王立ミリアリリー女学園〜エニス乙女伝説・春の乙女祭編〜

竹井ゴールド

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負け犬達の断末魔

何、最後の日って?【カウービーside】

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 私はルーンサード爵家の次女、カウービー。

 姉は言わずと知れたミリアリリー王国の次期王妃のカウーナ。

 つまり、私は次期国王の義理の妹という高貴な血筋。

 その私がミリアリリー女学園に入学して、労力と大金を使い、春の乙女祭の決勝まで進んだというのに・・・

 総てが台無しになったわ。

 あのクソ女の所為でっ!

 まさか、決勝戦でミリアリリー女学園の闘技場から吹き飛ばされて、その拍子に衣服を破られて、この高貴な私が裸で、王宮の正門の真横の壁に頭から上半身を突っ込まされる事になるなんて。

 私はあの城壁にり込んだ拍子に無様に気絶し、深く上半身が突っ込んだものだから、王宮の城壁を崩す訳にも行かず、救助にも時間が掛かって、多数の男どもに下半身を見られて笑い物になったそうよ。

 お父様にあのクソ女を殺すように頼んで、ルーンサード侯爵家の暗殺部隊を出動させて貰ったけど、暗殺したとお父様はまだ言ってきてないし、暗殺部隊所属のコスモス達も帰って来ていない。

 それにお父様達は今日は揃って王宮に呼ばれてるから。

 本当にムシャクシャするわっ!

 と思ってたら、お父様達が王宮から帰ってきたのが窓から見えて、私が玄関ホールまで迎えに行くと、





「このおバカがっ! 良くもこの私に恥を掻かせてくれたわね、ビーっ!」





 お姉様は大激怒してたわ。

 妹の私には分かる。

 普段通り清楚だけど、一番怒ってる時の声のトーンだったから。

「何よ、妹の私が酷い目に会ったって言うのにっ!」
 
「まだ知らないの? 新聞を持ってきてビーに見せておやりなさいっ!」

 とのお姉様の指示で新聞が持って来られて、今日の新聞の1面は各紙、城壁に上半身をめり込ませた裸の女のお尻のスケッチ画だった。

「はあぁ? 何よ、これ?」

「実物の写真じゃなかっただけでも新聞社に感謝なさいっ! まあ、アナタは一生笑い物だけどねっ! ついでに言ったら、ルーンサード侯爵家もっ! 来年、殿下と結婚するっていうのにっ! 結婚式に列席した低俗な男どもが私を見てなんて思うか、今からその光景が目に浮かぶわ。『綺麗なウエディングドレスの下にはいい尻が隠れてるんだろうな』よっ! キィィィッ! ビー、アナタの所為でねっ! こんな低俗な事を私はこれから一生言われ続けるのよっ!」

 遂には爆発して、お姉様は持ってる羽根扇を私に投げてきたわ。

「まあまあ、カウーナ。落ち着いて。今日がビーと居られる最後の日なんだから」

 お父様がお姉様をなだめ······ん?

「何、その最後の日って?」

「アナタはルーンサード侯爵家から貴族籍を抜かれて離宮に隔離されるのよっ!」

 お姉様が吐き捨てるように言い放った。

「はあ? 嫌よ、そんなのっ!」

「嫌ですって? 私が泣き真似までして宰相のオルゼーク殿にひざまずいてすがって譲歩を引き出したって言うのにっ! 私が嘘泣きしなかったら、アナタ、病死させられてたのよ、明日っ!」

「病死って・・・・・・どうして?」

「来月に即位する王太子殿下の義理の妹がお尻丸出しなんかで新聞に載るからよっ! どれだけの醜聞だと思ってるのっ! そもそもエニスってのを怒らせたのはアナタが、エニスって子の友人に毒を飲ませたからじゃないのっ! 実力もない癖にミリアリリー女学園の春の乙女祭の優勝なんかを無理に狙ってっ! 結果がこれよっ!」

 と吐き捨てたお姉様が、肩で息をしながら、冷静を取り戻して、

「アナタ、好きな殿方は居るの?」

「・・・別に居ないけど?」

「本当ね? 居たらその方と過ごさせてあげるわよ。どうせ、明日には不妊手術が施されて一生檻の中だから」

「待って・・・お姉様、嫌よ、そんなの。助けて」

 私が涙を流しながら頼んだけど、

「助けて、『これ』で済むのよ。理解なさいっ!」

「なら、せめて、あのエニスってのを殺してっ!」

「もっと無理よ。こっちはもうお父様が勝手に昨夜、暗殺部隊を動かして、エニスってのに全滅させられて、300人も失ってるんだからっ! 宰相からも釘を刺されたわっ! これ以上、ルーンサード侯爵家が沈んだら、野心を持つ貴族達が何をするか分からないってっ! こっちはまだ殿下と結婚してないのよっ! 全貴族が私達、ルーンサード侯爵家がどこまで沈むのか固唾を飲んで静観してるのに、もう何も出来ないわよっ!」

「なら、お姉様が殿下と結婚して王妃様になったら、私の仇を取ってっ! お願いっ!」

「・・・ったく。これだけの使用人が見てる玄関ホールで返事なんて出来る訳ないでしょうが」

 と答えたけど、お姉様は、エニスを殺す、と約束してくれた。





 そして私は最後の一日を家族と一緒に過ごして·······

 翌日、玄関前で家族が見守る中(お母様は部屋で泣いてていなかったけど)、蜥蜴車に乗って王家所有の離宮に連行されていったのだった。





 ◇





 でも、宰相のオルゼークが約束を守らずに、翌月のルビカル殿下が戴冠式を迎えた日のディナーを食べてる時、





「? ゲホッ」





 咳き込んだら血が大量に出た。

「・・・何、これ?」

 直後に椅子から崩れ落ちて、

「・・・誰か・・・」

 って声を掛けたけど、ドアの外の廊下に居るはずの監視員のメイドが入室して来ず、私は毒で苦しみながら眠りに付いたのだった。
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