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醜聞は闇に葬られた

よくやった【セーラside】

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「よくやった、セーラ」





 クワナリス伯爵家の屋敷の執務室で、エレニエルを倒した私はお父様に褒められた。

「いえ」

「どこまで掴んでる?」

「陛下が王妃様を首を絞めて殺害した、とルビア様がおっしゃったところまで」

「そんな事実はなかった。いいな? 他言するなよ?」

 お父様が念押しされた。

 やっぱり、ルビア様が言った事が真実だったのね。

 お父様の顔色を見て、私は直感した。

「かしこまりました」

「そもそも陛下は操られていない。それが公式発表だ。いいな?」

「ではルビア様がミリアリリー女学園の生徒達の前で言ったのは?」

「王妃様が死んで錯乱されてたのだろう?」

「・・・本当に、そうなるのですか?」

「無論だ」

「それでは、事件解決の功労者のルビア様の名誉が・・・」

「事件? 何もなかったのに何を言ってる、セーラ?」

 お父様が真顔の演技をした。

 うわぁ~。闇に葬るんだぁ。最低ぇ~。

 王妃様が陛下に殺されてるのにぃ~。

 と思ってるとお父様が、

「そうそう、王妃様が亡くなられて落胆された陛下が退位される事になった」

「そうですか・・・・・・」

「順当に王太子のルビカル殿下が次期国王となり、ルビア様は新宰相に就任して新国王を補佐される。王妃様が死んでるので予定されてた王太子と婚約者の結婚式は喪の明ける1年後に延期となった」

 浮気してた癖に結婚する訳ね。

 って、そこじゃないわ。注目するところは。

「ルビア様が宰相に就任ですか? 王族が宰相になるなど聞いた事もございませんが?」

「前例がなければ作るまでだ」

「・・・そうですか」

「騎士団長はセーラの頑張りの甲斐もあって当分、私で行く事が決まった。そうそう、長年のミリアリリー王国への忠勤が認められて、陛下の退位前の最後の仕事として侯爵となるらしいがな」

 ・・・私の今回の功績で我が家の爵位が上がる訳ね。

「セーラ、褒美として夫選びは好きにさせてやる」

 それだけなの?

 今回の件に尽力した私に対するお父様からの褒美って?

 私はそう思いながらも、

「・・・ありがとうございます」

「それと、イザベラ嬢だったか? エニス嬢の妹の【3路循環覚醒者】?」

「はい。それが?」

「あの娘は王家直参が好ましいので騎士侯のままでこれ以上、爵位は上がらぬが、2つ目の騎士侯の位と竜騎士の称号が与えられるらしいぞ。非常勤ながらルビア様の親衛隊にも抜擢される。まだ在学中なのに末恐ろしいな。【雷竜】の娘も騎士の出自だが、騎士侯と竜騎士、それに非常勤でのルビア様の親衛隊入隊だ。ルビア様の直属部隊が強過ぎるきらいがあるが、まあ、仕方あるまい。アスレオット家には騎士侯が更に2つ。アスレオット一族は既に騎士侯を4つ持ってるから、一族で6つの保有になるな。アスレオット家は8騎士家なので陛下直属のままだが」

 8騎士家は王家直参の騎士侯で飼い殺しだから、順当ね。

 そして、あの時、ルビア様に付き従った生徒への騎士侯や竜騎士の授与を持って、間接的にルビア様の名誉を保つ訳か。

「エニスさんには?」

「ミリアリリー王国に仕える気がないので爵位を与えられないで困ってる。それとなくエニス嬢と懇意のパリナ殿に尋ねたところ、ホルーテ・メボの剣の先生の辞退を望んでて陛下が了承された」

「ホルーテさんがルビア様の助力を拒否したから、ですか?」

「いや、【闇竜】特有の【混沌】の所為で、周辺で運気が乱れてて、王宮や一緒の屋敷に住んでた騎士団長の私の異変に気付けなかったので、邪魔だからどうにかしてくれ、って事らしい。まあ、確かに【雷竜】はともかく【闇竜】は少し問題だからな。それにホルーテ嬢はもう充分、鍛えられてるからな。メボ家も了承したし問題なかろう。それよりも、はぁ~」

「?」

「次、屋敷で監視されたら監視員を殺す権限をくれ、と言われた」

 嫌そうな顔でお父様が呟いた。

「えっ? エニスさんを監視してたんですか?」

「ああ、操られた10日ほどだがな。そんな訳で、セーラが堂々と真横でエニス嬢を見るように」

 今、操られてたって認めたわ、お父様。

「・・・畏まりました」

 私はそうお父様に返事したのだった。
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