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アテニナ・バスラ生尻折檻事件

鬼だわ【ホルーテside】

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 私は今、王都ラサリリーの郊外の東の森に来てる。

 森で何をやらされてるのかと言えば・・・

 ランク【C】の魔獣、角魔羊の狩りをやらされていた。

 一応言っておくけど、角魔羊のサイズは5メートル級だからね。

 それを1人で狩猟って。

 冗談じゃないわよっ!

 なのに、青虎のドレスを纏ったエニスさんが背後から、

「ほら、ビクついてないでさっさと倒しなさいよ、ホルーテさんっ! ホルーテさんならこんな相手、秒殺なんだからねっ!」

 そう言ってきた。

 エニスさんと始業式の放課後に、王都ラサリリーの郊外の東の森にまで遠征に来てるのは、エニスさんの妹の生徒会長が新入生歓迎会のクラブ説明会の会議で居ない所為せいだった。

 居たら、騎士団長宅の屋内訓練場の訓練で済んだのにぃ。

 私はそんな未練を断ち切るように、気合を入れた。

 薄っすらと私の半径50センチほどの周囲に色が付く。

 【闇竜】が戦闘態勢に入ると纏う【闇】の再現よ。

 まあ、【闇】とは程遠いうっすい鼠色だけど。

 それでも出てると出てないとでは大違いで、出てるだけで【闇】が届く範囲の物が分かったり、防御力が跳ね上がったりするらしいし(エニスさんや騎士のお姉さん達だん)。

 そんな訳で、私は槍で角魔羊に突き掛かり、





 ヒギャアアアアアア。





 と角魔羊が悲鳴を上げた。





 あれ?





 私が不思議がりながら剣を抜いて首に斬撃を放つと、簡単に首が落ちた。





 あれ?





「ナニ、これ? 本当にランク【C】の魔獣なの、これって?」

 と私は振り返って確認した。

 私の背後にはエニスさんの他にも、お祖父様や騎士団長が付けた私の護衛役の女騎士さんや女治癒師さんが5人以上居る。

「だから言ったでしょ、秒殺だって?」

 エニスさんが言う中、

「だって、私、これまで1人で倒したのは狩猟学習でのランク【D】の蜂蜜熊が最高で・・・」

「いつの話よ? 【竜属性】の発現前の話でしょ、それ? 【竜属性】はミリアリリー王国が保護対象にして、ホルーテさんの為だけに、今もこれだけの人数の護衛が付くんだから、それだけ凄いのよ」

「へぇ~」

「ほら、無駄話はここまで。チャッチャと倒した魔獣の素材を剥いで」

「えっ? 私が?」

「当然でしょ」

 そんな訳でエニスさんの指示を受けながら剥きをやった。

 角魔羊なので羊毛がある。

 それを刈って麻袋に詰めてると、

「そこまでよ、ホルーテさん。お客さんがきたから」

「お客さんって?」

 私がエニスさんの方に顔を向けると、


「角魔羊を狙った【炎狼】っぽいわね。ランクは【A】。3頭かしら? ここからが本番だから頑張ってね」

 そう笑ってた。

「嘘よね?」

「本当よ。因みに私は助けないから。こっちのお姉さま方も」

 とエニスさんが笑った時、本当に接近してくる魔獣の気配に気付いた。

 これまでは接近なんかに気付かなかったけど、【闇竜属性】を開眼した所為で気付きたくないの気付いてしまった。

「どこが3頭よ、エニスさん? その後ろに更に2頭が接近してるじゃないのよっ!」

 私が叫ぶ中、

「あれ、気付いちゃった? さっさと倒さないと大変な事になるかもね」

 エニスさんがそう他人事のように笑い、私は思った。





 鬼だわ、エニスさんって。これだけ美人の癖に。





 その日の午後、私は角魔羊の肉に釣られた魔獣や魔物を41頭も狩猟させられたのだった。





 そんな訳で、これまでランク【D】の蜂蜜熊の討伐が最高記録だったのに・・・

 私の最高記録は本日、ランク【SS】の氷狼の亜種に塗り替えられたのだった。





 ランク【SS】を討伐したのに無傷なんだから、本当に【闇竜属性】には嫌になっちゃうわ。

 こんなに強くなっちゃって。

 後、食欲も旺盛になってて、ディナーで500グラムのステーキ肉を6皿ペロリだから。

 確かに騎士志望だったけど・・・・・・

 私はパリナさまみたいな優雅な騎士になりたかったのにぃ~。

 これじゃあ、肉体系の騎士まっしぐらじゃないのっ! はぁ~。
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