私、今日ディナーに出るから。蘭と10時までならイチャイチャしていいからね」

「えっ、小父さんは?」

「会食だって言ってたわ」

「大変ですね、社長業ってのも」

 なんて喋ったのだった。





 本日の夕食は徐瀬芙家での会食なのだが、金持ちというのはディナーに出掛けるもので本当に母親の杏は出掛け、父親の鳥陽も帰って来なかった。

 よって柚子太は蘭と二人っきりで会食した。

 裸を見られた蘭はまだ少し立ち直れていなかったが、

「蘭の近況は?」

「別に。つまらないセレブ女子が集まる名門女子高生活よ」

「それはそれで興味があるんだが」

「柚子太はどうなの? 庶民の学校は」

「皇宮警察系の緋位多一族ってのが居たよ」

「聞いた事ないわね。警察なら薩摩系?」

「いや、帝の裏部隊だよ」

「そんなのが一般の学校に通学してるの?」

「何か釣針の餌っぽいけど」

「なるほどね。面倒事には巻き込まれないでね」

「大丈夫だよ。パパにも近付くなって言われてるし・・・ってか、オレだけ多くない、料理?」

 どう見てもメイン料理が2品だ。300グラムサイズのステーキとハンバーグの。

「柚子太が倒れたからでしょ。こちらも華羅小母様に頼まれてるからね。食べるまで帰さないわよ」

「畏まりました。蘭お嬢様」

 柚子太はディナーを満喫したのだった。

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