王立ミリアリリー女学園〜エニス乙女伝説・傾国騒動編〜

竹井ゴールド

文字の大きさ
上 下
27 / 30
醜聞は闇に葬られた

よくやった【セーラside】

しおりを挟む
「よくやった、セーラ」





 クワナリス伯爵家の屋敷の執務室で、エレニエルを倒した私はお父様に褒められた。

「いえ」

「どこまで掴んでる?」

「陛下が王妃様を首を絞めて殺害した、とルビア様がおっしゃったところまで」

「そんな事実はなかった。いいな? 他言するなよ?」

 お父様が念押しされた。

 やっぱり、ルビア様が言った事が真実だったのね。

 お父様の顔色を見て、私は直感した。

「かしこまりました」

「そもそも陛下は操られていない。それが公式発表だ。いいな?」

「ではルビア様がミリアリリー女学園の生徒達の前で言ったのは?」

「王妃様が死んで錯乱されてたのだろう?」

「・・・本当に、そうなるのですか?」

「無論だ」

「それでは、事件解決の功労者のルビア様の名誉が・・・」

「事件? 何もなかったのに何を言ってる、セーラ?」

 お父様が真顔の演技をした。

 うわぁ~。闇に葬るんだぁ。最低ぇ~。

 王妃様が陛下に殺されてるのにぃ~。

 と思ってるとお父様が、

「そうそう、王妃様が亡くなられて落胆された陛下が退位される事になった」

「そうですか・・・・・・」

「順当に王太子のルビカル殿下が次期国王となり、ルビア様は新宰相に就任して新国王を補佐される。王妃様が死んでるので予定されてた王太子と婚約者の結婚式は喪の明ける1年後に延期となった」

 浮気してた癖に結婚する訳ね。

 って、そこじゃないわ。注目するところは。

「ルビア様が宰相に就任ですか? 王族が宰相になるなど聞いた事もございませんが?」

「前例がなければ作るまでだ」

「・・・そうですか」

「騎士団長はセーラの頑張りの甲斐もあって当分、私で行く事が決まった。そうそう、長年のミリアリリー王国への忠勤が認められて、陛下の退位前の最後の仕事として侯爵となるらしいがな」

 ・・・私の今回の功績で我が家の爵位が上がる訳ね。

「セーラ、褒美として夫選びは好きにさせてやる」

 それだけなの?

 今回の件に尽力した私に対するお父様からの褒美って?

 私はそう思いながらも、

「・・・ありがとうございます」

「それと、イザベラ嬢だったか? エニス嬢の妹の【3路循環覚醒者】?」

「はい。それが?」

「あの娘は王家直参が好ましいので騎士侯のままでこれ以上、爵位は上がらぬが、2つ目の騎士侯の位と竜騎士の称号が与えられるらしいぞ。非常勤ながらルビア様の親衛隊にも抜擢される。まだ在学中なのに末恐ろしいな。【雷竜】の娘も騎士の出自だが、騎士侯と竜騎士、それに非常勤でのルビア様の親衛隊入隊だ。ルビア様の直属部隊が強過ぎるきらいがあるが、まあ、仕方あるまい。アスレオット家には騎士侯が更に2つ。アスレオット一族は既に騎士侯を4つ持ってるから、一族で6つの保有になるな。アスレオット家は8騎士家なので陛下直属のままだが」

 8騎士家は王家直参の騎士侯で飼い殺しだから、順当ね。

 そして、あの時、ルビア様に付き従った生徒への騎士侯や竜騎士の授与を持って、間接的にルビア様の名誉を保つ訳か。

「エニスさんには?」

「ミリアリリー王国に仕える気がないので爵位を与えられないで困ってる。それとなくエニス嬢と懇意のパリナ殿に尋ねたところ、ホルーテ・メボの剣の先生の辞退を望んでて陛下が了承された」

「ホルーテさんがルビア様の助力を拒否したから、ですか?」

「いや、【闇竜】特有の【混沌】の所為で、周辺で運気が乱れてて、王宮や一緒の屋敷に住んでた騎士団長の私の異変に気付けなかったので、邪魔だからどうにかしてくれ、って事らしい。まあ、確かに【雷竜】はともかく【闇竜】は少し問題だからな。それにホルーテ嬢はもう充分、鍛えられてるからな。メボ家も了承したし問題なかろう。それよりも、はぁ~」

「?」

「次、屋敷で監視されたら監視員を殺す権限をくれ、と言われた」

 嫌そうな顔でお父様が呟いた。

「えっ? エニスさんを監視してたんですか?」

「ああ、操られた10日ほどだがな。そんな訳で、セーラが堂々と真横でエニス嬢を見るように」

 今、操られてたって認めたわ、お父様。

「・・・畏まりました」

 私はそうお父様に返事したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王立ミリアリリー女学園〜エニス乙女伝説・春の乙女祭編〜

竹井ゴールド
ファンタジー
 ミリアリリー王国の王都ラサリリーにある王立ミリアリリー女学園。  ミリアリリー女学園の四季にある乙女祭。  春の乙女祭は武を競う。  当初は純粋な武闘大会だったが、今や賄賂が飛び交う不正塗れの大会となっていた。  今年は特に陰謀が渦巻き、その陰謀が優勝候補と目されるエニスへと向けられるのだった。 【2022/12/6、出版申請、2023/1/4、慰めメール】

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

TS転移勇者、隣国で冒険者として生きていく~召喚されて早々、ニセ勇者と罵られ王国に処分されそうになった俺。実は最強のチートスキル持ちだった~

夏芽空
ファンタジー
しがないサラリーマンをしていたユウリは、勇者として異世界に召喚された。 そんなユウリに対し、召喚元の国王はこう言ったのだ――『ニセ勇者』と。 召喚された勇者は通常、大いなる力を持つとされている。 だが、ユウリが所持していたスキルは初級魔法である【ファイアボール】、そして、【勇者覚醒】という効果の分からないスキルのみだった。 多大な準備を費やして召喚した勇者が役立たずだったことに大きく憤慨した国王は、ユウリを殺処分しようとする。 それを知ったユウリは逃亡。 しかし、追手に見つかり殺されそうになってしまう。 そのとき、【勇者覚醒】の効果が発動した。 【勇者覚醒】の効果は、全てのステータスを極限レベルまで引き上げるという、とんでもないチートスキルだった。 チートスキルによって追手を処理したユウリは、他国へ潜伏。 その地で、冒険者として生きていくことを決めたのだった。 ※TS要素があります(主人公)

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

花影のさくら

月神茜
ファンタジー
少女は山に捨てられた。 齢三つの時に、人の手によって。 自分たちを災害から守るための、人身御供として。 捨てられた少女は、真っ白な大蛇に育てられた。 櫻という、名前をもらって。 数年後の春の日。 山に迷い込んだ青年は、大蛇と少女に出会う。 真っ白な大蛇と、大蛇を「おじいちゃん」と呼び慕う、死に装束を身に纏ったやせぎすの少女。 春の雨に導かれ出会った二人は、【親子】に、【兄妹】に、【生きる理由】に、かけがえのない【大切な存在】になった。 やさしくて、やわらかくて、少し切ないけれど、あたたかな二人の恋物語。 ・・・・・・ テーマは【桜】。 本人たちに自覚はありませんが、周囲からすれば恵まれない環境で育った二人が、お互いを知り、想い、恋を知って、幸せになるまでを綴ったハッピーエンドのお話です。 【誰よりも幸せになる】お話ではなく、【人並みに幸せになる】お話になるように心がけています。 小説家になろう様でも同時公開中。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

処理中です...