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負け犬達の断末魔
友好? 妹を潰されて?【カウーナside】
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王都ラサリリーのルーンサード侯爵家の屋敷の談話室で、朝食を終えた私は日課の各紙の新聞を読んで、呆れ果てたわ。
どの新聞も低俗にも壁に上半身を突っ込んだお尻のスケッチ画が1面に載ってたから。
「・・・低俗ね。いつから王都ラサリリーの一流紙はお色気記事で販売数を稼ぐゴシップ紙に鞍替えしたのかしら?」
と笑った私だったけど、部屋に居たお父様の様子が変だ。
「どうしたの、お父様?」
「いや、何でもないよ、カウーナ」
「そう言えば、ビーは? 昨日、ミリアリリー女学園の春の乙女祭で準優勝したのに、決勝で負けた事を悔しがってて不貞腐れるとかで、まだ会えてないわ」
と喋ってると、使用人が王宮に居る宰相から面談の申し出が来てる、と伝えてきた。
私とお父様とお母様の3人を御指名だ。
大方、来月の陛下の退位か、来年の私とルビカル殿下との結婚式の相談だろうと思って、気軽に王宮に出向いたのだけど·······
今の宰相は54歳のオルゼーク殿だ。
家名なしの平民出身の文官で、一代で宰相まで上り詰めたのだから、そりゃあ、優秀でしてよ。
まあ、来月の陛下の退位と同時にルビアちゃんに宰相の席を譲るそうだけど。
そのオルゼーク殿が真面目な顔で、
「私は来月、陛下の退位と同時に宰相を退きます。後任はルビア様。ルビア様に汚れ仕事は似合わないので、私が先々の汚れ仕事までを総て済ませ、それから引退する所存です。いいですね?」
「? 何かあったのかしら?」
と私が問うと、オルゼーク殿がお父様とお母様を見て、
「伝えてないんですか?」
とだけ言い、お父様が、
「言える訳がないだろうが」
と呻くように呟き、オルゼーク殿が、
「やれやれ」
と呟きながら、
「お三方に言っておきます。来年、国王となられてるルビカル陛下とカウーナ様の結婚式はどんな事があっても催します」
「何を今更」
私が幸せを噛み締めて微笑む中、オルゼーク殿が、
「なので、ルーンサード侯爵家は1人娘のカウーナ嬢しかお子がいなかった。いいですね?」
「はあ? 何をおっしゃってるのです、オルゼーク殿?」
「今朝の新聞のお尻の絵、見られましたか?」
「ええ、それが?」
「あれはどこぞの馬の骨のお尻で、ルーンサード侯爵家とは一切関わり合いはなかった。何故なら、ルーンサード侯爵家には1人娘のカウーナ様しか令嬢が居ないのだから。いいですね?」
と言われた瞬間、私は総てを理解して、
「あの絵は・・・・・・まさか、ビーなの?」
「ビー? 誰ですか、それは? まさか、次期王妃のカウーナ様がそのような低俗な者とお知り合いだったなんて」
と妹のビー(ああ、今更だけどビーはカウービーの愛称よ)を居なかった者として喋るオルゼーク殿に対して、さすがに妹を簡単には切り捨てられず、私は、
「ま、待って下さい、オルゼーク殿。陛下と殿下の考えを聞いてからーー」
「既に聞いております。陛下は『ルビカルに任せる』。殿下は『カウーナ以外を王妃にするつもりはない』だそうです」
「ルビカル殿下と結婚したければ、妹を切り捨てろと?」
「それだけの事態です。御理解下さい」
「前後の事情を聞いても? どうしてこのような事に?」
「ミリアリリー女学園の春の乙女祭で優勝者に吹き飛ばされた、と掴んでいます」
「王都ラサリリーの郊外の北の森の災害級を3頭沈めたエニスですよね、それ?」
「はい、あの実力者が故意に決勝戦の対戦相手を潰しました。それだけです。そうそう、ルーンサード侯爵家の暗殺部隊300人が昨夜、全滅しておりますので、これ以上は本当に何もしないで下さい。ルーンサード侯爵家がこれ以上、沈んだら、結婚式までのこの1年間の内に、カウーナ様に取って代わろうと大それた野心を持つ令嬢が現れないとも限りませんので。ルーンサード侯爵家は1人娘なのですから、そのエニス嬢とも遺恨などは一切ない。エニス嬢とは友好的にお願いします」
「友好? 妹を潰されて?」
私が笑うかどうか迷いながら問うと、
「カウーナ様。王妃になれば、吐き気を覚えるような嫌いな相手とも笑顔で仲良くしなければなりませんよ? 例えば、女性を性欲の捌け口程度にしか思っていない好色家の貴族とかとも」
諭すようにオルゼーク殿が言われて・・・・・・
その後、ビーの処遇で折衝する事となった。
辛うじて抹殺だけは勘弁して貰ったけど、王家所有の離宮に生涯幽閉の譲歩を引き出すのがやっとだった。
どの新聞も低俗にも壁に上半身を突っ込んだお尻のスケッチ画が1面に載ってたから。
「・・・低俗ね。いつから王都ラサリリーの一流紙はお色気記事で販売数を稼ぐゴシップ紙に鞍替えしたのかしら?」
と笑った私だったけど、部屋に居たお父様の様子が変だ。
「どうしたの、お父様?」
「いや、何でもないよ、カウーナ」
「そう言えば、ビーは? 昨日、ミリアリリー女学園の春の乙女祭で準優勝したのに、決勝で負けた事を悔しがってて不貞腐れるとかで、まだ会えてないわ」
と喋ってると、使用人が王宮に居る宰相から面談の申し出が来てる、と伝えてきた。
私とお父様とお母様の3人を御指名だ。
大方、来月の陛下の退位か、来年の私とルビカル殿下との結婚式の相談だろうと思って、気軽に王宮に出向いたのだけど·······
今の宰相は54歳のオルゼーク殿だ。
家名なしの平民出身の文官で、一代で宰相まで上り詰めたのだから、そりゃあ、優秀でしてよ。
まあ、来月の陛下の退位と同時にルビアちゃんに宰相の席を譲るそうだけど。
そのオルゼーク殿が真面目な顔で、
「私は来月、陛下の退位と同時に宰相を退きます。後任はルビア様。ルビア様に汚れ仕事は似合わないので、私が先々の汚れ仕事までを総て済ませ、それから引退する所存です。いいですね?」
「? 何かあったのかしら?」
と私が問うと、オルゼーク殿がお父様とお母様を見て、
「伝えてないんですか?」
とだけ言い、お父様が、
「言える訳がないだろうが」
と呻くように呟き、オルゼーク殿が、
「やれやれ」
と呟きながら、
「お三方に言っておきます。来年、国王となられてるルビカル陛下とカウーナ様の結婚式はどんな事があっても催します」
「何を今更」
私が幸せを噛み締めて微笑む中、オルゼーク殿が、
「なので、ルーンサード侯爵家は1人娘のカウーナ嬢しかお子がいなかった。いいですね?」
「はあ? 何をおっしゃってるのです、オルゼーク殿?」
「今朝の新聞のお尻の絵、見られましたか?」
「ええ、それが?」
「あれはどこぞの馬の骨のお尻で、ルーンサード侯爵家とは一切関わり合いはなかった。何故なら、ルーンサード侯爵家には1人娘のカウーナ様しか令嬢が居ないのだから。いいですね?」
と言われた瞬間、私は総てを理解して、
「あの絵は・・・・・・まさか、ビーなの?」
「ビー? 誰ですか、それは? まさか、次期王妃のカウーナ様がそのような低俗な者とお知り合いだったなんて」
と妹のビー(ああ、今更だけどビーはカウービーの愛称よ)を居なかった者として喋るオルゼーク殿に対して、さすがに妹を簡単には切り捨てられず、私は、
「ま、待って下さい、オルゼーク殿。陛下と殿下の考えを聞いてからーー」
「既に聞いております。陛下は『ルビカルに任せる』。殿下は『カウーナ以外を王妃にするつもりはない』だそうです」
「ルビカル殿下と結婚したければ、妹を切り捨てろと?」
「それだけの事態です。御理解下さい」
「前後の事情を聞いても? どうしてこのような事に?」
「ミリアリリー女学園の春の乙女祭で優勝者に吹き飛ばされた、と掴んでいます」
「王都ラサリリーの郊外の北の森の災害級を3頭沈めたエニスですよね、それ?」
「はい、あの実力者が故意に決勝戦の対戦相手を潰しました。それだけです。そうそう、ルーンサード侯爵家の暗殺部隊300人が昨夜、全滅しておりますので、これ以上は本当に何もしないで下さい。ルーンサード侯爵家がこれ以上、沈んだら、結婚式までのこの1年間の内に、カウーナ様に取って代わろうと大それた野心を持つ令嬢が現れないとも限りませんので。ルーンサード侯爵家は1人娘なのですから、そのエニス嬢とも遺恨などは一切ない。エニス嬢とは友好的にお願いします」
「友好? 妹を潰されて?」
私が笑うかどうか迷いながら問うと、
「カウーナ様。王妃になれば、吐き気を覚えるような嫌いな相手とも笑顔で仲良くしなければなりませんよ? 例えば、女性を性欲の捌け口程度にしか思っていない好色家の貴族とかとも」
諭すようにオルゼーク殿が言われて・・・・・・
その後、ビーの処遇で折衝する事となった。
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