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アテニナ・バスラ生尻折檻事件

こうしてミリアリリー女学園で幹部生徒が妹を2人持つ習わしは復活した【チェキーside】

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 アテニナさんがお尻を叩かれて臨時休校になったミリアリリー女学園に父親のバスラ公爵さまが自ら乗り込んでくるなんて。

 女子校だけど、親御さんと面談する来賓室等々はあるので、そちらに出向く私は気が重かった。

 何故なら、王都ラサリリーの貴族区でバスラ公爵が代々団長を務める魔法兵団が、騎士団長の屋敷を取り囲んだという話が、ミリアリリー女学園にも既に届いていたから。

 おそらくはエニスさんはもう殺されてるわね。

 そして、エニスさんの次に責任を取らされるのが学園長センセイ。

 学園長センセイだけでは済まず、教頭の私も殺されるんだわ。

 そう思いながら来賓室へと出向いた。

 当代のアデール・バスラ公爵さまと私は同世代。

 なので、私は男爵令嬢で、その上、ミリアリリー女学園出身でしたけど、魔術校の御前対抗戦等々で、アデールさまのその活躍は眼にして、そりゃあ、学生時代は憧れたものです。

 入室して顔を合わせたアデールさまは、40代になった今も、学生時代の面影を残しておられましたわ。

 この方の手に掛かるのなら、まあ、ありかも、と当時の乙女心を思い出しながら、そんな事を思ったりもしてたのですが・・・





「つかぬ事をお尋ねしますが、年頃の娘というのは同性に憧れたりするものなのでしょうか?」

 とアデールさまが問われて、

「ミリアリリー女学園の生徒の中には時々そのような傾向が見受けられる生徒も居りますね。それが?」

 学園長センセイが話を促すと、

「今回の件の落とし所として・・・・・・バスラ公爵家としては娘のアテニナのたっての希望で、姉の躾だったら、辛うじて黙認するという事にしました」

「姉の躾とは?」

「ミリアリリー女学園には伝統的な姉妹制度があるのでしょう? それですよ。姉が妹を躾ける。辛うじて外聞も保てますから」

「お待ち下さい。エニスさんには既に妹が居りますよ?」

「学園長はおとぼけが上手だ。ミリアリリー女学園史には、ちゃんと優秀生徒が妹を5人まで持ってた、と記されてるではありませんか」

「はい? 何の事です?」

 と話が進み、ミリアリリー女学園史を出してきて読めば、本当に優秀生徒が妹を5人持っていた時期があった。

 但し、これは・・・・・・

「お待ち下さい。これは・・・劣等生に口移しで魔力を供給してた時代の話ではありませんか。今の時代ではそぐわない慣習で・・・」

「そうですか? 生徒会長の方との姉妹関係を解消して貰ってもこちらとしては何ら構いませんが。ミリアリリー女学園がそちらを望むのでしたらそちらで」

「お待ちください。在学中に騎士侯を受勲し、更には【霊魂循環】まで会得した【3路循環覚醒者】の優秀な現役生徒会長が姉に捨てられるなんて聞いた事がありません」

「では、2人目の妹をミリアリリー女学園側が承認するという方向で。そうそう、私はまだ許してませんが、あの感じの悪い女生徒からの伝言が学園長に」

「?」

「『負けるが勝ち』だそうですよ」

 エニスさんね。

 さっき学園長室で学園長センセイに言われた言葉をそのまま公爵さまに伝えさせるだなんて趣味が悪い。

 つまりは・・・

 ここで突っ撥ねても退官後の新学園長が認める、と示唆してるってところかしら?

「職員会議に掛けますので、少々お待ち下さい」

「ええ、構いませんよ。待ちましょう」

 来賓室でアデールさまが待つ中、職員会議で教師達の意見を聞き、バスラ公爵家の要望を撥ね退ける力がミリアリリー女学園の教師にある訳もなく・・・





 エニスさんだけを特別扱いにする訳にも行かず・・・・・・

 幹部生徒に限り、妹を2人持つ習わしがこの日から承認されたのだった。
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